表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/117

第九十七話「マックとマック」

こんばんは、作者です。


オズが意味不明な夜を過ごしている間。


仲間達は働いていました(笑)

マック登場です。

では、本編どうぞ。

よう。俺だ。


相変わらず毎日保安官の真似事をしているぜ!


今日はちと厄介な任務だ。

実はな、昼にビルと会議をして、決行が決まった任務さ。


先日港湾で見つかった麻薬の原液が、どこに運ばれる予定だったか分かったんだ。

御者役を務めていた男が自供したらしい。

それは、やはりというか、こないだカジノで財布を摺った男の勤め先だった。

ザナール製薬だ。

だが、ビルは険しい表情をしていてよ。

ザナール製薬は、ケン・ザナールという男が創業者で、現在は会長を務めている会社だそうだ。

一般的な薬を幅広く扱っている、アメリア有数の大企業だそうだ。

ザナールが一代で成長させたらしい。

ただ、捜査するにあたって、この男が問題だそうで、ビル曰わく、次期大統領選に出馬予定の大物だそうだ。

現在はアメリア連邦の経済担当大臣を務めているそうで、迂闊に手は出せないらしい。

つまりは変に藪をつつくと、大蛇どころか、こちらの身が危ないらしい。

結局、捜査を始めるにあたっても、確固たる証拠がいるとの事だった。


んで、俺達が今いるのがそのザナール製薬の本社ファクトリーなのさ。

アメリアの端に位置していた。


時刻は午前二時。

付近はシーンと静まり返っている。

繁華街から離れているので、人通りはほとんど無かった。

蒸し暑いが、月が綺麗で、夜風が心地よい夜だった。

虫の声がする。

月明かりに照らされた椰子の木が風に揺れていた。


何をするかって?

忍び込むのさ(苦笑)

証拠を集めに来たんだよ。


メンバーは俺とアークとトッドにアンジーだ。

ビルやスタンは、もし見つかった時に面倒な事になるから今回は正規メンバーだけだ。


俺達は建物の陰から様子をうかがっていた。


保安局ほど高くは無いが、高層ビルがある。

その裾野に合わせるようにして、ドーム状の建造物があった。

ビルが本社で、ドームが本工場らしい。


建物は塀で囲まれていて、門には守衛が立っていた。

さて、どうするかだな。


「不法侵入とか、ワクワクするぜー」


トッドが興奮していた。


「どうすっかね」


俺が誰にとも無く呟く。


「決まっているだろう?」


「え?何か策でも?」


口を開いたアンジーを見る。


「正々堂々、正面突破だ!」


アンジーは決然と言い放った。

どうだと言わんばかりの表情で!


「バカか!!そんなスパイいるかよ!考え無しか!この脳筋女!」


「アホか!?忍び込むって言ってるだろうが!大事になったら、ビルの作戦がパーだろうが!少しは頭を使え!」


トッドと俺のツッコミがアンジーに突き刺さった。

アンジーはしゃがみ込んで、地面をいじくっている。


「そんなに言わなくても、、、あ、アリさんだ。どこへ行くのだ?私も連れて行っておくれ。今日から君達の仲間になるとしよう」


完全にいじけたなこりゃ。


「と、とにかく、何か考えないと」


アークがフォローした。


「壁乗り越える?」


トッドが発言した。

見たところ壁に魔法は施されていない。

ここからなら侵入出来るかな?


「あのサーチライトはどうするのだ?」


アンジーが立ち直って、ここぞとばかりに、まともな意見を出した。


確かに、壁の四隅にはサーチライトが備え付けられていて、見張り所が見える。

人がいるかどうかは確認出来ない。


けどまあライトを目くらませるくらいなら、何とか出来る。


「俺にまかせろ!」


俺は水の精霊術を発動した。


「な!?」


みんなが驚いていた。


今の俺はよくわからない透明の何かに見えるはずだ。

俺は、身体を水の膜で覆っていたのさ。

もちろん術者の俺は濡れないよ。

原理は水による光の屈折を利用した技だ。

高等テクニックだ。

集中力が必要だから、戦闘中は無理だし、昼間の太陽の下など、光の乱反射の多い時は使えない。

が、纏って普通に歩いたり走ったりするくらいは出来るから、軍隊時代に夜戦で、隠密行動をする時などに、重宝したのさ。


俺は魔法を解除した。


「わっ!どこに行ってたんだ?」


トッドが驚いている。


「どこにも。ずっとここにいたよ。水の魔法さ」


「す、すごいな」


アンジーは感心してくれた。


「透明な水は澄んで中の魚まで見渡せる。逆に荒れた水面下は見えない。風の凪いだ水面には、景色が写るのと同じだね」


剣を握りながら、アークが言う。

さすがだ!


「という訳だ。今から全員にこれをかける。それで壁の向こうまで行くぞ!」


「おー!」


仲間達が賛同した。

血が騒ぐ、よく部下達にこの魔法をかけて、敵のアジトに奇襲をかけたな。

現場には戻れないと思っていたが、こんな所で同じ事をする羽目になるとはな。

しかも、今回も、部下では無いが、部下達と同じように、信頼して背中を預けられる仲間がいる。

やれやれ、ジジイめ、旅に出された訳が、少し分かったぜ。


そして、俺は全員に魔法をかけた。

全員が消える。


「う、うわ!」


「ちょ!アーク、ぶつかるなよ!」


「きゃ!だ、誰だ!私のお尻を触ったのは!」


三者三様の驚きようだ。

ちなみにどさくさに紛れてアンジーのお尻を触ったのは俺だ!!


「さあさあ、静かにしろ!互いの魔力を感じて、ぶつからないように距離を取れ!行くぞ!」


向かいのビルの陰から出た。

月光の中をゆっくり進む。

途中で一台の馬車が通って行った。

危うくハネられそうになる。

焦ったが、こちらが見えていない証拠だな。

壁際まで来ると、せーの、で壁を飛び越えた。

それくらいの脚力はあるぜー。

一応勇者御一行だからな。


芝生に着地した。

きちんと整えられた遊歩道や花壇が見えた。

地面には薄い照明灯が埋め込まれている。

金かかってるな。

やはり大企業は儲かってるんだな。


アーク達を小突き、そのままソロソロとドームまで前進した。

と、ドームの角を守衛が回って来るのが見えた。

魔道具であろう手持ちのライトを持って、各所を照らしながら歩いて来る。

全員息を潜めた。

ライトの光が俺達の方を向いた。

しかし、それは俺達を何の躊躇も無く通過していく。

見えて無い!


やがて、守衛は欠伸をかみ殺しながら、退屈そうに歩いて行った。


ドームまで到着した。


本社ビルを見上げる。

まだ働いている人もいるようで、数ヶ所だけ、部屋の明かりがついていた。

一方ドームは人気は無かった。

一階は角張った建物部分が存在しており、ガラス貼りのエントランスからは中が見えた。

建物内は、壁の下部に設けられた室内灯があり、薄ぼんやりとした緑色のライトが点々と内部を照らしていた。

飾り気も何にも無いな。


ザナール製薬はアメリア連邦各地に工場を抱えている。

本社ファクトリーは生産拠点では無い。

ここは、新薬の開発や試作をする場所だそうだ。

ファクトリーの名を冠しているのは、試作用の生産ラインを擁しているからだ。

何故連邦内に数ある生産拠点から、ここへ侵入する事を選択したのか?

それは、原液がここへ運ばれる予定になっていたからだ。

名目は新薬開発の為の原料をベネーリアから取り寄せたという事にする予定だったと御者が吐いた。

しかし、それ以上は何も知らなかったようだ。

ちなみに御者は射殺されて死亡した事になっている。

敵側に余計な警戒をさせないためだ。

記者発表では、港湾に不法侵入し、コンテナを運び出そうとした賊が、警備隊と撃ち合いになり、賊は全員死亡とされた。

コンテナの中身は、調査の結果、用途不明の染料として、保安局に廃棄処分にされた事になっている。

ちなみに、廃棄処分も嘘だ。

現在原液は保安局の証拠品保管庫に安置されていて、この事を知っているのは、一部の保安官と上層部、俺達しかいない。


という訳で、俺達は証拠を集める為にも、是が非でもこのドームに入らなくてはいけないのさ。


さて、敷地内には入れたな。

次はこのファクトリーの中だ。


入口は正面に一ヶ所のようだ。

ガラスを見た。

恐らくはマジックグラス、防御力に優れたガラスだ。

壊せなくは無いが、そんな事をしたら大騒ぎになる。

窓も多分マジックグラスだろう。

窓から入るのも無理だ。

それは一階部分だけでは無い、ドーム状の部分には開けられそうな窓は無い。

軽く一周してみたが、他の入口は中から鍵がかかっていた。

やはり正面入口からしか手段が無いな。


「どうやって中に入るんだ?」


アンジーの声が聞こえた。ま、手段は用意してある。

これで駄目ならガラスを破るしかないんだがな。


「任せとけ」


俺はある物を取り出して、魔法の範囲外に置いた。


「こ、これは!」


アンジーが反応した。

そう、これは例のカジノの男、ドイエ・ドナヒューの社員証だ。

これだけは財布をスタンに預けた時に、一緒に渡さないで拝借しておいた。

いつか何かに使えるかと思い、返却しなかったんだが、まさか本当に役に立つかもしれない時が来るとはな。

これは魔紋認証用の、独特のラインが引いてあった。

つまり、これが無いと入れない場所や、使えない物があるという事だ。


正面入口には、これの認証システムが設置されていた。

またもやアンジーの声がした。


「まさか、持っていたのか?」


「ガキの頃から、手癖が悪くてな」


「ふふ。そうだったな」


「何?何?社員証の話は知ってるけど、マックのガキの頃?アンジー、何でそんな話知ってんだ?」


トッドの不思議そうな声がした。

あ、こいつはあのバーでの事は知らないんだよな。


「い、いや、ちょっと」


アンジーの声は焦りを含んでいた。


「んだよ!イチャイチャしやがって!」


「そ、そういう事では!」


アンジーはより焦っていた。

ははは。


「お、おいマック!お前も何か言え!」


アンジーは俺に助けを求めて来た。


「ま、ちょっとな。大人の話さ」


「ずりーよ!」


「な!?マック!余計にややこしくなるじゃないか!」


トッドは拗ね、アンジーは狼狽えていた。

面白いヤツらだ。


「お楽しみ中悪いが、ぐずぐずしている暇は無いんじゃないかマック?」


剣を握っているであろうアークの、しっかりした声が聞こえた。

鼻水は垂れていないようだ。

確かに若きリーダーの言う通りだな。


俺は社員証を片手に、正面入口へ向かった。

上手く行ってくれよ。

認証システムに社員証をかざした。

走査線が走った。

認証システムに青のランプが付いた。

ガチャとドアの内部の留め金が外れた。

よし!


「開いたぞ!来い!」


俺は低い声で仲間を呼んだ。

三人の魔力が通り過ぎたのを確認すると、俺は静かにドアを締めた。


それと同時にファクトリーの角を先ほどの守衛が曲がって来るのが見えた。

あぶねー、ギリギリセーフだったな。

いくら姿が見えていないからといっても、ドアが開いていたら怪しまれること受け合いだからな。

守衛はやがて、何事も無かったかのように通り過ぎて行った。


俺達はぞろぞろと暗い廊下を進む。

行き先は決まっていた。

研究室だ。

原液は、そこの室長宛てになっていたからだ。

マック・ケイン。

縁起でも無いが、俺と同じ名前だった。

フロアーの案内図に従って、ひっそりと静まり返ったファクトリーを歩く。

一階は来客用のスペースのようだ、テーブルや、薬などがディスプレイされていた。


ゴミ一つ落ちていない。

二階、三階へと上がって行く。

誰ともすれ違わない。

不気味だな。

飾り気の無い建物内に靴音だけが響いていた。

四階からドーム部分だった。

フロアは六階まであった。六階が研究室・試作ファクトリーと書いてあったな。

目的地は六階。

恐らくはマックとか言う男の部屋もあるだろう。


研究室まで無事たどり着いた。

また認証システムだ。

カードをかざしてドアを開いた。


薄暗い研究室だ。

試験管や、金属で出来た箱にガラス窓がついていて、そこから青い光がもれていた。


よくわからない薬品が沢山並んでいる。

ふいに薬品の瓶が二個、宙に浮いた。


「トッド!触るなよ!何の薬品かわからない。下手したら死ぬぞ!アンジーもな!」


トッドとアンジーに言った。

絶対こいつらだ。


「な!?、見えて無いのに何で!?俺って!?」


「え?わ、私は別に、、トッドと一緒にするな!」


予想通りの反応が返って来た。

まったく、油断も隙もないんだから。


「ズズズ、鼻水治らないかな」


アークは締めに、派手に天然ボケをかましていた。

頼りになる仲間だ(苦笑)

読んで頂きまして、ありがとうございました。


まあ、権力者の足元をすくうにはこれしかありませんね。


さて、ちゃんと証拠を集められるのか?

頑張れマック!

アンジーのケツを触っている場合じゃないぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ