表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/117

第九十三話「悪い夢」

こんばんは、作者です。


今日はモルペウスが戦います。


忘れがちですが、一応それなりの神様である彼が、どんな戦いをするのか?

お手並み拝見と参りましょうか。

試合開始の声が響いた。


スネークが銃を抜き払い、立て続けに二発、モルペウスに向けて放った。


モルペウスは、手で双眼鏡を作り、飛んでくる弾を確認すると、頭の上に点滅する警報ランプを乗せて右往左往していたが、被弾する寸前に左右に側転をして避けた。

その後は頬に両手を当て、イヤーン、みたいなポーズをとって観客を沸かしていた。

いちいち観客の声援に応える姿が腹立たしい。


スネークは少し焦ったようだが、まだ平然としていた。

スネークは地面を蹴ってモルペウスへ突っ込んで来た。

肉弾戦を挑むのか?


その勢いを利用しつつ、モルペウスの前面に着地すると、連続でサイドキックを、その顔めがけて叩き込む。

モルペウスは首を逸らして右、左、とかわした。

スネークは動きを止めない。

放った足を地面に着くやいなや、逆の足で回し蹴りをうった。

モルペウスは宙返りをしてそれを避ける。

スネークは後方へ飛んだモルペウスにフロントキックで追撃する。

モルペウスは鎌の柄でその足を受け止めた。

だが、スネークは受け止められた足に力を込めた。

ギギギと両者がせめぎ合う。


モルペウスはヒーヒーと肩で息をしていた。

仮面が下から真っ赤に染まり、やがて上から真っ青に染まった。

どうせフェイクだろうが、大粒の汗が垂れていた。


モルペウスがググッと押され始めた。

モルペウスは自分の背後の地面に勝手に大きな剣山を作り、それを見て驚いた勢いで押し戻したり、片手を離し、どこからかともなくコーラを取り出し、それを一気飲みして元気を取り戻した様子で、再びヒーコラヒーコラと押し戻したりしていたが、だんだん押されてイナバウアーみたいな体勢になって来ていた。

その瞬間、スネークがモルペウスの胸に銃を向けて撃った。

格闘術と銃撃のコンビネーションかよ!

だが、モルペウスの姿が消えた。

彼はスネークの側面、やや離れた場所に移動していた。

胸に手を当てて、大げさに、ホッ、危ない危ない、という仕草をしてから、両手を水平に広げて、セーフ!とやっていた。


「くそっ!」


スネークの顔が歪んだ。

彼はバックステップを踏み距離をとった。

思案顔になる。

やがて何かを思いついたように、企みの笑いを浮かべた。


スネークがモルペウスに銃を向ける。

モルペウスは特に何をする素振りも無い。

鼻くそをほじくり返す仕草をしていた。

どうみても仮面に穴は開いていなかったが、何やら指が抜けなくなったらしく、汗をかきながら、ビョーンと伸びた鼻と指を引っ張って焦っていた。


スネークが銃を撃った。

グリップに魔力のオーラが見えた。

炎の蛇のような弾が出た。弾はウネウネとした軌道でモルペウスに向かって行った。

彼は水鉄砲を取り出し、ピュッピュッと撃って、無駄な抵抗をしていた。

が、いきなり弾が逸れた。

急激に角度とスピードを変えた弾は、こっち、そう、俺の方へ向かって来た。


え?え?

狙いは術者である俺か!

や、やばい。

油断していたぞ!


炎の蛇は口を開けるように俺の目の前に迫っていた。


その時だ、俺の前に現れた人影が蛇を切り裂いた。


ん?


モルペウス?

じゃ無かった。

大きな笛を持っていた。

彼と似た服装だが、カラフルな虹の色彩を放つ服に身を包んでいた。

モルペウスの服ではポンポンが付いている部分には星が付いている。

ズボンでは無く、ミニスカートを履いていた。黒く綺麗な髪が風になびいて揺れていた。


「おおーっと、術者を狙ったスネーク選手の弾丸が、予想もしない者によって阻止されましたー!ジョーカー選手、素晴らしい!なんと二体のジェスターを同時召喚しました。それももう一体も上位種、ハーメルンです!しかも女の子!レアだー!」


え?えー?


ハーメルンとやらが振り返った。

笛をバトンのように回していた。

緩やかにお辞儀をした。

顔は仮面に覆われていたが、華奢な体つき、締まった腰に、眩しい太もも、女の子だな。


《お久しぶりですオズ様》


話しかけて来たよ!

え?誰?


彼女?は少し拗ねたような仕草をする。

腰に手をあてがい、つま先をトントンとやってふてくされていた。

やがて、あ!そうだ!みたいなランプが彼女の頭の上に出た。

ハーメルンはどこからか、あるものを取り出した。

両手でそれを広げて俺に見せた。


あ、、、、。


それはゼッケンだった。

【モズの味方】と書いてある。

あー!ゲーゼか!

ハーメルンがウンウンと頷いていた。

仮面の目は動かないはずだが、パチンと音がして、片方の目からハートが出た。


《オズ様は私がお守りしますわ》


そうか。ありがとう!


遠くでリロードをしたスネークが炎の蛇を二匹、こちらへ向けて撃ち放った。

二匹は渦をなすように地上近くを這って来た。


ハーメルンは手に持った横笛を口に当て、、仮面の口の部分に当てて吹いた。

俺たちの周りを虹色の何かが包んだ。


蛇はそれに激突したが、ボヨンと跳ね返されて、弾が地面に転がった。

おー、凄い!

やるじゃんゲーゼ!

観客席から大歓声が上がった。

ゲーゼは両脇を締めるようにしつつ、足をピョンピョンさせ、キャハ!のポーズをとって跳ねていた。

モルペウスはゲーゼに拍手を送っていた。

目がハートマークになって飛び出している。

またどこからか取り出した薔薇の花束を持ち、片膝をついてゲーゼにプレゼントしたが、ゲーゼは受け取った花束でモルペウスを殴りつけた。

あ、そ、フラレたみたいだ。

モルペウスは、ガーン!という、目に見える効果音を頭の上に作り出すと、オイオイと泣き崩れるという三文芝居を繰り広げていた。


「く、くそー!」


スネークは完全に狼狽していた。


モルペウスが彼を指差して腹を抱えて笑っていた。

ポップコーンとコーラを片手に持ち、まるで喜劇でも見てるみたいに笑い転げていた。


その姿を見た観客席からも爆笑が起きる。


今やモルペウスは地面に寝転んでお腹を押さえ、足をジタバタさせて大爆笑していた。

苦しそうに時折酸素ボンベのような物を吸い込みつつ笑い続けている。

まあ、本当に笑っているのかは知らんがな。


スネークが頭から火を噴かんばかりに激昂した。


「ぶっ殺してやる!まずはそこのナイトメアからだ!バカにしやがって!」


その声にモルペウスは、バッと両膝を地面に付き、両手の平をスネークに向けて顔の前まで持って来て、頭を左右に振って許しを乞うていた。

いわゆる、NO〜やめてー!のポーズだった。

手でタイム、タイムとやっていたが、スネークには通用しなかった。


スネークはモルペウスに銃を撃った。

蛇がモルペウスを追う。


彼は、【ひーっ!お助けー】と書いた手持ち看板を片手に持って逃げ回っていた。

ちなみに何故か裏には【最後尾】と書かれていた。

ちょっと逃げて、ハアハアと肩で息をする。

弾が角度を変える。

またモルペウスは避ける。


手で汗を拭って、ホッとしているモルペウスに再度、弾が照準を合わせる。

モルペウスは再び、足をクルクルと漫画みたいに回転させて逃げる。

走っていた彼が、何にも無い平坦な場所の何かにつまずいて、バタンと転んだ。

身を起こし、足を開いてガクブルするモルペウスめがけて弾が命中した。

辺りが紅蓮の炎に包まれた。

だ、大丈夫か?


「ざまあみろ!」


スネークが叫んだ。


炎が消えた。

モルペウスがいた。

地面に肘を付いてうつ伏せになり、両手を顎に当てつつ、足をプラプラさせていた。

余裕か!!


「ば、馬鹿な!」


モルペウスは寝転んだまま身体の向きを変えた。

片肘を付き、手で頭を支えている。

開いた手を口に当てると、アワアワと欠伸をしていたが、やがて鼻から漫画みたいな風船を出して寝てしまった。


観客は再び大爆笑だ。


もはやスネークは、完全にモルペウスに遊ばれていた。

そりゃそうだ、忘れがちだけど、ああ見えて神様だからな。


「ふ、ふざけるなー!!」


スネークがモルペウスめがけて走り出した。

死に物狂いの表情だ、銃を闇雲に連発する。


モルペウスは手に持ったビンゴにそれを当ててビンゴを作っている。


結局一発もモルペウスには当たらなかった。


スネークの銃がカチッと空包を叩いた。


その音を聞いたモルペウスがビンゴボードを後方へポイッと投げ捨てた。

ボードはひらひらと舞って行った。

ぬーっと脱力したモルペウスの魔力が上昇していく。

ダラリと立っているモルペウスの、仮面の目だけが鈍く冷たく光っていた。


闘技場の空気が一変した。空間が凍りついたようだ。悪寒がした。


やがてモルペウスは首を左右に揺らしつつ、鎌を地面にギギギと引きずりながらゆっくりとスネークに向かって前進し始めた。


今のモルペウスは無表情だった。

もちろん仮面をしているので最初から表情は分からないんだけど、今までとは雰囲気が変わって見えた。

ユラリユラリと足を進めるモルペウスは、もはや何の感情も携えていないように見える。


ギギギ、、ギギギ、、ギギギ、、。


彼が一歩足を進める度に、鎌が地面を引っ掻く不気味な音が響く。

泣いているような、笑っているような顔をしたピエロが、どす黒い陰鬱な空気感を放ってスネークの所へ向かっていた。


「ヒッ!」


スネークがモルペウスの異変に気付いたようだ。

しかし、蛇に睨まれたカエル、、神に睨まれた蛇のように、足が震えて動けないようだ。


モルペウスは禍々しさと神々しさを立ち上らせながらスネークの前までやって来ていた。

モルペウスめ、やっと本気になったか?


ここに至って、観客達も言葉が出ないようだ。

怖いもの見たさか?シーンと静まり返って戦況を見守っていた。


目を見開いているスネークの背後にニューっと回り込んだモルペウスが鎌をスネークの首に当てた。


「う、、、あ、、、」


スネークは恐怖に震えていた。

モルペウスはスネークの頭に手を当てた。

スネークが白目を剥いた。


しばらくの時間が流れた。


「ひ、、う、、うわ、、」


白目を剥いたスネークの言葉にならない呟きだけが聞こえた。

開け放たれた口からは涎が垂れている。


「うひ、、ひいっ、、」


目からは涙が、鼻からは鼻水をだらしなく垂れ流すスネーク。

身体は恐怖に震えるようにガタガタと痙攣していた。

膝には力が入らないようだが、モルペウスに頭を持たれているので座ることは出来ない。

四肢に力の入らなくなったスネークの身体が、時折ビクビクと震えながら、プラーンとモルペウスの手によって吊り下げられていた。縛り首の死体が動いているみたいだな。


「わ、ひ!や、いやだ、やめろー」


スネークが自分の顔をかきむしっていた。


「うわー、やめてくれーうわー、ギャアアアアアー」


スネークはモルペウスに頭を押さえつけられたまま、身体にまとわりつく何かを振り払うように暴れていた。

彼は失禁までしていた。


まさに悪夢だった。


ようやくモルペウスが頭から手を離した。

スネークの黒目が戻ったが、彼は口から泡を吐き、その場に昏倒した。


モルペウスは木の枝で、ツンツンとスネークをつついていたが、もう彼はピクリとも動かなかった。


モルペウスがレフリーを手招きした。

レフリーがやって来る。

スネークの意識を確認していたが、やるだけ無駄だったようだ。

レフリーが本部席を見て、手を交差した。


「あーっと!どうやらスネーク選手、戦闘不能のようです。この勝負ジョーカー選手の勝ちです!圧倒的だー!」


観客席がアナウンスの声に我に返ったように、大喝采が発せられた。


勝った!

勝ったぞー!


レフリーがやって来て俺の手を上げた。


モルペウスはスネークの側で風船を膨らませていた。

何してるの?


その風船をスネークの耳の近くに持って来て、針を刺して割った。

スネークが跳ね起きた。

キョロキョロと辺りを見回してホッとしていた。

レフリーに手を上げてもらっている俺を見て、負けを悟ったのか、ガックリとうなだれていたが、自分の服や防具に付いているパイソン柄を見てパニックを起こし、それを脱ぎ捨てていた。


モルペウスが俺の所に戻って来た。


よくやったな!


《はい。楽しいのなんのって、ちょっと遊びすぎました、ヒヒヒ》


よく分からんが、恍惚を味わうほど楽しそうで何よりだよ(苦笑)

にしても最後は何をしたんだ?


《はい、ちょっと夢を見てもらいました。トラウマ必至の悪夢を、フフフ》


ど、どんな夢?


《お聞きにならないほうがいいかと、まあ、金輪際蛇を見たく無くなるくらいのヒドい夢だと言っておきましょう》


う、うわー、悪趣味!


《ええ、私、ナイトメアですから》


モルペウスはニーっと笑っていた。

仮面で見えなかったが、それは分かった。


《さて、そろそろ私達は失礼します。また機会がありましたらお呼びください》


お、おう。

てか、また呼んでいいのか?


《ええ、こんな面白い事、そうそうありませんので》


モルペウス、ドSだなお前。

あ、ゲーゼもありがとね。


《いえいえ、私も楽しかったですし、それにこの衣装可愛いですから。また呼んでくださいませ》


ゲーゼはダンスを踊るように回っていた。

パンツ見えてるけど!


《ふふ、ハーメルンからのサービスです!男性は女性のスカートの中に夢を馳せるのでしょう?》


ぐっ!?


俺とモルペウスが揃って苦笑した。


最後にモルペウスとゲーゼは観客の声援に手を振ると、光の中に消えた。


いやー、見てる分には楽しかったけど、やたら長々と時間がかかったな。

それにしても、やっぱり神は神だなー、最後は怖すぎたよ!


俺も観客やワイアル達に手を振りつつ退場して、控え室まで帰って来た。


他の選手の俺を見る視線が明らかに変わっていた。

壁に貼ってある、ブロックのトーナメント表を見て、棄権しようとしている奴もいた。


見たか!俺の力!

何にもしてないけど!(苦笑)


スネークがいた。

放心状態だった。


ツカツカと彼の所へ歩いて行った。


「ひっ!」


スネークは後ずさりをした。


「相手が悪かったな、これに懲りたら二度と減らず口を叩くな!分かったな?それとも毎晩悪夢にうなされたいか?」


スネークは首をブンブン振っていた。


「よし!仲間にも言っておけ!俺とレイナに手を出したらどうなるか?貴様が一番よく知っているだろう?」


スネークが今度は首を縦にコクコクと振った。


「お、おい、スネーク!大丈夫か?あ!て、てめー!よくも!」


コブラだっけ?仲間が心配そうな顔をしてやって来た。

俺を見て、敵意を剥き出しにした。

スネークはコブラを押し止め、必死で首を横に振っていた。


「だ、ダメだ、こいつに楯突くな、殺されるぞ、というか一思いに殺されるならまだ運がいいほうだ。悪夢だ!まさに悪夢!こいつだけはダメだ!いいな!ジョーカーを引くとえらいことになるんだよ!」


コブラがそんなスネークを見て驚愕していたが、やがて意味を理解したらしい。

俺には目も合わせず、青い顔をしながらスネークに肩を貸して帰って行った。


いやー、やり過ぎたかな?

まあいいや。

モルペウスとゲーゼは楽しそうにしてたし。


とりあえず、勝ち抜いたぜー!

読んで頂きまして、ありがとうございました。


いやはや、遊びまくりのモルペウスでした。


ただ、やはり神様ですね。

人間とは次元が違うようで。

オズに弄ばれているだけの存在ではありませんでした。


神様の気まぐれって時々人を喜ばせたり、怖がらせたりする事があるようですが、そんな神様であるモルペウスの陰と陽の部分、それなりに書けた気がします。


ではまた次回ー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ