第八十五話「アミマイバイス、なんちゃって!」
こんばんは、作者です。
最近仕事が忙しくて、筆が湿りがちです。
自覚しています。はい。
さて、今日は前から書きたかったお話です。
マックが主人公です。
ではどうぞ。
おはよう。
ま、朝じゃないんだけどな。
今は夜の21時だ。
これから夜勤に行くぞ。
本来は19時からなんだけどな、今日は昼も働いたからよ。
ちょっと遅めでいいらしい。
というか、アンジーと二人で夜の街に繰り出す事になるとはな。
あの夜からアンジーの態度が変わってな。
トゲトゲしさが無くなったのさ。
普通にマックと呼んでくれるしな。
こっちはこっちでアンジーと呼んでも怒らない。
昼にスタンがチーム分けした時も、特に嫌がる素振りも無かったしな。
別にどうこうしようって気も無いわけじゃないんだが、しばらくはこのままの関係でいいと思う。
さて、出かけるか。
そうそう、今日は夜の街に馴染むのが目的だ。
まずはヤクの売人を見つけよう。
服装も変えてみたぜ。
タンクトップの上に白いシャツを羽織って、下はチノパンを裾を折り曲げて履いてみたぜ。
ちょっと値ははったがごつめのシルバーネックレスを首にして、皮のバングルを手首に巻いた。
バレンシアでよくいるリゾート地の金持ちってやつだ。
ではでは、アンジーを呼びに行くか。
アンジーの部屋をノックした。
間髪を入れずにガチャっとドアが開いた。
やけに早いな、まるでドアの前にいたみたいだ。
「は、早いな」
「べ、別に待っていた訳では無いぞ!だいたい貴様は遅いんだ!」
待っていたのか。
それにしても、開いた口が塞がらないぞ。
「何だ!おかしいか!」
まだ何も言ってないぜアンジー。
アンジーは白のTシャツにデニムのショートパンツ姿だった。
身体のラインが強調されまくっていた。
敢えてかは知らんが黒のブラが透けていた。
なんてセクシーなんだ。
「わ、私の趣味じゃないからな!レイナにアドバイスをもらって仕方なくだからな!」
ノリノリでやったんだな。そしてブラは敢えてだな。
お前は動揺している時は、言ってる事と反対の事が本心みたいだからな。
「俺だって頑張ったんだぜ?どうよ?」
「ふ、ふん!ちっとも似合って無い!」
似合ってるんだな。
ありがとうよ。
疲れるな(苦笑)
そんな会話を交わしつつ、アンジーとホテルを出た。
アミマイは暑い夜だった。
年がら年中こんな気候なのかね?
相変わらずの煌びやかな繁華街だ。
「アンジー?何か武器持ってるのか?」
「ん?私に武器がいると思うか?お前のセンスの無いネックレスも、やろうと思えば素手で千切れるぞ?」
はいはい、左様ですか。
これは本当だろうな。
「お前こそ丸腰なのか?」
「あ?俺か?俺だって一応バレンシアの英雄なんだが?」
「そうだったな。ふふ」
「はは」
最近はこんな感じの会話が楽しい。
アンジーにコーラを買ってやった。
嬉しそうな顔でゴクゴク飲んでいた。
こりゃあ、まるっきりデートだな。
デートか。
俺は女とまともにデートとか、したことない。
物心付いた時から軍にいたからな。
まあ、女には困って無い。
派遣先で一夜限りの情事を共にするとかはよくやった。
ただ、付き合うとかは、どうすりゃいいのかわからんし、彼女が欲しいとも思わなかったがな。
自慢じゃないが、もうすぐ30才が見えてくるのに、彼女いない歴が年齢と同じだ。
彼女ねー、モズを見ていると、ああいう付き合い方もありかなと思う。
アンジーもそうだし、最近ではレイナも、あいつの隣にいる女は、楽しそうだし輝いて見える。
まあ、俺にそんな力があるのかどうかは知らんがね。
アンジーを見た。
ネオンに照らされた横顔は綺麗だった。
とりあえず、昼間にスタンに教えてもらった発展場に行ってみた。
カジノやいかがわしい店が建ち並んでいる。
一番大きなカジノに行った。
「こ、これがカジノか」
アンジーが驚いていた。
まあ賭事とか興味無さそうだからな、こんな派手な所には縁が無いんだろう。
「言っとくが、仕事が優先だからな」
「わ、分かっている!お前と一緒にするな!そ、それはさておき、あれは何だ?あれ!ふむふむ」
アンジーはウキウキしながらスタスタと歩いて行った。
やれやれ(苦笑)
そこにあったのはスロットと呼ばれる機械だ。
鏡面台のような大きさで、ボタンがついている。
鏡にあたる部分には曇りガラスになった、水槽のような物が付けられていた。
コインを入れると画像が立体的に浮かび上がる。
画面の中のキャラを操作して飛び回っているアイテムを撃ち落とし、三つ絵柄を揃えるとコインが沢山出てくるのさ。
「やりたいのか?」
「べ、別に」
目をキラキラさせながらアンジーが言う。
やりたいんだな。
俺はコインを換金してやった。
アンジーは嬉々としてスロットを始めた。
腕と運が左右するゲームだったが、アンジーはビギナーズラックか、腕がいいのか、すぐジャラジャラとコインが出てきた。
「わ!わ!図柄と背景が変わったぞ!何と面白い!」
フィーバーしていた。
こらこら仕事に来たんだぞ?
「コインがいっぱい!お?キャラが成長したぞ!騎士になった!」
大はしゃぎだな。
アンジーがスロットに興じている間、俺は店内をくまなく見渡していた。
こんな店だ。
どこかにヤクの売人がいるはずだ。
コインの箱を補充しに来た店員に換金を頼み、法外なチップを渡しつつ尋ねた。
「聞きたい事があるんだが」
「何でしょうか?」
「アレないかな?」
俺はそういうと鼻をすする素振りをした。
ま、古い手だが。
それで通じたらしい。
「あ、あー。それならあそこ」
店員は声を潜めて、ポーカーテーブルの奥にあるラウンジを目で示した。
一番壁際のテーブルにいかにもな感じの男達がいた。あれか。
「アンジー!遊びは終わりだ」
「うるさい!話しかけるな!今いいとこなんだ!」
「アンジー、ギャンブル狂いの女なんてモテないぞ」
アンジーはピタッとスロットを止めた。
我に返ったようだ。
「仕事するぞ」
「わ、わかった。ち、ちょっとその前に、コインを換金して来ていいか、しら?」
「ああ、いいよ」
アンジーは飛び跳ねるように走って行った。
ガキかよ(苦笑)
しばらくして、彼女はホクホク顔で戻って来た。
「ラウンジの壁際にいるのが売人だそうだ。まずはちょっとつついてみようぜ」
アンジーが頷いた。
気楽な感じを装いながら席に近づいた。
席には先客がいたようだ。
売人とは明らかに違う感じの服装だった。
俺達は近場の席に座った。
男達はなにやらヒソヒソと話をしている。
アンジーが聞き耳をたてていた。
こいつは耳がいいからな。
しばらくすると男は売人達と挨拶を交わし席を立った。
やたらペコペコしている売人達。
ふむ。
アンジーに小声で話しかけた。
「なんの話をしていた?」
「ああ、先に席を立った男が、次回の出荷が決まったからどうとか、生産ラインがどうのと言っていたぞ」
何!
てことはもしかして製造している側の人間か?
「アンジー、ここでしばらく聞き耳を立てていてくれ、いいな。動くなよ」
「わかった」
アンジーを残し、トイレにでも行くふりをして席を立った。
売人達は俺達を特に気にする素振りは無い。
俺はそのまま男を追った。
男はカジノには目にもくれずに出口を目指していた。
男に続いて店を出た。
そのまま男は繁華街を行く。
今夜もかなりの人出だ。
しめしめ、これならイケるかもな。
俺は道の反対側に移り、先回りをして、男とすれ違う事が出来るポジションについた。
へへ。
貧民街で磨いたワザがここで生きるとはな。
何をするかって?
まあ見てな。
俺は道で空いた酒瓶を拾い、水の精霊術で瓶を満たし、フラフラと酔っ払ったふりをして歩みを進めた。
やがて男がやって来た。
千鳥足の俺を見て、やや顔をしかめる。
俺は男とは目を合わせない。
どーでもいい事をブツブツ言いつつ歩く。
男とすれ違う寸前、近くにいた通行人に水の精霊術を使った。
通行人の背中にいきなり水が溢れた。
もちろん男からは見えない、俺と同じ方向に歩いている通行人だからな。
「わひゃあ!冷たい!」
そいつはビックリして俺と男にぶつかる。
俺はそれに大きくよろめいたふりをして、件の男にぶつかった。
通行人の水は消去したぜ。万が一バレると面倒だからな。
派手にすっころび、フラフラと起き上がった俺は、可哀想な通行人にがなり立てた!
「て、テメー!何フラフラ歩いてやがる!」
「す、すいません、み、水が!」
「ああ!?水なんてどこにあるんだ?酔っ払ってんじゃねーよ」
「すいません」
隣で傍観していた件の男は、俺にぶつかられてちょっと腹を立てたようだったが、俺の剣幕に厄介事はごめんだと思ったのか、足早にその場を離れた。
数分後、俺はカジノ近くの細い路地にいた。
チョロいもんだぜ!
ま、精霊術を使わなくても、このくらい朝飯前だ。
俺の手には、男の財布があった。
精霊術を使ったのは、胸ポケットか尻のポケット、どちらも探る時間を稼ぐ為だ。
一発勝負だからな。
さてと、誰だ?お前は?
別に金が欲しかった訳じゃないぜ。
だいたい財布の中には身元を示す物が入っているからな。
ゴソゴソと漁っていると、ギルドカードのような物が出てきた。
何々?
【ザナール製薬・取締役・ドイエ・ドナヒュー】
多分、社員証か何かだろうな。
後は飲み屋のショップカードや、ドナヒュー名義のバンクカードがあった。
さて、名前は分かったぞ。
明日スタンに報告しないとな、財布は何もとらずに落とし物としてスタンに届けておこう。
結構な収穫じゃないか!
さっきアンジーが盗み聞きした話が本当なら、これは製造者につながる手がかりになるかもしれないしな。
俺はカジノに戻った。
それとなくアンジーを呼び出した。
これ以上面を晒す必要は無いしな。
ついでにこの場にとどまるのも悪手だな。
まさか無いとは思ったが、俺達は尾行に注意しつつホテルに戻った。
これでも軍人だ、俺を尾けるなんて、一流の諜報員でもなけりゃ無理だ。
ま、尾行はいなかったがな。
「いいのか?売人と接触しなくて」
「ああ、今日は収穫ありだ。ギャンブルも仕事も引き際が肝心さ。欲をかくと損するのさ。今夜はもうやぶ蛇をつつく必要は無い」
「そ、そうか。私は何もしなくて良かったのか」
「何言ってんだ、アンジーの地獄耳のおかげだぜ?」
「え?そ、そうか。それは良かった」
やがてホテルに到着した。
ホテルへは裏口から入った。
ま、念には念だな。
そのまま上のラウンジに行く。
もう真夜中を過ぎていたが、ラウンジは朝までやってるからな。
とりあえず、今日の反省会だ。
「で、収穫とは何だ?」
アンジーに男の身元の話をした。
「な!何!本当か?」
「ああ。だからアンジーの地獄耳のおかげだって言ったのさ。俺とアンジーじゃなかったら、出来ない収穫だろう?」
「あ、ああ。そ、そう。そうだな。あの後売人の会話で、元締めらしい人物の名前が出てきたぞ。セラーノという男のようだ」
「でかした!やるじゃないかアンジー!」
アンジーは柔らかい笑顔になった。
今日の仕事は、初日にしては上出来だな。
「そんじゃあまあ、改めて、乾杯」
「あ、ああ。乾杯」
仕事の終了時刻には、かなり早いが、まあいいだろう。
アンジーと杯を傾けた。
その後はアンジーのスロット狂いをいじりまくってやった。
「な!?あ、あれは、、ただ、、その、、、」
アンジーは真っ赤になってうろたえていた。
が、別に怒った様子も気分を害した様子も無かった。
楽しかった。
スタンがアークを迎えに来るまで仮眠をとる事にした。
アンジーの部屋の前でおやすみを言うと、アンジーが恐る恐る手を差し出して来た。
普通抱擁する所じゃないの?
まあ、いいか。
手を握り返した。
「今日はお疲れ。おやすみアンジー。また頑張ろう」
「ああ。お疲れ。明日、いやもう今日か?今日もよろしく頼む。おやすみマック」
アンジーはまだ何か言いたそうだったが、そそくさとドアを閉めた。
はは。
何を言おうとしたのやら。
ま、初仕事は色々と上々な滑り出しだった。
おやすみアンジー。
読んで頂きまして、ありがとうございました。
マック、こういうのは得意そうです。
そして、アンジーは妙な物に目覚めつつあるようで、先行きが(笑)
それにしても、アンジーはドアを閉める時に、何を言おうとしたんでしょうか?
ぶっちゃけ作者にもよく分かりません。
あれは書いていて不思議でした。
すっかり私服刑事みたいになって来た二人。
温かく見守ってやってください。




