第八十一話「希望の光」
こんばんは、作者です。
アーク達は新生活へ、オズ達はどうするの?
ほどなくして俺達は保安局にたどり着いた。
受付でビルを訪ねたが、彼は不在だった。
困ったな。
「どこに行ったかわかります?」
「さあ、、行き先を告げずにお出かけになるのは今に始まった事じゃないですから」
受付は苦笑していた。
仕方ないから建物を出た。
「どうしようか?」
「ショッピングする?」
「するかボケ!」
「ぶー。じゃあガンセンター行って練習しよ?」
「あー、それはいいかも。よし行こう」
確かに銃には練習が必要だな。
行き先変更だ。
今度は俺が運転して、ガンセンターまでたどり着いた。
レイナはバイクに慣れたらしく、俺の頭を撫でたり色んな所を触ったりして遊んでいた。
くすぐったいからやめなさい。
なんだかんだで到着しました。
ガンセンターは今日も銃の練習をする人達で溢れていた。
「あ、ヘンリーに銃借りないと」
「そうね、またあれ貸してもらおーっと」
レイナはすっかり、あの女性用の銃が気に入ったらしいな。
俺達は博物館の裏にあるヘンリーの工房へ行った。
ノックすると、意外な人物が顔を出した。
「ぬお!行方不明のビル?」
「君達か。行方不明ってなんだ?」
「保安局に行ったらそう言われたが」
「ああ、すまん訪ねてくれたのか?今日はヘンリーに銃のメンテナンスを頼みに来たんだが、まあ、入れ、このざまでな」
部屋に入ると、ヘンリーが手にボックスを抱えてソファーで寝ていた。
ヨダレをたらし高イビキだ。
ピクリとも動かない。
「声をかけたが起きる気配が無くてな、この様子じゃ、昨日は徹夜したようだ」
「そ、そうか」
あー、俺達の為かな?
「アーク達は一緒じゃないのか?保安官補になる予定のはずだが?」
「ああ、その事でビルに話があったんだ」
「そうか」
俺達はヘンリーを起こさないようにテーブルに座って、話をし出した。
もっとも、近くでこれだけ話ているのに、まったく起きないんだがな。
ビルは台所からコーヒーとスコーンみたいな物を持って来た。
まるで自分の家みたいだな。
「食うか?俺の家内が焼いたんだ」
「ありがとう。奥さんいるんだ」
「まあな」
ヘンリーはまんざらでもないような笑みを浮かべた。
「ハモハモ、美味しい。チーズ味ね!」
レイナ、食うの早いな。
「はっはっは。沢山あるから好きなだけ食べてくれ、で、話とは?」
俺はキスとミッドナイトの正体以外の話をした。
「な、何だと。そうか事態はそこまで、しかしそれが分かったのは有り難い。ミッドナイトがよく口を割ったな。何度か会ったが無愛想で口の重いヤツだったぞ。それにしても、バレンシアには随分行ってないが、ケイレルに娘がいたとはな」
「お父さんを知ってるの?」
「まあな、俺達よりも下の世代の勇者だ。俺もすっかりアメリアから出なくなって久しいからな、もう長い間会っていないな」
今とんでもない発言をしたぞ?
「ビルは勇者なのか?レイナの父ちゃんも?」
「嘘でしょ?あのお父さんが?じゃあお父さんの言ってた事って実話!?」
「はは。昔の話だ。勇者にも時代に応じて世代がある。君達の前にも沢山の勇者がいたのさ。それに今だって、勇者は君達だけじゃないんだぞ?ちなみに俺やカイ兄達が長寿なのはちと特別な訳があってな。まあ秘密だ。レイナの父親のパーティーはバラエティーに富んでいたぞ。人間の剣士、エルフの女、ドワーフの戦士、ゴースト化した魔法使い、魂の入った人形の格闘家、遊び人、つまりケイレルだな、あとダンサーの女、極めつけは悪魔だな」
「悪魔!?」
「ああ、倒す相手が少々特殊でな、悪魔界から強力な助っ人が加入するなんていう前代未聞のパーティーだった、悪魔にしてはというか、なかなかいい奴だったな。今はどこにいるのか」
「まさかアモンか?」
「し、知っているのか?」
「意外に身近にいるぞ。昨日会ったよ。アモン=ミッドナイトだ」
「な!?まさか!?全然姿が違うぞ?何度か会ったが気づかなかった」
「ホントよ!あたしのお父さんも知ってたし」
「まあ悪魔にも色々あるのさ、ここにいることをあまり大っぴらにしたく無いんだろうよ」
「ふむ、ますます君が分からなくなったな。カイ兄が気に入る訳だな」
「銀髪クソ野郎の名前は伊達じゃないもんねー、オズ!」
「な!?レイナちゃんにバレたのか?」
「ま、まあな」
「カップルだもん!」
「違うわ!」
「ぶー、ケチ!」
「わっはっは。面白いな、君達は」
クソ野郎言うなし!
ケチってなんだ?
ビル、笑うなー!
「さて、そうと決まれば、早速ガンナーになってもらわないとな」
ビルは椅子から立ち上がると、ソファーのヘンリーに近づき、ゲシゲシと蹴りを入れた。
「ヘンリー!死んでる場合じゃないぞ!起きろ!」
「どわっ!な、何だ?ビルか?、、モズにレイナちゃんまで!」
ヘンリーはようやく起きた。
すごい起こし方だな。
「話は急展開だ。モズとレイナちゃんにはガンナーになってもらう。ついでにミッドナイトがアモンだそうだ、今度スタンを誘って、ただ酒を飲みに行こう。そうそう、レイナちゃんの親父は、あのケイレルだとよ。立派な娘が出来たもんだな。というかよく結婚出来たな」
「え?えええ??」
「目が覚めただろう?」
ヘンリーは一気に現世に戻って来たような顔になり、びっくりしていた。
ビルが、どうだと言わんばかりの表情になった。
「ああ、覚めたよ。朝、いやもう昼か?寝起きにはキツい一撃だったな、やれやれ、そうか、ミッドナイトの正体に、ケイレルの娘か。これも因果か」
「その手のボックス。出来たのか?」
「あったりめーよ!ビル、俺を誰だと思ってんだ!」
「討ち死にしている死体か?」
ぶぶっ!
さっきは確かに。
返事が無い、ただの屍のようだった。
「違うわ!世界最初のガンスミスの末裔だ!アイボリーも手に入ったしな」
「そうか、モズに渡されたのか」
たいして驚かないビル。
なして?
「ビル、驚かないのか?知っていたのか?」
「まあな。カイ兄が骨董市でモズの手に渡るのを見ていたからな。そもそも、それを持ったまま入国したら大騒ぎになるからな。どこのゲートもくぐらずに素通り出来ただろう?」
「あ、、、」
言われてみれば、国境でも、保安局でも、ゲートを通ってない。
確かにゲートを通ったら持ってるのがバレて、えらい騒ぎになったはずだ。
カイロス、根回し良すぎるだろ!
「という訳だ。それはともかくヘンリー!出来たんだろう?」
「あ、ああ出来たぞー!」
ヘンリーはボックスを開けた。
二丁の銃が並んでいた。
一丁はガバメントを模した銃だ。
というより、完全に俺の趣味だ。
ガバメントの亜種をベースに、サイトやグリップ、トリガーガードをいじってあった。
フレームには銀色でヘンリーアームズと彫られていた。文字の最後に風みたいなマークが彫り込んであった。グリップにはアイボリー色の鹿に似た動物の角があしらわれていた。
レイナの絵の通りだー!
すげー!出来たー!
「俺の初のブローバックモデル。ヘンリーアームズ特製、ミル、ミルなんとかカスタムだ!こだわりはこのグリップだ。アメリアロングホーンって魔物の角で作った。高くついたが、最高だろう?」
「ミルズだ!」
訂正を入れた。
そう、ニホンで見た某イケメン俳優と某黒人俳優が、七つの大罪をテーマにした、連続殺人犯を追う映画で、主人公が持っていたヤツだー!
ハアハア。
この形。このグリップ。
ハアハア。
いかん、興奮し過ぎた。
「あたしの絵の通りだー、やったねモズ!」
「そう!ありがとうレイナー」
やったー、ありがとうレイナー!
思わずレイナに抱きついた。
「!?、、、、」
あ、、、、、。
腕の中のレイナが赤面して固まっていた。
う、うわ。
いつものレイナじゃない!口をパクパクさせた彼女がいた。
吐息が前髪をかすめた。
ドキドキするー!
俺の、いや、レイナの鼓動も身体に伝わって来た。
「モ、モズ、、。いやん!こんな所で」
いつものレイナに戻った?
やっちゃったー!
「あ、あ、あ、す、すまん、つい」
あたふたと戻る俺、どこかいつもと違うレイナ。
生暖かく見守るおっさん二人。
神よ、お助けー!
けっ!神なんてくそくらえだぜー!
俺は激しく動揺していた。レイナはフーッと息を吐いた。
そして俺に微笑んだ。
今まで見たことの無い微笑みだった。
天使みたい。
一時を経て、その微笑みは、いつものレイナの小悪魔の笑みに変わった。
「ふふ。いいのよダーリン」
グサッ!バタッ。
とどめの一撃に俺は倒れた。
すまん。俺はこれまでみたいだ。
《ちょっと!しっかりしなさいよ!浮気しても何でもいいけど、凛としてなさいよ、バカ!貴方は私の、○○なんだからねっ!》
エレーナ?
確かにエレーナの声がした。
最後はよく聞こえ無かったが。
よ、よし。
俺は復活した。
「ダーリン言うなしいいいいい!!」
「えへ」
「よし、三文芝居は終わったな、ヘンリー、次だ!」
ビルの的確な進行が冴え渡る。
流石、元勇者!
「お、おう。レイナちゃんにはこれだ!」
箱からもう一つの銃を出した。
ガバメントを模してはいるが、やや各パーツが大ぶりだ。
だが銃自体は俺のより小さい。
いわゆるフジコちゃんが持っているくらいにサイズダウンされていた。
イジェクトボタンなどにハートが使われていた。
グリップには穴が開けられて、マジックグラスがはめ込まれて、中の弾が見えた。
フレームには、桜?の花が舞っていた。
ピンクの塗料が流し込まれていて、白銀の下地に鮮やかな色彩を放っていた。
か、可愛い!
「いやーん!超可愛い!超可愛い!どうしよう!嬉しいー!ありがとー!」
レイナは感激の行き場を探してジタバタと喜んでいた。
あー、しゃーないな。
「レイナ?」
俺は両手を広げた。
しょうがないだろう?レイナを落ち着かせないと話が進まないからな。
「きゃー!」
レイナが胸に飛び込んで来た。
胸の中で足をピョンピョンさせるレイナ。
可愛い以外に表現のしようが無かった。
「モズ、もう大丈夫。ありがと」
レイナは離れた。
俺達はヘンリーに頭を下げた。
「ありがとうございました!」
「いいって事よ。寝るのも食べるのも忘れて銃を作ったのはいつ以来か!ビルを助けてやってくれ、この国を頼む!」
「わかった!」
「うん!まかせて!あ、名前は?この銃の名前は?」
「君達、、が決め、、ろ」
ヘンリーは一気に睡魔が襲って来たようで、それだけ言うと、ソファーにぶっ倒れた。
ヘンリー、ありがとう。
「ねえねえ、お互いの銃に名前付け合いっこしようよー!」
「い、いいけど、、」
レイナは元気一杯だな。
「じゃあオズからね。んとねー、、、」
レイナは考えていた。
「んとねー、あ!エスペランサー!」
「エスペランサー?」
「あたしの国の古い言葉で、希望を切り開く者って意味よ。モズがきっとそうだから」
買いかぶり過ぎだろう?
ま、いいか。
頑張ります!
「そうか!エスペランサーか!気に入った!ありがとう」
「えへへー」
「じゃあ次はレイナのね。ルミエールってのはどうよ?」
「ルミエール?綺麗な響き」
「昔の言葉で、光、だ。希望を切り開く者との相性はぴったりだろ?」
いかん、誰か俺の暴走を止めてくれー!
「ルミエール!素敵!決めたー!」
その時、俺とレイナの銃に、サラサラと刻印が打たれた。
穏やかだが力強い字体だった。
エスペランサーとルミエールって書いてあった。
何が起こった?
「わ!モズ、凄い!」
いや、俺は何もしてないけど?
《オズ様。私めです》
雄大な大地を思わせる声がした。
地の精霊王か?
起きたのか?
《いえ、一時的に。そこのヘンリーに呼応したまででして。随分ランド山から遠くまで来られたんですね。エスペランサーとルミエール。いいじゃないですか、貴方は確かに希望です。それでは失礼します。しばらく寝ます》
どいつもこいつも、過大評価し過ぎだろう?
あー、面倒くさい、、、ふふ、久しぶりに面倒くさいと言ったな。
やれやれ、面倒くさいで片付けていた頃が懐かしいな。
いつの間にか、色々背負ったか?
「頑張ろうね!」
眼前ではレイナが光の微笑みをたたえていた。
しょうがないなー。
「おう!」
「よし、メロドラマは終わったか?では試射に行こうか?」
ビル、大物司会者みたいだよ!
俺達は地下の試射場に行った。
ビルが電気を付けた。
前方に的が浮かび上がった。
「まずは俺からいこうか?」
俺はフレームを引き、弾を送った。
風を一帯に込める。
狙いを定めて、引き金を引いた。
ガオーン!
風牙が吠えた。
ズバーン!
弾は的を引き裂いて、壁の防弾壁に当たった。
ズズズ。
防弾壁に切れ目が入って、粉砕された。
「あー!壊したー」
レイナが、いけないんだー風に、はしゃいでいた。
力の加減が、、、(汗)
「す、凄いな。次、レイナちゃん」
「はーい!」
レイナは前みたいに銃を両手で構えた。
光がレイナの手に集まる。引き金が引かれ、撃鉄が落ちた。
ギーン!
ドーン!
壁に手形の穴が空いた。
マジかよ!
まさに光の張り手が炸裂した。
これ絶対食らいたくない類の魔法だな。
「な、なんとまあ、、オズだけじゃなくて、レイナちゃん、君もやはり勇者なんだな。まいった。神の魔法を操るのか」
「やったね!あ、けど、あたし攻撃はこの魔法しか使えないのー!他には色々使えるんだけどねー」
レイナ、今聞き捨てならない事を言ったよな?
まさか、カイロスみたいな才能あるんじゃ?
ふ、深く突っ込まないでいよう。
レイナがこちらを向いた。
銃の煙をフウーって吹きつつ、腰に手を当て、得意気に口を開いた。
「見直した?ダーリン!」
「ああ、見直したよ」
もうツッコむのは疲れたよ。
「やったー!」
何か、、喜んでいる理由は、見直したと言われた事だけじゃない気がしたが(苦笑)
まあ今はこの笑顔が見れたから、それでいいや。
なあ?
とビルを見た。
キャッキャッと飛び跳ねる女の子と、それを苦笑しながら見守る元勇者と、精霊王モドキ。
世界はなかなかにシュールでファニーだった。
読んで頂きまして、ありがとうございました。
何かちょっと勇者の話が出ました。
横綱みたいなもんだと思って下さい。
階級や職業に近いです。
そして、相変わらずなオズとレイナ。
がんばれ!未来の勇者、、、と精霊界のお荷物!




