第七十五話「狙撃」
こんばんは、作者です。
なんとか書けました。
本当はもう少し先まで行きたかったんですが、限界でした。
すいません。
その時だった。
会場のスタッフが青い顔をして控え室に飛び込んで来た。
「た、大変です」
「どうした?」
控え室にいたスタッフが声をかける。
「右側の二階席で倒れてる人がいます。意識不明です」
「何だって?右側の二階席といえば、VIP用の席じゃないか?だ、誰だ?」
「わかりません。とにかく来て下さい」
「俺も行くよ」
バッヂをちらつかせる私め。
スタッフは意図と身分を理解したようで、是非にとお願いされた。
シルフィーは一応オバチャンの護衛として残した。
現状がよく分からないからだ。
俺達はバックヤードを抜けて、二階席へ向かった。
途中の階段付近まで来た時、向こうから走って来る男がいた。
一瞬身構えたが、男は知り合いだった。
「オズ、あ、いやモズと呼ぶべきか?何してるんだこんな所で」
ビルだった。
俺はオバチャンと知り合いで、コンサートに呼ばれた事を告げた。
「なるほどな、確かカイ兄が言っていたな、可愛い彼女がいるとかなんとか」
「ま、まあな。で、ビルは何をしているんだ?」
ビルは、この近くの店で待ち合わせの相手を待っていたそうだ。
だが相手が時間になっても現れず、心配してやって来たそうだ。
「そいつも、このコンサートを楽しみにしていたからな」
なるほどね。
ビルと合流した俺達は、二階席へたどり着いた。
倒れている男の周りには心配そうにしているスタッフがいた。
男は席に座ったままぐったりと横たわっていた。
スタッフの呼びかけにも反応しない。
肩が上下している。
呼吸はしているようだ。
男の顔を見て、ビルが叫んだ。
「フランク!」
「知り合いか?」
「ああ、フランク・ベイカー。運輸局の長官で、俺の待ち合わせ相手だ。な、何て事だ!護衛も付けずに来たのか!?」
マジか!
確か、密輸に関しての情報を手に入れた、とか言っていたが、この人がそうなのか。
口封じか?
フランクは肩に一発の銃弾を食らっていた。
致命傷じゃなかった。
治せるかな?
夜だしな。
「治してみよう」
驚くビルに、簡単に治療魔法の説明をした。
やがて、
「トータルヒーリング!」
淡い光がフランクを包む。銃弾がポロリと落ちた。
しかし、術の途中で妙な抵抗力を感じた。
見ると、フランクの顔色は良くなっていた。
が、意識が戻らない。
「おかしいな」
「ど、どうした?」
「自分で言うのもなんだが、俺の治癒魔法は何でも治せるはずなんだが、何故か意識が戻らない」
「そ、そうなのか?」
分からん。
困ったな。
こういう時は、アイツに聞くか。
おーい、モトユキー?
《見ている》
わかる?
《分からん》
お前でもわからねーのかよ!?
ど、どうすりゃいいんだ。
《見た感じ、何かが、フランクという男が目覚めるのを阻害しているようだ。強制的に夢の中だな。俺より適任がいるだろう?下僕に聞いてみたらどうだ?》
あ、なるほど。
下僕!こちら俺様だ!応答しろ!モルペーウス!
《は、はい!お呼びですかクソ野郎様!》
相変わらずこいつは。
よう!モルペウス!
知恵を貸せ!
得意だろ?
怪我は治れど目が覚めない。これなーんだ?
《なぞなぞですか!?見てましたから。これでも一応神なんで》
あ、そ。
なら話は早いな?
何これ?
「魔法の一種かと。強制的に眠らされているようです」
マジ?
ど、どうやって?
《銃弾に魔法が込められているかと思われます。殺傷する為ではありませんね。敢えて肩を狙っておりました》
撃たれる所も見てたのか?
《はい》
何で止めない?
《これでも神ですから、乞われでもしない限りは人間界には干渉出来ません。貴方も普段はそうでしょうに》
な、なるほど、痛いトコをつくな。
犯人は見たか?
《見えませんでした。嘘じゃありませんよ。正直、歌に見入っておりまして。感じたのが殺気というか、肩を狙う気配でして、あの会場では異質でしたので》
なーる。
てか神も聞きほれるくらいなのか。
《ええ、最高でした》
それは何より。
って、この魔法を解除出来ないか?
《無理ですね。精霊魔法ですからして、貴方のほうが得意でいらっしゃるかと》
ぐっ!
《それではまたー。バハハーイ》
おい!こら!
モルペウスから返答は無かった。
だんだん素が出てきたなあいつ。
「モ、モズ、大丈夫か?考え込んでいるようだが?」
ビルの声で我にかえった。
「あ、ああ。とりあえず安全な場所に運ぼう。命に別状は無いが、起こすには時間がかかるようだ」
「そうか。良かった」
ビルは、やって来た保安官に現場の封鎖と、聞き込み、この席付近の指定席の観客名簿の提出を運営側に頼むと、馬車を用意させ、フランクを運んで行った。
迅速な対応だった。
流石に長官だな。
とりあえず一緒に行くことにした。
シルフィーには一応伝えに行った。
シルフィー達はまだ控え室にいた。
「という訳だから、行って来るよ」
「分かった!頑張ってな!あ、そや、うちら明日の朝ベネーリアに帰るから。とりあえず一旦お別れかもねー」
「そうかー。シルフィーも元気でね」
「うん!ありがとう。オズもな!」
シルフィーはその後タコになった。
こればっかだな(苦笑)
周りのスタッフもオバチャンも慣れたようで、たいして驚かなかった。
「ふふ。頑張ってね。シルちゃんの事はまかせてね。そうそう、いつかシルちゃんの歌を聞かせてもらいなさいねぇ。結構筋がいいのよー」
「へへー」
俺はシルフィーとオバチャンに見送られながら、部屋を出た。
シルフィーの歌かー。
聞いてみたい!
そして、寂しい!
けど、今日は二人にとってかけがえの無い思い出が出来たから、我慢してまた頑張らなきゃ!
走る俺の腕に風車が揺れていた。
ビルは会場の裏口にいた。
夜の闇に赤と青の光が点滅していた。
「お待たせ」
「ああ、行こう」
ビルと俺は御者席に座った。
二人だけだ。
ビルは内通者を心配していたんだな。
懸命な判断だ。
フランクは馬車の中に寝かされていた。
寝息をたてて安らかな顔をしている。
うん。死にはしないようだ、とりあえず安心した。
「オズ、君は何者だ?さっきのは高度な精霊術だろう?いや、ランド王国での事は聞いているが、直にこの目で見ると、やはり驚嘆させられるな」
「何者ってほどでも、俺に言わせりゃカイロスやレグルスや貴方のほうがよっぽど何者だと言いたいよ」
「わはは。確かにな。ま、我々も秘密を抱えている身だ。時が来たらお互い話そう」
「そうだな、というか、まだ偽名でしか自己紹介をしていなかったな。オズだ。テッサの銀髪クソ野郎だ」
「わはは。そうだな。アミタに増やされているそうだな。アミタもカイ兄の血だな。ま、よろしく頼む」
俺とビルは、がっちり握手をした。
「ん?」
「ん?どうした?」
「いや、偉くなっても、銃を撃つ人特有のタコがあるんだなーと思って」
そう、銃を扱うと指や手のひら、指の間に独特のタコが出来る。
「わはは。君はほんとに面白い男だな!カイ兄が言っていた、銃に詳しいと言うのは本当なんだな。そうだ、俺は机の前に座っているのは嫌いでな。会議とか以外は外回りをしているのさ」
「なるほどね」
ビルは愉快そうに笑っていた。
この人とは馬が合いそうだな。
ランド王と似た雰囲気を感じた。
ほどなくしてビルは一軒の家の前に着いた。
「ふむ、まだ付いてくるな」
え?
「尾行されてるのか?」
「ああ」
マジか。
全然気づかなかった。
ビルはそのまま馬車を家の納屋へ入れた。
納屋の中央に地面の色の変わった四角い場所があった。
その上に馬車を停めた。
ビルは馬車を降り、おもむろに地面に手を当てた。
地面がスキャナーみたいに光った。
次の瞬間。
馬車は全然違う場所にいた。
納屋には違いないが、先ほどの納屋じゃ無かった。
「な、何だこれ!?」
「わはは、カイ兄からこれも聞いて無いのか」
「え?」
「なあ、カイ兄の神出鬼没さに驚いた事はないか?」
いっぱいあった。
いるはずの場所にいなかったり、いないはずの場所に現れたり。
「ま、まさか、瞬間移動か?」
「正確には違うが、似たようなもんだ。カイ兄だけが使える。場所はこの大陸内だけ。ついでに言うと、地続きの場所しか移動出来ないがな。わかるか?」
「???」
「わはは。地の精霊と契約したのさ。大地を守る代わりに力を貸して欲しいと願い出てな」
あ、、、。
地の精霊王と会った時、カイロスと何か昔話してたっけな。
これの事か!
原理は何となく分かる。
というか、俺も戦いの時に似たような事をやったっけね。
地面のシャッフルみたいなもんだ。
やれやれ、カイロス。
あんたというジジイは。
「ほう。その顔を見ると、説明する前に理解したようだな。確かに。君は面白い奴だな。まあそういう訳だ。今のはあらかじめ設定した場所同士を、決められた人だけが行き来できるようにカイ兄が作ったものだ。そして、ようこそ俺の隠れ家へ。俺の古い友人の自宅だ。今はお手伝いさんしかいないがな」
ビルは馬車からフランクを降ろして担架に乗せた。
俺と二人で母屋まで運んだ。
母屋にはオバサンが待っていた。
「あらあらビル。どうしたの?アレが発動したから何事かと思って、貴方だったのね?あら?フランクじゃないの!」
「レコニス、説明は後だ、とりあえずフランクを部屋へ」
「わ、分かったわ」
俺達は二階の部屋にフランクを運び込んだ。
そして、一階のリビングに降りてきた。
やれやれ、何とか一息つけそうだな。
部屋は暖かい色のタペストリーや絨毯がひかれていた。
揺り椅子や、民芸品みたいな家具が置いてあった。
大きな暖炉が見える。
落ち着く雰囲気だな。
レコニスさんが紅茶にブランデーを垂らしたものを持って来てくれた。
レコニスさんは、丸い体型にクルクルパーマが特徴的なオバサンだ。
ちびなんとか子ちゃんのお母さんによく似ていた。
ビルは今日あった事、フランクを匿って欲しい事、フランクは眠っている為に自力で栄養補給が出来ないから、補給を頼むという事をレコニスさんに告げていた。
「そういう事ね。任せて!」
だ、大丈夫なのか?
「心配か?」
ビルが俺の頭の中を読んだように話しかけて来た。
顔に出やすいのかな?
「ま、まあね」
「はは!このレコニスに任せなさい。こう見えて、元軍医よ」
ま、まじかー!?
レコニスさんは正確には保安局の軍医だった。
が、惚れた男がいて、その男のそばにいるためにお手伝いさんになったそうだ。その男がこの家の主人にして、ビルの友人なんだそうだ。
ちなみに男はと言うと、レコニスさん、、というか人付き合いに興味が無いらしく、レコニスさんはほったらかしにされているようだ。
なんとまた、、、。
「ま、いいって事よ。好きでやってるんだから」
レコニスさんはニッコリ微笑んだ。
ローラもそうだが、女性は強いな。
彼女は、治癒魔法と点滴を駆使してフランクを看病してくれるそうだ。
さて、どうしようか。
すると、ビルが紅茶を旨そうにすすりつつ口を開いた。
「なんとか安全地帯を確保できたな。さて、フランクに何が起こったんだ?命に別状は無いと言ったが、君は何か気付いたようだが?」
「恐らくは眠りの魔法か何かがかけられている銃弾を打ち込まれているな」
「何!?そうか、、、。銃の事はどれくらい聞いている?」
「大ざっぱには」
「銃には大きく別れて三種類ある。一つは先の強盗達のように、火薬で弾を打ち出すものだ。一般人以外には脅威にはならないな。二つめは、魔力によって打ち出される銃だ。保安官になる者は皆最低限これが出来るほどの魔力が必要なんだ。わかりやすく言うと、Cランクの冒険屋クラスの実力だな」
なるほど、ジョニーズくらいか。
それなら治安維持は出来るな。
「最後は魔力を付加した銃弾を打ち出せる銃だな。炎の弾や氷付く属性の付いた弾をな」
「厄介だな」
「ああ。魔法陣無しで撃てるからな。あらかじめ魔力を弾に込める事も出来るし、発射時に付加出来るやつもいる。いわゆる無詠唱魔法みたいなもんだ」
「うーん、俺が見たのはそれか?」
「ん?何を見た?」
「ああ、アンコールのラストだったかな。反対側の二階席で紫色の光をな。異質だったから、ちょっと気になっていたんだ」
「何!?それが見えるのか?、、、君は凄いな、、、断定は出来ないが、それは銃紋だ」
「銃紋?」
「ああ、弾にもそれぞれ銃によって特徴があるんだが」
「旋状痕だっけか?バレルの中の溝の跡だろう?」
「な!?よ、よく知っているな。そうだ。それと似たように、魔力を使って発射する銃には、撃つ時に持ち主の魔紋が見える、、ま、普通の人には見えないんだがな」
ビルは苦笑していた。
「うーん、銃の話をもっと聞きたいな。構造とか、成り立ちとか。犯人に繋がる何かが分かるかもしれない」
「そうか。そうだな。よし、明日この家の主を訪ねてみるといい。なんせ銃のスペシャリストだからな。偏屈者で有名だが、君なら気に入られるかもしれない」
ほえ?
詳しくは教えてくれなかった。
カイロスみてーだな(苦笑)
今夜はこれにてお開きになった。
馬車は何かの時に必要なのでここに置いて行く事になった。
先ほどの仕掛けで別の納屋に戻った。
足が付くといけないので、尾行に気をつけつつ、数ブロック離れた。
「まあ足が付いても、俺の魔紋以外にはアレは反応しないがな」
とはビルの話だ。
俺も闇の精霊を使って念入りに見張りがいないか確認した。
大丈夫そうだったので、車を出した。
ビルに驚かれ、苦笑されたのは言うまでもない。
ビルを保安局まで送り、ホテルに帰って来たのは明け方だった。
トッドを起こさないように、支配人のゴトーさんに一人部屋を用意してもらって、ベッドに潜り込んだ。
疲れたー。
もう寝よう。
読んでくださいまして、誠にありがとうございました。
さあ、この世界での銃というモノが明らかになって来ました。
次回は色々詰め込みたいです、お楽しみ下さい。




