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第七十三話「マクナイト・マクレガー中佐」

こんばんは、作者です。


マックの語り話、後編です。

それからはただただ怠惰に過ごしたさ。

自暴自棄とでも言うかな。何にも無くなっちまった。


が、ジジイを恨んだりはし無かった。

ああ見えて結構な年だ。

ジジイは常に前線にいる、いつ何があってもおかしくねえ。

ジジイが戦死するとこなんざ見たくなかったのさ。

恨むのは俺の政治力の無さだな。

戦闘以外の駆け引きは苦手でな。


アンジーに初めて会ったのもこの頃かな。


「アンジー。俺を軽薄だと言ったよな。ああなるしか無かったのさ。軍を辞める気概も無い。何より家族がいるからな。かといって軍ではもはや無力だ。だが弱い姿を見られるのは御免だ。なんとか意地を張り通す為に、わざと何でもないフリをして、努めて明るく、粗野に、そう、軽薄に振る舞う仮面を被ったのさ。我ながら道化だよな」


「そ、そうだったのか。すまない」


アンジーは素直に頭を下げた。


「いやいや、いつしか板に付いちまってよ。今じゃこの通りだ」


俺は苦笑混じりにやれやれと両手を広げて見せた。


「ふふ。なるほどな。それが分かったら、むしろいじらしく思えるな。魅力的にもな。それにしても、お前との出会いは武闘会の会場でだったな、あそこで何をしていたのだ?」


武闘会。

アンジーが優勝した。

勇者に選ばれるきっかけになった大会だな。

って、今さりげなく凄い事言わなかったか?

いじらしい?魅力的?

ま、まあいいか。


「ああ、あれか。妹が出ていたからな」


「妹?」


「お前に負けたがな。ブロック戦の準決勝だったかな?水使いのプルミーレ、覚えてるか?」


「あ、、、!?あれがお前の妹なのか!?あ、、、す、すまん。私はなんてことを」


「いやいやいいさ。鼻っ柱だけはいいんだが、慢心し過ぎなんだあのバカは」


そう、我が愛しの妹は、序盤こそマシな戦いを繰り広げていたが、調子に乗ったのか、なめすぎたのか、無謀にもアンジーを散々挑発したあげく、怒ったアンジーにボコボコにされたんだ。

そうボコボコに(苦笑)


「い、妹さんの怪我は平気か?」


「ああ、あんなんでも、水の治癒魔法の力はなかなかだからな。俺達一家はしぶといんだ!それに完全に鼻っ柱を折られて目が覚めたようでな。壁にお前の絵を貼って崇拝してるよ」


「な!?」


事実だ。

毎日壁のアンジーを拝んでいる。

俺が勇者に同行すると決まった時も、付いてこようとして散々ゴネていた。

結局、今のお前じゃ、逆にアンジーの足手まといだとかなんとか言って諦めさせた。

まったく、どこで育て方を間違えたのかなあ、母ちゃん。

ちなみに母ちゃんは生きているぞ。

老いて益々盛んというか何というか。

しばらくくたばりそうに無い(苦笑)


アンジーは顔を真っ赤にして照れていた。


「そういう訳だ、すっかりお前のファンだ。いつか妹に会ってやってくれ」


「フ、ファン!?わ、わ、わ、わ、わかった。それにしてもどうして我々と同行を?軍からの命令だと聞いたが」


「表向きはな、何故俺なのかは今でもよく分からん。ある日ジジイに呼ばれてな」


そう。

武闘会からしばらく経った頃。

今世紀の勇者が決定した。

アーク達だ。

何を根拠に決めたのかは聞かされていないから知りようがなかった。

突然、唐突に王が発表したからだ。


同時期に俺はジジイに呼ばれた。

何だろうと思いつつ行ってみたわけだ。


ジジイの家に着いた俺は扉を開けて中に入った。自宅と言っても過言じゃないほど、毎日訪れた事もある家だ、遠慮はしない。

何故毎日訪れたかは思い出したくも無い。


しかし、ジジイと居間で俺を待っていたのは想像を絶する人物だった。

そう、バレンシア国王だった。


「よく来たな」


「ジジイ!い、いやクルーガー。こ、こちらはまさか?」


「久しぶりだな。何かの式典以来か?マクレガー大尉、いや中佐になったんだったな、おめでとう」


「陛下!ご無沙汰しております。中佐と言っても位だけの窓際ではありますが」


「こら!マック!陛下に愚痴るやつがあるか!」


「はっはっは。よいよい。クルーガー、お前の孫みたいなもんじゃないか」


「ぬ!へ、陛下!」


クルーガーがオロオロする姿なんぞ、そうそうお目にかかれるもんじゃない。

それに、少し嬉しかった。


「マクレガー中佐。単刀直入に言おう。貴殿を勇者兼勇者のお目付役に任命する。以上だ!頑張れ」


「は、はあ?」


「マック、陛下に向かってなんだその口の利きようは。サイゼル!お前もお前だ!説明不足にも程がある!」


サイゼルとは国王のファーストネームだ。

って、おい!


「ジジイ!テメーだって陛下に何て口を利きやがる!」


「マクレガー中佐、構わんよ。とはいえ、ロブ、こういうのはお前から言ったほうがいいんじゃないか?」


ロブ。

ジジイのファーストネームだ。

ロバリエルというのが本当なんだが。


「陛下?ジジイ?」


国王とジジイはニヤリと笑って肩を組んだ。


「幼なじみじゃ!」


「嘘だろー!?」


嘘じゃ無かった。

表向きにはあまり知られていないが、ジジイの祖父も父も宮廷の武術師範だったらしい。

昔から親交があるようだ。

し、知らなかった。


「ジジイ、貴族だったのか?」


「アホか!こんな貴殿がいるか!わしの祖父はな、平民から己の腕一本で宮廷の武術師範まで上り詰めたんだぞ?その昔、あの拳神レグルスと本気で殴り合った事もあったそうだ」


当時、名前と伝説だけは知っていた。

消息不明になった事も。

だが生きているなら会ってみたいとも思っていた。

カイロスが生きているのは、その後ジジイから聞いた。なら、もしやと思っていたが、まさかアンジーの父だったとはな。

アンジーの父だと知ったのは最近だ、テッサで聞いた。

アンジーがぶっ飛ばされたのを見て、戦いを挑むのは止めようと思った(苦笑)


回想シーンにキューバリバーを持ったアンジーが出てきた。


「ちょっと待て、今父の名前が出たが?」


アンジーが驚いていた。


「ああ、俺もよくは知らんが、大昔にな、カイロスやレグルスと、その仲間達がバレンシアを救った事があったそうだ。その時に、レグルスに喧嘩をふっかけたのがクルーガーの祖父だ」


「そ、そうなのか、で、結果は?」


「はは、ジジイの言葉を借りるなら、ボッコボコにやられたそうだが、五体満足で生きていたから引き分けだとレグルスに言われたそうだ」


「ははは。父らしいな。そうかカイロス殿が私を身ごもった母をバレンシアに移したのはその縁か?」


「恐らくそうなんだろう。軍部は糞だが、歴代の国王は名君だからな」


アンジーは納得したようにキューバリバーを飲み干して、お代わりを要求していた。

何杯目だよ!?

ウワバミか!

いや、そうだ、ドラゴンだったか(苦笑)


は、話を戻そうか。


クルーガーの邸宅内で、俺はジジイから話を聞いた。ジジイが引退したのは、本格的に勇者を探す為だった事。

理由はそろそろ勇者が必要になって来たからだそうだ。

それ以上は教えてくれなかった。

ついでに俺も勇者にした事も告げられた。

ついでって何だよ!


「どうせ、退屈な日々を送っておるんじゃろうが?」


「そ、それはそうだが!俺には夢が」


「守る物が国から世界に変わっただけじゃろう?」


「ぐっ!」


返答に困った。

自分には荷が重すぎるとも思ったが、、、。

俺にそれが出来るなら!

と思いもした。

何より一日中座っているよりマシだ。


「夢と言えばもう一つ。偉くなりたいんだろう?ロブから聞いているぞ」


国王が話しかけて来た。


「は、はい」


「勇者は偉くないか?ん?それに晴れて勇者として凱旋出来たら、軍部の急進派の連中に文句を言わせる事も無く、貴殿を史上最年少の元帥に任命出来るが?クルーガーが退任してから、奴らは言うことをなかなか聞かんでな。それに軍部は勇者には懐疑的でな。軍人にはリアリストが多いから突然だがな。また、貴殿を勇者お目付役として放逐出来れば軍部も喜ぶしな。勇者など信じておらんから、いいやっかい払いが出来た、くらいにしか思わんだろうし。人選した余も軍部に恩を売って主導権を握れる。ま、奴らを油断させるだけさせた後、まとめてひっくり返してやるがな、ワッハッハ」


国王は不敵な笑みを浮かべた。


!?


そこまで考えているのか?や、やはり国王の器だな。


「マック。わしは今でも信じている。お前が国を、いや世界を背負って立つ存在になれると。勇者として帰って来れたら、絶対そうなれるはずじゃ。それに、あの日、二人でそう約束したじゃろ?」


クルーガーが小指を立てた。


覚えているさ、クソジジイ!

忘れる訳無いだろう?

あの日、あんたは俺に希望をくれたんだ。未来への生きる希望を。


国王とジジイの話の半分は眉唾ものの話だと思ったが、乗ってやる事にした。

半分だけジジイを信じてみようと思った。


ガキのお守りか、つまらん仕事だが、世界を旅出来る事だけは救いだな。

当初、俺はそう考えていたんだ。


「ま、こんなとこだ」


「そうか」


「たいして面白くも無い話だろ?」


「そうだな」


そうなのかよ!


「マック、聞きたい事がある」


何だ?まだ何かあるのか?


「何だ?」


「我々と一緒に旅をするのはつまらないか?」


!??


、、、、、。


答えようは何通りも出来る。

が、もう嘘はいらないな。


「いや、楽しいよ。毎日ワクワクしてるよ。特にテッサ以降は」


本心だった。

アークも、レイナ、、まあレイナは相変わらずだが、トッドもアンジーも、みんな毎日成長していっているように見える。

行く場所、やる事、見る物、すべてが新鮮だった。

そしてモズ。

彼がその導きをくれる。

意図しているようには見えないがな。


「そうか、良かった。私もお前と旅が出来て楽しいよマック。今日初めて思ったがな」


最後はニヤリと笑いながらだったが、その後俺を見てアンジーは微笑んだ。

モズに見せるような笑顔だった。

胸が締めつけられた。

何だこりゃ?

改めてアンジーは、俺をじっと見つつ口を開いた。


「マクナイト・マクレガー中佐。私はな、新聞や本などで貴殿の活躍や人柄を目にし、耳にする度に、憧れを抱いていたのだよ」


ま、まじか!?

ぶっちゃけ戦闘ならお前の方が遥かに強いんじゃないのか?


「出会えたならば、いつか手合わせをしてみたいとな」


!?

嘘だろー?

勝てる自信ねーよ!


「手合わせって!?夜の方か?それなら今部屋にアークはいないから好きなだけ楽しめるぞ?」


やっちまった。

悪い癖だ。

照れると心にも無い、、無くはないが、下らないおちゃらけに走ってしまう。

それに、俺は憧れを抱かれるような存在じゃねーよ。


「!!」


アンジーが俺の言葉にカッと目を見開いた。


うわー、怒らせた!

殺されるなこりゃ。


「あははははははは!」


!???


アンジーは大爆笑していた。

アンジーが大爆笑?

一回だけ見たことはあるが。

信じがたい光景だった。


「ア、アンジー?」


「あはははは、す、すまない。お前があまりにも誰かと同じ事を言うものでな」


誰か?


「私はそういうのはお断りだ!だが今夜は楽しかった」


アンジーはそう言うと、席を立ち、俺の後ろを通り過ぎた。

香水か?いい匂いがする。アンジーの後ろ姿が遠ざかる。

また胸が締めつけられた。


と、アンジーは立ち止まった。



「だがもし」


背中を向けたまま話しかけて来た。


「もし?」


「もし、手合わせして、私に勝てたら。その時はそっちの手合わせも考えてやらんことも無い、、わよ」


わよ?

って、アンジー!?


「アンジー!?」


「お、おやすみ、マック」


アンジーは振り返る事も無く、耳を真っ赤にしながら、カチコチと、同じ足と手を同時に前に出し、ロボットみたいに歩いて行った。


聞き間違いじゃないよな?


「はは、ははは。まいったな。脈が無いわけでもねーのか。しっかし、果たして俺がアンジーに勝てるのかどうか、、、」


独り言が出ちまった。

けど、いつか勝ってみたい。

理由は、、、何だろう?

上手く言葉に出来ない、と嘘をついておくよ。


やれやれ。

柄にもなく、本心からの話を延々させられたあげく。

柄にもねーこと決心しちまったな。

俺もまた変わって行くって事か?


旅立つ時に、見送ってくれたジジイが俺に言った言葉が思い出された。


「古い言い伝えに、可愛い子には旅をさせよ、と言う言葉がある。愛子をあえて手元から放して、広い世界との邂逅を、沢山の人との出会いを通して子の成長を願う親心を表した言葉だそうだ。意味はわかるな?何?分からんだと?馬鹿者!さっさと行け!」


今は意味が分かるよジジイ。


ま、オレ流に言えば、それなりに頑張ってみるさ。


しかし、明日からアンジーとどんな顔して接したらいいんだ(汗)

困った。

今夜は寝れないぞこりゃ。


「バーテン!もう一杯くれ!ん?違う、キューバリバーだ。連れが飲んでたやつだ!」

読んで頂きまして、ありがとうございました。


いやー、人に歴史ありですねー。


ちなみに、マックの回想に登場した人達が、今後出てくるかは未定です。


オズの気が向いたら、会えるかも知れません。


そして、何故か柄にも無いことを言い、似合わない語尾まで披露したアンジーですが、裏で糸を引いて、、というより教育しているのは、そうあの人物です。

神官と呼ぶには普段はあまりにもチャラいあの子ですね(笑)


ではー。

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