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第六十五話「遠い空の下にて」

作者です。


こんばんは。


今回はちょっと変わった話。

ややシリアスです。


が、ちゃんと後々物語に絡んできます。


それでは本編どうぞ。

おう!元気か!


え?誰って?

俺だ、ランデルだよ。

たまには俺の話を聞いてくれよ。


オズはどうしてっかなー?カイロスの依頼だとか言って、勇者達とアメリア連邦に行ってんだ。

心配だよ。

俺が現役なら、今すぐにも駆け付けたいけどな。

ま、こっちはこっちでのんびりやってるぜ。


そういやアメリア連邦と言えば、天敵というか、ライバルというか、ま、物凄く良く言えば親友というか、そんな奴がいるんだ。

俺が現役の時にしのぎを削った仲さ。

反りが合わなくてよ。

いっつもぶつかっていたが、信頼できる奴だった。

結婚して、子供が出来たとか手紙をよこしたが、ホントかどうか怪しいな。

なんせ、女にはからっきしの奴だったからなあ。

ま、もうお互いいい歳なんだから、まだ現役だとしても、呑気に楽な仕事してるだろうけどよ。

俺の息子、、、まあ息子みたいな奴に会ったらよろしく頼むわ、エバンス!


そうそう、エレーナもオズもシルフィーちゃんもいなくなった家はガラーンとしてるけどな。

だけど不思議と寂しくねーよ!

あいつらもあいつらなりに頑張ってるからな、俺も出来る事をやるだけさ。

なあ母ちゃん!

俺は隣で残飯を片付けているローラを見やった。


「うるさいねえ、さっさと皿洗っておくれよ!台所が片付かないじゃないか」


母ちゃん、、、。

聞こえてたのかよ!

はい。洗いますよ。


「ふふ。心配性だねえあんたも」


母ちゃんは片付けの手を止めて、俺を見た。


「し、心配なわけないだろう?俺の娘。それに俺の息子と彼女、俺の家族だぞ!うまくやるさ」


「ふふ、そうだねえ、何だっけ?ランデル家の一員に?」


「弱いヤツはいない!」


胸張ってそう言えるよ。


「さあ、くっちゃべってないで皿洗いに精をだしな!客人達がたらふく食べて帰ったからねえ、終わったら一本つけるから、がんばりな!」


「わかった!わかったよ母ちゃん」


俺は皿洗いに没頭した。


客人か、破天荒というか、凄い男達だったな。


しばらくの後、俺は愛する家内、、、いやなんというか、そんな柄じゃねーんだが、いかん!オズのヤツのクセが移っちまったな。


「ふふ。嬉しいよ」


な!?

止めよう、母ちゃんは何でもお見通しだ。


俺は母ちゃんに酌をしてもらいながら酒をすすった。


「あの人達、オズの知り合いとか言ってたけど、どういう知り合いなのかしらねえ」


「さあな。ま、嘘じゃないだろう。オズみたいに滅茶苦茶な男達だったなあ。けどあの男、一番デカい男は真の武人だな」


「なんでわかるのさ?」


「武人同士だからな」


「はっ!日々呑気にウサギ狩りに精を出してる男が、今更何言ってんだか」


母ちゃんは俺のTシャツを見ながら笑っていた。

ん?ああ、例のTシャツだ。せっかくプレゼントしてくれたんだからな。

着てるよ、アイツらの前じゃあ恥ずかしくて着れないがな。


そうそう、客人が来たんだ。

あれは今日の夕方だったかな。

いきなり村の若いヤツが俺の家にやって来てよ。


〜〜〜〜〜


ん?夕方17時を過ぎたか、そろそろ母ちゃんの夕飯作りを手伝わないとなあ。

よっこらしょ。

俺はリビングのソファーからゆっくり立ち上がった。

今日はルースの修行は休みだ。

あいつはテリーと街に行っていた。

親子でギルドの依頼を受けるんだとよ。

まったく、テリーも少しは年齢を気にしろってんだ。

ま、気持ちは分かるがな。

さて、仕事するか。

台所の母ちゃんに声をかけようとしたその時。


玄関のドアを激しく叩く音がした。


「ランデルさん!ランデルさん!」


何だ?

俺は台所から顔を覗かせた母ちゃんを制して、玄関のドアを開けた。

目の前には村の若いヤツが窮したような青い顔をして立っていた。


「どうした?」


「ランデルさん!村長がお呼びです。至急村長宅にお越し下さいとの事です」


「そ、そうか、何が起こった?」


「分かりません、ただ村長が、至急ランデルさんを呼べと」


若い男は、何も知らなかったようだ。

どうするか。

俺は台所を振り返った。

母ちゃんが頷いていた。

ふむ。

まあ行くだけ行くか。

火急の用事の様だったので、とりあえず槍を持って家を出たわけだ。


俺は若いヤツと一緒に村長の家に向かった。

村長は家の戸口で俺を待っていた。

村長にしては珍しく、気色ばんだ顔をしていた。


「村長!どうした?」


「話は道すがらしようかの。とりあえず、わしについて来い。あ、それからヤシーノ、お主はもうよい。家に帰りなさい。わしの晩酌の相手が見つかったからの!」


村長の言葉に、やや呆れた顔をしながらも、ヤシーノは帰って行った。

だが俺にはわかった。

今日の村長は普通じゃない。

昼行灯の顔の裏側に、並々ならぬ決意が垣間見えた。

村長は足早に村の門を抜け、裏にある丘へ向かっていた。


「村長?」


「ああ、すまんの。村の者に心配をかけたくなかったからの!」


「何が起こった?」


「アレに近づく者がおる。気配はまだ読めん。だが悪意ある者じゃ」


「ま、まさか?」


アレと言うのは、村長が人生を捧げて守っているモノだ。

まあ人生を捧げた割には、妻にも娘にも恵まれていた事が最近判明したがな。

しかも、その可愛い娘と、俺の息子が旅をしていると来たもんだ。

何も無きゃいいが。あったら俺が村長に殺されちまうからな(苦笑)

村長が守っているモノが何かは、俺の口からは言えん。

時が来たら話そう。


が、そんな大切なモノに脅威が迫っているらしい。

だがどうしてだ?

アレは大事に隠蔽して来たハズだが?


俺達は村の裏側、山の中にある盆地へ向かっていた。


「村の者を巻き込む訳にはいかんからの、まあ巻き込んだところで、アレを狙ってくる輩に歯が立つとは思えんがの、運悪くテリーもルースもおらんからの」


「で、俺って訳か」


タイミングが悪いな。

ちょっと前ならオズもシルフィーちゃんもいたのに。

俺は唇を噛んだ。

と、同時に不思議な感情が湧き上がる。

どこか懐かしい感情だった。


「ふも!血が騒ぐかの?」


村長がにんまりと笑った。


「不謹慎なのは承知している」


そう、半ば引退したとは言え、これでも槍一本で世界を渡って来た。

やれやれ、スリルを楽しむとか、もうそんな歳でも無いはずだがな。


「お主もテリーも、最近は年甲斐もなく若返って見えるの!」


「人の事が言えるのか?」


「ふぉっふぉっふぉっ。まさかわし自身が我が子から力をもらうなんて思ってもおらなんだ、わしにはお主とローラで充分だと思っておったがの、、じじいになっても人生は」


「驚きの連続だな。それにお互い弟子の手前、無様に敗戦できないしな」


「ふぉっふぉっふぉっ。そうじゃのう」


説明はいらないな。

会話がすべてだ。

守ってると思った者に、自分もまた守る力をもらっていると気づく。

最近、本当にそう思わされた。

やがて俺達は盆地に到着した。

ルースに槍の修行をさせていたあの盆地だ。

ここは刈っても刈っても草が生えてくる仕組みになっているからな。


日はすっかり落ちた。

俺達は月明かりに照らされた闇の中に立っている。

虫の声が聞こえた。

夜風は肌寒さを感じさせた。


「ふも。来おった」


虫の音が止んだ。

闇を引きずるように、森の中から何かがやって来た。

やがて、林を抜け一人の男がこちらへ歩いて来るのが見えた。

黒い法衣を着ていた。

木々の間を抜けきった所で男は俺達に気付いた。

若い男だった。30歳くらいか?黒髪にメガネをかけた神経質そうな容貌をしていた。


「おやおや、お出迎えですか?ご苦労様ですね」


男が慇懃に声をかけて来た。


「こんな所で歓迎会とは申し訳ないがの」


「何者だ!」


男と村長が声をかけた。


「あなた達のような、ただの村人が知る必要はありませんがね、ま、私はこのようなモノを集めていましてね」


男はチラリと盆地の中心を見た。

知っている。こいつはここに何があるのか。


「集めてどうするのかの?こんなガラクタ」


「どうやってここを見つけた?」


「ふふ。ガラクタでも価値の分かる者にとっては宝物ですよ。ここを見つけたのは偶然です。ちょっと大陸を横切っておりましてね。さあさあ、話はおしまいです。怪我をしたくなければお帰りなさい。命までは取りませんよ。民間人に手を出すほど私は非道ではありませんからね」


ふむ。

何者かは分からないが、狙いはコレか。

男はそれっきり俺達に興味を失ったのか、話は終わりだと言うように、盆地の真ん中へ向かった。


「待て!」


男は俺の声に立ち止まり、顔だけをこちらに向けた。


「おや、まだいたんですか?集中出来ないので、帰るか死ぬかしませんか?」


「ふも!どちらもお断りじゃ!それには近づかせん」


「ははは。面白いおじいさんだ。会えて良かったですよ。さようなら」


男は手に持った杖を面倒くさそうに振って、また盆地の中心に向かって顔を戻した。

ノートを取り出して、何やら見ていた。


男の後方には、杖の一振りにて魔法陣が展開されていた。

魔法陣の中から、錆び付いたようなくすんだ赤い皮膚を持つ人型の犬のような魔物が二体出てきた。

ハウンドロードか?

言葉を操り、エルフや竜人のように、人と同じくして暮らす犬人族とは違う。

こいつらは魔物だ。

猿と人のように、似てはいるが、知能や身体的特徴が違う生き物だった。


「グルァアア!」


ハウンドロードはうなり声を上げて襲いかかって来た。

次の瞬間。森にハウンドロードの声が響いた。


「グギャオー」


「まったく君たち犬はうるさいですね。静かに殺しを楽しめないのですか?」


男が振り返った。

だが男の表情は目の前で起きていた事を瞬時には理解しがたかったように、醜く歪んだ。


「な、、、!?」


「おや、また会ったのう!」


「悪いな!まだいて」


俺と村長の前にはハウンドロードの死体が転がっていた。


一匹は顔の真ん中と心臓の辺りにドカ穴が開いていた。

もう一匹は頭と胴体があらぬ方向にねじ曲げられていた。

ま、どっちがどっちをやったのかは分かるだろ?


「バ!バカな、ただの村人にハウンドロードが倒せる訳が!」


「すまんのう!こちらとて只のじじいと」


「ちょいワルオヤジって訳じゃねーんだよ」


驚く男に、ニヤニヤと笑った俺と村長の言葉が浴びせられた。

まだまだ若いヤツらに引けはとらねえよ。


「なるほど、ただの守り人ではないようですね。面倒だ。一気に片付けるか」


男は今度は丁寧に杖を振るった。

魔法陣から出て来たのは、黒い鎧を纏った騎士だった。

立派な鎧だった。

肌が露出している部分は黒い煙のような物体で覆われた身体が見える。


手には禍々しく黒光りする金属の鞭が握られていた。


「ダークパラディンか!」


前に一度遭遇した事がある。強敵のモンスターだ。

由来はよくわからない、元は高位の騎士だったとも、最初から魔物だったとも言われている。


「ふふふ。凄腕の冒険屋でも、苦戦するような魔物です。切り刻まれるがいい」


男は満足そうに笑い、こちらを向いた態勢のまま、盆地の中心へ滑るように移動した。

まずい!封印を解く気か?だが。


「いきなり王手は無しじゃろう?」


男の背後から、急に村長が現れた。


「くっ!」


男は村長の手刀を辛くもかわし、距離をとった。


村長はその様子を見ると、空中で坐禅を組んだ。

緑色の光が村長の周りを八角形に包んだ。


「な!?魔法防壁か!」


「ふぉっふぉっふぉっ、小僧。わしは魔法はあまり得意ではないがの、まあちょうどいいハンデじゃ。お主にこの防壁が破れるかの?」


「お、おのれー!なめるなよー!」


男は魔法陣を発動した。

黒い電撃を纏ったような闇が村長の防壁を包む。

圧倒されるような魔力同士のせめぎ合いが始まった。男に先ほどまでの余裕はない。

額を歪め、汗をかきながら魔法を操っていた。

村長、頑張ってくれ!


俺はダークパラディンと対峙した。

パラディンは丸めて持っていた鞭をダラリとたらし、地面を一打ちした。

地面がえぐれた。

ちっ。

この歳になって、こんな化け物と戦う事になるとはな。

致し方ないか、久しぶりに全力だ。


パラディンは鞭を八の字にヒュンヒュン回しながら突っ込んで来た。

試しに地面の小石を牽制代わりに槍で払ってみた。

粉砕された。

子供騙しは通用しないか。


俺は腹に力を込め、半身に構えた。

そこからゆっくり息を履く。

パラディンは目の前まで来ていた。

やがて時間がゆっくりと流れ出した。

命のやり取りをする時に、よく体験した時間だ。

ヒュンヒュンと聞こえていた音が、

ヒューン、、ヒューン、、と遅くなる。

狙うは一点。

そこだ!


俺は八の字が交錯する場所。鞭の軌道外の中心点に全力の突きを放った。

しかしパラディンは身をよじってよけた。


時間の流れが元に戻った。俺の槍に、横からシュルシュルと巻き付く鞭。

いきなり空中に引っ張り上げられた。

な、なんて力だ。

思わず槍を放してしまう。しまった!

しかし代わりに鞭を掴んだ。無防備なままで空中に放り出される訳には行かない、せめて鞭を!

俺はそのまま空中を舞い、地面に叩きつけられた。


「グハッ!」


どこか折れたか?

歳はとりたくねーな。


また空中に引っ張り上げられる。

パラディンは俺が鞭を放した時を待って、トドメを刺そうとしているようだった。

鞭はギザギザしていた、手が血だらけになって、感覚が無くなってきた。


く、くそ。

まだ死ぬわけにはいかない。


再び叩きつけられて、間髪無く持ち上げられ、地面に叩きつけられる瞬間、俺は空中で態勢を変え、残っていた力を全部足に回して着地した、そのまま身体を後方へ倒し、衝撃を全部鞭へ逃がした、全ての力がパラディンへと返った時、俺はてこの原理で鞭を引いた。

イテテテテ、ちぎれる!


手の痛みに気が遠くなりそうになった時、パラディンの身体が宙に舞った。

俺はそのまま半円を描くようにして、パラディンを地面に叩きつけた。

パラディンの手から鞭が離れた。


今だぞ!


俺は鞭の持ち手を引き寄せて、握った。

そして、そのままパラディンとは違う方向へ鞭を一振りし、ある物を引き寄せつつ、パラディンへ突進した、パラディンはヨロヨロと起き上がっている最中だった。

俺は鞭が引き寄せたものを掴んだ。

俺の槍だ。

パラディンに向けた槍の先端を地面に突き立て高跳びし、俺の身体は空中に浮いた。

着地する勢いをそのまま全部槍に伝えた俺は、上段から振り下ろした槍で、パラディンを真っ二つにした。


パラディンは黒煙を吹き上げて消滅した。


「ば!ばかな!ダークパラディンが敗れるなんて!く、くそ、だがまあいい、これでこっちに集中できる。あの槍使いはもう戦闘不能のようだからな」


くそ!

悔しいがその通りだ。

もう鼻くそをほじる元気もねーよ。

すまん、村長、後は頼む。俺はその場に崩れた。

意識はあるが、もう動けねえ。

読んで頂きまして、ありがとうございました。


おっちゃん強いっすね。


ちなみに腕が鈍ってなくて、鎧を着けていれば、ここまで苦戦しませんでした。


あと、オズが旅路で会ったエバンスは、おっちゃんが言っていたエバンスと同一人物です。

オズが彼にランデルを見たのも納得ですね。


さて、おっちゃんと村長はどうなるのか?


次回に続きます。

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