第六十一話「カス先生、渾身の他力本願」
こんばんは、作者です。
啖呵をきったオズ。
さてどうするつもりなのか?
ては本編どうぞー。
拝啓シルフィー
元気かー?
俺のほうも今まさにリザードマンに囲まれてる以外は元気だよー。
昨日はリリエンまで来たって書いたよね?
今日はギルドの依頼やってるんだー。
カイロスの依頼とかけもちなんだけど、規則違反だよねー。
それはさておき、シルフィー歌の稽古し出したって書いてたけど、相変わらず唐突だよねー。
いつか聞かせてねー。
あ、そうそうヒポグリフに会ったよー。
かわいいんだー。
じゃあねー、リザードマンが剣向けて突っ込んで来るから、この辺で失礼するよ、身体に気をつけてねー。愛してるよ。
オズより。
これでよしっと。
さて、何してたんだっけ?
あ、そうだ。
俺はマードに啖呵を切ったんだ。
マード達はジリジリと距離を詰めて来た。
なぶり殺しにするつもりだろうなー。
正直さっきの奴らの強さをみると、三分じゃ厳しいかなー。
先頭のリザードマンが突っ込んで来た。
俺は短剣を抜いて、その上段からの振り下ろしを左で受けた。
右へリチャージした力で胴を右から払う。
トカゲ野郎はバックステップでかわした。
「くっ!危ないな、こいつのどこにこんな力が」
トカゲ野郎の鎧には切り傷がついていた。
皮膚までは達していなかった。
俺の力じゃなくて、ほぼこいつらの力を流用しただけだ。
逆に言うと、切られたら痛いな。
「見かけよりはやるな。こいつは妙なヤツだ。油断するな、囲んで殺せ」
マードが言う。
ちょっと!
囲むとかさー!
「ひ、卑怯だぞ!」
だがマードはニヤリと笑った。
「戦いに卑怯もクソもあるか。所詮ニンゲンなどゴミみたいなもんだ」
うー!
最悪だ。
チラッとトッド達をみた。彼は動けそうにない。相当無理していたようだ、足をさすりながら座り込んでいた。
レイナはトッドに寄り添うように俺を見守っていた。
トカゲ野郎が三匹出てきた。
うう、、、。
指輪には頼りたくない。
あ、そうだ。
地の精霊王!一瞬だけ頼むわ!
聞こえたかな?
三匹が一気に間合いを縮めた。
先頭のヤツが突きを放つ。俺は左にかわす。
そこへ左のヤツの斬撃が来た。
それを両手の剣でバッテンにして受けた。
「バカめ!がら空きだ!」
右のヤツが俺の側背面から来る。
よし、今だ!
グラウンディア・ヨーン
大地に小さな穴が開いた。
ズボッ!
右のヤツが落ちた。
「な!?」
トカゲ野郎達が驚いていた。
ざまあみろ!
井の中の蛙、トカゲめ!
【グラウンディア・ヨーン】
大地の欠伸。廉価版スクリームだな。
しかし、二陣がやって来た。
マードだ。マードは乱戦をかいくぐり短いステップで切り込んで来た。
というより、先頭のリザードマンを手で押して、俺にぶちあてた。
俺の右の短剣が手から飛んだ。
あ、しまった!
そして、俺にぶつかってきたリザードマンの背後、死角からマードが出てきた。武器の無いほうからの攻撃。
クソッ!間に合わない。
俺はとっさに手で防いでしまった。
あ、やっちゃった!
俺の右手首が宙を舞った。
俺はバックステップを繰り返して距離をとった。
「モズ!」
「きゃあああー、モズーー!」
トッドとレイナが叫んだ。
「ざまあないな!ゴミ野郎」
勝ち誇るマード。
油断した。
というか出し惜しみした結果だ。
なんというか、情けないな。
「い、痛いじゃないかー!!」
正直な感想だった。
が、俺の言葉に敵味方全員が固まった。
あれ?何で?
「ふはは。虚勢もそこまでいくと滑稽というか、見事だな、手が無くて、どうやって戦うというのだ」
マードは愉快そうに笑った。
見下した笑みだった。
「モズ!モズー!ま、待ってて、今治療するから!」
レイナが無理に動こうとした。
「いらん!レイナはじっとしていろ」
「だ、だってモズ!血がいっぱい出てる!」
傷口は赤い鮮血に染まっていた。
ぅぅ。痛いよママー。
コート脱いどいて良かったー。
袖のハートが切られるとか縁起でも無いよ。
「平気だ。かすり傷だ」
痛いよー(泣)
ついつい膝をついて押さえちゃった。
「ふはは、まあいい、死ね!」
マードは俺にゆっくりと近づいて来た。
もはや油断しまくりだ。
動かない俺の前に立った。緩慢な動作で剣を振り上げた。
今だ!
俺は立ち上がりつつ、思いっきりマードを殴った。
右ストレートで。
「な!!」
「え!?」
吹き飛んだものの、やや離れたところで起き上がったマードと、レイナ達が驚いていた。
「き、貴様!その手は!」
俺の手首には、ちゃんと手が付いていた。
「ウケケ、再生能力はお前らの専売特許じゃないんだぜー」
「ば!バカな!ニンゲン風情が何故!?」
バカめ!
ニンゲンじゃねーよ!
あ、思い出した?
俺、精霊王モドキ!よろしくね!
元々、マナで身体を構築してるんだ。
切られたところで痛いだけ、あ、血は出るよ。
「モズ!貴方って、、、変態?」
「違うわ!」
レイナ!
なんだその感想は、傷つくよ。
ってあらら。
立ちくらみがした。
今ので指輪の力をほぼ使い切っちゃった。
これ以上動いたら、俺が消滅してしまう。
あーあ、出し惜しみするんじゃなかったなー。
一矢報いたものの、依然ピンチには変わりなかった。
そんな俺の様子を見て、マードが笑った。
「ふはは、驚かせやがって、今のが最後の力だったようだな」
図星です。
「心配するな、三人仲良くあの世で暮らせ」
断る!
神の世界なんか、まっぴらごめんだ!
ん?神の世界?
あ、、、。
ひーらめいたーひらめいたー!
そうそう、あったあった、切り札が。
俺は上を向いて、下僕に声をかけた。
あー、こちら俺。
見てるんだろう?
さっさと返事しろ、クソ神!下僕!
ややあって返事があった。
《ご、ご主人様。お、お久しぶりでごさいます。クソ神は言い過ぎです。私をお呼びですか?》
おー、久しぶりだなモルペウス。
そうモルペウス。
村人失踪事件の犯人にして、俺の下僕。
確か誓約書にそう書かせた。
《よ、よく覚えてやが、おいでで、いやー光栄です。で、どういった御用で?》
モルペウス。お前の亡者というか、なんかいただろ?エグいの。
あれを貸せ!
《は、はい?》
バカか貴様!
さっさと俺を助けろ!
一応考えがあるんだ、兵を少しこちらへよこせ。
キモくて強いやつな!
助けを求めるには、あまりにも偉そうなのは認める(苦笑)
《わ、わかりました。ゲーゼと部下をそちらへやります》
よし!
エラいぞ下僕!
《く、クソッ悪魔め!弱みさえ握らてなければ》
何か言ったか?
弱みを握られて無かったとして、貴様が俺に勝てるのか?
ん?ああ?こら!
《ひぃっ!わ、わかりました》
早くしろ!
そうそう、味方ってわかるようにしとけ、ガーゼだかなんだか知らんが、間違って殺してしまうと困る。
《ゲーゼです殿下!わ、わかりました。もー、何て神使いの荒い人だ、今送りました。それでは失礼します。死ね!鬼!悪魔!オズ!》
モルペウスは悪態をつきながら通信を切った。
最後の三段活用は何だ?
今度会ったらぶっ殺してやる。
さてと。
俺はマードに視線を戻した。
マードは上を向いていた俺を見ていたようだ。
「ふん。お祈りは終わったか?神は助けてくれんぞ」
「まあな」
マード達がこちらへ向かって来る。
「レイナ!」
「トッド!」
レイナとトッドは抱き合って震えていた。
うらやましい。
その時だった。
「グギャオワー」
「ひぃっ!何だこいつら、うわ、ギャアー」
一番後方のトカゲ野郎が肉片に変わった。
「な、何だ!?あ、あれは!一体?何なんだ!」
マードが振り返り、この世の終わりのような声で呆然と言い放った。
そらそうだろう。
とんでもないのがいたからな。
そこには、皮膚の剥がれたゴリラみたいな魔物が二体。
身体はよどんだ茶色をしていた。傷だか汚れだかで小汚い。
しかし、恐ろしくマッチョだった。
むき出しの筋肉が脈動していた。
キモチワリー。
下半身には布をまとっていた。
当然だ!放送できんわ!
頭には角が生えている。
目には目隠しみたいなものが装着されていた。
うわー、えらいのが来たな。
その二体にトカゲ野郎はバラバラにされたようだ。
そして、その二体の後方からもう一匹。
やや細身の、ドラゴンみたいな直立歩行の魔物が一体歩いて来た。
黒い鎧を装着している。
頭まで覆われていた。
赤い目が光り、裂けた口からは紫色の口内が覗いていた。
ゲーゼか?
まるでド○を二機従えたキュベ○イみたいだな。
「なんだ!なんなんだよー、もう終わりだー」
「ふわーん!あたし、あたし、まだ死にたくないー」
レイナとトッドは泣き叫んでいた。
あまりにショッキングな光景だもんな。
二人を安心させる為に声をかけた。
「いや、あれは味方だ」
「はあ?あれのどこが味方なのよー!あんな化け物!えぐっえぐっ」
レイナが泣きじゃくりながら抗議した。
「いや、、ほら、、そう書いてあるじゃん」
「え?、、、あ、、、え?えええええー!?」
トッドとレイナが完全に固まっていた。
ま、あれは無いな。
分かりやすくていいが。
もはや苦笑するしかなかった。
ワザとなのか、焦ったからなのか、モルペウスはやらかしてくれていた。
三体の魔物の胸に、黒いマジックで【モズの味方】って書いた白いゼッケンが付けられていた。
ゼッケン付けた魔物とか、シュール過ぎる!
運動会かよ!
てか、モルペウス!
何やっとんじゃー!
《す、すいません。急過ぎて他に何も思いつかなくて、ですが、ちゃんとモズと書いておきましたよ、ぷぷ》
確かに、それはファインプレーだな。
てか、笑っただろ?今笑ったよな!
モルペウスからは返信は無かった。
半分天然で、半分ワザとだなあの野郎!
そこからは、まさに殺戮の宴だった。
【モズの味方】のゼッケンを付けた怪物が、暴れまわった。
剣も槍も通用しなかった。手や足をもぎ取られて、絶叫するトカゲ野郎達。
ちょっと気の毒なくらいだった。
マードは逃げようとしたが、ゲーゼに捕まって、頭をもぎ取られた。
頼もしい援軍だった。
ま、トッドとレイナは凍りついていたけどね。
トカゲ野郎達の絶叫が止んだ。
あっという間にかたがついた。
一帯には、トカゲ野郎達の何かがバラバラになって転がっていた。
戦闘を終了したモルペウスの兵達がこちらに歩いて来た。
「ひっ!」
トッドが悲鳴を上げた。
返り血にまみれた魔物達。
先頭がゲーゼかな?
さすがに怖いぜー。
「モズ様?」
ゲーゼが口を開いた。
意外に細い声質だな。
てか、え?しゃべれんの?
「うわ!しゃべった」
レイナが驚いている。
俺もびっくりした。
意思疎通ができるなら、とりあえず話しかけてみよう
「そうだ。モズだ、君がゲーゼかな?てか、しゃべれるの?」
「はい、仰る通りゲーゼです。先頃は主がお世話に、というよりご足労をおかけしました。もちろん喋れます。ちなみにモズ様のリクエストで、このような姿になっているだけで、普段は違う姿をしています」
トッドとレイナの白い視線が痛い。
俺の趣味と違うわ!
「俺のリクエストって!俺の趣味みたいに聞こえるじゃんか!細かく設定したのは、お前らの主だぞ!もー!と、とにかく、俺の仲間が怖がるから、出来れば普段の姿に戻ってくれる?普段の姿が、今よりマシならね」
もっと人外になられたら困るけどね。
「わかりました、ご趣味に合うかわかりませんが」
だから!
趣味じゃねーっての!
ゲーゼ達の身体が光った。
「えー!」
俺たちの叫び声が、静まり返った森に響いた。
光が消えた。
そこにいたのは、青い髪のショートカットの美少女が二人。メイド服に身を包んでいた。
そして、黒いサラサラヘアーの美少女。ブレザーとチェックの超ミニスカート、紺のハイソックスにローファーを履いていた。
女子高生じゃん!
元ゴリラと、ゲーゼだ。
三人とも、なかなかの美少女だった。
華奢な身体にキュッと締まった腰がなまめかしい。
後ろでトッドが
「はぅわ!」
と溜め息をもらした。
しっかし、もはや、何からつっこんでいいのかも分からないよ。
「女の子なのか?」
「人間の性別でいうなら、そうです」
「それが普段の格好なの?」
「大抵はそうです」
「メイド?」
「はい。後ろの二人は、主のメイド達から選抜しました」
「君は?」
「わたくしは主の私兵の一人です」
「なんで女子高生の格好なの?」
「わたくしの趣味です」
「趣味かよ!」
すげー、ちょっと顔を赤らめながらも、ゲーゼはキッパリ言い切りやがった。
「それでは任務も達成いたしましたので、これにて失礼いたします。また何かございましたら、ぜひわたくしをご指名くださいませ。お会い出来る日を楽しみにお待ち申し上げております」
ゲーゼ達は深々とお辞儀をし、恐らく道に迷ってしまった俺達に、帰り道を書いた地図をくれると、スカートをなびかせて帰って行った。
ご指名って、キャバクラかよ!
にしても、クソ神には過ぎた部下だな。
あー、疲れた。
俺はタバコに火をつけた。ゆっくり吸い込んで、ふぅー。あー、うまい。
トントンと背中を叩かれた。
ん?
振り返ると興奮した顔のトッドがいた。もう立てるみたいだ。
けど、なんでこんなテンション高い顔してんだ?
「なあ!なあ!先生!先生!今の!今の何?何?先生の召喚獣?」
おや、先生にランクアップしたぞ。
「召喚獣と言えば召喚獣みたいなもんだな。正確には俺の下僕の部下だな」
「すげーなー!今日は色々すげーよ先生!あ!今日から先生と呼ばせてもらうわ。先生が弟子取るような人じゃないのは気付いてるし。俺も師匠なんて言うの恥ずかしいし。だから先生って事で。な?いいだろ?先生!」
トッドは見たことのない顔で、目をキラキラさせていた。
ま、まあいいか。
こいつもヒポを乗りこなしてもらわないといけないしな。
「わ、わかった。けど、特に教える事も無いぞ?」
トッドはちょっと考えてから、発言した。
「わかってるって!背中を見て覚えろって事だろ?深けー!深けーよ先生!」
なんか派手に勘違いしてるけど、まあいいや(苦笑)
シルフィー。弟子が出来たよー(笑)
トントン。
また俺の背中を叩く人。
振り向くと、コワーイ顔をしたレイナがいた。
い、いつの間に背後に?
ゴゴゴゴゴ!
神様ー助けてー!
って、何で怒ってるんだ?
「モズ!心配したんだからねー!何よその手!不死身なら最初から言ってよね!」
あ、、、!
忘れてた。
「ごめんね、けど不死身じゃないよ、斬られたら血も出るよ。斬られ過ぎたら死ぬよ」
嘘じゃないよ。
最後のは嘘かな、死にはしないけど、この世界から消滅しちゃう。
「そ、そうなんだ。じゃあ一応心配は必要なんだねー」
一応って何だ?
「それに、手を再生するので力使い果たしたから、あいつらを召喚出来なかったら、負けてたよ」
嘘じゃない。
ま、リミッターピアスを外したら勝てたけど、そうなったらこの世界にはいられない。
「そっかー、頑張って守ってくれたんだ、ありがとう」
レイナは笑顔になった。
素敵な笑顔だった。
この子、今みたいなのと、普段のチャラいの、どっちが本当の姿なんだろう。
「あ、モズ。あのね、ずっと気になってたんだけど、、グールと戦って」
「先生!腹減った!もう帰ろうよー」
ナイストッド!
レイナの話の腰を折るようにトッドが割り込んで来た。
「ちょっとトッド!今大事な話をモズに」
グー。
三人のお腹が同時に鳴った。
顔を見合わせて、赤面する俺達。
「か、帰ろうか」
俺達は街へ向かって山を降りた。
帰りは三人並んで歩いた。
「先生ー、俺肉食いたい!ゴチになります!」
「モズあたしもー。モズのおごりでー」
「たかる気か!」
「もちろん!」
「うふふー先生は生徒に優しいものよー」
やっと仲間になれた気がした。
読んでくださいまして、ありがとうございました。
いやー、また人頼みですねーオズは。
神様までこき使う始末でした。
ちなみにオズは不老不死ではありません。
病気にもなります。
寿命もあります。
ただ、ゴキブリ並みの生命力には間違いないです。
再生能力に関しては、手を切られたくらいでは死にません。
え?首?
やってみないことにはなんとも(苦笑)
さて、次回はいよいよ、アメリア連邦へ行きますー。
ご期待下さい。




