第四十八話「もはや何のひねりも無い!これはデートだ!」
こんばんわ。
相変わらずのほほんと話は進みます。
たまにはいいかと、え?いつも?
知りません(笑)
次の日。
俺達は家族でテッサに出かけた。
何故か?
冬物の服をローラが欲しがったからだ。
いくつになっても女性はファッションにうるさい。
あとは、シルフィーとデートする為だ。
よく考えてみたら、シルフィーとはまともにデートした事無かったからな。
それに家族で出かけるとか、たまにはこんな平和もいいもんだ。
雲一つ無い快晴の空の下を、俺の車が走っていた。
シルフィーは助手席でサンドイッチを食べつつご機嫌だった。
朝食はみんなでサンドイッチを作った。
ローラにはゆっくりしてもらった。
エレーナが嫁いでから、ローラの負担が増えたからだ。
最近はおっちゃんも率先して皿洗いとかするらしい(笑)
おっちゃん!旦那の鏡だな。
「はいオズ!あーん」
「あーん」
「こらっ!前!前!」
おっちゃんの言葉に前方を見た。
危うく馬車に突っ込む所だった。
あぶねー!
おっちゃん達は後部座席で、これまたサンドイッチをパクついていた。
あーんとかしてたかって?
おっちゃんの名誉の為に口は閉ざしておくよ。
「あー、そうだ。おっちゃん、これ渡しとくわ」
俺は銀行のマジックカードを渡した。
前に説明した、カイロスが作ったクレジットカードモドキだ。
「な、なんだ?何で?」
「親孝行!気にせず使って、ローラだけじゃなくて、たまにはおっちゃんもお洒落しないとね」
「ぬ!い、いらん!」
「あんた!素直になりなよ!ふふ、ありがとね、オズ」
「いいって、俺の育った国では、一人前になって、初めて給料を貰ったら、親になんかプレゼントする習慣があるんだよ」
育った国ではなくて、ニホンなんだがな。
「そ、そうなのか?俺の国と逆だな」
「あー、それで俺に短剣くれたのか?」
「ああ。そうだ。そうか、、、。わはは。じゃあ遠慮せず使わせてもらうとするか」
おっちゃんは満足げに頷いた。
なんだかんだで嬉しそうだった。
「親孝行かー、ええなー」
シルフィーが寂しそうにポツリと言った。
「え?シルフィーもしたらいいじゃん」
「うち、親に会った事ないねん」
「そ、そっか、、、」
「おかんはうちが小さい時におらんようになってなー、おとんは写真でしか知らん。うちはお祖父ちゃんとリーアム兄ちゃん達に育ててもろてん」
「な、なるほど」
何て言葉をかけていいか分から、、、あれ?
「一緒じゃん(だ)(だわね)」
三人がハモった。
シルフィーがびっくりしていた。
俺もびっくりした。
忘れていた訳じゃないんだけどさ。
「俺もだ。親父は生きてたけど、一緒に過ごした記憶はあまり無い。おかんは優しかった記憶があるけど、よく思い出せない。子供の時は、いつも悲しくて、寂しい思いをしていた」
嘘では無い。
珍しく幼少時代について人に語った事が、自分でも意外だった。
次はおっちゃんが語った。
「俺は親の顔は知らん。祖父に育てられた。今は祖父はどこにいるのか、生きているのか死んでいるのかも分からん」
最後はローラ。
「あたしはねえ。両親を魔物に殺されちまってねえ。村長に育てられたのさ。だから、今はみんなが家族さ」
「そうか。そうなんや。なんか、ごめんなさい。へへ、うちだけやなかったんや。じゃあうちも家族に孝行せな!」
シルフィーは元気になった。
「そうそう。俺もみんなが家族だと思ってるよ」
「うちも?」
「いや」
「えー、何で?」
「シルフィーは大事な彼女」
俺はニヤリとおどけて言ってみせた。
「エヘヘー。彼女かー!オズー!好きー!」
シルフィーは俺に抱きついて来た。
「前!前!」
おっちゃんとローラが同時に叫んだ。
俺の車は、時折激しく蛇行をしながらも、順調に?テッサに向かっていた(苦笑)
テッサに着いた俺達は、別行動をする事にした。
だって、ダブルデートだから。
おっちゃんとローラは、まずエレーナの所へ向かった。
俺達は行かない。
気まずいとかじゃないんだわ。
エレーナにシルフィーを会わせると、ローラ譲りのドSが発動する事受け合いだったからだ。
シルフィーも悪のりするに決まってる。
会わさねー!
「シルフィー?どっか行きたいとこある?」
「ギルド!」
「ギルド?何で?」
「カイロスさんやアミタに会いたい!後、カレー食べたい!」
「あはは。そうかそうか。よし、じゃあ行こう」
俺達はギルドへ向かった。
今日は週末だ。テッサは人で溢れていた。
家族連れ、カップル、商人、旅人。
メインストリートにはスイーツの屋台や、大道芸人がたくさんいた。
リズとジェイクのパン屋がオープンしていた。
大盛況だった。
《ゴーイングウィッシュ》
って名前だった。
あーあ、ホントに付けちゃったんだ(苦笑)
え?
モトユキさ。
当て字だけどね。
ニホンゴで志行と書くのさ。
こないだジェイクにそれを聞かれて、何の気なしに答えたんだけど。
ははは。ウケる。
《う、うるさい!め、迷惑だ!》
全然嫌そうに聞こえないモトユキの声がした。
うぷぷ。
「知り合いの店なん?なー、買うて!買うて!めっちゃええ匂いするやんかー」
シルフィーが腕にぶら下がって来た。
膝を曲げてプラプラ揺れている
かわい過ぎる!
しょうがないなー。
俺達は混雑した店に入って行った。
「いらっしゃ、あ!オズさーん、ちょっと貴方!ジェイク!オズさんが来てくれたわよ!」
「大盛況だね」
「お陰様で!ありがとうございました」
リズが嬉しそうに微笑んだ。
「オズさーん。いらっしゃいませ」
ジェイクが奥から顔を出した。小麦粉で真っ白だな。
「マジでこの名前にしたんだ」
「ええ。オズさんの名前出すと逆に迷惑かなと思って。それに、志に向かって行くって、なかなかいい名前だと思って」
ジェイクがニッコリ笑った。
ははは。
まあな。
確かにいい店名かもな。
「オズさん。可愛い彼女いるんですねー」
リズが言った。
「可愛いなんて、、、照れるやんかー、そんなにハッキリ言わんでもー」
モジモジしながら照れるシルフィーだけど、自己主張はちゃっかりする所がシルフィーらしくていいな。
というか、いい加減俺の腕から下りなさい!
ジェイクは焼きたてのパンをくれた。
今回は気持ちよくタダで受け取る事にした。
恐縮させないのも礼儀だからね。
ジェイクがくれたのは、メープルシュガーパンだった。生地にメープルシロップを混ぜ込み、クルクル巻いてある。表面には砂糖がデコレートされていた。
出来たてホカホカでいい匂いがした。
「ありがとう。また来るねー」
「こちらこそ。ありがとうございました。モトユキさんにもよろしくお伝え下さい」
夫妻に見送られて店を出た。
だとよ。モトユキ?
《あ、ああ。こ、こちらこそだ、、うん。まあ、、あれだ、、な、何よりだ》
うぷぷ。照れてやんの。
ツッコミを返す余裕も無いらしい。
「ウマーイ!ハモハモ」
隣ではシルフィーがパンにかじりついていた。
こいつはよく食うなー。
パンは香ばしく、甘く、メープルシロップのいい匂いがした。
焼けたシロップとデコールシュガーがモトユキの照れっぷりくらいのほろ苦さになって、絶品だった。
俺とシルフィーは手をつないで街を歩く。
今日のシルフィーは珍しくスカートを履いていた。
カーキーのカーデ生地のコートに、下はボーダーのワンピース。足元はブーツだった。
髪は下ろしていたけど、片方にエメラルドみたいな宝石が入った髪留めをしていた。
かわいい!
やたら周りからの視線を感じた。
シルフィーは美人だし。
俺もそれなりに有名人だからな。
ギルドへ到着した。
週末も関係無く、ギルドは相変わらずフル稼働しているようだった。
中に入った。
顔見知りの冒険屋達と挨拶を交わしつつ受付に向かった。
注目の的だなこりゃ。
アミタがいた。
「アミター!」
「シルフィー!」
アミタとシルフィーがキャッキャとハシャいでいた。俺そっちのけだな。
ガールズトークというやつか。
その時。
「兄貴ー」
うわ!最悪だ!
ジョニーズがやって来た。
「兄貴ー!さっきそこで聞きましたよ!女の子と手つないで歩いてたとか?あっ!この方が姉御ですか?」
姉御はヤメレ!
堅気の世界じゃ無くなるだろうが!
「あ、うちシルフィー!オズの彼女やでー。自分らジョニーズやろー?オズから聞いてるでー。かわいい舎弟って」
「ち、ちょ!シルフィー!」
「あ、言うたらあかんかった?ごめんごめん」
「兄貴ー!感激っす!そしてシルフィー姉さん!感謝します。下僕にしてください」
ジョニーズは大喜びしていた。
シルフィーめー!(苦笑)
「ふぉっふぉっふぉっ。相変わらず騒がしいのぉ?」
出た!ぬらりひょん!
「ぬらりひょんって何じゃ?よく分からんが、悪口じゃな?おや!シルフィーじゃないかの?よう来たのー。久しぶりじゃの。元気にしとったかの?」
聞こえてんのかい!
「カイロスさん。お久しぶりです。その節はお世話になりました。本来早急にお礼を申し上げに馳せ参じなければいけませんのに。諸事情により遅れてしまいました。まずはお詫びを申し上げます。大変申し訳ありませんでした。では、改めて、ここに、お礼を述べさせていただきます。ありがとうございました」
笑みをたたえ、柔らかにお辞儀をするシルフィー。
必殺の舞踏会モードが炸裂した。
俺やジョニーズを始め、周りの男たちが討ち取られ、萌死んだ。
す、すまん。
もはやこれまで、、ガクッ。
「何してんの?早よ起きて」
はっ!天国か!?
そしてこの美女は、、
天使!?
「うーち!シルフィー」
わかってるわ!
俺はヨロヨロと起き上がった。
そんな俺を確認すると、シルフィーはまたカイロスに向き直った。
「カイロスさん。これお土産!食べてー!リーアム兄ちゃ、、リーアム様からカイロスさんにって。これが好きだと聞いてますー」
シルフィーは羊羹を渡していた。
「これはこれはご丁寧に。ふもっ!わしはのー、これに目が無いんじゃ!」
普通に嬉しそうなカイロス。
普段腹の底を見せない分。喜びようが伝わって来た。ふふ。
和菓子好きか。気が合うな。
さてと、行くか。
俺達はその後カイロスとジョニーズと共にカレーを食べた。
カレー食べに行くと聞いて、ぞろぞろついて来たんだよ、この人達。
デートの邪魔かと思いきや、シルフィーはとても嬉しそうにしていた。
良かった。
シルフィーは寂しがり屋なんだろうなー。
生い立ちから、何となくそういう事を連想した。
カフェには一頃と比べると随分一般のお客さんが増えた。
主にカップルが。
初デート、いや、まだ付き合う前か?
一組の窓際のカップルがぎこちない雰囲気を醸し出していた。
頑張れ!
縁結びのカレーだ。
御利益あるぞ。
チラチラと俺を見てくるカップル。
俺は親指をグッと立てて応えた。
パッと明るくなるカップル。
なんか緊張がほぐれた様子だ。
あの二人が結ばれるのも時間の問題だな。
目の前のシルフィーはトマトカレーを食べていた。
「やー、甘酸っぱーい!カラーイ!太陽の味がするでー!美味しーい!」
鼻の頭に汗カキながら満面の笑みだった。
気に入ったらしい。
みんなの前で、あーんとかさせて来るシルフィー。
避ける俺。
苦笑するみんな。
拗ねるシルフィー。
慌ててなだめる俺。
爆笑するみんな。
機嫌の治るシルフィー。
先頭に戻り、みんなの前で、あーんとか、、、。
カレーを食べるのに、やたら時間がかかった(苦笑)
ダンとセレナがニヤニヤしながら見ていたが、華麗にスルーしてやった。
いや、カレーにスルーか?カレーだけに!
《上手くも何ともねーよ!美味いのはカレーだけ!》
モトユキの辛口で、華麗なツッコミが炸裂した。
カレーだけに。
デート。後半へ続く。
読んで頂きまして、ありがとうございました。
完全に、バカップルです(笑)
多目に見てあげてください。
久しぶりに会った二人なんで。
あ、パン屋。オープンしましたー。
名前は、、、まあ、モトユキへのご褒美ですかね。




