第三十九話・ランド王国編最終話「大地の叫び」
作者です。
やっとここまで辿り着きました。
まだまだ話は続きますが。
とりあえず、ランド王国編の最終話です。
何?どういう事だモトユキ。
《言葉通りの意味だ》
何が言いたい?
《お前はこの世界の者では無い。関係無いだろう?どうなろうと。誰が死のうと》
そんな事は無い!
《そうかな?祭りの夜に、自分でエレーナに旅人だと言ったではないか?旅人は深く関わらないものだ》
ち、違う!あれはただ
《ただなんだ?怖いんだろう?自分の存在が。そして、その力の無さが。さあ、もう十分格好はつけただろう?気が済んだか?後はこの世界の者達の問題だ!》
そ、そんな事は無い!
《嘘を付け!いつも、あるがままがどうとかぬかしているじゃないか?気まぐれに人に干渉する事が、相手に希望を持たせてしまう事もある。お前の自己満足に付き合ってる程、世の中暇じゃ無いんだ。さあさあ、尻尾を巻いて帰ろう。守るとか守らないとか、所詮は世迷い言だ。あるがままが大事なんだろう?なら弱者は地に這いつくばり、死にゆくのを待つ他ないだろう?非力な癖に、デュラハンを止めようと倒れた、そこのカスみたいなエルフの小娘のようにな》
お、お前ー!
そ、それ以上言うと、、ぶ、ぶっ殺すぞぉおおおお!!!!!!!!
ブチッ!
《あ、ようやく、おキレになられましたか?》
黙れ。どこまでが演技でどこまでが本音かは聞かぬ。咎めもせぬ。
さっさと献策しろ!
《御意!殿下。地の精霊王はまだお持ちですね》
ああ。余の手の中だ。
《では、それをお使い下さい。カイロス殿は隠蔽結界まで維持出来る余裕はないものと見られます。地の精霊力を使い、現状を打開なさって下さい。それならば御身が発見される恐れはございません》
承知した。
では、地の精霊王よ
《は、はい殿下!わたくしめはここにおります》
余と融合せよ。
《は、喜んで》
石ころは俺の手に溶け込んだ。
さて、モトユキよ
では行って来る。
《は。殿下、ご武運を》
ああ。しばきたおしてやろうではないか。
《は。同感でごさいます。まずはランド王国をお救い下さいませ》
俺は地の精霊力を駆使した。
俺の立っている場所の近くの地面が、シルフィー、ニールが倒れていた場所がゴソッと入れ替わった。
「わ!オ、オズ」
「な、何が起こった?お、お前がやったのか?すまん、俺はここで戦線離脱だ」
「いいさ。後は俺にまかせろ。シルフィー、遅くなってごめんな」
「ううん。いつもオズは私を助けてくれたもん。信じてたで」
「そうか、ちょっくら、シバいて来るわ。みんなはここで休んでいてくれ。あとこれを」
俺は手からあの激マズポーションを取り出した。
「これ何?」
キョトンとしたシルフィー。
「体力回復薬だ。魔力も回復出来る。まずはサラサーに飲ませろ。その後、みんなを治療してもらえ、ただし」
「ただし?」
「激マズだ(笑)」
「ふふふ。いつものオズと何か違うけど、オズはオズなんやね。オズ!大好きやでー!」
「ははは。俺もだ」
苦笑する他の面々。
こうでなきゃな。
堅苦しいのは苦手だ。
あるがままとか、守るとか、気まぐれとか、俺にはよく分からん。
だが、信じてくれた人を裏切る程、人でなしじゃない。
《人じゃねーだろ!》
モトユキ。ありがとう。
デュラハンが迫っていた。俺は風を纏いデュラハンに突進した。
思いっきり殴った。
デュラハンが吹っ飛んだ。宰相の横まで転がって行った。
片腕と片足を無くしたデュラハンは、それでもガタガタと起きあがろうとしていた。
「ば、ばかな!貴様!何だ何だというのだ!何だ?何者だ!?」
「ただのバウンサーさ。困ってる人を助けるのが仕事だ、そうだろ?カイロス」
やや、離れた場所で空中浮遊しながら、必死に戦うカイロスに話かけた。
「ふぉっふぉっふぉっ。あの時の宣誓じゃの」
余裕は無さそうだったが、カイロスは嬉しそうに笑っていた。
「くそ、魔導士ども、その老いぼれは捨て置け、我を守れ。お前達もだ!」
宰相の言葉に、魔導士が集結した。
生きる者、死んでいる者、デュラハン。
宰相の部下達が一堂に集まった。
カイロスはそれを見届けると、グラッと落下した。
「カイロス!」
流石にいっぱいいっぱいだったようだ。ゆるゆると地上に降り、そのまま仰向けに寝転んだカイロス。動く元気も無いようだったが、片手を小さく上げると、人差し指を立て、チッチッチと、右左に動かした。
とりあえずは大丈夫そうだな。
ファンキーなじいさんだ。
さてと。
目の前では魔導師達が詠唱を行っていた。
「ふはは、もはや頼みのカイロスは戦闘不能のようだな。貴様らには取って置きの最期をくれてやろう、それ!やれ!」
魔導師、魔導士?
どっが正しいのか。
どうでもいい事を考えていると、採掘場を吹き抜けていた風が止んだ。
鳥たちや獣の動きも無くなった。
山が、いや、大地が静まり返った。
その途端。
背後の採掘場が動いた。
採掘場を含めた一帯がゴソッと空に浮かんだ。
「な!?」
味方全員が驚いた。
「ふはは。ランド王国ならではの魔法だ。強固なミスリルを含んだ岩盤だ。貴様たちにくれてやろう。喜べ?貴様達が愛した大地に、押しつぶされて死ねるんだ」
岩盤はやがて、分散し、それは空を覆った。
晴れた秋空の下。
ここだけが曇り空だった。
「オズー!負けたら承知せーへんでー、うちの初めてを奪ったんやでー、エッチの楽しみを教えるって言うてくれたやんかー、死んだら何もでけへんやんかー!」
シルフィーは泣きながら、とんでもない事を叫んでいた。
「うはははは」
ニールと王。
親子そっくりの笑い声が響いた。
サラサーは苦笑していた。
「ふぉっ」
カイロスが小さく笑った。死にぞこないのエロじじいめ!
聞こえたのかは知らんが、カイロスは俺に中指を立てていた。
そして。
「わかったよー。これが終わったら、いっぱい可愛がってやるからなー」
シルフィーは涙で顔をクチャクチャにしながら手を振って答えていた。
「お別れは済んだか?あの世で仲良く暮らせ、やれ!魔導士共」
「ランドフォール」
魔導士達が珍しく自分から喋ったぞ?
空が降って来た。
一面を覆い尽くした、ランド山の雨が降り注いだ。
ズズズズズ。
ゴゴゴゴゴ。
ドドーン。
採掘場の広場が、宰相達のいる場所を除いて砂煙に包まれた。
宰相達が、ゆっくり俺のいた場所へ歩いてくる。
まだ白煙、黒煙、色んな煙が上がっている。
地面には巨大な岩が散乱し、大地は割れていた。
「くくく。終わったな。これじゃあ死体も探せんな、今度こそ本当の葬式を上げてやろうと思っていたが。くく、ふはははは」
宰相が笑い声をあげた。
「死ぬのは一度でたくさんだ」
「な!?」
王の声がした。
煙が風に流されて行く。
少し離れた場所に王や仲間の姿があった。
「ば、馬鹿な!直撃したはず!」
「直撃したさ、よっこらしょ」
近くの岩がグラッと動いてズレ落ちた。
寝たままのカイロスと、立っている俺がいた。
「う、嘘だ!何故効かん!」
「俺は精霊王モドキだからな、俺には当たらんよ。主君に弓引く忠臣がいないのと同じだ」
俺は宰相達にだけ聞こえるように話した。
ま、カイロスにはさっきバレたからしょうがない。
ついでに言うと、風で結界を張った。
離れた所にいる仲間には、俺達の会話は聞こえない。
「そ、そんな。バカな、そんなヤツがここで何をしているのだ?」
「彼女を探しに来たのさ」
「はあ?」
「さて、そろそろ終わりにしよう」
俺は先ほどと同じ要領でカイロスと自分を仲間達の元へ移した。
「オズー。おかえりー、やっぱりええ男やー」
「流石だな」
「お前にはいつも驚かされるな」
「オズさん。助けてくれてありがとう。皆さんは私が治療しました」
カイロスは、親指だけ立てた。
このじいさん、もしかして元勇者ご一行とかなんじゃねーか?
ま、いいや。
「よし!終わりだ」
俺はそう言うと、宰相達に向き直った。
驚愕の表情を浮かべつつも、未だ戦闘意欲は衰えないようで、宰相は敵意むき出しの目を向けて来た。
俺は言い放った。
「お前達。大地はお前達の私物では無い。動物や人間、亜人、木々や草花、虫達。そして精霊。そこに暮らす全ての者に平等にあるべきものだ。山は言った。大地を敬い、愛で、共に歩んで来たからこそ今があると。大地を使役し、苦しめた罰を今こそ受けてもらおう」
俺と融合した、地の精霊王の力が、大きく上昇した。
宰相の顔色が変わった。
一般人でも分かる程の力だった。
「ひっ!」
宰相が悲鳴を上げた。
敵意が、恐怖、畏怖へと変わる。
「ど、どうか、お助けを、も、者共、退け、退くのだー」
「もう遅いよ。貴様が虐めた大地の悲鳴を聞け、そして呑み込まれるがいい」
俺と地の精霊王は力を解放した。
宰相達のいる場所の周りの地面がせり上がった。
岩盤や土、色んなものを巻き込みながら、生き物のように、大地が口を開いた。
なんと表現していいかわからないような、広大で、激しく、悲しい音だった。
「う、うわぁー」
今や大地は口を閉じんばかりに、宰相達を囲んでいた。
かくして宰相達の退路は消えた。
苦しむだけ苦しんでから死ぬがいい。
お前達に虐げられた人々や大地への、せめてもの慰めだ。
そして。
宰相達の地面がマグマの様に変容した。
赤黒く、まるで怒り、猛るようにうごめく大地の感情が、そこにはあった。
宰相達が焼けただれていく。
魔導士達が水の魔法を使ったが、焼け石、いや焼け大地に水だった。
「ランド、グランド、グランディア。色んなものをもじって、この技を【グラウンディア・スクリーム】と名付けた。悲鳴を上げながら、大地の糧となれ!」
「ギャアアアア、た、助けてくれ、助け、ゴガアアアアア」
半ばドロドロになりつつある、宰相の断末魔だった。
凄惨な光景だった。
だが仲間達は誰も目を背けようとはしなかった。
これもまた大地の姿なのだから。
地面は激しく鳴動し、宰相達をえぐり、咀嚼するように呑み込んだ。
そして、ゆっくりと、隆起した地面が下がっていった。
後には、ただの開けた土の地面が広がっていた。
鳥や動物達の気配が戻った。
花や草木の息吹きが聞こえた。
秋の空は抜けるように青く、高く。
紅葉をしたランド山は、どこまでも雄大だった。
ナパマの街が見えた。
山を愛する者達の街。
風が俺達を吹き抜けて行った。
「んー気持ちいい風ー、自然って最高やー」
シルフィーの声に、みんなが笑った。
「よっしゃあ!作戦完了ー!ランド山最高ー!」
俺の叫びに全員が応えた。
「おー!完了ー!ランド山最高ー!」
その日一番の大合唱だった。
モトユキはあの時、覚悟をくれたんだな。
ワザと俺を怒らせて、本音を引き出そうした。
というか、試しやがった(苦笑)
まあいいさ。
この先どうなるかは知らん。
けど、俺は、少なくとも、関わった、大事な人達を守りたい。
あの日、バウンサーになった時。そう宣誓したからな。
何が出来るか分からんが、俺はもう少し、この世界で頑張ってみるよ。
それでいいだろ?モトユキ、リュウオウ、弟よ、おかん。そしてクソ親父。
俺の手のひらで、石に戻った地の精霊王が、嬉しそうにキラキラと輝いていた。
読んで頂きましてありがとうございました。
これからも、よろしくお願い致します。
たいして成長してない主人公。
今回も精霊の力のチートで勝利でした。
先行き不安です(笑)




