第三十七話「地を司る者」
こんばんは、作者です。いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。
最近、また読者が増えました。
嬉しい限りです。
今後とも、よろしくお願いします。
今ランド王国編の最終話を書いています。
その前に伏線を回収します。
それでは本編どうぞ。
それから数日間は諜報活動に精を出した。
と言っても、活動自体はシルフィーの独壇場だったけどね。
カイロスは王生存?の噂を流していた。
いかにもカイロスが得意そうな事だな。
俺と王、ニール、サラサーはお留守番だった。
風鈴を作ったり。
熊さん特製のランドベアの甘煮、いわゆる佃煮を作るのを手伝ったりしていた。
王とニールはとても楽しそうだった。
まるで親子、まあ親子なんだが、親子らしく過ごしていた。
「お二人とも、色々と不器用なんですよ。誰の目も気にせずいられるんで、楽なんでしょうね」
とはサラサーの言葉だった。
剣術の稽古もしたぞ。
王は、ニールとほぼ互角だった。
体力と膂力はニールが勝っていたが、王は熟練の剣さばきで渡り合っていた。
え?俺?
弱いよ、何か?(苦笑)
剣術より、強力な剣とのコンビネーションみたいなもんで戦って来たから、純粋な剣術じゃ歯が立たなかった。
サラサーは剣も使うが、魔法の方が長けていた。
当たり前というべきか、回復魔法のスペシャリストだった。
俺も回復魔法を習ってみたけど、無理でした(笑)
ナパマの街は、王の協力者が多い。
成り立ちを考えると当然だな。
俺達はのんびり過ごしていたよ。
幾日か過ぎた頃、シルフィーが戻ってきた。
宰相が採掘に同行してくるらしい。
明後日にはやって来ると言っていた。
カイロスも帰って来た。
宰相の耳にまで噂が入ったらしい。
いよいよだな。
もう、作戦もクソも無かった。
戦力的には申し分ない。
決行時間が夜ならなーとか思ってはいけない。
その日は久しぶりにシルフィーとイチャイチャした。
そして次の日。
テロリストご一行は朝早くに大熊亭を出た。
山道を抜け。
例の採掘場にたどり着いた。
俺以外は疲れも無く平気そうだった。
みんなの体力が羨ましい今日この頃です。
俺はひとつ確かめたい事があった。
「なあ、採掘場に入っていいか?」
王に聞いた。
「構わん。指揮官はお前だ」
王が返した。
「そ、そうか」
俺達は採掘施設の中にある、門にたどり着いた。
核の貯蔵庫みたいだな。
蛍光灯のような灯りに照らされた、無機質な空間だった。
ニールがスキャナーに手をかざした。
扉が重々しい音をたてて開いた。
うわ!
圧力が身体にのしかかってくる。
強大な精霊力を感じた。
しかも敵対的だ。
「むう!厳しいな」
王が言った。
「以前に入った時と、随分感じが違うな。こんな敵愾心は感じなかったぞ」
「精霊が怒り猛っているようだ」
ニールとサラサーの感想だった。
カイロスは珍しく何も言葉を発しない。
シルフィーは俺にくっついて来た。
俺達は、採掘場の奥へ進む。
岩盤がむき出しの洞窟だった。
進むごとに圧力が増す。
ま、ぶっちゃけ俺は平気なんだが、他のみんなはきつそうだった。
大きな穴にたどり着いた。直径100メートルくらいはあるだろうか。
うわー、底が見えねー。
奈落だ奈落。
その淵にエレベーターがついていた。
魔法で動いているみたいだった。
また、淵には、おびただしい数の、精霊石に魔法陣が刻み込まれたものが、穴を囲むように、置かれていた。
「封じゃな」
誰にともなく、カイロスがボソッと言った。
俺達はエレベーターで最深部に降りた。
俺とカイロス以外は立っているのもつらそうだ。
そこには巨大な石があった。
黒く光る石。
ブラックダイヤみたいな感じだな。
その時だ。
圧力が増した。
神のそれに近いプレッシャーだった。
常人なら失神する程の押しつぶすような力。
俺とカイロス以外は、膝をついた。
おそらくこの場で一番かよわいのがシルフィーだ。
俺は風でシルフィーを包み守った。
それでもシルフィーは肩で息をしていた。
やがて。
声が聞こえた。地の底からズズズとうねり上がるような声が。頭というより、腹に響くような声だった。
「愚かな人間共、ここへ何のようだ」
「な、石が喋った?」
ニールが驚きの声をあげる。
確かに石から声は聞こえた。
「石か。我をそのようにしか見れんのか、欲深き人間共、そこまで落ちたか、ここへ何をしに来たのか知らんが、地獄へ行け」
石は、石と呼ばれた事と、もっと他の理由により、我を忘れて怒り狂っているようだった。
恐ー。
「ま、待ってくれ、我々はここで何が行われているか、知りたいのだ」
ランド王が懇願した。
しかし。
「問答無用、無知もまた罪なり。屍をさらせ!」
言うやいなや、石が黒い光を放つ。
それはやがて、俺達の頭上に広がった。
まさに漆黒の天井だった。
そして、黒い天井が降りてきた、俺達を潰すように。
おいおい、人の話を聞けよー。
「いややーまだ死にたくなーい」
シルフィーが叫んだ。
黒い天井は、その言葉に耳を貸さず、どんどん降りてくる。
圧力に屈したのか、ランド王とニール、サラサー、シルフィーは倒れ、昏倒した。
命に別状は無いようだ。
今のところはな。
ってカイロス。
まだ耐えられるのかよ!
それとは別に、どうみても絶体絶命だった。
しかし。
まさに俺とカイロスの頭の上まで来ていた天井が止まった。
俺が片手で止めたよ。
まるでお盆を受け止めたみたいに。
「ふぉ!?」
カイロスが驚愕した。
もっと驚いたのは?
「な!?バカな!貴様。何故これを止められる!?な、何なんだお前は!?」
石の叫びだった。
俺はゆっくり話し出した。
「たわけ。俺を忘れたか?久しぶりだな。地の精霊王よ」
しばらくの沈黙。
こちらを探るような気配を感じた。
カイロスの額から汗が落ちた。
天井が消えた。
「ま、まさか、こ、この様な所で何をなさっておられるのですか?」
先ほどとはうって変わったような、石の声色だった。
石はちっちゃくなった気がした(笑)
やれやれ、やっと平常心に戻ったか。
「それは俺のセリフだ。まったくお前は。怒ると周りが見えなくなるのが悪い癖だぞ!んで、お前はこんなとこで何をして、いや何をされているんだ?」
「は、はい。面目次第もございません。まずは主に牙を剥くような向くような真似を平に、平にお許しください」
泣きそうな声だった。
さすがのカイロスも言葉が出ない。
が、気絶もしないで立ってられたのは、やはりさすがだけどな。
「いやいや、主はリュウオウだ、俺はモドキ」
「いえ、世が世ならあなた様こそ、我ら精霊の王でございます」
カイロスの眉毛が上がった。
「と、とりあえず、押し問答をしている暇は無い。本体のお前が何故ここにいて、何をさせられていたのかさっさと話せ!」
「は、はい。申し訳ありません、王、、モドキ様」
やめろってば(苦笑)
今や石ころみたいに小さくなっているが、こいつはれっきとした地の精霊王だ。
各属性の精霊にも、それぞれ王がいる。
それを束ねているのが、俺の甥。あまねく精霊達の頂点に立つ精霊王だ。
精霊はどこの世界にもいる。だが通常、各精霊王は精霊界にいる。分体といって、分身のようなモノが地上に下りているのだ。
まれに変わり者もいるが。まさにその変わり者がこいつだった。
まさか本体がここにいるとはな。
何億分の一の確率だろうがなー。
ランド山が、他の地域より遥かに高純度の鉱物が、豊富に採掘されるのは、このせいだった。
俺の勘は当たっていたな。
「で?本体がいる理由は、ここが気に入ったからとか、そんなトコだろ?」
「はい。その通りでございます、太古の昔より、この地にいる人間達は、山を敬い、大地を愛で、共に歩もうとしてくれました」
ま、ランド山の歴史通りだわな。
「しかし、半年以上前のある日。強力な魔導士達を引き連れ、宰相と呼ばれる人間がやって参りました。魔導士達の力は強く。又、無属性の精霊石に見たことも無い力を込めていて、わたくしめを上回る程の力でもって、無理矢理使役させられてしまった次第であります」
「何と!精霊王を使役するほどの力とな!」
やっとカイロスが口を開いた。
「ん?その声はカイロスか?」
知り合いかよ!
てか、今気づいたのかよ!
「こうしてお目にかかるのは初めてでございますな。地を司る者よ。その節はお世話になりました」
カイロスの敬語って、聞いた事あったっけ?
「ふむ。やはりカイロスか。そなたの提案は非常に面白く、また有意義であった為に、力を貸すのは楽しかっ」
パンパン!
俺は手を叩いた。
人の話を聞けっての!
「はいはい!注目!昔話は後にしろ!」
「ふむ。そうじゃな」
「め、面目次第もございません」
石はいっそう小さくなった。
「で?大体想像はつくが、使役させられて何をしていた」
「この世界でミスリルと呼ばれている物を作らされていました」
やっぱりか。
「しかし、俺が前に来た時は抵抗出来ていたが?」
「はい。向こうとの力の差はほぼ互角です。わたくしめがフルパワーなら圧倒出来る可能性もありますが、そうなると、大地に回す精霊力が足りなくなります。ですから、疲弊しない程度に頑張っては来たのですが」
地の精霊は、文字通り地を司る者だ。
神に力を貸しつつ、大地を形成している。
精霊力が不足すれば、大地が枯れる。
また、分体ならともかく、本体の為、むやみにほっぽりだして逃げる訳にもいかない。
「あの封は、あなた様を閉じ込める物なのですな?」
カイロスが察したかのように質問をした。
「そうだ。我は逃げるに逃げられず。また大地の為、逃げる訳にもいかず。途方に暮れていたのだ。そこへ憎き人間共がやって来たと知り。我を失って、先ほどのような愚挙に出てしまったのだ!」
「出てしまったのだ!じゃねーわ!情けない」
「すいません」
石は砂粒みたいになっちゃった。
「とりあえず、やたらこの世界の精霊力が小さく感じたのは、それが理由か?」
「はい。それだけではありませんが、地の精霊力に関しては、わたくしめが抵抗を強めるあまり、精霊力を回し切れなかったのも要因のひとつです」
「他の原因があるのか?」
「ええ、それは、、」
その時だった。
地の精霊力とは違う。
何か他の精霊力のような物が、場を縛った。
グオォ。
地の精霊王が苦しみ出した。
「おい!大丈夫か?」
「は、はい。奴らがやってきた様です。このままでは世界が崩壊してしまいます。殿下にお頼み申し上げられるような身分ではありませんが。わたくしめではどうしようもありません。殿下、非礼を承知で申し上げます。どうか。どうか。この世界をお救いください」
苦しみながら、か細い声を出した砂粒。
妙に愛おしく感じた。
こいつもまた、俺にとっては家族だな。
「いいだろう。だが殿下や王やモドキと呼ぶのは禁止だ」
「は、はい」
「ついでに言うと、俺がこの世界にいることも他言無用だ、喋ったら、ミスリルを大量に作った事をばらすぞ!」
後半はニヤリと笑いながら言った。訳は察してくれ。
「は、はい。決して他言いたしません。はい」
「よし。わかった。助けてやろう」
「有り難いお言葉、殿、お、モ、、何とお呼びすれば?」
「オズでいい」
「オズ?」
「そういう名前なの!オズ。ただのバウンサー!わかったな!」
「は、はい!」
「カイロス、お前もだぞ!」
「ふぉっふぉっふぉっ。分かりました」
「敬語はいらん!」
「分かった、しかし、驚いたのぉ、お主がまさか、」
その瞬間。
俺の圧力が70%まで上昇した。
ま、地の精霊王がいるから、バレないだろう。
「お主がまさか、ただのバウンサーだとは」
汗をかきながらカイロスが言い直した。
「よし。宰相達がやって来たんだろう。みんなを起こして回復させてやってくれ」
地の精霊王とカイロスが同意した。
ほどなくして、みんなが起きた。
ここが天国じゃない事と、ここで地の精霊が使役されていた事。地の精霊と知り合いだったカイロスが、俺達を助けてくれた事を話す。
やや懐疑的な視線を感じたが、珍しくカイロスが押し切った(苦笑)
「さあさあ、宰相がやって来たぞ、寝てる場合じゃない。クーデターを開始するぞ!」
俺の言葉を皮きりに、一同は採掘場の出口へ向かった。
ちなみに俺の手の中には、握られた石ころが、恐縮しつつも、心地よさそうにしていた(笑)
読んでいただきまして、ありがとうございました。
地の精霊王がこの世界にいるのは偶然です。
辺鄙に本社があるようなものですね。
普段は物静かな人ほど、怒ると怖い。
地の精霊王も、そんな感じですね。
途中、暴れん坊なジェネラルみたいなセリフが出てきましたが、スルーしてください。
さて、次回はいよいよ、宰相と対決です。
ご期待下さい。




