第三十四話「ランド王国ランド村」
おはようございます。
作者です。
やや重い話です。
本編どうぞ
どれくらい時間が経ったか。
ニールの呼ぶ声がした。
「ズ、オズ、、オズ。聞いているのか?」
「んあ、、、」
やられたー。
貴族か軍人を予想していたが。
まさか皇子かよ。
「あ、ああ聞いてる」
俺が再起動したところで、皆がそれぞれ話しかけて来た。
「ふぉっふぉっふぉっ。わしの自己紹介は終わっとるの。カイロスじゃ。もはやわしからのサプライズは何も無しじゃ。今夜はの」
「そ、そうか」
「さっき挨拶は済ませたな。リーアムだ。ブレザール公国の外務大臣だ。先ほどは人の目があったから、言わなかったが。シルフィーを助けてくれたのが君だな。ありがとう。その様子じゃ、すっかり仲良くなったようだな(苦笑)」
「あ、あはは。なんか、すいません」
隣で、えへへ、と笑っているシルフィー。
俺とシルフィーを興味深そうに交互に見つめる一同。
なんというか、完全に見せ物扱いだな。
ちなみに、シルフィーも、ニールの事は知らなかったみたいだ。
びっくりしていた。
「散々驚かされて来たからな、いつか一泡噴かせてやろうと思ってな」
ニールがしてやったりの表情で笑っていた。
「で、でも、さすがに皇子が街を歩いてたら、気付かれるんじゃ?」
思った疑問を素直にぶつけてみた。
「その疑問には、わしが答えよう。オズよ。まずは、会見が遅れた事を謝ろう。だが舞踏会の日が一番適しているとも思えたのでな」
同感だ。人の出入りが激しい。一人二人いなくなった所で、誰も気付かないだろうからな。
「自己紹介は先ほどしたな、ランド王国、国王、キース・グランド三世だ」
「あ、バウンサーのオズです」
「うちはシルフィーです。お初にお目にかかります」
シルフィーも会った事無かったのか。
「ニールは我が息子だ。しかしながら、その事を知る人間は数人しかおらん、だから表向きは、ただの近衛隊隊長としてわしのそばにおる。ちなみに、わし直属の近衛隊と言うのは、わしの身辺警護が任務だ。故に、あまり表には出てこんからな、国内でも、ニールの顔を知るものは少ないのだ」
なーるほど。
納得はしたものの、なんか悔しいな。
ニールに驚かされるなんて。
「ふぉっふぉっふぉっ、いつも人を驚かしている罰じゃな」
カイロスが愉快そうに笑った。
「しっかし、ニール。まさかお前が、こんなサプライズを企んでたとはな」
素直な感想だった。
「まあな。何というか、お前を見ていたら、こういうのもありかなと」
ニールは少し、恥ずかしそうだった。
「しかし、わしも驚いた。冗談も解さぬカタブツだと思っていたが、、、」
「父上!?」
「テッサから帰って来てから、顔つきが変わってきたのはオズのおかげか?」
ランド王は楽しそうに笑っていた。
結局、ニールは撃沈した(笑)
「さて、挨拶と余興はこれくらいにして、本題に入るか」
王の言葉に一同の顔が引き締まる。
まだ、色々と聞きたい事もあったけど、後回しだな。
「まずはオズ。ニールから話は聞いた。犯人のだいたいの見当と内容はわかっている。しかし、見間違いでは済まされんほど、微妙な立場の人物だぞ?わしに提示できる証拠が何かあるとニールが言っていたが、本当か?」
「ああ本当だ」
俺はマジックボックスからコアを取り出した。
王とリーアムがやや驚いた。
カイロスとニール、シルフィーはもはやこの程度は当たり前になっているらしく、たいした反応もしなかった。
ま、そりゃそうだ(苦笑)
何でコアを出したか?
そりゃ、口で説明するより、一見にしかずというヤツだ。
現場をコアのカメラで動画撮影してたんだよー。
オレはコアの画面を皆に向け、自分の前の机においた。
「ま、見てくれ。それが一番早い」
自信満々に動画をスタートした。
おそらく、動画なんか見たこと無いと思われる一同は、興味津々だった。
サプライズ返しだぜー。
動画は犯行事件のちょっと前から始まっているはずだ。
が、動画を見出した一同はキョトンとしている。
あ、あれ?
動画からシルフィーの声がした。
「どこ見てんの、スケベー!」
カイロスが言った。
「ふむ、なかなか可愛らしいお尻じゃの!」
はっ!し、しまったー。
秘蔵の動画を再生してしまった。
慌てて消す俺。
苦笑する一同。
隣から肩にパンチが飛んできた。
「ご、ごめんごめん、あまりに可愛くて、つい」
つい、本音が出た(笑)
シルフィーの機嫌が直った。まんざらでもないらしい。
ゲホゲホ、では改めて。
ちょっと早送りして、いざ再生。
一同は声も無く、動画に見入っていた。
一部始終を見終わった。
誰も口を開かない。
頭ではわかっていても、実際に目の当たりにした光景が衝撃的だというのは、動画の技術がある世界では、よくある事だ。
ましてや、この世界では、、、。
察するにあまりある。
んー重苦しい空気だな。
《そらそうやで、直に見たうちかて、改めて見たら、目ふさぎたくなるもん》
シルフィーの念話だった。
沈黙を破るように、王が呻いた。
「まさか、、わかってはいたが、、、」
カイロスが続く
「ふむ。認めたく無い事実じゃの」
ニール。
「一枚岩で無いとはわかっていたが」
リーアムは違う視点を持っていた。
「これが、魔法によって作り出した、疑似事実の動く紙芝居で無いと言う証拠は?」
「うち!うちです。写ってるように、うちもオズの隣で一緒に見ました」
シルフィーが宣言した。
リーアムは信じたようだ。というか、一応聞いてみただけのように思われた。
シルフィーは意外に信頼が高いみたいだな。
けど、ブレザール公国が大陸の良心と言われるのは伊達じゃないみたいだ。
きっちり第三者視点を務めている。
《へへー、すごいやろ?》
シルフィーが俺の腕にそっと触れた。
《うん。すごいな》
王がまた、口を開いた。
「分かった。紛い物では無いようだ。すまぬ。試したわけではない」
王として決断する事の恐さを、よくわかっているみたいだ。
俺の親父みたいだな。
王は続ける。
「さて、ではオズ達にも、詳しい説明をしなくてはいかんな、、、しばらく聞いてくれるか?」
俺とシルフィーは頷いた。
王は語り出した。
「この国は、元々はナパマの街が始まりだ」
ランド山は、はるか太古より、資源豊かな山だったそうだ。
誰かがそれを知り、今のナパマの場所に拠点を設け、細々と鉱物資源の採掘を始めた。
やがて、噂が噂を呼び、人が人を呼んだ。
いつしか、街が出来た。
最初の採掘職人の名を冠した街。つまり、ナパマだった。
やがて、隆盛期を迎えたナパマ。
それはしかし、血の歴史でもあった。
当時のこの地方は、小国や、豪族、領主が入り乱れ乱立している地域だった。
誰も彼もが利権を求めナパマを従属させようと殺到したらしい。
当然だろう。
群雄割拠ならなおさら、豊かな基盤を持つ者がやがては勝者になる。
が、ナパマは拒否した。
彼らにとって、資源とは皆に平等に授かりし自然の恵み。どこかひとつの為に使われる物では無いと考えていたからだった。
無論、各有力者達も、ナパマを攻め落としても意味の無い事を知っていたみたいで。
ナパマに直接の被害は無かった。
職人達を根絶やしにしたら、本末転倒だからな。
が、毎日の様に、ナパマを巡り、争いが繰り広げられた。
疲弊して行く民や土地。
戦争で苦しめられるのは、いつも罪なき人々だな。
シルフィーが、俺に寄り添って来た。
少し怯えている。
この年頃の女の子には酷な話だな。
王はその様子を見て、少し間を置いた。
さすがだ。って、あれ?シルフィー幾つだっけ?
《19》
やっと絞り出したかの様な念話が聞こえた。
俺はシルフィーの手を握った。
シルフィーは、少し落ち着いたようだ。
王はそれを見届けると、話を続ける。
俺達みたいな者にも気を使えるのか。名君だな。
ナパマを巡り、繰り広げられる悲劇の戦い。
困り果てたナパマの人々は、とある領主を頼った。
当時、名君と呼ばれ、民の信頼も厚く。
唯一、ナパマに従属では無く、協力と言う提案をしてきた男が領主を務める領国。
国の名はグランディア。
領主の名は、キース。キース・グランド一世。
そう。現国王の祖父だった。
なんとまあ。
驚きというか、感嘆だな。
ナパマを庇護したグランド一世は、このような争いを二度と起こさぬ為に、時にやむなく戦いを、時に融和を用いて、ついに、この地方を統一した。
それが200年前のことだそうだ。
グランド一世はランド村の出身だったらしい。
今は血筋も絶えて久しいし、そもそもあまり世には出ていない話だそうだが。
しかし故郷を想うグランド一世は、国の名を、偉大な山と、産まれた村に敬意を示して、ランド王国としたんだそうだ。
山と村が先にあったのか。
だからランド王国ランド村なのか。おれが家族と呼べる人々がいる村。
おっちゃんが必死で守ってきた、俺の第二の故郷と言ってもいい村。
何か胸が熱くなった。
ちなみに、小国の群雄割拠の名残は未だ、ランド王国の南側に残っている。
前に説明したと思うが、ランド王国の南方にはいくつかの小国がある。
グランド一世の目的は、この地方の制圧であって、侵略では無かった。
ナパマに脅威にならない小国は攻め落としたりしなかったからだ。
うーん。
言葉が出てこない。
歴史の重みを感じた。
さっきの王の舞踏会での挨拶が、今頃胸にしみた。
演説といい、三国同盟といい。
先祖に負けず劣らず、偉大な王なんだなー。
王やニールは、そんな俺の感慨を見越したのか。
優しい表情で俺を見つめていた。
だが、王は、また険しい顔に戻り、話を続けた。
「ここからが、ランド王国の恥部というか、わしの力の無さを露見するような、この事件の根幹につながる話だ」
成り立ちは、先ほどの通り、統一という形で創生されたランド王国。
キース一世が頂点に立ち、そのカリスマ性と実力を持って統治して来た。
その子、キース二世も然り。
しかし、時代は移り、人々の記憶も移り変わっていく。
現王の代になり、それは顕著になった。
今や当時の記憶を持つものは少ないらしい。
ん?今、少ないって言ったか?
当時から生きてる人もいるのか?
エルフなどの長命族ならともかく。人?
「ふぉっふぉっふぉっ」
お前かー!!
もう今夜はサプライズは無いとさっき言ったじゃねーか!
よし、スルーしよう(苦笑)
俺はまた王の話に聞き入った。
建国の感動を忘れた人達は、やがて、自らの利権を求めるようになった。
元々一枚岩とは言えない成り立ちだからな。
それは、権力の座にある者も、いや、その者達にこそ顕著だったそうだ。
ランド山周辺だけでは飽きたらず、世界の覇権を握ろうとする者達が出てきたのだ。
ランド王国は国王を中心とし、有力豪族や、創生期からの臣下が、その功績に基づき爵位を与えられて、外交や、経済などを司る、各大臣としてあり、国を動かしている。
一部を除いて世襲制だそうだ。
昔の徳川幕府みたいだな。譜代大名や外様大名みたいなもんか。
現在、ランド王国は、現状を、その創生の歴史に基づいて、守り抜こうとする勢力と、覇権を進めようとする勢力に、完全に二分されているらしい。
勿論、前者が王派、後者が反王派だ。
そして、反王派は、その派閥を率いる者の名を冠して、宰相派と呼ばれているそうだ。
やっぱりここで、やつの名が出てくるんだな。
けど、現王を見る限り、愚鈍でも暗君でも無い。
何でここまで割れた?
《せや、まだ会ってちょっとしか経って無いけど、この王様立派な人や》
シルフィーが同意してくれた。
疑問を持った俺達を察したらしい。
王が答えてくれた。
ほらーやっぱ眼識もあるじゃん。
「わしに子がおらんからだ」
え?いない?
ニールを見る。
幻じゃない。
「公式には、わしに子はおらん。今や国を乗っ取るには最高の好機なのだよ」
公式には、、、か。
残念ながら、俺にはもう、意味は分かった。
「公に出来ない子だったんだな?」
王にきくには過ぎた口調だったのは認めるが(苦笑)
王は少し驚いたようだ。
多分色んな意味で。
「流石にカイロス殿が推薦した男だな」
苦笑混じりに王は話を続けた。
王には后がいたらしい。
だが二人の間には子は無かった。
后はよき女性だったそうだ。
が、現代ならともかく、世継ぎの重要性がはるかに大きいこの世界では。
何が起こったかは言うまでもないわな。
王と后の関係は冷えた。
そんな折、王は、侍女の一人に手を着けた。
ま、攻められないわな。
結果、産まれたのがニールだ。
王は喜んだが、后の手前、発表する事も出来ない。
冷えていたとは言え、后を愛していたからだ。
やむなく王は、侍女に暇を与え、手厚く保護した。
ちなみにその家で執事長を務めたのがコナーさんだそうだ。
もう、驚かないぞ(苦笑)
やがて后は亡くなってしまったらしい。
王は子の存在を公にしようとしたらしいが。
后への贖罪。
下々の者である侍女の出自へ、当然起こるであろう貴族からの反発。
また、このような状況に巻き込みたく無いニールへの親心。
様々な要因が絡み合って、結局発表できずに現在に至るらしい。
親と子か、王とニールの間にも色んな葛藤があったんだろうな。
ま、今の二人をみる限り、それは乗り越えたみたいだがな。
でなきゃ、親父の護衛隊長みたいなもんをやってたりしないわなー。
ま、羨ましい限りだな(苦笑)
何故かシルフィーの手の温もりが有り難かった。
ま、俺の話はいいや(笑)
「ひとえにわしの不徳のいたす所に他ならない」
王は深いため息と共に話を終えた。
焦燥していた。
ニールがそれを心配そうに見つめていた。
主君への視線じゃなくて、父への想いだろうな。
「ふぉっふぉっ。ではここからはわしが代わろうかの」
カイロスが助け舟を出した。
カイロス。あんたは偉大だ。
「そもそも、王からのわしへの依頼は、最近一層混迷を極める権力闘争の現状把握じゃった」
王は自ら調べる事が出来なかった。
もはや、誰が味方なのかもわからないからだ。
下手に動けば寝首をかかれることになる。
だからカイロスを頼った。
カイロスはまず、味方と敵を調べ出したらしい。
宰相を始め、各貴族達の動向を探り、敵味方の判別をしていった。
そこで出てきたのが例の大臣による、ミスリルの採掘禁止命令だ。
大臣が王に進言し。
王が許可したらしい。
疑わしくとも調べられない。
王が大臣を疑って、逆に嫌疑が晴れた場合、もっと王の求心力が下がるからだ。
カイロスの調査によると、大臣はクロ。
背後には宰相がいたそうだ。
そして、宰相がミスリルを横領している事も。
だが、いまいち宰相の意図が読めないな。
ともあれ、その知らせを受けて、いてもたってもいられず、テッサにやって来たのがニール。
ニールと協議し、打開の一手を打つ為に、手駒として選ばれたのが俺なんだとさ。
「ふぉっふぉっふぉっ、我ながら良い人選じゃったの」
「あの時、どちらに転んでもと言ったのは、それが理由か?」
苦笑するしかなかった。
「ふぉっふぉっふぉっ、今のところ上手く転がっとるの」
「狸め(苦笑)!けど、俺がいなかったら、どうしてたんだ?」
「ふぉっふぉっふぉっ、世の中に偶然など無い。お主がいたのも必然じゃ」
《ふん、まる》
まるで俺の親父みたいな事を言うよな。
わかってるよ。
わかってるから、黙れモトユキ。
《すまん》
いいさ。
「で、今夜の会見にいたる訳か。となると、隣国の諜報を終えて、追っ手に終われてたシルフィーを助けたのも、その情報を持たせてグランディアへシルフィーを向かわせたのも、偶然ではなく、必然として、君につながる訳だな、オズ」
最後はリーアムが締めた。
流石兄さん(笑)
シルフィーは意味をやや曲げてとったらしく。
笑顔で、よりいっそう俺にくっ付いて来た(笑)
運命か。
俺達の姿を見て、一同の頬が緩んだ。
「挨拶の時も、わしよりその子だったな」
「ふぉっふぉっふぉっ、ルースを笑えんな」
「シルフィーの心からの笑顔が久しぶりに見れて嬉しいぞ」
「オズ。お前はまったく、、、(笑)だが、そうやって、呑気ながらも、皆を変えて来たんだよな。カイロス殿が最初に俺に言った言葉だ。関わるものを変える者」
王。カイロス。リーアム。ニールの順だった。
感慨深げなリーアムの言葉に一瞬シルフィーの心の揺れがあったが???
でも、シルフィーは何かを決意したように、リーアムに大きく笑顔で頷いた。
「さて、オズよ。我が息子を変えてくれたように、私も君を信じてみよう。我らが国を救ってくれるか?」
シルフィーが何を決意したのか分からない。
けど、俺も決意の時だな。
ランド王国ランド村。
守るべきもの、、か。
「わかったよ。宰相達をしばきたおしてやろう!」
「そやそや!しばいたろー」
場にそぐわない発言だったのは認めるが。
みんな笑って頷いてくれたからいいや!
俺は俺。
堅苦しいのは苦手だ。
その後、俺が提案した、とある作戦に、一同は今夜最大のサプライズを被るが、それは次回だ。
読んで頂きまして、ありがとうございました。
ランド王国ランド村の理由はこういう訳でした。
色々伏線も回収できたかと思います。
事件はまだまだ転がります。
次回をお楽しみに。




