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第三十話「棒名のヘアピン」

おはようございます。作者です。


今日も早めにアップします。


では本編どうぞ。

翌朝。

今日も快晴だった。


トンボのような虫が空を滑空している。

秋晴れだ。


先にニールは旅立って行った。


一刻も早くグランディアに着きたいらしい。


次はルースだった。

ナパマの街のギルド長が馬の手配をしてくれた。

ルースは乗馬が得意らしい。

羨ましい。

ルースに紙飛行機を貸した。

着いたら連絡くれるそうだ。


「じゃあねー」


ルースは意気揚々と帰って行った。

理由はだいたい察しがつくけど。

仕事優先しろよ(笑)


俺、俺は宿屋の食堂でトーストをパクついていた。


濃い茶色のログチェアーに同じ材質のテーブル。

それぞれひとつひとつ形が違う各テーブルと椅子。

熊さんの手作りだそうだ。

床はフローリング。

壁にはランドベアの毛皮が飾られていた。


俺はいつも座る椅子に座っていた。

この椅子が俺の体にフィットしてお気に入りなんだ。


自然のものを、形を利用して加工すると、使い手との間に相性が生まれるんだよなー。

完全に加工されたらこうはいかない。


俺はこういう不便さが好きだった。


しばらくして、宿屋の扉が開いた。


「いらっしゃい!おひとり様で?」


熊さんが声をかけた。


「ううん。待ち合わせしてんねんけど、あ、おった」


シルフィーだった。


熊さんが、ちょっとにやつきながらシルフィーを案内してくれた。


熊さん。言いたい事はわかるよ(笑)

けど、こっから進展しないのが俺クォリティーだ。


「おはよ」


「おはよー」


挨拶を交わした。


シルフィーからは石鹸のようないい香りがした。


「朝ご飯食べた?ってかどこで寝たの?」


「食べたー、他の宿屋に決まってるやん。いくらうちかて野宿はせーへん。お肌にも悪いし」


「そ、そか。女の子って大変だもんな」


「そやでー、若いうちにどんなケアしてるかで、年取ってから差が出てくるねんでー」


「どっかで聞いた事あるセリフだな」


「よう知ってるね、ベネーリア王国で流行ってる化粧水の宣伝文句やでー、ピーチなんちゃらって女優さんが、40代を過ぎたらどうのこうのって言うてんねん」


「そ、その辺でいいや」


なんか色々ヤバい(苦笑)


とりあえず、ちょっとまったり朝を過ごしてから、俺達は山へ出かけた。


山道を歩く。

暑くも無く寒くも無い。

ピクニック日和だな。


ピーヒョロロと山鳩の鳴きき声がした。


「ええお仲間やん」


「そうか?」


「息も合うてるし、それぞれ個性も豊かやし。羨ましいー」


「シルフィーはパーティーとか組まないの?」


「うち?うちは一人仕事やし。それにエルフやから、、、」


なかなか人間とはパーティーは組めないんだろう。

エルフは異端。それに絶対数も少ない。

もっと勢力増やしてやればよかったなー。

一応言っとくが、俺ら精霊はエルフの創造主みたいなもんだ。


「ごめんなー」


「何でオズが謝んの?」


あ、いかん、つい(笑)


「何でもなーい、何となく」


「ふふ、変な人ー、けど、ありがとう」


シルフィは微笑んでた。

緑の髪がサラサラと風に揺れていた。


はっ!いかん!見とれてしまった。


「じ、じゃあ、今だけでも俺とパーティー組もうか?」


「え?」


シルフィはびっくりしたが、


「ふふ、ええよー、今だけなら。オズ。ありがとう」


笑うシルフィー。

可愛いー。


やたらピンク色の風を吹かせつつ、俺達は紅葉をした山路を行く。


シルフィーには依頼の内容や、ニールとルースの事は全部話した。


シルフィーは興味深そうに聞いていた。


「うちに言うてもええの?うちスパイかも知れへんで?」


「いいよ。シルフィーだし。それにスパイでも、俺はランド王国の政府の人間じゃないから、関係ないもんねー」


「あはは。そうやな。んと、ありがとう」


「さっきからそればっかだな(笑)」


「謝るばっかよりええやんかー(笑)」


秋が来たけど、春が来たかもと、願わずにはいられなかった(苦笑)


そうこうしているうちに、昨日の採掘場に着いた。


だんだん、魔力のプレッシャーが強くなって来る。


「めちゃくちゃやんな」


「そうだな」


昨日とは違い、俺達は採掘場の入り口裏手の森から採掘場を見られる位置にいた。

ここなら、ヤツらを正面から見据える事が出来るからだ。


かなり近距離だ。

採掘場の声も聞こえて来る。


シルフィーは姿だけ消した。存在は傍に感じる。


俺はカードを使った。

他の人からは見えないだろうが、シルフィーには話しかけたから、認識できたらしく、俺が見えるようだ。


シルフィーの可愛いお尻が見れないのが残念だ(笑)


「スケベ!(笑)」


あんまり怒ってるようには聞こえなかった。


さて、採掘場に目を移すと、やはり昨日と同じように、魔法陣が描かれ、魔導士が色んな体勢で何かをしていた。


職人達は、採掘場の中に出入りし、ミスリルであろう鉱石を運び出していた。


山は苦しそうだった。

そして職人達もしかり。


「ほら、急げ!手を休めるな!魔導士様も長くは持ちこたえられないからな、さっさと運び出せ!」


兵士の声が聞こえてきた。


目前では職人達が操る大きな台車が行き来している。


「監獄みたいだな、そしてやっぱり魔導士か」


「よく聞こえるなぁ」


「耳はいいんだ、シルフィーこそ、よく聞こえるな」


「うちかて耳いーもん、あとは風使って、ちょっとな」


原理は想像できた。

風に乗って聞こえるというやつだろうなー。


その時。

一人の職人が走りだした。


「も、もうこんな事嫌だ。街に帰してくれ、誰にも話したりしない」


「あ、こら貴様!」


職人は必死の形相で走って行く。

しかし。

すぐさま、騎士のような男達に囲まれ、その後は、だいたい分かるだろう?


「ひどい、こんなんひどすぎる」


隣でシルフィーが呻く。


抱きしめてあげたかったが、今のシルフィーには実体がよくわからない。

震えているような雰囲気は伝わってくる。


俺は自分の風でシルフィーを優しく包んだ。


「オ、オズ?」


「いいんだ。何も言うな」


「ん。ありがとう」


と、次の瞬間。


「わはは、逃げたければ逃げるがよい。代わりはいくらでもおるわ。死にたくなければ働け」


声の方向を見ると、昨日の貴族風の男がいた。


俺達から見て真正面。


豪華な服、毛皮のコートのような物を羽織った男。


顔はネズミのようだ。

口髭がピョロっと生えていた。


「宰相閣下。申し訳ありません、目を離した隙に」


「構わん構わん、それより急がせろ、魔導士様達あっての恩恵だ。迷惑をかけるな。さあさあ、今日、出来る限りのミスリルを運び出せ」


宰相と呼ばれた男は口髭をいじりながら飄々と答えた。


「宰相って?」


「んと、ランド王国で二番目に偉い人のはずやで」


「そんなヤツが黒幕?」


「怖じ気づいた?」


「いや、全然」


「ふふ、やっぱりオズって凄いなあ」


ちょっとびっくりはしたけどね(笑)

最初に会った時のカイロスのほうがよっぽど怖かったよ(苦笑)


「さて、証拠は押さえた」


「え?どうやって?うちらが見ただけやで?」


「うんにゃ。バッチリさ!」


「えー、教えてーな」


「秘密」


「ぶー」


いつかと似たやり取りだったけど。

シルフィーのは可愛かった(笑)


ちなみに俺の手にはコアがあった。


狐に摘まれたようなシルフィーだったが、俺の言うことは信じるらしく、大人しく引き上げて来た。


俺達はナパマの街道近くの段々畑にいた。


一面黄金色だ。


乾いたわらを敷き詰めて、熊さんのお弁当を食べた。今日は宿を引き払ってきたから、熊さん弁当とはしばしのお別れだ。

シルフィーの分もあった。


腕によりをかけて作ってくれたみたいだ。


キノコの炊き込み御飯。

根菜の炒め物。

ランドベアのステーキ。

ランドベアの甘煮。

これは宿屋のフロントで、瓶詰めでも売ってる【大熊亭】のお土産でもある。

卵焼き。

チキンの入った酢の物。

あとは栗きんとんみたいなものが献立だった。


大満足だった。


シルフィーも美味しそうに完食した。


途中で卵焼きをアーンとかし合ったのは内緒だ(笑)


さてと、お腹も膨れたな。


「俺、このままグランディア行くけど、来る?」


シルフィーに提案した。

彼女はなにやら考えを巡らせていた。


「んー、うち、ちょっと寄り道してから行く。けど、ちゃんと行くから」


「そ、そうか、待ってるよ」


「うん、待っといて」


透明化?を解いているから、シルフィーの嬉しそうな顔が見えた。


「けど、シルフィー、俺に協力してて、自分の仕事は?」


「え?ええのええの。これが仕事やもん。あと、オズともおれるし」


に〜っと笑うシルフィー。嘘ではないみたいだ。


「仕事、、ね」


「うん。色んな許しが出たら言うたげる。それまでは聞かんといて」


「わかった!」


「ありがとう」


そう言うとシルフィーは身を翻し、風のように去って行った。


「オズとおれて楽しかった。ほな、またグランディアでね」


「おう。俺もだ。またね」


あーあ、行っちゃった。

寂しいー。


《お互い様やでー》


シルフィー?


《ふふ、盗み聞きー(笑)あ、あかん!もう念話の距離がギリギリや、またね》


あ、うん、またね。


今度は返事はなかった。

どこに行くのかは知らないけど。また会える。

シルフィーか、、、。


おっと。


ボサッともしてられないな。


グランディアに行かなくては。

今から出たら、なんとか夕方には着くだろう。


久しぶりにアレを出すか。


ジャジャーン(古っ)


愛車です。

多少目立つけど、なりふり構っていられないな。


俺は車に乗り込んだ。

エンジンをかける、その前に。

バックミラーにナパマで買ったキーホルダーをつけた。

正確にはストラップみたいなもんだ。お洒落用だね(笑)

ナパマの鍛冶職人が作ったもので、ミスリル製だ。

結構高かった。

ブランド名はミスリルハーツ、色々ギリギリだ(笑)

ランド王国の隠れた名産品のひとつで、各国のセレブや芸能人に人気があるらしい。

さて、これでカッコ良くなったぞ。


いざ出発!


俺の車は街道を走り抜ける。

フロントガラスには紅葉のような葉っぱがひらひらと舞い落ちる。


まるで棒名みたいだな。


その割に運転は下手だ。

オートマだし。ドリフトとか、無理だからー(笑)


「ポーン、目的地までのナビを開始します。目的地までの所用時間、約二時間です」


時折すれ違う人々にびっくりされる。騎士の一団にも、何度か止められたが、テッサのギルドエンブレムとバウンサーバッヂはここでも効果を発揮していた。

騎士には何故か、気の毒そうに敬礼された程だ。

カイロス、普段どういう行いをしてんだか(笑)


二時間走り続けた。


グランディアが近くなると、行き交う人々が増えた。俺は車を止めて歩き出した。さすがに目立つからだ。

途中、商人の馬車にヒッチハイクさせてもらいながら、グランディアまで到着した。


え?どうやってヒッチハイクしたかって?


バッヂ掲げて、馬車の前に立ちはだかったんだよ(笑)


グランディアは、まさに首都に相応しい街だった。


山と平野の間に建った街だ。


四方をグルッと城壁に囲まれている。


街で一番高い建物は、城みたいだった。

多分城だろう。一番でかいし。

城は山にめり込むように建てられていた。


都庁くらいの高さはあるだろうか。

本城部分を頂点に、そこから街へ向かって、なだらかな階段や坂が造られていた。

各構造物を含めると街の中心部まで、城の一部のようだった。


坂の延長線上には運河につながる港湾が見えた。


坂を囲んで、市民や貴族の暮らす区画があった。

街の雰囲気は、モンサンミシェルみたいな感じだ。


全体的に山に向かって傾斜しているようだ。


夕暮れ時も相まって、灯りに照らされた石造りの街は、幻想的だった。


「世界遺産みたいだな」


独り言が出た。

来たばっかりだけど、気に入っちゃったなー。


俺はニールに紹介された宿屋にチェックインした。


俺が到着すると、ニールにつなぎを付けてくれる手はずらしかった。


宿屋は街の中心部にあった。

名前は「大地の恵」亭。

特にコメントも思いつかない(笑)


石造りの角が極力削られた丸い感じの建物だった。


中は、フカフカの絨毯が敷き詰められた、迎賓館みたいな雰囲気だ。


ベルボーイがいる。

ドアの入り口にもドアマンがいた。


フロントで名前を告げると、支配人らしき人が飛んできた。


「オズ様。ようこそいらっしゃいました。お待ちいたしておりました。お疲れでしょう。早速お部屋へご案内させて頂きます。お部屋にジャグジーのご用意もさせて頂いております。夕食のお時間まで、今しばらく、おくつろぎくださいませ」


宿屋ってか、これ、ホテルじゃね?


「あ、あのー、ここはどのような宿屋なんでしょう?」


「あ、大変失礼致しました。申し遅れましたが、私、当ホテルの支配人、コナーと申します。当ホテルは主に国賓を招いたりする為に作られました、国営ホテルでございます」


「こ、国営ホテル!?お、お金は、、、」


「いえいえ、オズ様からは何も頂かなくても大丈夫でございます。ニール様から、すべて任されております故。私の全責任を持ちまして、お世話をさせて頂きます」


ニール様って言ったか今?ニール様って言ったよな?


まあいいか。

こうなったら、贅沢させてもらうぜー(笑)


風呂に入って、ルームサービスでフルーツを頼み。マッサージを頼み。

ペイチャンネル、、、は無かったので(笑)

コアでゲームをして遊んでいた時、部屋をノックする者がいた。


「オズ様、ニール様がお見えでございます」


「苦しゅうない、通せ」


あ、いかん。

殿下モードが(笑)


「は、はい」


開いたドアから、コナーと、苦笑したニールが入って来た。


「久しぶりー」


「ああ、無事で何よりだが、相変わらずお前が何者なのか気になってしょうがない今日この頃だな」


「お前だって、ニール様じゃねーか」


「わはは、すまんな、お詫びも兼ねて、このホテルにした、気に入ったか」


「ああ」


「ふふ、普通はこういうホテルに泊まると、恐縮するもんだが、まったくそういう感じはないな」


「まあな、プロの旅人だからな(笑)」


「そういう事にしておこう」


ニールは人払いをすると、首尾はどうかと聞いて来た。

まだ正体に関してはもったいぶる気らしい(笑)


「首尾は上々だ、で、どうするつもりだ?」


「今、協力者とそのあたりを詰めている。明後日くらいまで待てるか?」


「ああ、慎重だな。ま、やむを得ないな、宰相だろ?」


「何故それを!?あ、、そうか、首尾は上々と言ったもんな、すまん(苦笑)」


「舐めてもらっちゃ困るぜー(笑)」


彼は幾分、安心したみたいだった。


ニールは明後日の夕方に迎えに来る事。

正装で来る事。

ニールの正体はその時話すことを告げると、帰って行った。


その後俺は、もはや何の料理だかわからないが、果てしなく美味い食事を食べた。

ひとつだけ分かったのは、ギルドカフェのメニューにあった【リッシェ】が、この世界で言うキッシュの事なんだろうという事実だけだった(苦笑)


けど、独りご飯って寂しいなー。


シルフィー!早く来ーい!

読んで頂きまして、ありがとうございました。


なかなか色々、試行錯誤中です。


今回はシーンの描写にこだわったと言うか、頑張ってみました。


タイトルは特に深い意味はありません。


秋のいろは坂とか、そういうのをイメージしつつ、旅路を書いてたら、つい(笑)

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