第二十八話「再び吹き抜ける風」
おはようございます。
最近めっきり肌寒くなってきました。
物語に季節が追いついてきました。
それでは本編どうぞ。
ニールと俺は宿屋に戻ってきた。
ルースは一足先に帰って来ており、もう風呂に入ってご満悦だ。
こういう所はちゃっかりしてんだよなー。
熊さん(宿屋の主人な)が19時に飯だと伝えて来た。
俺も風呂に入った。
いやーさっぱりした。
風呂はいいねー。
ほどなくして、夕飯になった。
夕飯は宿屋の一階にある食堂でとる。
俺達の他にも数組の宿泊客がいた。
なかなか繁盛しているようだ。
ニールとルースもやって来た。
献立は、ランドベアだっけ?それのステーキがメインに、生ハムのような物の盛り合わせ、山菜の煮付け、川魚のお造り、ポテトサラダ、根菜の炊き込みご飯。リンゴのような果物のシャーベットだった。
黒ビールを飲みながら、まずは下らない話に花を咲かせつつ、舌鼓を打った。
美味かったー。
名物と言うだけあって、熊肉は絶品だった。
猪に近いのかな、牛よりクセがある。けど、焼きたては、肉ー!!って感じの風味がたまらなかった。
お腹が膨れた俺達は、熊さんにおつまみの串焼きを出してもらって酒を飲んでいた。
串焼きってね、焼き鳥みたいなもんだ(笑)
「それにしても、いける口なんだな二人共」
ニールが言う。
確かに、俺は底なしだが、ルースはニールのかなりハイペースな飲み方にも、しっかり着いて来ていた。
「酒は親父ゆずりだかんねー」
ちょっと酔ってんな(笑)
「お前、俺と最初に会った日の事覚えてるか?」
ルースに話しかけた。
「勿論!顔面真っ白にさせられたんだからな!」
覚えてねーのか(笑)
「お前に会ったのは、それより前の夜だ」
「えー?」
「村でゴブリン見なかったか?」
「ゴブリン?あー、あ!そういや、村の飲み屋で友達としこたま飲んで、フラフラ帰っていた時に、ゴブリン見たぞ?」
「覚えてんのか?」
「あんまり(苦笑)ゴブリンと男と揉めてよー、気がついたら、村の広場で踊ってたんだよ俺、あんな姿を見られてたのか」
自己嫌悪だろうか。
大げさにルースは落ちこんで見せた。
「あはは。追い討ちをかけるようで悪いが、あれはゴブリンじゃなくて、お前の師匠だ」
「え、えー!?」
ルースは椅子から転げ落ちた。
ニールは愉快そうに笑っていた。
「ついでに言うと、一緒にいた男が俺な。お前にちょっと術をかけて踊らしたんだわ」
「うわー!?って事は師匠をゴブリン呼ばわりしたあげく、オズにも、まいったな、親父に殺されちまう」
ルースは撃沈しつつ慌てふためいていた。
ニールは楽しそうだった。
さて、余興は終わったな。本題に入るか。
司会はニールに任せよう。
俺はニールを見やり目で合図をした。
「よし、ルースも落ち込んだ所で、今日の総括をするか」
ニールは思った以上に茶目っ気があった。
「んあ?は、はい」
ルースも椅子に座り直した。
熊さんが気を利かせて、それぞれに酒を注いだのを待って、本題に入った。
「まずは俺か」
ニールが話し始めた。
ニールは今日は、主に傭兵やゴロツキに話を聞いてきたそうだ。
最近ナパマの街では、傭兵を雇っているらしかった。
理由は、何故だか分からないが、正規軍の数が減らされて、衛兵だけでは、街の治安や警備が維持出来ないからだそうだ。
「ナパマってランド王国の根幹を支える街じゃないのか?それなのに正規兵が減らされてんのか?」
思わず口をはさんだ。
「ああ、おかしな話だがな、どうやら古くからいる正規兵は引き上げられて、新しい衛兵が首都からやって来ているそうだ、しかも規模は縮小されているらしい」
ニールは話を続ける
「ゴロツキ共の話によると、ゴロツキ共の親分は国から金を貰って、職人達の動向を監視しているそうだ」
「監視?職人を?何で?」
「さあ、そこまでは、俺が締め上げ、いや、話を聞いたゴロツキは理由までは知らなかった」
今ニールがヤバい事を言いかけたがスルーしよう(笑)
「あー、俺、その理由知ってるかも」
ルースが声を出した。
とりあえず、ルースに続きを促した。
「俺は今日職人達から話を聞いて来たんだー。ま、知ってるかも分からないけど、職人って無口な人多くて苦労したよ」
「けど、聞けたんだろ?」
「当たり前だろー?職人気質の代表みたいな人が俺の親父と師匠だからな、あの二人に比べたら、この街の職人が思春期の女の子みたいに口が軽く思えるぜー」
例えはよく分からなかったが、とりあえずルースは語り出した。
この街の職人達は、大きくは二つに別れる。ミスリルを専門に採掘する職人とその他の職人達だ。
ここ数ヶ月、ミスリル専門の採掘職人は山にこもりっぱなしらしい。
「妙だな、採掘は禁止されているはずでは?」
ニールが疑問を呈した。
「そう、禁止されてるのに街に帰って来ないんだってさ」
ルースが返す。
たまに帰って来ても、山で何をしてるかに関しては頑なに話そうとはしないらしい。
「その他の職人達が言ってたんだけどさー、なんか脅されてるらしいよ」
「脅されてる?誰に?」
「さあー、でも誰かに喋ると、アイツらに消されるって言ってたらしいよ。んで、それを監視してるのがゴロツキ共みたいよ」
さらにルースが続ける。
ミスリル専門の職人達の中には、何ヶ月経っても帰って来ないのもいるらしい。
それどころか、職人達の元締めが、ミスリル専門職以外の職人に、ミスリル職人に空きが出たからやってみないかと声をかけて来るらしい。
給与は倍近いと謳ってるそうだ。
「行方不明の職人って、ミスリル職人ばっかだったのか」
俺がため息混じりに言う。
「そうらしいな」
ニールが考え込んでいた。やがて、俺に顔を向けて話した。
「お前の収穫って?」
「あ、ああ。山は元気だそうだ」
「つまりは、ミスリルの採掘量が落ちる程弱ってないと?」
「弱ると落ちるのか?」
俺の質問にルースが答えた。
「落ちるらしい。職人達が言ってたよ。山が弱ると採掘量が落ちるそうだ。けどさ、おかしいんだ。山は別に弱ってなかったのに、いきなり採掘禁止令が出たって言ってたよ」
ちなみにゴアさんの話によると、山が苦しみ出したのは禁止令が出た後だったらしい。
その後も、聞いて来た話をまとめて出した結論は。
「誰かが、こっそり、職人達を使って、ミスリルを採掘しているのか」
ニールが苦々しそうに絞り出した。
断片的な情報からではあったが、出された結論は俺も同じだった。
「誰が?」
思わずニールに聞いてみた。
「わからん」
「だよな」
「わからんが、相当権力を持っていなければ出来ないだろう」
「鬼が出たか」
「その様だ」
「国王かな?」
ルースが恐る恐る言った。
口に出したくても出せない言葉だった。
しかし。
「違う!王では無い!王は断じてこの様な事はなさらぬ!」
ニールが撃昂した。
「ニール?」
「あ、ああ。すまん、多分、しないと思っただけだ」
幾分冷静さを取り戻すニール。
「明日からどうする?」
俺は風向きを変える為に前向きな質問をしてみた。
「そうだな、聞き込みと、、、やはり山に入らないといけないな」
「だな」
「だね」
俺とルースも同意見だった。
「しかし、どこを調べればいいのか」
「それなら大丈夫だ。山が苦しんでると言われている場所の地図がある」
ニールの問いに返しつつ、ゴアから貰った地図を見せた。
「む。さすがと言うか、風鈴のおかげか?」
「まあな」
重苦しい空気にニールも気を使ったらしい。
やや笑いが生まれた。
意外に細やかな感性だな。
ただの軍人じゃないなニールは。
多分、、、。ま、いいや。
「んで、提案なんだが?」
俺の発言に一同が注目する。
「明日は俺が山に行く、二人は行方不明の職人の家族や友人達を当たってみてくれないか?」
驚くニールとルース
「大丈夫なのか?お前の実力を疑う訳じゃないが、山は今、兵士がいっぱいで危険なんだぞ?」
「そうだよ。みんなで行った方が安全だよ」
「いや、ぞろぞろ行ったら見つかるだけだ、俺一人ならなんとかなる」
「策があるんだな?」
念を押すように、俺を見つめるニール。
「ああ、信じてくれ」
実際、策があった。
だが、あまり人には見られたくなかった。
「わかった」
「えー、何何?」
正反対の反応のニールとルース。
「ルース。オズはな、恐らくこのパーティーで一番強い」
「ほ、ほんと?あ、いや、強いのは知ってるけど、俺の見た限りニールだって強いだろ?」
「ふふ。まあな、けど、カイロス殿の話を信じるなら、オズが一番強い。俺も信じてみる事にするよ」
「そ、そっか。じゃあ俺も!」
ルースは単純だな(笑)
けど、ニールが俺達をパーティーと言ったのが嬉しかった。
「という訳だルース。任せろ、失敗したらごめんなー(笑)」
「わはは、前言撤回したくなるような事を言うなよ、風鈴男め!(笑)」
「風鈴?風鈴って何?何だ、また俺仲間外れかよー」
何だかんだでまとまった俺達は、夜遅くまで飲み明かした。
次の日。
今日は俺と、ルース、ニールチームでの作戦だ。
一応秘策があった。
よっぽどの事がない限りバレないだろう。
二人とは玄関で待ち合わせた。
朝食は別々にとれるんだぜー。
食堂でのバイキングだった。
ちなみに納豆と味噌汁は無かったよ(笑)
ふう、和食が食べたいなー。
玄関に現れた、ニールとルースは二日酔いも無く、元気いっぱいだった。
「ではオズ。気をつけてな。功を焦って無理するなよ」
「そうだぞー、俺達も頑張るから、一人で気負い込むんじゃないぞー」
「おう。ありがとう。んじゃ、行ってまーす」
ア○ロ、リッ○ディ○ス、出る!
前に言った時より、大人になった風を装ってみたよ。
《伝わるか!》
分かっとる!おはよ(笑)
宿屋を出発した俺は、コアの地図を見ながらテクテク歩いていく。
昨日、ここら辺の地図をスキャンして、ゴアから貰った地図を参考に、手動でマッピングしたんだ。
ナパマは朝から活気に溢れていた。
「母ちゃん、行ってくらー」
「しっかりね!」
「合点だ!」
母ちゃんと呼ばれた女性が火打ち石をカチカチと鳴らしていた。
テレビで見た江戸みたいだな。
街をバウンサーバッヂをちらつかせて抜ける。
バウンサーは色んな特権があって、顔パスならぬ、バッヂパスが効くんだそうだ。
これはニールに教えてもらった。
アミタが聞いたら怒るだろうなー(苦笑)
説明されたはずだが?とニールは笑っていた。
街を抜け、山道を登る。
採掘用の道じゃない、山男達の道だった。
山男は一言で言えば、猟師権、森林の管理人だ。
山を知り尽くしてる男達だった。カッコいいー。
だが、体力の無い俺にはきつかった。
《山をなめるな山を》
言うと思ったよ(笑)
幸い、山にはマナが溢れてた。小風牙には自動でマナが蓄積されてた。
それでもしんどー(苦笑)
エレーナが手をつないでくれてたらなー。
ぼんやりとそんな事を思った。
最初に行った採掘場は空振りだった。
採掘場は、山肌に穴が開けられた場所だ。
ま、よくある風景だ。
ランド王国らしいのは、穴が開いているだけじゃなく、施設として建設されていることだ。
穴の周りにコンクリートみたいなものが補強されてて、扉や監視塔があった。
周りはフェンスのような物が張られていた。
フェンスから、やや魔力を感じた。
秘密基地みたいだなー(笑)
空振りと言ったのは、最初のは、数人の警備が暇そうに立ってるだけで、人気が無かったからだ。
いきなり本命に当たるとか、主人公的運は俺には無いんだよなー。
そんな運があったら、エレーナにヒロインフラグ立ってるだろうしなー。
いいよ、いいよ。
どうせ日陰者だし。
精霊界にも居場所無いし。殿下って言われてるけど、何の役目も無いし。
あれだ。名誉監督とか、シニアディレクターみたいなもんだし。
アミタはルースに取られたし。
最近、一段とやさぐれてきた俺だった(笑)
ちなみに次も、その次も空振りだった。
《三振、バッターアウト!》
ツッコむ元気も無いよ、モトユキ。
俺はタバコに火を付けて、コーヒーと、熊さんが作ってくれたサンドイッチを食べながら、ぼーっとナパマを見ていた。
所々で煙が上がる街。
職人達が火を使っているんだろう。
湯煙みたいだなー。
温泉行きたいなー(笑)
浴衣姿のエレーナと、露天風呂付きの部屋に泊まってさー、夕涼みに温泉街に出てさー、湯畑見て、温泉饅頭食べて、山あいの温泉街は夕方はちょっと風が冷たくて、でもつないだ手は温かくて、カランコロンと下駄の音が心地よくて、、、。
はっ!いかんいかん、現実逃避は止めよう!(苦笑)
思い直した時、それは聞こえた。
悲鳴だった。
正確には聞こえた訳じゃない。悲鳴だと感じた。
な!?何だ何だ?
山が苦しそうに喘いでいた。
普通の人に聞こえるのかは分からない。
けど俺は普通の人では無い。
精霊界の燃える闘将、シニアディレクター、オズだ!
よく分からなかったが(笑)とりあえず自分を鼓舞して、悲鳴の中心へと向かった。
その場所は近かった。
ゆっくり近づく。
コアの地図、ゴアの地図、似てるな(笑)
どっちでもいいけど、そこはこの辺りでは、一番大きな、ミスリル採掘場だった。
近づくに連れて、大きく感じる魔力と精霊力。
二つの力がせめぎ合っていた。
普通はこうはならない。
魔力、つまり魔法と言うのは、詠唱や魔法陣を描いて、精霊力を借り、オリジナルの使い方を出来るようにしたものだ。
例えば、火。
火の精霊と契約した、精霊使いが火を扱う場合は、思うがままに火を扱える。
特に労力はいらない。
魔法は違う。
精霊と契約出来るのは一握りだ。
それ以外の人はどうするか?
それは、色々な手順、つまり詠唱や魔法陣だね。
手順を踏んで、精霊の力を使役するんだ。
それが魔法だ。
詠唱や魔法陣にオリジナルの要素を組み込む事によって、魔法使いは、ただの火を、火の槍や、火の波などに変えて、攻撃する事が出来る。
魔法使いより上の魔力や魔法技術を持つ魔導士ならばなおさらだ。
でも今起こっているのは、それとは違う。
膨大な魔力によって、精霊が使役されているならわかる。
が精霊は抵抗していた。
しかし、魔力の方がやや上回っているようだ。
精霊は自分の意志に反して使役されようとしていた。
それに抵抗しながら、苦しんでいるからこその、悲鳴だったみたいだ。
なんてこった。
強制労働かよ。
そんな事を思いつつ、採掘場が一望出来る森の境目までやって来た。
ま、見られても見えないんだけどね(笑)
俺は
【ミスターインビジブル】
というマジックカードを使っていた。
クラスに一人いるかいないかのレアキャラ。
無視されてる訳でも、嫌われている訳でも無い。
けど本人が発揮しない限り、存在は認識されない。
見えてるのに、見えないんだよ(笑)
本人が気配を消してない時は普通に認識できるし。
むしろ面白い事を言って周りを笑わせたりしてる。
ある意味、奇跡の人
友人達は畏敬の念を込めて彼を、ミスターインビジブルと呼ぶ。
ちなみに、その実力は本人が休みの日にまざまざと見せつけられる。
最長記録は四現目の終わりまで。
休みって気付かれなかった(笑)
ちなみに作者の高校ん時の親友だ(笑)
あれ?作者って何だ?
そんなカードを使ってみたよ。
採掘場には沢山の人がいた。
最後方には、騎士のように見える、鎧姿の兵士達。
ランド王国のマークに似てるが、やや違った紋章を付けていた。
中盤に、兵士に囲まれているようにも見える、採掘職人達。
そして、より派手な騎士に囲まれた、高そうな服に身を包んだ男。
貴族のように見えるが、後ろ姿で、顔は見えない。
最前列には30人はいるだろうか?どうみても魔法使いであろう男達が、巨大な魔法陣を描いていた。
壮観な景色だった。
我が子同然の精霊が苦しめられてなけりゃな(苦笑)
俺だってなー。
そのくらいの慈愛と同朋への想いはある。
けど、どうしよう。
さすがに今の俺だけじゃ、何にもしてあげられないよー。
歯ぎしりするばかりだ。
と、とりあえず、ニールに報告しないと。
と引き返そうとした時。
「誰だ!?」
声がした。
眼下の一団では無かった、ここは結構遠い。
じゃあ誰だよ?てか、あれ?見つかった??
振り返ると、巡回兵だろうか?下にいるのと同じ鎧を着た兵士が立っていた。
やべー、なんでか知らんが見つかったー。
「どこにいる?」
はい?
よく見ると、男は俺のいる方向とは違う所を見つめて、剣を向けていた。
???
どーなってるの?
その時。
兵士の後ろの木々から、風が吹き抜けた。
「グアッ!」
兵士は飛んできた、短剣みたいなものに頸動脈を切られて、瞬殺された。
さ、殺人事件だー(汗)
嫌悪感は無い。
どー見たってロクな連中じゃなかったからな。
けど誰が?
くるくると回転した短剣は、呼び寄せられるように、林の中へ戻って、ニュッ!
林の中から伸びてきた誰かの手に収まった。
その人物はゆっくり林から出て来た。
俺の方を見もしない。
気づいてないみたいだ。
そいつは兵士を見下ろすと、ボソッと独り言を言った。
「堪忍なー、けど、うちかて仕事やもん」
シルフィーだった。
読んで頂きまして、ありがとうございました。
読者が増えて嬉しいです。
筆は一向に上達しませんが(苦笑)
このところいじけ気味で、妄想が激しくなって来たオズに朗報ですね。
シルフィー再登場です。
ちなみにミスターインビジブルは実在します(笑)
休みの日でも、俺は気付いてますけどね。友達ですから(笑)




