第二十七話「関わるものを変える者」
おはようございます。作者です。
旅路を行く主人公達。
だんだん冒険屋らしくなって来ましたか?(笑)
ちなみにニールにはモデルがいます。
デイヴィッド・モースという俳優さんです。
それを踏まえて今日の話を読むと、面白いかも知れません。
街道は平和そのものだった。
ニール曰わく、ランド王国は他の国に比べて、魔物の被害が少ないらしい。
ランド王国は文字通りランド山を中心に配されている国だ。
山が真ん中。
山の北にランド村。
北東にテッサ。
北西にベルグ。
ワイバーンがいたとこか。
ベルグは行ったことないなー。
んで東にナパマ。
河を挟んで東南にグランディア。
ぐるっとまわりつつ、街が何個かあって。
またベルグにたどり着く。
ホント山を囲んでるんだなー。
旅人や商人、騎士達に混じって、石材を積んだ馬車とすれ違う。
街道は賑やかだ。
今はルースに代わって、ニールが御者を勤めている。
車内にいるルースが小声で話しかけてきた。
「なあ、ニールさんって信用出来そうか?」
「お前はどう思う?」
「え?俺?んー、そうだなー、多分大丈夫だと思う」
「どうして?」
「俺、バカだからよくわかんないけど、眼だな、あの人の眼は、村に侵入しようとする魔物と戦う時の、親子やランデルさんとおんなじ眼だよ、なんつったら言いか、うーん」
「決意の眼か?」
「そうそう、それ!オズ頭いいなー」
「お前が悪過ぎるんだ」
「ちぇっ!なんだよー」
拗ねるルース。
発展途上だけど、こいつの感性みたいなもんは正確だなー。
多分、聞いているであろうニールに向かって声をかけた。
「ニール、良かったな?賢者の卵の信頼を勝ち取ったぞ?」
聞こえないふりをしつつニールは微笑んだ。
お昼ご飯を食べてしばらく進むと、街が見えて来た。
赤茶けたレンガの街並み。小樽やボストンに似た雰囲気の街だった。
《行》
行ったことはないぜ!
《くそっ》
言わせねぇよ!
モトユキにローテーション漫才のツッコミ返しをしてやったぜー(笑)
ナパマにも関所のようなモノがあった。
ニールが何かの書類を見せて、すんなり通れた。
見た感じ職人に見える人達が行き交う街。
街の中には、カンカンと石や鉄?を打つ音が響く。
「よぉ!元気か?」
「あたりめーよ!おう!呑みに行かねーか!」
「よしきた行こう!」
「こらっ!あんた!仕事ほったらかしてどこ行くのさ!」
「ひぇー」
職人達の、活気ある?声が響いている。
とりあえず宿屋へチェックインだけ済ませる事にした。
宿屋は河の畔にあった。
【大熊亭】と書いてあった。
主人を見て、納得した(笑)
ギルドから路銀はたくさん貰っているらしく、贅沢にそれぞれ個室があてがわれた。
今日は夜まで街で聞き込みだ。
三人別々に行動する。
性格がみんな違うからな(苦笑)ぞろぞろ行っても効率悪いだろう。
「行ってらっしゃい!今夜は夕餉は、名物ランドベアのステーキだから!時間までに帰って来てくださいよー」
熊さんに見送られながら、めいめい街へ散った。
さて、どうしようかな。
モトユキーモトユキーこちらアルファリーダ、オーバー?
《アルファリーダ了解、こちらモトユキ、って何やらせてんだ!》
わりぃわりぃ(笑)
なあ、こういう時って誰に聞き込みゃいいんだ?
職人?山男?衛兵?偉い人?
《ふん、普通はそうだろう、ただ、きな臭いから偉い人は論外だな》
だよなー。
《ちなみに、ルースは職人、ニールは正規軍以外の傭兵や冒険屋、ゴロツキなんかに話を聞いているようだぞ?》
って事は山男か。
《ついでに言うと、職人や山男の奥さんだな、ローラさんを考えてみろ?情報は主婦の方がよく知っているのさ》
なーるほど。
お前頭いいなー。
《ふん、当然だ。オーバー》
無線ゴッコが気に入ったらしい(笑)
ああ、ちなみに、俺もよく言うが【ちなみに】とか【ついでに言うと】とかはモトユキの口癖だ。
どーでもいミニ情報だ。
俺は街の人に聞いて、山男達が住んでいる地域に足を向けた。
河を挟んで、街の山よりの場所にそれはあった。
河には橋がかかっていた。アーチ型の橋だ。
ちなみに、橋の袂に中村同心はいなかった(笑)
山男達の住むのは長家というには立派過ぎるが、長家のようなコミュニティーの場所だった。
洗濯しているおばさんや、風鈴のようなモノを作っているおばさんがいた。
背中に赤ちゃんを背負ったおばさん。
リリーンと風鈴がいい音を鳴らす。
風鈴を買った(笑)
何でかって?
素敵だからだよ。風を待って音を奏でるんだぜ?
なんとも控えめで風流じゃないか。
俺が選んだのは、エレーナと見た丘の景色のようなものが描かれた風鈴。
「あんた目が高いねー」
「なんで?」
風鈴売りのおばさんが話しかけて来る。
「あんたが選んだ風鈴はね、風見草って、草原に生えてる草をモチーフにしたやつなんだよ。風に揺れて、さーっと道を示す。その姿から、風見草って名付けられたのさ、あたしの自慢の逸品さ」
なるほどね
「おばちゃんが描いたの?」
「そうさー、うちの旦那とよくデートした場所の景色さー」
おばちゃんは朱くなった。
おばちゃんの旦那は山男だった。ただ、こないだの雨の日に山で滑って、足を折って、今は自宅で療養中なんだそうだ。
「腕はいいんだけどねー、オッチョコチョイで困るのよ、ま、この子の為にも早く治してもらわないとねー」
おばちゃんは豪快に笑った。
ちなみに風鈴は三つ買った。お土産だ。
「おばちゃん。山って最近どーなの?元気?」
「え?山かい?そうさねぇ、元気と言えば元気かねー」
なんだか含みのある言い方だな。
「俺さ、旅人なんだ。世界を回ってんだけどね。2ヶ月くらい前からこの国にいるんだけど、山がね、時々変なんだ」
「ふふ、若いのに風流なお人だねー。あたしには山の事はよくわからないけどね、うちのが、山が時々苦しそうって言ってたねぇ」
「苦しそう?」
「なんて言ったらいいのかねぇ、、、そうだ!うちに行ってみるかい?うちのに話を聞いてみるといいよ。どうせ寝てるだけで、暇してるんだから」
「わかった。ありがとう」
おばさんと別れた俺は風鈴を片手に、長家を進む。
リリーンと風鈴がいい音を奏でていた。
教えられた家の前に来た。
リリーン。
扉を開ける。
リリーン。
「リンダか?」
松葉杖をついたおっさんが出てくるとこだった。
「あ、いや違う」
「あ、、そっか。すまん。かみさんかと思って。お?兄ちゃんその風鈴」
「あ、さっき買った」
「そうかそうか。それを買ったのか」
ちょっと嬉しそうなおっさん。
俺は自己紹介を兼ねて、旅をしている事とおばさんにした話をした。
「んー、そうかそうか。変わったヤツだなー、まあ入れ、俺はゴア、かみさんはリンダ、かみさんの背中にいるちんまいのはリリーってんだ。風鈴買ってくれてありがとよ」
ゴアは俺を招き入れてくれた。
暇してて話し相手が欲しかったらしい。
居間に通された。
ゴアはちょっとだけ酒を注いで、俺と自分の前に置いた。
「かみさんいねーからな、あんま飲むと殺されるんだけどよ、ま、飲んでくれ、あいつがいねーと茶も出せん」
どっかの親バカみたいだな(苦笑)
「んで、オズ。山の事を聞きたいってか?」
「ああ」
ゴアが語ってくれた。
山は基本的には元気だそうだ。
元気と言うのは、感覚的なものではあるが、長年山男をやってるとわかるらしい。
ただ、このところ、時折山が苦しそうに呻くんだそうだ。
「なんて言ったらいいんだか、子供が熱出した時みてぇに苦しそうなんだわ」
「苦しそう、か」
月に何回かあるらしい。
「場所とかは?」
「場所か?」
ゴアは紙にだいたいの地図を書き示してくれた。
「ただ、この辺はミスリルの採掘場の近くだからな、あまり近寄らんほうがいい」
「そうか。ありがとう」
「いいって事よ、暇でしょうが無かったから、話し相手がいて良かったよ」
「ははは」
情報と酒のお礼に、ちょっとした事をやった。
「ゴアさん、足診せて」
「ん?お、おお。ポッキリ逝ってるそうだ」
この世界には、医者と療養士が主に医療を担っている。
医者のレベルは、江戸時代のニホンくらい。医療費は安価だ。療養士は、魔法や精霊術を扱う。治療費はかなり高額だ。
エレーナを療養士に診せる事が出来たのは、おっちゃんが高給取りの冒険屋だったからだ。
ゴアみたいな一般市民ではなかなかそうはいかない。
ちなみに俺はヒーリングは苦手だ(笑)
性格的な問題があるとモトユキには言われた。
ま、それでも医者よりはマシだろう。
幸いレーグの短剣に自然マナがチャージされてた。
この分だけで、治せるとこまでやるか。
俺はゴアの足首に手を当てた。
「オズ?治せるのか?」
「やれるとこまで」
俺は短剣のマナを取り込むと、足の修復にかかった。
【トータルヒーリング】
精霊力で折れた箇所を探す。そして、一旦そこを、量子レベルまで分解。
俺が人体を構成したのと逆の事をしてるんだわ。
分解したら再構築。
骨折は治った。
が、そこは色んな意味で俺の力不足が発揮された(苦笑)
「えーっと、一応骨折は治った」
「ホントか?お、確かに痛くねぇ」
ゴアは松葉杖をつきながら立ち上がると、松葉杖を浮かせて立ってみせた。
「あ、まだちょっと無理はしないほうがいい」
「そ、そうか」
素直にゴアは座った。
「治すには治したが、まだちょっと折れた箇所が安定しないんだ、だから万全を期して5日くらいは安静に頼む」
モトユキがやったんなら、今すぐ全力疾走出来ただろうよ(苦笑)すまんゴア。
「いやいや、有り難いよ、医者が言う半分以下の日数で治るなんてよ、何て礼をしたら」
「礼はもう、もらったからいいよ、それに」
リリーン。
俺は風鈴を鳴らした。
「いい音だ。これが聞けたから満足だ」
「はは。うちのかみさんの風鈴は世界一だからな!」
「んだんだ(笑)」
大喜びのゴアに別れを告げると俺はゴアの所を後にした。
その後も、長家のおばさん達に話を聞いた。
空を見上げると夕暮れが迫って来ていた。
さて、宿屋に帰るか。
リリーン。
風鈴を鳴らしながら俺は宿屋に向かった。
宿屋に近くなって来た頃、歩いているニールを見つけた。
「ニール!」
ニールが振り返った。
「オズか」
「お疲れ。どうだった?何か収穫あったか?」
「まあな。そっちはどうだ?」
「ん?俺の方もあったぞ!」
俺は片手を上げ風鈴を鳴らした。
リリーン。
「まさかそれが収穫じゃないだろうな」
ニールが苦笑しながら呆れていた。
「ち、違う違う。これは家族へのお土産だ、ちゃんと情報も仕入れたぞ!」
「ふふ。ならいいが」
ニールと歩き出した時。
「オズさーん。オズさーん」
俺を呼ぶ声がした。
ルースじゃない。
この街に知り合いなんていないぞ?
振り返ると、遠くからリンダが走って来る。
あ、いたわ知り合い。
息を切らせながらリンダは到着した。
「リンダさん。どうしたの?てか、よく俺がいる場所がわかったな?」
リンダが息を乱しながら風鈴を指差した。
「はあはあ、そ、それ。それを持った人と音を頼りにしたのさ、はあはあ」
「あー、なるほど。で、どうした?」
「お礼を。一言お礼を言いたくて、うちに帰ったら、旦那が松葉杖無しで歩いてるじゃないか。びっくりして理由を聞いたら、あんたが治してくれたって聞いてねぇ、慌てて飛び出して来たのよ」
「いやー、お礼なんていいのに。お礼はもうもらったしさー」
「うちのもそう言ってたけど、あたしの気が済まなくて。ありがとう。ホントに助かったよ。これで家族三人また、なんとか暮らしていけるよ、ありがとう。ありがとう」
リンダは何度も頭を下げた。
ニールが目を丸くしている。
結局、うちにはこれしかないからと言って、風鈴をくれた。いっぱいあるから、とりあえずニールの分とルースの分だけ貰った。
なんとか気が済んだのか、リンダは何度も頭を下げながら手を振って帰って行った。
宿屋に向かうニールと俺、ニールの手にも風鈴があった。
風鈴片手に歩くニール(多分軍人)、なんともシュールだ(笑)
手の風鈴を見つめながらニールが呟いた。
「関わるものを変える者か、、、」
「え?」
「いや、独り言だ」
ニールの手の風鈴が夕暮れの風に揺れて、心地よい音をたてていた。
リリーン。
読んで頂きましてありがとうございました。
オズらしい顛末ですね。
職人じゃなく山男に話を聞きに行くとか(笑)
ちなみにオズは風にまつわるものが好きです。
だから風鈴とか買っちゃうんですねー(笑)




