第二十六話「狸と狐の化かし合い」
おはようございます。
物語は進みます。
それではどうぞ。
武器店を後にした俺達は、一路ギルドへと向かった。
ギルドに入ると、受付にアミタが見えた。
ちなみに受付は沢山ある(笑)
それだけは言っておこう。
アミタは俺達に手を振った。正確にはルースに(笑)
いいよいいよ。フン!
俺達はそのまま三階へ上がり、カイロスの部屋へ行った。
部屋をノックすると、カイロスが迎え入れてくれた。
部屋にはもう一人、見たことの無い男がいた。
白髪の男。年齢的にみて白髪ではないようだが、短く刈り込まれていた。
軍人みたいだな。
口髭と顎髭も白く、それも短く整えられている。
ややたれ目の青い瞳の持ち主だった。
温和にも見えるが、背筋をピンと張ったその立ち姿は威厳を感じさせた。
「わざわざすまんのぉ、まあ座れ」
俺とルースはソファーに座った。
白髪の男は立ったままだ。
「ニール、お前さんも座らんかの?」
「はい。では、お言葉に甘えて」
ニールと呼ばれた男も遠慮がちに座った。
「さて、まずこやつはニールという。今回の依頼に同行するガイドじゃ」
「お初にお目にかかります。依頼を受けて頂いて感謝いたします」
あ?まだ受けるかどうか、、、。
頭を下げるニールの横で、カイロスがニマーと笑った。
やられた(笑)
ま、いいか。
「では早速本題に入るかの?」
カイロスが話した依頼の内容はこうだ。
この国、ランド王国が地下資源の活用で生業を立てているのは前にも聞いた。主には鉱石だ。
その中には、貴重品であるミスリルも含まれている。
問題は、そのミスリルだった。
ミスリルはその貴重さ故、乱掘が禁止されているそうだ。毎月決まった日に一定量のみの採掘が許されている。
また、採掘する人間も、国の指定によって決められているそうだ。
掘り出されたミスリルは、一旦、国によって管理され、それから売買されるらしい。米みたいなもんか?
で、ここからが本題だ。
ここ、半年もの間、一度も採掘が行われていないらしい。
その為ミスリルの値段は上がり続けている。
採掘が行われない理由に関しては、国内外の経済を担当する大臣からの発表によると、資源を保護する目的だということだ。
ここで、この世界でのミスリルについて聞いた。
ミスリルは、高い硬度を誇る鉱石だ。
同じミスリルを使い、かつ魔法でパワーアップさせた器具を使い、加工する。
ミスリルの成分に関してはよくはわかっていない。
固すぎて研究もままならないからだ。
用途は主に軍用である。
また、一部の記録など、未来永劫残したいものにも使われている。
皮肉な話だが、慰霊や平和のモニュメントにも使われているそうだ。
ミスリルがいかにして地中で生成されるかは、実のところよくは解明されていない。だが、一度採掘した場所でも、後にミスリルが生成されていたこともあり、決まった場所に生まれる資源ではなく、元々の岩石が変性したものだと考えられているそうだ。
だいたいミスリルがわかったな。
なんとなく正体もな(笑)
俺の勘が正しければ、ランド王国のミスリルが世界一だと言われている理由も分かる。
それはさておき。
採掘が禁止されているにも関わらず、隣国などではランド王国製のミスリルが出回っており、流通量が減っている様子も無いらしい。
おかしな話だ。
また、いわゆる採掘職人達によると、山が死んでいたり弱っている気配も無いとの報告があったそうだ。
ただ、これに関しては気になる点もあるらしかった。しかも、現在、主なミスリル採掘場は、国軍によって厳重に警備され、近づくこともままならないらしい。
最後に、最近、採掘職人が行方不明になる事件が頻発しているらしい。
以上の事を踏まえて、現状何が起こっているのかの把握。ならびに山の調査、職人達の行方を追う。
というのがカイロスの依頼だった。
おいおい。
難易度高くないか?
「カイロス、本気で俺に依頼してるのか?それとも、俺が動く事でほころびが出て、隠された事実が明るみに出る事を期待しているのか?」
「ふぉっふぉっふぉっ、なかなか鋭いの、お主には驚かされてばっかりじゃ」
こちとら腐っても精霊王もどきだからな(笑)
イートンの件じゃないけど、そうそう踊らされてたまるかっつーの。
「で、答えは?」
「ふむ、しいて言うなら両方じゃ」
「そうきたか」
「失敗はともかく、それ以外ならどっちに転んでも損はないのぉ」
「狸め!(笑)」
「ふぉっふぉっふぉっ、わしが狸なら、お主は狐かの!(笑)」
痛いとこを突いてくるな。
「わーったわーった、やりましょう」
「ふぉっふぉっふぉっ、そうくると思っておったよ」
横でルースがフリーズしていた(笑)
ルースの頭じゃ、まだ無理もないかな。
しかし、ルースがボソッと言った言葉に全員が固まる。
「二律背反?」
「ふもっ?」カイロス
「あー、あ?」俺
「な!?」ニール
三者三様の反応だった。
「だって、、おかしくない?俺達の国は採掘資源が命綱だろ?それがこんな事になってるってさ。国王は何してるの?国王の命令なら大臣は何してるの?大臣が勝手にやってるなら、やっぱり国王は何してるの?」
「ふもっ、ふぉっふぉっふぉっ」
「薄々は、ってとこか?」
「考えんようにしとったと言えば嘘になるがの」
「鬼が出るか?蛇が出るか?」
「そんなところじゃの」
カイロスはさすがに焦燥して見えた。
「え、あれ?俺変な事言った?」
「ふぉっふぉっふぉっ、ルース。お前を見くびっておったわい」
覚醒しつつも、アホなとこもあるルースは、ワケが分からずオロオロしていた(笑)
詳しい作戦に関しては、カイロスとニールが詰めるらしく、一旦お開きになった。
旅装を整えて、明日の朝出発するとの事だ。
ルースはアミタどデー、旅装の装備を買いに行った。
俺はおっちゃんに二、三日空けるのと武器のお礼を紙飛行機で飛ばした。
おっちゃんからはすぐに
《わかった。生きて帰れ》
と返信があった。
隣に丸い文字で。
《ちゃんと食べて、元気にいるのよ!帰って来たら御馳走作ってあげるから、がんばりな!》
とローラの文字があった。
なんとなく分かってんのかな?カイロスの依頼だからなー。
何にも聞かれないのが逆に有り難かった。
柄にも無く、俺は緊張していた。
《ほんと、柄にもねーな》
はは。ありがとうモトユキ。
《怒らないなんて気持ち悪いぞ、ま、精霊界の恥にならんよう、しっかりやれ》
了解(苦笑)
少し楽になった。
ま、いっちょ、やってみっかね!
俺達が退出した後部屋の中ではカイロスとニールが話をしていた。
「カイロス殿、貴殿の眼力を疑う訳ではないが、あの者に任せてよいのか?」
「ふぉっふぉっふぉっ、心配性がここにもおるわ」
「切れ者だと仰るのは認めるが、強そうには見えなかったが、私に見る目がないのか」
「ふむ。では聞くが、ギルド地下の修練場へは行ったことあるよのぉ?」
「はい。何度か」
「魔法の修練用の木偶と後ろの壁があるのも知っとるのぉ?」
「はい。オリハルコン製の甲冑を纏った木偶とカイロス殿自らコーティングした壁だな?」
「ふむ。では、その壁を甲冑ごとぶった斬れる者が世界に何人くらいおると思う?」
「数える程しか、ま、、まさか?」
「ふぉっふぉっふぉっ、わしが狸なら、あれは狐の皮を被った竜じゃの」
「彼は一体何者なのだ?」
「わからん」
「な、そのような者にこの国の未来を委ねるおつもりか?」
ニールは狼狽えた。
「あの者は、ある日どこからかやって来て、関わるものを変えて来た。良い風にな。わしはそれをまざまざと見た。ランデルしかり、ルースしかり、カレーもしかり(笑)お主程の者じゃ。ベネーリア王国のたわけた伯爵の話は聞いておろう?」
「あ、ああ、使用人を追いかけて来たとかいう?」
「あれを始末したのもヤツじゃ」
「な!なんと?しかしあの貴族には確か、元暗部の特殊部隊隊長が雇われているはずだが?」
「そやつの死体も上がらんほどに綺麗サッパリ消しおった(苦笑)」
「むう!それ程のヤツが今までどこに?しかしカイロス殿も正体が見抜けんとは、何者なのだろう?」
「さあのぉー、どこから来たのか、どこへ行くのか。風のような男じゃの。ただ心地よい風を纏った男じゃ。ま、何者にせよ、見てるだけで何もしてくれん神様より、よっぽどマシじゃと思うがの。ちなみに他言無用じゃ。ふぉっふぉっふぉっ」
カイロスの高笑いが部屋にこだました。
ニールは腹をくくったようだった。すがるしかない。と心に決めたようだ。
ルース、多分アミタと一緒の(笑)
俺、カイロスとニール。
それぞれの夜が更けて行った。
翌朝、俺はルースと記念公園で合流した。
心なしか一皮向けた気がするが、、、。
「おはよ。男になったか?(笑)」
「へへー」
「へへーって事は今までアレだったのか?(笑)」
「な!」
誘導尋問に引っかかりやがって(ニタニタ)
ルースはあたふたしていた。
「緊張は解れたか?」
「え?あ、ああ」
「もう思い残す事はないな?」
「ああ、ってちがーう!ちゃんと帰って来るって約束した!」
「ほー、誰に?」
「か、家族」
「と?」
「ア、アミタに(照)」
ルースは真っ赤になった。
「よし!じゃあ、しっかり頑張ろう!」
「お、おう!」
団結した(笑)
緊張を解す為だからねっ!べ、別に、事実を突きつけられて落ち込んでたりとかしないからねっ!
くそーくそー(泣)
《どんまい(笑)》
うっせ!
それぞれの朝が始まった。
ギルドに向かうと、カイロスとニール、そしてアミタがいた。
挨拶を交わした。
カイロスから作戦の概要を聞く。
まずは山の調査から始めるそうだ。
採掘職人達に話を聞く。
情報をコツコツ集めて、全体像を把握する戦略だった。異存は無い。
今日はランド山にある、採掘職人達が住む街へ行く。
テッサと、ランド王国首都【グランディア】の間にある街だ。
山から流れる河川を両岸から挟むようにある街で、名前はナパマだそうだ。
深く由来を考えてはいけない(笑)
この河川はグランディアから来る運河につながり、やがてはベネーリアを抜けて海に出る。
この河川を利用して資源を輸出しているそうだ。
ちなみにベネーリアは海に面した水の都だそうだ。
いつか行ってみたいなー。
とにかく出発だ。
ナパマまでは馬車で行く。車は目立ちすぎるからな。
御者はルース。
俺とニールは馬車の中だ。
俺達はカイロスとアミタに見送られながら、ギルドを後にした。
出がけにカイロスが。
「皆死ぬでないぞ。特にルース、曾孫の顔を見せてくれるまで絶対死んではならん!」
などと声をかけてきた。
ルースとアミタは真っ赤になり、俺とニールは顔を見合わせて苦笑した。
馬車はテッサを出て、のどかな田園風景の中を山へ向かっている。山吹色の世界が広がる。秋だな。
ニールに色々聞きたい事があった。信用していない訳では無いが。
「あの、ニールさん?」
「ニールでいい」
この世界の人は敬称が嫌いなのか?(笑)
「ニール、あんたは何者だ?ただのガイドじゃないだろう?軍人か?」
「なぜそう思う?」
「立ち方かな。あとは雰囲気だ」
「ふっ。カイロス殿の言うとおり、鋭い男だな、だが今は言えん。すまん。ただ、この国の未来を案じている男だと言っておこう」
「そうか。ま、正体が言えんのは俺も同じだ。俺は自分の大切な人達を守りたい男だと言っておくよ」
「ふふ。面白い男だな。カイロス殿が推薦するだけはある」
「いやいや、あなたもだ。俺達がいる前ではカイロスを立て敬語で話をしていたが、さっきギルドの裏手で俺達を待っている時は、そうじゃなかった。唇が読める訳じゃないが、耳がよくてな(笑)カイロスとは対等だな?にも関わらず、こんな得体の知れない男に未来を託そうとするカイロスを尊重した。あなたの器と、この国への想いがなんとなくわかるよ」
「ふふ、はは、わはは。恐れいる。いずれ俺の正体は話そう。実は昨夜、カイロス殿に貴殿の事を色々と聞いた。あ、心配無い。他言はしない。俺が気に入ったのは貴殿がランデル殿の養子だと言うことだ。貴殿になら背中を預けてもよさそうだ。言うのが遅れたが、仲間として、よろしく頼む」
そう言うとニールは深々と礼をした。
なんの躊躇も無い、爽やかな礼だった。
「こちらこそ。よろしく頼む」
握手で応えた。
てか、カイロス。口が軽過ぎなんじゃねー?(苦笑)
「何だよー何盛り上がってんだよー、俺も混ぜてくれよー」
外からルースの拗ねる声がした。
「仕事前夜に女としけこんでいるような奴は知らん!」
ニールが俺に向かって、片目を閉じてニヤリとしながらルースに言った。
なんだ、こういう事も言えるのか。
ニールへの好感度がまた上昇した。
「ひどいよーオズ。バラしたのかー?」
「バラしたのはカイロスだろうが!」
と俺が返す
「そうだけどさー、って、もし、もしだよ、アミタと結婚したら、カイロスがお祖父ちゃんになるんだよな?うわー怖えー」
大爆笑の車内と一人青ざめるルース。
とりあえず、ニールとは上手くやっていけそうな気がした。
読んで頂きまして、ありがとうございました。
アミタはルースにとられましたね(苦笑)
なかなかヘビーな依頼が来ました。
頑張り時ですねー。
ではー。




