第二十三話「Spring Wind」
こんにちは、作者です。
今日は忙しいので、早めにアップします。
今日はなかなか興味深い話になりました。
ちなみに途中で人称が変わります。
ちょっと実験です。
それでは本編どうぞ
カイロスの小言とアミタの通り名のダブルパンチを食らって疲れた俺は、街に泊まることにした(笑)
おっちゃんには、とあるマジックカードで知らせた。
また心配するといけないからね(笑)
使ったのは、
【エアメール・イン・ザ・クラスルーム】
まああれだ、授業中の主な通信手段として、携帯や回覧メモと並んで重宝されるやつだ。
ただ、これは、普通の紙飛行機と違って、墜落や不時着の心配はない(笑)
飛ばした瞬間、異空間を移動して相手のもとに着くからだ。
ちなみに、破れるか、書くとこが無くなるまで使える。
おっちゃんからの返事は、
《わかった。心配しなくてすんだ(笑)》
と書いてあった。相変わらずシンプルな人だなー(笑)
俺はおっちゃんの馴染みの宿に向かった。
コアを見ながら、街を進む。
夕暮れの街は、それでも沢山の人が家路を急ぐのか、呑みに行くのか、行き交っていた。
黄昏か。
誰そ彼が語源だっけ?
暗くて顔がわからんとこから来てるんだよなー。
どうでもいいことに博識な俺だった(笑)
《サイドチェンジします》
夕暮れのテッサを足早に進む影がひとつ。
全身黒ずくめのフード姿。目の部分以外が隠れたそれから、ややつり目ではあるが、大きく丸い目が覗いている。
額から、黄緑色の綺麗な前髪がかかっていた。
女だった。
女はテッサの街を走っていた。
追っ手を巻き、やっとテッサまでたどり着いた。
早く里の長に話をしなければいけない事があった。
このままでは、ベネーリア王国は滅んでしまう。ランド王国にも悪い噂があった。
放っておけば、いずれは、我らが王国にも危機が迫るだろう。
急がなくては。
その時。
グゥ。
お腹が鳴った(笑)
あかん、お腹すいたー、朝から何も食べてへんもんなー。
どないしよ。
けどお金無いしなー。
お金はさっき、この街に入る時に、潜り込ませてくれた商人にばらまいたのだ。
値切っとくんやったなー。
せや、掏ったろ。
長にバレたらしばかれるなー、精霊力をこんな風に使てるなんて知らんやろし(苦笑)
せやかて、お腹空くねんもん。育ち盛りの乙女は結構食べるねんでー。
私、掏摸得意やねん(笑)
風の精霊力使って、ヒューって掏るねんでー。
どの人にしよ、あ、あいつがいい。なんか箱みたいなもん覗き込んで、ヨタヨタ馬鹿面で歩いてるし(笑)
銀髪の男に決めた。
油断しまくったその姿。まさにカモだったからだ。
前方からのんびり歩いて来る男、女はゆっくりとした足取りですれ違う。
その刹那、女の精霊力が発動、男の腰にあった巾着袋の紐が音も、感覚もなくスルスルとほどける。
やった♪
あとは、手を伸ばして掴むだけー。
手は巾着袋には届かなかった。
!???
「ダメだなー、精霊を悪いことに使っちゃー」
女の手は、男が伸ばした手によって、握られていた。
「嘘!何で?」
思わず声が出た。
今まで失敗なんかしたこと無かったからだ。
「お、女?の子?どうりで、スベスベと綺麗な手(笑)」
すられそうになったばかりとは思えない程、呑気な男の声が返って来た。
「いややぁー変態!」
なんやこいつ?
精霊力を見破った上に、そこはスルーして、うちが女って事に食いつきよった。
声をあげた理由は二つ。手を握られたから(笑)そして、逃げる為。
「なにすんのー離してよー痴漢ー!」
「ちょっ!痴漢って、お前な!」
ざわざわと騒ぎになる街角、男は思わず手を離した。
今や、逃げよ。
女はものすごいスピードで逃げ去った。
それにしても、何者やったんやろ。うちの技が効かへんかった。
びっくりしたー。いきなり手握ってくるねんもん。
ま、結構いい男やったけど(笑)頂きー。
かなり遠ざかって、路地を曲がりながら、そんな事を考えていた女は。
自分をつけて来た数人の男に気づくのが遅れた。
誰もいない路地で、男達に囲まれる女。
しもた、気ー抜いてた。こいつら街のゴロツキとはちゃうやろなー。
どないしよー。
猫の様な身のこなしで、影がソロソロと女を取り囲みつつあった。
その頃、俺!(笑)
いやー、びっくりしたー。
痴漢とかマジ無いわー。
あの後、周りの人に囲まれたけど、俺だってわかって、みんな信用してくれた。
意外に有名人なんだな俺。カイロスが怒る訳だわ(苦笑)
それにしても、何だったんださっきの?
風の精霊まとった奴が歩いて来たから、興味本位で近づいたんだけど、掏摸かよ!(笑)しかも女。
不届き千万だよなー。
にしても、目のとこしか見えなかったけど、絶対美人だったよなー(ニタニタ)
俺はそう言いつつ、腰の巾着袋に手を、、、。
巾着袋が無かった!
やられたー(汗)
あの女ー!とっつかまえて、あんな事やこんな事を、、じゃなくて(笑)懲らしめてやる。
俺を舐めんなよ。
俺はコアをいじった。
街の中に赤い点が点滅し出した。
こんな事もあろうかと、巾着袋に発信機をつけておいたんだー(笑)
って随分遠くに行ったな、逃げ足早っ!
けど、今は動いてないな。見たところ袋小路の路地にいるけど、あれか?中身を確認してんのか。
待ってろよー。
《再度チェンジします(笑)》
あかん。逃げられへん。
掏摸なんかせんと、おとなしくしといたら良かった。
街に女が入り込んだのは、追っ手を巻く為と、夜の闇に潜んで、身を隠す為だった。
テッサはただの通り道に過ぎなかった。
じりじりとにじり寄って来る黒装束の男達。
「手紙はどこだ?」
「そんなん知らーん、うちただの掏摸やもん」
「嘘を付け、もう一度だけ聞く、手紙はどこだ?」
「わけわからん、うちの身体が目当てなん?叫ぶでー」
「ふふ、誰が聞こえるか。こんな路地裏で、ま、ついでに貴様の身体も楽しませてもらうとしよう」
「もー、男って変態ばっかりやー」
強がっていたが女に余裕は無かった。
会話をしながら油断を誘ってみたが、効き目は無かった。
あかん。やられるー色んな意味でー(苦笑)ってちゃうわ。
長、女王、ごめんなさい。もう、あかんみたい。
こうなったら、刺し違えたんねん。
風の民の意地見せたるわー。
女が短刀を抜く。曲がりくねった刀身を持つ変わった刀だった。
「ふ、この数相手に、抵抗するか、それもいい、楽しませてもらうとしよう」
暗くて顔は分からなかったが、話す男の顔に陰湿な笑いが浮かんでいた。
徐々にお互いの距離が縮まる。
その時。
路地に声が響いた。
「見つけたぞー!って、あれ?お取り込み中?」
男達が振り返った。
「チッ」
「お頭、どうします?」
「構わん、一緒に殺れ」
男の仲間の言葉に、物騒なセリフで返す男。
「はあ?」
何とも間の抜けた返事が返って来た。
あ、あいつ、さっきの銀髪。追いかけて来たん?
どうやってここに?
ちがう。そんなんどうでもいい。
逃がしたらな。
お金盗った上に、うちのせいで命まで盗られてまうなんて、そんなんあかん。
「逃げて!殺される!」
「逃げる!、、、ど、どこへ?」
「アホなん?自分。どこでもいいから、早よ逃げてよー」
男は嘆願する女の声には耳を貸さず、相変わらずの調子で続ける。
「ひーふーみーよー、四人。四人で一人の女の子を手込めにするとは、お盛んな事で、ドスケベが!って、ははーん、さてはお前ら、悪者だな?」
男は決まった!とばかりに黒装束の男達を仁王立ちで指差した。
「面倒だ、このバカからやれ!」
頭と呼ばれた男が他の三人を顎でしゃくる。
男に向かって動き出す三人。
もうあかん。関係無い人まで巻き込んでもうた。
長、うち結局誰も守れんかった。
女の目から涙がこぼれた。
「お?やるのか?夜の俺を舐めんじゃねーぞ、悪者共め!成敗してくれる!、、、決まった。一回言ってみたかったんだよねー」
銀髪の男はどこまでも呑気だった。
三人が飛びかかろうとした、その時。
路地を一陣の風が吹き抜けた。
え?精霊?うち何もしてへんで?
女が困惑の表情を浮かべた次の瞬間。
その風は瞬く間に、三人の男達をそれぞれ包み込む竜巻に変わった。
「がっ!」
「ぐっ!?」
「ごわっ!?」
悲鳴もそこそこに男達は壁や、地面に激しい回転と共に叩きつけられて気を失った。
「バカな!」
「な!?」
それぞれの驚きの声が上がる。
「ふっふっふ。さて残るは貴様だけだ、どう料理してやろうか、、って違うわ、これ悪者のセリフじゃんか(苦笑)」
間の抜けた事を言いながら、銀髪の男は路地を進んで来る。
「クソっ、死ねー!」
頭と呼ばれた男が、我に返り、銀髪の男へと飛びかかった。
飛びかかれなかった(笑)
銀髪の男から発生した蛇のような風に、頭と呼ばれた男は飲み込まれた。
そのまま壁に激突し、その男もまた気を失った。
「嘘、、、何これ?」
女はヘタヘタとその場に座り込んでしまった。
「いやー、我ながら見事。って、やっぱさっきの女の子じゃん、、、お、これまた、なかなかの、、、」
言いながら男は女に近づいて来た。男の目は女の顔にまっすぐ向いていた。
あ、、、フード。
動いたせいか、女のフードは下にずれ、顔が露わになっていた。
「んー。って、あれ?」
男の目線が女の耳に注視される。ピンと尖った耳。人のそれとは違う。
女はエルフだった。
あ、あかん。ホッとして、術解けてもうてた。
この世界にはエルフやドワーフ等、様々亜人がいる。そのどれも、長寿であったり、身体能力や魔力が高かったり、人を凌駕する力を持った存在だった。
人は、コントロール出来ないものに恐怖する。
この世界でも同じ。ヒューマンと亜人は、良好な関係とは言えなかった。
表立ってでは無いにしろ、争いは絶えない。
勿論、全てのヒューマンがそうでは無い。
種族を越えて、心で結ばれている者達もいた。
ただ、概ねは嫌悪感を隠そうとはしなかった。
エルフに対しては、支持率30%といった所だった。
「えっと、、、エルフか?」
男がそう言った。
女は反射的に身構える。エルフは忌み嫌われる存在だった。勿論出会った人達全てがそうでは無い。
優しくしてくれた人も数知れない、が、エルフだと知った瞬間、手のひらを返したような態度になった人もまた、数知れなかったのだ。
だから、女はヒューマンが多い地域では、術により耳を隠し、人として生きてきたのだ。
警戒心を露わにした女が言う。
「だったら何?」
「そうかそうか、エルフかー、いやーエルフ!しかも可愛いなー」
「え?」
女はびっくりした。エルフだと知っても男の態度は変わらない。むしろ興味を持った、、というか、それすらどーでも良さそうに、自分の事を可愛いと言い放つ男。
なんやこいつ?エルフやって分かっても、あんまり気にして無いって言うか、今、可愛いって言うた?うちの事可愛いって言わへんかった?
「あなた、何者?」
至極当然の質問だった。
「えっと、通りすがりの冒険屋?」
「何で疑問系やの!?」
「キター、やっぱツッコミは関西弁に限る!(笑)」
「何言うてんの?関西弁って何やの?ていうか冒険屋が何でうちを助けてくれるの?うち助けたかて、何のお金にもならへんやん?」
そうや。冒険屋なんて、金で動く連中や。
うちを助ける理由が無い!
「何でって言われても、正義の味方だから(笑)それに俺バウンサーだし。何より可愛い女の子を助けるのは男子の務めだ!」
男は胸にかかったバッヂを誇らしげに見せた。
ほんまやバウンサーや、最初あんなに間抜けに見えたのに。また可愛いって言うてるけど(笑)
「お前、何か失礼な事考えてないか?それに確かに金にはならんかも知れんが、とりあえず財布返せ!(笑)」
「あ、、、」
忘れてた(笑)
うちこの人の巾着袋すったんやった。
男に怒っている様子は無かった。
優しそうな目で見つめてくる男。
風の精霊の名残か、男の銀髪が涼しげに揺れていた。
、、、。
はっ、あかん見とれてもうた。
「ごめんなさい」
女は素直に巾着袋を差し出した。
「何で掏摸なんか?」
「お腹空いててんもん」
「うはははは、そうか」
「笑うなー」
そう反論しつつも、女は笑った。5月の風のように爽やかな笑顔だった。
和やかな風が二人を包む、精霊が共鳴しているようだった。
その時、最初に倒れた三人の一人が呻き声をあげた。
「あらら、お目覚めが近いかな、もう行け、あとは何とかしとく」
「え?ええの?うち何にもお礼してへんのに」
「いらんいらん、正義の味方は無給なんだぜ、それと、、ほら、これ、、」
そういうと男は巾着袋から幾ばくかのお金を出して女に手渡す。
現代にして一万円程の金額だった。
「な、何これ?」
「ご飯いっぱい食べるよろし」
男はにっこり笑った。
「いい、こんなん受け取られへん、しかもこんなに」
「いいのいいの、ほら、悪者が起きるから、さっさと行け、ほらほら」
女はその声にせかされて路地の入り口まで走った。
入り口で振り返る。
「あの、名前?あなたの名前何?」
「オズ。オズ・テイラー」
「オズ。うちシルフィー」
「シルフィーか、名前も可愛いな」
「もーからかわんといてよー、えっと、また会えるかわからへんけど、またね」
「おう。またね」
オズか。いい風まとった人やったなー。
また会いたい。
可愛いとか言われたん久しぶりやったなー。
シルフィーは独り微笑みながら、夜の街へ闇のように溶け込んで行った。
カムバック俺!(笑)
いやー、柄にも無いというか、何というか。
夜で良かったなー(笑)
しっかし、エルフかーこの世界だと初めて見た。
んで、可愛いかったなー。
目がくりっとしてて、ちょっと強気な感じ。
リスみたいだったな。
笑うとパッって爽やかになるんだよなー。
シルフィーか。
また会えるかな。ちなみに悪者達は、紙飛行機で呼んだカイロスに連行された。
何だったんだあいつら。
その後、宿屋に着いて、たらふく食って、すぐ寝たのは言うまでもない(笑)
ただ、春の風のような気持ちいい夢を見た気がする。エロとかそういう意味では無くてね(笑)
読んで頂きまして、ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか?
シルフィー登場です。
ホントはもう少し早めに登場する予定でしたが、ここに登場です。
彼女はまたそのうち出てきますので、ご期待ください




