幽霊 半霊 人間
僕、八原桟は半霊だ。
千神立花。
百合黄京子。
彼女らも半霊。
半霊――つまりは人間と幽霊の境目のような、そういった存在のことを言うのだけれど、そのルーツは人によって様々。
僕のように中途半端に幽霊に取り憑かれたせいで半霊になってしまった者もいれば、自殺しようとしたのに何故か死にきれず半霊になってしまった者、死んだことにさえ気が付かず、そのまま半霊として生きていた者、もっと貴重な例を挙げれば半霊と半霊との男女の間に生まれた半霊、みたいな特異なルーツを持つ半霊だっているくらいだ。(ちなみに半霊と普通の人間の結婚は許されない。普通の人間の社会に半霊が関わるのはタブーだからだ)。
ただ、その複雑なルーツに反して、その特徴というか、半霊としての定義は割と明確。
定義一つ目。
僕達半霊は幽霊からも人間からも「普通の人」として認識されるということ。
半霊は人間と幽霊の中間のような存在であるが故か、僕達の姿は生前のものと何も変わらない。肉体だってそのまま成長するし、老いれば死ぬ。
だから世間からは死人扱いなんてされないし、戸籍だってそのまま。その証拠に僕と立花は普通に高校に通っている。
定義二つ目。
半霊には幽霊が見えるということ。
これはさっきと言っていることが矛盾しているように聞こえるかもしれないけれど、僕達半霊は人間に近しい存在であると同時に、幽霊に近しい存在であるとも言える。
だからだろうか、正確なメカニズムは未だ解明されていないのだけど、僕達半霊は普通の人には見えない幽霊が見える。
ここで気になるのは、じゃあ逆に幽霊には僕達がどう見えているのか、ということだろうけれど、これも普通の人間の人たちと同様、幽霊にも僕達は普通の人間たちと同じ姿に見えるらしい。
つまり普通にしていれば僕達は幽霊たちに正体を見破られることはない、ということだ。……もっとも、幽霊の方も普段は普通の人たちと同じような格好をしているので、こちらから見破ることも同様に難しいのだが。
定義三つ目。
半霊、そして幽霊はそれぞれが一つだけ、異能な力を持つということ。
これは定義四つ目にも関連してくるのだけど、例えば僕、八原桟なら半径五十メートル以内にいる幽霊の心を見る力。
千神立花なら、人間でも半霊でも幽霊でも殺す斬撃を飛ばせる力。
百合黄京子なら、どんな怪我や病でも治せる力。それぞれに違った能力が半霊になった瞬間に与えられている。
これらの能力は生前の未練が強く影響していると言われていて、幽霊も同様、未練に強く影響を受けた能力をそれぞれ持っている。
ただ幽霊は僕達半霊とは違い、その異能力を制御する術を持たない。つまりそれはその神業とも言える異能力がこの人間社会に対して悪影響を及ぼす可能性もあるということだ。
何故幽霊がそのように異能力を乱暴に使い続けるのか。これは先程の幽霊が見えるメカニズムと同様、まだはっきりとはしていないけれど、これも未練のせいだと言われている。
未練によって異能を獲得し、未練のために異能を行使する者、それが幽霊という存在だ(ちなみに先程、普通の人間には幽霊が見えないと言ったが、稀に、幽霊が能力を行使している間だけ、普通の人間にも幽霊が見えることがある。今回、人魂を目撃した高校生もおそらくその類だろう)。
そして最後、四つ目の定義。
半霊は皆、霊殺士協会という協会に所属しているということ。
霊殺士協会というのは文字通り幽霊を殺すための協会で、僕達半霊は皆幽霊を殺すための専門家、霊殺士となり、そこに所属する。
さっきも言ったように、幽霊はその未練と能力から人間社会に悪影響を及ぼす恐れが高い。しかし、普通の人間には幽霊が見えない。故に幽霊が見える僕達半霊が霊殺士になり、幽霊の悪影響を事前に食い止める役割を担わなければならない、というわけだ。
所属は任意ではなく、強制。
これは半霊が幽霊と同じように普通の人間社会には危険すぎる異能を備えているから。
いかに自我があるとは言っても、異能な力を持つ半霊を野放しにしておくのは、それこそ危険すぎる。しかし、それらを管理したり保護したりするのにもかえってコストがかかるし、異能の力を使わせて人間社会に貢献させようにも、それらを現代社会が受け入れる体勢など整っていない。
ならば半霊を扱うには半霊しかないだろうということで、半霊だけの協会を作り、そこからはみ出た半霊は協会に殺されるという仕組み、つまり今の霊殺士協会を作り上げ、半霊をそこに強制的に所属させることにしたのである。
昨日京子さんから受けた依頼も、その霊殺士協会からの依頼の一つ。
京子さんは霊殺士協会の橋暮支部の支部長を務めていて、仕事がある場合、京子さんが協会から依頼を持って来て僕達に回すようになっている。
その依頼を無事成功させることでこの橋昏支部、ひいては僕や立花、京子さんの命は保証されることになるというわけだ。
もちろん、自分たちの力では解決できないような事案だと思うのなら、無理に引き受ける必要はない。
その場合、近くの部署の有能な霊殺士が事案を処理してくれるようになっている。仕事の報酬としてのお給料がもらえないのは辛いけれど、協会も強制するようなことはしない。
ただ、それが度重なると、いずれは重い懲罰が降りかかることになる。
最終的には協会からの除籍となり、異端の半霊として排除される。
僕はあの日、立花に救われた。そして京子さんにも住む場所を与えてもらい、仕事も貰えた。
そんな人たちが僕のわがままで消されてしまうのは流石に忍びない。
だから僕は殺し続けなければならない。
京子さんのために、そして何より立花のために。
幽霊を。
何が何でも。
殺さなくてはならない。
……まぁ、他に目的がないかと言われれば、そうでもないのだけれど。
ご一読ありがとうございました。次話も是非ご覧になってください。




