↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『東京インバージョン』  作者: Moon


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/62

第30章 検察(断片)

東京地検の地下資料室は、夜を徹した照明の下で、特有の乾燥した匂いを放っていた。

フロアの隅の細長い机には、クリアファイルと製本された業務記録が積まれていた。紙の端が乾燥して、わずかに反り返っている。

関谷は、その山から抜き取った二冊のファイルを並べ、眼鏡のブリッジを指で押し上げた。

手元にあるのは、他部署から回されてきた監査資料と、半月ほど前に別のルートで押収された改修ログの写しだ。

「これ、どこから回ってきた?」

隣の席で資料を繰っていた若い事務官が、手を止めて顔を上げた。

「監査部からです。先月の処理について確認依頼が入っていまして」

「……同じ番号だな」

関谷は低い独り言を漏らし、ボールペンの軸で二つの文書の日付欄を順に叩いた。

最初のファイルには、十月十四日付の更新記録がある。その数日後の例外処理のログ。そして、北関東からの問い合わせ履歴。

十月二十四日の未明に行われた二つの修正記録が並んでいた。

2026/10/24 03:14:22

2026/10/24 03:42:15

関谷の指が、二つ目の日付欄で止まった。

「この修正履歴。前にも似たのを見た気がする」

事務官がファイルを覗き込む。

「自動処理じゃないんですか」

「かもしれない。そこはまだ分からない」

関谷は古い承認記録へ目を戻した。

承認者の欄だけが空いている。その下に、数年前の改修に使われた識別番号が残されていた。名前はない。

「問い合わせへの回答はまだか」

「先方からは、通常の運用範囲におけるデータ調整だという回答だけです」

「通常の調整ねえ……」

関谷はペンを置いた。

「去年の北関東分を出してくれ」

「全部ですか」

「二十四日の前後一週間でいい。似た修正がないか見たい」

「分かりました」

関谷は二冊のファイルを閉じた。

「どうしますか、先輩」

隣の事務官が、おずおずと尋ねる。

「どうもしない。まだ形になっていない」

関谷は立ち上がり、背もたれに掛けてあったコートを手に取った。

冷めかけた緑茶の入った紙コップをゴミ箱に放り込み、資料の山の間を抜けて奥の部屋へ歩いていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。