第23章 物流の唐突な停止
十月の深夜。
配送拠点の倉庫では、頭上のベルトコンベアが乾いた音を立てていた。担当の男は、冷めたコーヒーを一口飲み、中央管制室の端末へ目を戻した。
配送ルートの一覧が並んでいる。
第一ルート。処理済み。
第二ルート。処理済み。
第三ルートの欄だけ、赤い表示が点滅していた。
「通信エラー:処理不能」
男は指を止めた。
キーボードを叩き、再送をかける。画面が一度切り替わり、同じ表示が戻ってきた。
もう一度。
結果は変わらなかった。
男は受話器を取り上げた。
「もしもし。システム担当ですか。第三ルートが止まってる」
『こちらでも確認しています』
受話器の向こうから、キーボードを叩く音が聞こえた。
『一部端末で処理不能の報告が上がっています』
「どの端末だ」
『まだ特定できません』
男は画面を見る。
「復旧の見込みは?」
少し間があった。
『指示があるまで、そのまま待機してください』
通話が切れた。
受話器を置き、男は画面に戻った。
第三ルートだけが、赤いまま残っている。
そのとき、フロアの奥でフォークリフトが止まった。
積み込みを待っていた商品が、パレットの上に残っている。作業員が一人、端末を確認してから、別の端末を覗き込んだ。
「こっちも出ないぞ」
返事はなかった。
トラックヤードでは、出発を待っていた車両の一台がエンジンを切った。続いてその隣も止まる。運転手が車外へ出て倉庫の入口を見た。
誰も、何が起きているのか説明できなかった。
午前五時前。
管制室の端末が一度だけ暗くなった。
数秒後、画面が戻る。
赤い表示のいくつかが消え、止まっていた処理が順番に動き始めた。配送ルートの一部が更新され、出発時刻が表示される。
男は画面を見ると第三ルートも戻っている。
だが、その下にある二つの端末では、まだ同じエラーが残っていた。
男は席を立ち、隣の端末を確認した。
「……残ってるな」
画面には、処理できなかったデータがいくつか並んでいる。
男はそれを写真に撮り、担当者用の共有フォルダへ保存した。
それから、戻ったルートの出発処理に手をつけた。
朝になり都市のあちこちで、配送を待っていた店員が店頭の荷物を確認していた。
届く予定だった商品が、いくつか届いていない。
コンビニの棚には、飲料の一列だけ空いた場所が残っている。スーパーでは開店前の補充担当が納品予定表と空になった台車を見比べていた。
問い合わせを入れても、返ってくるのは「確認中」という言葉だけだった。
昼前には、別の便が到着し空いた棚は埋まった。
ただ、届かなかった商品について記録された処理番号だけが、倉庫側の端末に残っていた。




