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第17章 別の書類
九月下旬の午後二時四十七分。
官公庁案件を担当する事業管理部のフロアでは、電話の呼び出し音とキーボードを叩く音が途切れることなく続いていた。
長机の端に座る中年の社員が、手元の時計を一瞥する。
今日の締め切りまで、あと二十分。
デスクトップの画面には、霞が関から下りてきた最新の予算合算データが開きっぱなしになっている。各事業セクターの修正方針をまとめた社内向けの案内文書だ。その一部に、前月までの予測値からわずかに動いている項目があった。
やろうと思えば、過去のログを遡り、元の部署まで問い合わせることもできる。だが、それをやれば今日の締め切りには確実に間に合わない。
社員の指がキーボードの上でわずかに迷う。
背後で上司が別の案件で声を荒げている。
社員は迷いを断ち切るように視線を外し、確認用のログウィンドウを閉じた。
「間に合わないか」
呟きながら、決裁ボタンをクリックする。書類は次の承認トレイへと自動的に送り出された。
社員は残された二十分のために、次の未処理案件へマウスを滑らせた。




