表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モンストル・ワールド! ~ モンスターがそれぞれ支配する奇妙な街や国を旅して、家族を迎えていく ~  作者: 初美陽一
2つ目の国 猫又国の、迷い猫《ワー・キャット》

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/48

2-19話 猫又国、出立!(イヤだツラい……)

『『『旅人さんたち、ご出立~! ニャ~~~!!』』』


 アイン達がミーニャを家族に迎え入れてから、数日後――猫又国を出立する日、モンスターたる猫又たちが、揃って見送りのため集まってくれた。


『気をつけて旅しろニャ~! けったいな旅人たちニャけど、ニャんやかんや楽しかったニャ、また追いかけっこするニャ~!』

『ミーニャ、もーおさかニャ泥棒すんニャよ! また来いニャ~!』

『また来てニャ~ン♡ 今度はもしかすると、多分、気が向けば、ラーメン屋とかやってるかもニャン。名付けてラーメン猫又、アリにゃんね……ヨシ!』


『猫又三獣士、旅人たちの旅先の幸運を祈るニャン! 三獣士、敬礼!』

『ウニャオオオ! なんかテンション上がってきて、上がってきてっ……情熱で背が焚けるニャーンッ!!』

『眠り猫、既に半分寝てますニャけど、全寝ぜんスヤに入りますニャン。スピスピ……』

(※書置き:お気にのニンゲンの女の膝で寝てるので欠席ニャン)


 揃って見送りに、というのはちょっと嘘だったが、猫又たちの盛大な見送りに――美貌のメイド・ロゼは無表情に、けれど地に根を張るような固さで別れを惜しむ。


「必ずや、必ずや、また伺います。滞在中、存分にモフらせて頂きましたが、今ひとたびモフってよろしいでしょうか。暫くお別れなので、小一時間ほど――」


「ハイハイ、行くわよロゼ、旅の続きよ続き~、キリキリ歩きなさ~い」


「トゥーナ様。殺生でございます。殺生でございます」


 言葉は名残惜しそうだが、表情は終始、無表情なのでシュールである。


 そして猫又国の中枢、体躯も器量も巨大なる、笑みを浮かべる猫又の美女――猫又女王が、彼方まで轟きそうな声を放った。



『ミーニャよ、もはや迷い猫にあらず、親愛ニャる家猫イエネコよ! 大切な家族、今度は失うことニャく、守り抜くのじゃぞ! 旅人どもよ、妾ら猫又の同胞はらから、ワー・キャットのミーニャをよろしく頼む! 汝らの旅路に、祝福を祈り――ニャニャンと大笑してくれよう! ニャーッハッハッハ!!』



 遠雷の如く轟いた呵々大笑が、アイン達の行く先の雲を切り裂き、行く道に陽光をもたらしてくれる。


 無表情ながらブンブンと手を振るロゼと、快活な笑みと共に「またね!」と手を振るトゥーナ。

 そして、少しだけ気恥ずかしそうに、頬を赤らめたミーニャが――おずおずと、小さく手を振る。


 ミーニャがアイン達の家族になってから、数日間、猫又国で過ごして分かったことがあった。

 ミーニャは決して、猫又国で嫌われていた訳ではない。ミーニャは前の飼い主を求めて孤独を選んでいたが、猫又たちは誰もが、そんな彼女を心配していたという。


 だからこそ猫又女王などは何かと理由をかこつけて、前の飼い主の動向などを隠しつつ、ミーニャを(捕らえる体で)保護しようとしていた。ついぞ、それも適わなかった辺り、ミーニャの能力も相当なものだ。


 あれから猫又女王とも少しは打ち解けたらしい、今は家族のワー・キャットの少女を見て――アインは〝フッ〟と口元を緩めるのだった。


 ◆     ◆     ◆


 さて、猫又国を出立してから、日が落ちる頃合い。

 新たなる家族ミーニャは、少しばかり呆れた顔をして言った。


「全く、誰も狩りの一つも出来ニャいって……今まで、どーやって旅してきたの?」

「面目ないな、フフッ!」

「なに笑ってんニャ。猫パンチするぞ、フシャーッ!」


 笑いどころがおかしいアインだが、ひと狩り終えてきたミーニャの言い分は尤もだ。しかも〝話す知能がある魔物とかはちょっと……〟というリクエストに応え、道すがらの森で草食獣を獲ってきた功労者である。


 と、それはそれ、トゥーナも同様に呆れ顔で横槍を入れてきた。


「ていうか……カボチャ料理ばっかで飽きるなら、言いなさいよねっ! 文句の一つも言わなかったから、不満なんて無いのかと思ってたわよ!」


「ニャ。……ちなみにトゥトゥ、今までどんニャ料理を?」


「そりゃ、カボチャの果肉を使うのはもちろん――皮は油で揚げてサクサクに、種もスナック感覚で食べられる備蓄食に、ワタを使ってポタージュを作り……ソースもカボチャをドロドロまで煮込んで、カボチャ調味料パウダーで味付けしたもので……全てをカボチャで支配する、贅沢フルコースよ……!」


「マジかニャ。……全部が全部、カボチャ塗れ料理で、旅の十日以上を……道理でカボチャに恐れおののいてたはずニャ、アイン……」


 夢にまで出そうなカボチャ尽くしに、けれどアインは軽く身震いしつつ、それでも弁明を口にした。


「い、いや、トゥーナのおかげで食料に困らなかったのは、本当にありがたかったし……それに料理の腕前が確かなのは真実なので、毎回驚くほど美味かったし、心から感謝させて頂いておりました(敬語)。……とはいえミーニャが狩り出来るのは、本当に助かる……食材一つ足せれば、トゥーナの腕前ならアクセントを付けられるしな。ミーニャが家族になってくれて、本当に助かった」


「! ん、んニャぅ……まあ、ね? 全く、しょうがニャいニャア……♪」


 言いながら、どことなく満更でもなさそうなミーニャだった。



 ――さて、話している間に、夜も更けてきた。

 まるで夜営のため焚き木を組むような気軽さで、巨大棺桶の複雑な機構を回転させ、アインが一つの家を建てる。


 どことなく満足そうなアインと、無表情のロゼ、呆れ顔のトゥーナが――エントランス・スワッグのように白百合の花束が飾られている、玄関へと歩んでいった。


 少し遅れたミーニャが立ち尽くしていると、三人そろって振り返る。


「さあミーニャ、おいで」

「ミーニャ様、どうぞお入りください」

「さっさとご飯にしましょ、ミーニャ!」


 そう言って、手招くと――金色の目を、大きくまばたかせたミーニャが、ふるっ、とその体を震わせる。

 ゆっくりと、三人《家族》の下へ、向かっていった。



「――ただいまっ」



 そうして、()()()()へと、入っていった――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ