2-17話 居場所
寒空の下で震えながら独り眠る、そんな長い夜を越えるたび、ミーニャは何度その夢を見たことだろう。
お気に入りの窓際で、陽だまりの中、丸まって眠る。
二階建ての、白い家。
そこには〝あの子〟がいる。
ミーニャが、会いたくてたまらない、〝あの子〟がいる――
『世界で一番、大好きよ――ずっと、一緒にいましょうね』
もう一度、その声だけが聴きたくて、ワー・キャットの少女は探し続けていた。
ずっと、帰りたかった家を――迷い猫は、探し続けていた。
だけど、もう少しだ。
もう少しで、家に、帰ることができる。
「はっ、はっ、はっ……ふっ――!」
猫又国の大路を、風のように駆け抜けた。
疲れるという言葉も忘れて、迷い猫が一直前。
猫又国の領土である外周部、猫又女王の支配が及ぶギリギリの内側に、緑深い小山があるのだという。
侵入者を阻むように、迷路の如く生い茂る森を、抜けた先には――
小高い丘の上に、白い家が、ぽつんと一軒あった。
「! はあ、はあ……っ、ああっ……ニャアッ!」
まだ猫だった頃のミーニャが、前の飼い主と暮らしていた家とは、もちろん別物だろう。
けれどミーニャの記憶にある家と、良く似ている――まるで時が舞い戻ったかのように、ミーニャも思わず錯覚してしまうほどだ。
そして何より、人の比にならぬ猫の嗅覚は、既に嗅ぎ分けていた。
懐かしい、匂いがする。
ミーニャが焦がれ続けてきた、愛おしい匂い。
その家に――〝あの子〟が、いる――!
「ッ――はあ、はあっ」
立ち止まっていたミーニャは、気付けば再び駆け出していた。
小高い丘の上に、宝物のように輝く、白い家を目指す。
はぐれてしまってからも、飼い主を探し続けていた長い時も、一度として忘れたことはない。
そこは、ミーニャが望み、願い続けていた場所。
お気に入りの窓際で、陽だまりの中、丸まって――
そして傍には、〝あの子〟がいて――
時々〝あの子〟の腕に抱かれて、温もりの中で微睡みながら――
幸せな、夢を見る。
一度として、忘れたことはない――疑ったこともない。
「はあっ、はあっ、はあっ!」
そこが、そこだけが――〝あの子〟のいる所が。
ミーニャの〝居場所〟なのだと――!
「はあ、はあ……は、あ」
丘を、登り切った。
探し続け、焦がれ続けてきた、白い家を目前にしている。
「はあっ。……は、ぁ?」
それほど高くない家の柵越しに、まだ距離があるにも関わらず、ワー・キャットであるミーニャの視覚は、遠目からでも窓から覗くものを鮮明に捉えてしまう。
「…………えっ?」
ミーニャの目に、映った光景は――




