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モンストル・ワールド! ~ モンスターがそれぞれ支配する奇妙な街や国を旅して、家族を迎えていく ~  作者: 初美陽一
2つ目の国 猫又国の、迷い猫《ワー・キャット》

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2-15話 猫又国の、迷い猫《ワー・キャット》!

 大焔が渦を巻き、地へ向かう光景を、猫又女王は静かに見下ろしていた。


『……ふぅむ、これまでかの。あの旅人ら、ニャにかあるかと思うたが……あいや、期待しすぎたか。やれ、つまらぬ結末よ……うむ?』


 一瞬、焔が風に薙がれたように、揺らめいた。

 目を細めた猫又女王が、気のせいか、と断じようとした――刹那。


「……――ニャアアアア――……!!」

『――ニャんだと!?』


 陣風、炎を中央から裂く――それを成したのはワー・キャット、ミーニャ!


 否、先ほどまでのミーニャとは、明らかに違う。その身に目視さえ可能なまでの、濃密な魔力を纏っている――金色の魔力を、噴き出していた!

 だが、それがミーニャだけの力なら、これまでの間に発揮していたはずだ。つまり、この膨大な魔力の要因は、別にある。


 今、ミーニャの背を支えるように、力を送っている()()へと――トゥーナが焦燥を叫ぶ。


「ちょっと、大丈夫なのっ……()()()!? アンタそれ、《叡智の結晶》なんて……人間が使っていいモンなのっ!?」

「……っ……!」


 アインにしては珍しく、苦悶に表情を歪めるほどの、尋常ならざる状態だ。しかし当の本人は、途切れ途切れではあるものの、あくまで平静な口調で告げる。


「大丈夫、だ。今、猫又女王の炎を突破するには、収集した《叡智の結晶》から魔力を引き出して……それを、この国で生きてきて、猫又女王を良く知る、猫のモンスターであるミーニャに託すのが一番。それが、最適の選択で……う、ぐッ……!」


「そ、そうは言ってもアンタ、目からちょっと血が出ちゃってるわよ!? ただの人間って自称してるクセに、無茶しすぎなんじゃ……」


「ケホッ。……本当に、大丈夫さ、トゥーナ。《叡智の結晶》のことは、()()()()()()()……かつて一度だけ、()()()()ことがあるからな」


「……へ? 創造した、って、あの……《叡智の結晶》を? 小鬼を大鬼に変えちゃうような、〝賢者の叡智〟とか呼ばれてる、とんでもないモノを?」


「本当に一度だけで、もう創れる気はしないし……創る気も、二度と無いけどな。でも、だからこそ……少し無理をする程度で、こんな風に利用することも、俺なら出来る」


 アインが鉄製の容器の開口部を向け、ただの人間なら持ち得ない魔力を噴き上げ、跳躍したミーニャを後押しする。

 とはいえ〝賢者の叡智〟の異常な力を受けるミーニャもまた、内側から膨張する魔力に、身を引き裂かれる痛みを感じているようだ。


「ニャ、ニャア、ニャアアアッ……! くうううっ……ウウ~……!」


『これは……〝賢者の叡智〟か! あの旅人、只者ではニャいと思うておったが、こんニャ隠し玉を持っていたとは……っ、ええい、されどニャめるでニャい! 妾の最大の妖力を湛える二尾で、早々に叩き落として楽にしてくれようぞ!』


 猫又の火、その最たるを示す妖焔と化した二尾が大蛇オロチの如くうねり、ミーニャを両側から覆わんとする。


「フーッ、フーッ……ミーニャは……ミーニャは……!」


 妖焔に迫られても、苦悶に表情を歪めても――それでもミーニャは、脳裏に響く、たった一人の暖かな声を思い出す。



(世界で一番、大好きよ――ずっと、一緒にいましょうね)

「ッ、ッ――ニャアアアアアッ!!」



 咆哮と共に、金色の魔力が、炸裂するように弾けた。直後、大きく噴き上がっていた魔力が収束し、ミーニャを覆う。

 今、ミーニャは〝賢者の叡智〟により膨張した魔力を、自分のものにしてみせた。巨大に広げるのではなく、ワー・キャットの、その猫の右手に集中している。


「――これニャるは、何者ニャにものにも捉えられぬ、猫の爪。影をも踏ませぬ、猫の足。恐れよ、全てを切り裂くワー・キャットの爪を。祈れ、今こそ家に帰らんとする、迷い猫の神速ゴッドスピードを」


 既に中空を舞うミーニャが、ぐぐぐ、と身を屈め、すらりと長い脚が、倍ほどの太さになるまで筋力を増大させ――空を蹴り、今一度の跳躍を成す。


 もはや姿も鮮明ならざる、一筋の線としか見えぬ金色の閃光が、猫又女王へと一直線に向かい――



「――《猫爪大(キャットクロウ・)嵐舞(テンペスト)》――!!」

『む――むううっ!!?』



 交錯の刹那、金色の中、漆黒の閃光がメッシュの如くに迸り、猫又女王の妖焔の二尾すらも――瞬時に貫いた――!



「っ……どぉだ、見たか、ニャ、ア……―――」


 しかし力を使い果たしたのか、迸った閃光の先でミーニャは力なく、自由落下の速度で墜落していき――そのまま、地面に叩き付けられる――


「――パンプキン・クッション! ったく、世話が焼けるんだから……ちゃんと着地のコトまで考えなさいよねっ!」


 ――地面に叩き付けられることはなく、直前でトゥーナの魔法によって受け止められた。上部を切り取り器のようになった巨大カボチャの中で、ミーニャが憔悴した声を上げる。


「ニャニャ……あ、ありがと、トゥトゥ……でも体がすんげぇカボチャ臭いニャ。煮込んだみたいに柔らかいのはありがたいけど、べっとべとだしニャア……」


「え~、非常事態だったし、文句言わないでよ。それにパンプキン使いの魔女としては、カボチャ塗れも結構カワイイって思うわ!」


「嬉しくニャい……常識的かと思ったけど、トゥトゥも充分ヤベーやつニャ……」


 ハロウィンモンスターの魔女娘も、立派にモンスターである。

 さて、それはさておき、ミーニャの力で窮地を脱した、とはいえだ。


『……ふう』


 一国を支配する、恐るべき力を持つモンスター。

 ため息を持ちながらも、余力は充分にありそうな、落ち着いた佇まい。

 そんな猫又女王が、その巨体で地に足を着け、アイン達の前に降り立つと、トゥーナは焦りを隠すように声を張り上げた。


「っ、猫又女王……何よ、まだやるっていうの!? 面白いじゃない、やろうってんなら、トコトンまでやってやるわよ! 次はアタシが相手してやるわ! でもそろそろお疲れでしょーし、これ以上はお互いに得もないっていうか、この辺で痛み分けってことで終わるのが賢い選択なんじゃないかなとも――」


『……フッ、クッ、クククッ……』


「! な、何を笑って……ニャめて、いえ舐めてんの!? このぉ――」


 やや猫たちの影響を受けつつあるトゥーナが、怒りのまま魔力を繰り出そうとするも――カッ、と猫又女王は巨大な目を見開き、恐るべき言葉を放つ――!



『――あいや、参った、参った、降参じゃ! 妾の負けじゃ、ミーニャよ――おまえの力は、良く理解した。今後は好きにするがよい、ニャッハッハ!』



「は? ……えっ、えっ……どゆこと? ??」


 猫の気まぐれの如く、明朗かつ友好的に告げる猫又女王に、トゥーナは困惑する。

 一方、カボチャの中から這い出してきたミーニャは、まだ警戒を解けぬまま猫又女王を睨みつけた。


「ニャ……急にどういうつもりだ! あれだけ邪魔して、いきニャり好きにしろ、とか……ニャにか企んでるとしか――!」


『ミーニャよ。……おまえの以前の飼い主について、妾は所在を突き止めておる。それを、知りたくニャいか?』


「!? ニャ……それ、って、あの子のこと……ほ、ホントに?」


『妾は、まあ気が向けば嘘もつくが、それでも、意味のニャいウソはつかぬ、あんまり。……うむ、今まで捕まえてやろうと追いかけ回した、その詫びという訳とは言わぬが』


 ふう、と一度だけため息を吐いた猫又女王が、改めてミーニャへと告げる。



『教えてやろう、ミーニャよ――おまえの前の飼い主の、居場所を――』

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