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モンストル・ワールド! ~ モンスターがそれぞれ支配する奇妙な街や国を旅して、家族を迎えていく ~  作者: 初美陽一
1つ目の街 ハロウィン・タウンの、魔女娘《ウィッチ・ガール》

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1-1話 開幕、野垂れ死にの旅、花の少女との出会い

 モンスターの盗賊団に襲われたアインは、およそ一両日ほど旅を続けていた。


「――――ぐふっ」


 しかし今、道ならぬ道のど真ん中で、前のめりに倒れ伏した。入ることを想定しているだろう棺桶に、圧し潰されるとは何たる皮肉だろうか。

 横倒しの状態になって、なお巨大な棺桶の陰から、一人分の影が現れる。


「大丈夫でしょうか、マスター・アイン」


 涼やか、を通り越した、いっそ無機質な声音で、美貌のメイド・ロゼが問う。

 あまり……というか全く心配そうには見えない彼女へと、アインは棺桶に潰された状態のまま返事した。


「見ての通り、大丈夫じゃない。腹が減って、死にそうだ」

「そうですか」


「ああ、そうだ。改めて聞くが……食糧のストックは、何かあるか?」

「ありません」


「……フッ、そうか」


 地面と棺桶の間で、笑っているのだろうか、アインは一言。



「齢、十八にして、俺の旅も―――ここまでのようだな」



 今、謎の青年・アインの旅が、人知れず終わろうとしていた。

 そんな妙に潔い彼へと、メイド姿の美女は、相変わらず無感情な声音で声をかける。


「マスター」

「……フッ、どうしたロゼ。別れの言葉を聞くだけの時間は、まだ残って――」


「歩き疲れたので、棺桶に乗ってもよろしいでしょうか?」

「オヤオヤ、ぶっ倒れている俺の姿が、どうやら見えておいででない?」


 アインは皮肉っぽく返すが、ロゼと呼ばれた美貌のメイドは、特に気にする様子もなく、棺桶に飛び乗った。非常にマイペースである。


 結果、青年を潰す棺桶が墓標のようになってしまった、その上で――メイド風の銀髪美女が綺麗に背筋を伸ばして座る、シュールな絵面が完成してしまう。


 まあ、何にせよ、空腹が解決するわけでもなし。

 謎の青年・アインの旅は、壮大に何も始まらず、静かに終わる――かと思いきや。


「あ、あのぅ……だ、大丈夫、ですか? 行き倒れ、なのかなぁ……なんだか綺麗なお姉さんが、上に乗っちゃってますけど……」


「…………」


「えっと、そのう……お腹、減ってるなら」


 棺桶に潰されたまま、ほとんど姿の見えないアインにかけられる声は、どことなく内気そうな少女の声だった。


「大したものは、ありませんけど……うちに、来ます?」

「――――!!」

「へ? ……ひゃ、ひゃわぁぁぁぁっ!?」


 瞬間、巨大な棺桶が、垂直に持ち上がる――それでも座ったまま微動だにしない銀髪メイド・ロゼも、堂に入ったものだ。


 とにかく、驚いて尻餅をついた白のワンピースを着た内気そうな少女へと、アインは両手で棺桶を抱え上げたまま快諾の返事を出す。


「ありがたく、ご馳走になる――キミの名と、家はどこに?」

「あ、あわわ……え、あ、わたしは、リリィ……家は、えっと」


 ライトブラウンのセミロングを飾る、花のヘアピンが特徴的な少女、リリィは返事した。



「パンプキン・モンスターが支配する

 ――ハロウィン・タウンです――」



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