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二週目は誰も失いたくないので、婚約破棄を目指します。  作者: もち


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 ノエル君はよほど疲れていたのか、夕食とお風呂の間もずっと眠そうにしていた。お風呂の時は溺れてしまいそうで、ヒヤヒヤしたので早々に切り上げた。

 それぐらい、いつ眠ってもおかしくないほど身体をゆらゆらと揺らしながら。今もなお、眠そうにしているノエル君。

 お風呂上がりの濡れた頭を拭きながら話しかける。


「ノエル君、眠い?」

「んー……ね……ない……」


 目をこすりながら答えてくれたが、瞼は閉じたままで返事も曖昧だ。流石に今日はもう限界だろうと思い、抱き上げてベッドに向かおうとすると。


「えほん……」

「明日読んであげるから、今日はもう寝よ?」

「やぁだ……よむぅ」

「だーめ。今日はもう寝なさい」

「やだぁ……」


 半分寝ながらグズるノエル君。目も開けれないほどなら早く諦めて寝たらいいのに。一緒に過ごせるようになったし、明日もあるんだから。


「いつでも読んであげるから」

「ほんと……?」

「うん、約束する。だから、今日は寝よう」

「……うん、やくそく……おやすみなさい」

「おやすみ」


 約束に満足したのか、それとも眠気に勝てなかったのか分からないが、ノエル君はようやく眠ってくれた。静かに寝息を立てる姿にほっとし、起こさないよう静かにベッドから離れる。


「ふぅ……」


 ベッドから少し離れた所にある椅子に座り、テーブルに置いてあったお父様からの手紙を手に取る。ノエル君が起きてしまわないよう、ランプの灯りを手元が見えるぐらいまでに落とす。

 お父様は僕に伝えきれなかったことが書いてあるって言ってたけど……。


『シリルへ

 この手紙を読んでいると言うことは、直接伝えることができなかったのだろう。手紙では語ったことがちゃんと伝わるのか不安ではある。だが何も知らせないよりはマシだと考え、筆を取らせてもらった。

 まず結論から言うと、ノエル君は私の弟の子ではないかもしれない。』

「えっ……?」


 昼間言われたことと全く違う事実に、つい声が漏れてしまった。


『驚くのも無理はない。私だってノエル君が見つかった状況は今だに信じられないでいる。

 私の弟が亡くなったことを知り、私は弟の家にすぐ向かった。弟が亡くなっていた部屋に着くと、ノエル君が弟の亡骸のそばでぼんやりとした様子で立っていた。

 その時のノエル君はボロボロの服を身にまとい、身体も汚れが目立っていた。一瞬、ノエル君が弟を?と思ったがその考えはすぐに消えた。痩せ細った子供が大人を襲うことは難しい。それほどノエル君は弱っていた。』

「……」


 ノエル君が穏やかに眠っているベッドを見つめる。確かに抱き上げた時、この年齢の子にしては小さいし軽いなと思った。……まさか僕に会う前はもっと痩せていたなんて。


『あまり深く考えたくはないが、ノエル君が弟の屋敷にいたのはきっと良くないことなんだろう。ノエル君を傷つけた弟の身内に引き取られるのは、あまり気持ちのいいものではないだろう。だが責任を取って、ノエル君を公爵家に引き取ることに決めた。引き取った経緯を公の場で話してはノエル君が傷つくと思い、話せなかった時のためにこの手紙を書いた。

 シリル、疑問はたくさんあるだろうが、それはまた会った時に話そう。今はノエル君に優しくしてやって欲しい。

 それと、この手紙は読み終わったら燃やしなさい。賢いシリルならこの意味がわかるだろ?』

「はい、お父様」


 暖炉の近くに行き持っていた手紙を炎の中に放り投げる。この手紙は僕以外に読ませてはいけない。どれだけ信頼できる人でも、手紙に書かれていたことは絶対に口外してはいけない。

 この秘密は墓場まで持っていく。

 手紙が燃え尽きたのを確認し、ノエル君が眠るベッドに近づく。


「ノエル君……」


 起こさないよう小さな声で名前を呼びながら頭を撫でる。


「……えへへ」


 撫でられるのが良かったのか、眠りながら嬉しそうに笑っている。その無邪気な顔が愛しくて、胸が張り裂けそうなくらい痛い。


「僕が守るから……」


 もうこの子が傷つかないよう、幸せな毎日を送れるようにしよう。才能がないのは分かっているけど、剣の腕も人一倍努力してせめてこの子だけでも守れるようになろう。


「不思議な子だな……」


 どうして出会ったばかりの子にここまで思うのか、不思議で仕方ない。それにこんな思い、今まで一度も抱いたことがなかった。

 なのにどうして、ノエル君にはこんなにも守らないといけない気持ちが湧いてくるんだろう。

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