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二週目は誰も失いたくないので、婚約破棄を目指します。  作者: もち


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 アレク様が陛下たちに話をしてくれたことにより、ノエル君は僕と一緒に城で暮らせることになった。三ヶ月の条件付きで。


「では、私は屋敷に帰る。シリル、ノエル君を頼むよ」

「はい」

「おじ様またね」


 お父様はノエル君に優しく微笑みながら頭を撫でる。


「ああ、また会おうノエル君。シリルの言うことをよく聞いていい子でね」

「はーい」

「シリル」

「はい」


 お父様は真剣な目で僕を見つめると、懐から手紙を取り出す。


「手紙になってしまい申し訳ないが、シリルに伝えきれなかったことはここに書いてある。後でゆっくり目を通しなさい」

「分かりました」


 手紙を受け取り、無くさないよう懐にしまう。

 お父様が言う伝えきれなかったことは、おそらくノエル君を引き取ることになった経緯だろう。

 ノエル君が僕にずっとくっついていたので、お父様と二人きりになれなかった。クロードがいればノエル君の相手をしてくれたんだろうけど、こう言う時に限って急用ができたと言って消えてしまった。

 デリケートな話題の可能性があったのでノエル君がいる前で引き取ることになった詳しい話は避けていた。


「では、二人とも元気でな。風邪などひかないよう気をつけて。ノエル君、シリルは我慢する癖があるから、無理してたらノエル君が息抜きさせてね」

「お、お父様!」

「はい、おじ様ぼくがシリルお兄ちゃんを守ります!」

「ふふっ、よろしくね」

「はーい」


 ノエル君の元気な返事を聞くと、お父様は馬車に乗り込み帰路に着く。

 馬車が見えなくなるまで手を振った後、僕たちも部屋に戻ろうとすると。


「お兄ちゃん」

「なに?」

「お手てつないで」

「いいよ」


 ねだられたので手を差し出すと、ぎゅっと強く握り返される。


「ふふっ、ノエル君は甘えん坊だね」


 小さいからまだ誰かに甘えたい年頃なんだろう。甘えられるのは嬉しいけど、少し心配な面もある。城で暮らすとは言え四六時中一緒にはいられない。

 僕は毎日何かしらの予定や講義があり、一人で受けなければならない。その間、甘えん坊なノエル君は一人で過ごせんるんだろうか……。

 あ、そうだ。僕が一緒に入れない間はクロードか、僕に仕えてくれている人にお願いしよう。そしたらノエル君も寂しくないよね。


「お兄ちゃんだけだよ」

「え?」

「ぼくが甘えたいのはシリルお兄ちゃんだけ」

「それは……どう言う意味?」


 歩いていた足を止め、しゃがんでノエル君を見つめる。すると、ノエル君は両手で僕の頬に触れてくる。


「お兄ちゃんがいない時は一人で平気。寂しくないよ」

「本当?」

「うん、お兄ちゃん以外に甘えることはないから、気にしなくていーよ」

「そ、っか……」

「うん。ねぇお兄ちゃん、ぼくお腹すいたー」

「そうだね、早く部屋に戻ろっか」


 再び立ち上がると、今度はノエル君がしゃがみ込んでしまう。


「もう歩けない。お兄ちゃん抱っこして」


 両手を広げ上目遣いでおねだりされる。


「ノエル君は本当に甘えん坊だね」

「えへへ」


 そう言いながら抱き上げると、ぎゅっと回された腕に力がこめられる。甘えたがりなのは少し気がかりだけど、甘えられるのも悪くない。それにノエル君に触れていると、なぜかどうしようもなく守ってあげなきゃと言う気持ちが湧いてくる。なんでだろう?


「お兄ちゃん、ご飯食べ終わったら絵本読んで」

「いいよ。でも先にお風呂に入ろうね」

「えー先に絵本読んでほしい」

「だーめ、先に読んだら眠くなってお風呂入れなくなるでしょ」

「そんなことないもん」

「あるよ。ノエルはいつ、も……」


 いつも?あれ、どうしてそんな言葉が口から出たんだろう。まるでずっと前から知っているみたいな言い方……。


「シリルお兄ちゃんどうしたの?」

「あ……ごめん、なんでもないよ」

「……」


 なにか言いたそうな表情。


「ノエル君?」


 名前を呼ぶと、ノエル君は僕の肩に顔を埋め腕の力をさらに込める。


「シリル…………っ、おにいちゃん……」

「……そんなに絵本読んで欲しかった?」

「うん……でも、言うこと聞く。おふろに入るまでがまんするから……」

「そう、いい子だね」

「……」

「今日は一緒に寝よっか。一人じゃ心細いでしょ」

「うん……」


 気づけば自然と言葉が出ていた。

 皇城で働く人たちの仕事はとても早く、急なことにもすぐに対応できる。だからノエル君が過ごすお部屋も準備はもうできているはず。貴族の子は物心ついた時には一人眠るのが当然のことだから、僕の一緒に寝ようと提案するのはおかしなことなんだけど。

 言わないといけないと気がしたから。


「夕食はなんだろうね。ノエル君は食べたいものはある?」


 背中を優しく叩きながら再び歩き出す。


「プリンたべたい……」

「プリン好きなの?僕も好きで、今日のデザートにお願いしてたから丁度よかった」

「うん……父様が好きだったの……」

「そっか」

「……とうさま」


 握っていた力が弱くなったかと思えば、肩から寝息が聞こえてきた。

 しばらくすると、肩に服が濡れている感覚がした。ノエル君に何があったのか、まだ詳しいこと知らないけどきっと大変なことがあったんだろう。まだこんなに小さいのに。


「おやすみ、ノエル君」


 せめて今だけは、幸せな夢を見れますように。

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