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外からアレクさま声がし、身体の力が少し抜ける。良かった助けが来た。
立ち上がって扉に近づく。返事をするために声を出そうとすると。
「えっ……」
「しーっ」
いつの間にか後ろに立っていたセドリック様に口を塞がれて、そして扉の鍵をかけられる。楽しげに笑うセドリック様の目に、血の気が引いていく。
あ、しまった。招き入れるべきじゃなかったんだ。―――逃げられない。
力の差がありすぎて手を振り解くことも、声をあげることも出来ない。
「寝てるのか……」
どうしようか考えているうちに、扉の外のアレク様は一言呟き立ち去ってしまう。せっかくの助けが行ってしまった。
……ここからどうする?セドリック様のこの様子なら、恐らく人払いも済ませているはず。つまり外部からの助けは期待できない。
眠くなったと言って出ていってもらう?……でもすぐにはその事を言っては、追い出そうとしてると悟られるかもしれない。セドリック様に抱く違和感と恐怖が明確でない以上、下手に刺激はしたくない。
「怖がらないでください」
「……」
「酷いことはしません。私はただ、シリル様ともっとお話したいだけ……っ!」
ガシャン!
ガラスが割れる音が部屋に響く。音がした方を見ると。
「ああ、やはりお前がいたか」
声の主はアレク様。大きな音はアレク様がベランダの窓を割った音だった。
アレク様の姿を見た瞬間、安心感が湧いてくる。よかった。助かった。
「シリルから手を離せ」
アレク様の低く冷たい声が部屋に響く。
「命令ですか?乱暴な人ですね」
「ああ、命令だ。その汚い腕を斬られたくなければシリルを離せ」
「嫌です。私はただシリル様と深夜のお茶会を楽しんでいただけです。あなたの命令を聞く道理がありません」
「なら腕を斬るまでだ」
「狭い部屋で斬りかかれば、シリル様に危害が及ぶかもしれないのに野蛮な人ですね」
「俺の剣はシリルを絶対に傷つけない」
「ほぅ……」
「っ、待ってください!」
セドリック様の力が緩んだ隙に叫ぶと、二人の視線が僕に突き刺さる。
「ア、アレク様、まずは剣をしまってください」
「だが……」
「お願いします……」
両手を組んで懇願する。助けてくれるのはありがたいが、事を荒立てたくない。それに皇位継承について始まったばかりなのに、問題を起こせばアレク様の不利になってしまう。
「……分かった」
「ありがとうございます」
「……」
キン、と剣が納められた音が響きほっと胸を撫で下ろす。アレク様が現れたからか、セドリック様は僕を解放してくれる。二人の間に立ち、荒れた部屋を呆然と眺める。
なんとかこの場は収まったけど、この部屋どうしよう……。流石に窓が割れた部屋で寝れないし、かと言ってこんな時間に修理を頼むのは……。
悩む僕とは対象に、アレク様とセドリック様は睨み合いを続けている。
「深夜の茶会とは言い訳がましい。本当はお前が押しかけたんだろ」
「私はちゃんと招き入れられましたよ。窓から入ってくる貴方と違って」
「元より窓から入るつもりはなかった。緊急事態だったから入ったまでだ」
「緊急事態?では元は覗きをしようとしたのですか?はしたないですねぇ」
「貴様っ!」
「あの!」
終わりの見えない言い合いに割って入る。ここでまた喧嘩するのは止めて欲しい。
「部屋がめちゃくちゃなので、人を呼びに行っていいですか?」
「あ、ああ……いや、その必要は無い。今日は俺の部屋で休め」
「えっ?」
「はぁ?婚前の身で一緒の部屋なんてダメに決まってるでしょう」
「何を勘違いしているんだ。使うのは隣の部屋じゃない。移る前の部屋だ。そのままにしてあったから、使えるようにする。行くぞシリル」
アレク様はそう言うと、僕の手を取って部屋から出る。セドリック様が気になったが、振り返ることはできなかった。




