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二週目は誰も失いたくないので、婚約破棄を目指します。  作者: もち


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14

アレク様が目を覚まして更に数日後。快復して日常生活を送れるようになったアレク様は、眠っていた間に溜まった仕事に追われていた。


「なんっで怪我が治ってすぐに仕事させるんだ!少しくらい休暇があってもいいだろ!」

「何を仰ってるのですか。進んで危険な目にあって怪我をして寝てたのですよ。休暇なら十分とったでしょう」

「気絶は休暇じゃない」

「屁理屈は結構ですので仕事してください。そもそも皇太子が危険な場所に飛び込んでこれだけで済んでるのです。むしろ感謝していただきたい」

「うっ……」

「ま、まあまあ落ち着いてください。僕も出来る範囲で手伝いますから、頑張りましょうアレク様」


目覚めてすぐ仕事に追われるアレク様。仕事が溜まってしまったのは僕のせいなので、少しでもお詫びがしたくててつだっている。

おかしいと思ってた。忙しい皇太子殿下が急な旅行に来れたなんて。北部に来てからほとんど部屋に籠っていたし、やっぱり仕事が終わらず持ち込んでたんだ。


「シリル……」

「シリル様、そろそろ剣の稽古のお時間ですよ」

「もうそんな時間ですか?」

「はい」

「剣の稽古?シリルが?」

「この前の誘拐事件で自分の身くらい守れるようにならないと。そう思って始めたんです」


一度目の人生では王配教育に追われて、自身を鍛える時間がなかった。せっかくの二度目の人生、やってこなかった分野に挑戦してみたい。


「別にそんなことしなくても……俺が……」

「すみませんアレク様、時間が無いので話はまた後で手伝いに来た時に聞きます」

「あっ、おい、シリル!」


引き止めようとする声を振り払って演習場へと向かう。

剣の稽古を始めてまだ数日だけど、汗をかくほど身体を動かすのは結構楽しい。剣術のセンスは……あんまりないみたいだけど。


「クロード!ごめん少し遅れた」

「大丈夫っすよ〜。てか、また手伝いに行ってたんすか?」

「うん」

「はぁ……別に毎日行くことないでしょ。あの人仕事できそうだし」

「そうだけど……僕のせいで溜め込むはめになったんだから、手伝うのは当然でしょ」

「シリル様じゃなくてもいいんじゃないっすか?ユリウスって人もいますし」


クロードの言う通り仕事を手伝うのは僕じゃなくてもいい。ユリウス様の方がアレク様と長い付き合いな上に、僕よりも格段に有能な人だ。でも―――。


「……僕の自己満足みたいなものだからいいの。はい、この話は終わり。早く稽古しよ」

「シリル様……」

「クロード」

「……分かりました。では今日の稽古は短剣を使った護身術を教えます」

「お願いします」


木で作られた短剣を握り稽古を始める。騎士団が使うような剣は僕には合わず、護身術ならと渡されたのが短剣だった。

短剣なら持ち歩きやすいし、隠しやすい。なんと言っても軽いから僕でも扱える。本当は騎士が使うような剣を扱ってみたかったんだけど、驚くぐらい筋力がなくてモテなかった。僕は男で令嬢じゃないのに……。


「はっ、ふっ」

「前のめりにならない」

「はあっ!」

「間合いを維持することを意識して下さい」

「たあっ!」

「早まりすぎっす。もっとタイミングを見計らって」


獲物をもたないクロードに斬りかかるが、何度も軽くかわされてしまう。息を切らしながら必死に食らいつく僕とは対象に、クロードの息は乱れておらず汗一つかいていない。


「っ、はあっ!」

「闇雲にふっても体力を消耗するだけっす。ちゃんと相手を観察してここぞで行くんすよ。よっ、と」

「っ!」


間合いに入られたと思った次の瞬間、腕を捕まれ短剣を取り上げられる。


「ううっ……また負けた」

「そう簡単に勝たれたら護衛の意味ないんで」

「あはは、確かに」

「なので別に無理して覚えなくていいんすよ。剣術なんて」


僕の体力とセンスがなさすぎて言ってくれてるんだろうけど、本当に無理はしていない。むしろ新しく学べることに楽しんでいるくらいだ。


「無理してないよ。僕が覚えて使いこなしたいだけだから」

「……もし」

「ん?」


汗を拭いていると、クロードが神妙な面持ちでこちらを見つめてくる。


「俺がシリル様をちゃんと護れてたら……こんなもの学ぼうと思わなかったっすか?」


クロードはまだ責任を感じてるのか。

あの時はお祭りを楽しみたかったから、護衛は遠くからとお願いしていた。その結果、人混みに紛れた犯人に気づけなかった。

誘拐は僕の見通しの甘さが招いたこと。アレク様にも護衛をつけるよう説得され続けていた。忠告をちゃんと聞かず、わざと側に付けさせなかった僕が全面的に悪い。


「そんなことないよ。首都にいた時も北部に来てからも、じっとしてばっかだったでしょ。ずっとこうやって身体を動かしてみたかったんだ」

「でも……」

「もう、そんなに責任を感じなくていいってば」

「シリル様……」

「らしくないよクロード。いつもヘラヘラしてる方が僕は好きだよ」


クロードの頬を摘んで無理やり笑わせる。


「ふっ、ヘラヘラって。そんなふうに思ってたんすか」

「やっと笑った」


クロードの笑った顔を久しぶりに見れてホッとする。


「シリル様……」

「うん、やっぱりクロードは笑ってる方がいいよ」

「……」

「だからね、僕のことは気にせずいつも笑って。僕はクロードが笑ってくれる方が好きだから」

「分かりました。じゃあずっと笑ってるんで……俺の側から一生離れないで下さいよ」

「クロードは僕の護衛でしょ。だから離れるのはクロードの方じゃない?僕に愛想つかしてとか」

「ははっ、全然伝わってねー」

「?」


伝わってない?言葉の意味をちゃんと捉えたから合ってると思うんだけど。


「まぁ今はいいや。それで」

「いいの?」

「いいっす。じゃあ今日はもう終わりましょう。日も暮れてきましたし」

「そうだね」


クロードと並んで離宮へと戻る途中、なんとなくアレク様がいる部屋を見ると。


「あっ」

「どうしたんすか?」

「う、ううん、なんでもない」


一瞬アレク様と目が合った。すごい怒ってるように見えた気がしたんだけど……気のせい、だよね?

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