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「シリル、少しいいか?」
北部に来てから数日。広間で過ごしていると殿下に話しかけられる。
「はい、どうかされましたか?」
読んでいた本を閉じて殿下に向かい合う。北部に来てからも殿下は忙しそうにしており、食事の時以外で話すのは初めてだ。
「あーその……今日は街でだな……」
珍しく言いにくそうにしている殿下。いつもハッキリと言うのにどうしたんだろう。
僕は殿下みたいに忙しくないので、続きの言葉を待っていると。
「ま、祭りに行かないか!街で祭りをやっていてな、予定がないなら一緒にどうだ?」
「ぜひ!行きたいです」
街のお祭りは一度も行ったことがないからずっと興味があった。一度目の人生は屋敷から出ることはなかったし、初めて街に足を踏み入れたのは処刑される日だった。
「楽しみです。何時に行きますか?僕はいつでも大丈夫なので準備して待ってます」
「なら昼前に出発しよう。せっかくだから屋台でご飯でも食べるか?」
「はい!屋台ご飯ずっと食べてみたかったんです」
殿下からの提案に心が踊る。屋台のご飯は屋敷で食べるようなご飯とは全く違って、特別感があって美味しいと使用人が言っていた。
お祭りの様子を聞いた時から、ずっと食べてみたかったんだよね。楽しみだな。
厚手の外套に身を包み、殿下と並んで街を歩く。街はお祭りなこともあって活気があり、人も多く少しだけ歩きづらい。
「シリル、大丈夫か?」
「人が多い場所は初めてなので、少しだけ歩きづらいですが楽しいです」
「楽しいならいいが……やはり護衛をもう少し連れてきた方が」
「だ、大丈夫です」
せっかくのお祭りを大人数で歩いたら周りの人に迷惑がかかってしまう。せっかくクロード達を説得して、遠くからの護衛に留めてもらっているのだ。増やしてしまっては元も子もない。
「シリルが構わないならいいが……」
「せっかくのお祭りなんです。護衛が多くては気が休まりません。あ、殿下あちらに美味しそうなものが売ってますよ」
「お、おい待てシリル」
初めてのお祭りに浮かれ殿下から離れた瞬間。
「っ!」
「シリル!」
横から伸びてきた手に腕を引っ張られ、路地裏に引き入れられる。
あ、まずい。このまま身を任せたら知らないところに連れていかれる。
抵抗するために腕を振りほどこうとするが、相手の力が強すぎて敵わない。こんなことになるなら鍛えておけば良かった。一周目ではこんなことなかったから油断してた……!
「くっ、離せ!」
「少し静かにしてもらおうか」
「うっ!」
「シリル!くそっ、どけ!」
お腹を殴られ意識が遠のいていく。最後に目に映ったのは、血相を変えた殿下がこちらに手を伸ばしている姿だった。




