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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ふゆ彦
第五章 ちりもつもれば鬼になる

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第99話 観光

 ルクスたち三人は、デーモン国の首都バルグラッドを観光していた。

 

 ルイノール陛下とは、食事も済ませたところで解散した。

 そのルイノール陛下は、もっと絡みたいようだったがセバスティアンが書類仕事を押し付けて退散させていた。

 

 近衛騎士というより、やはり執事のような役回りも多そうだ。

 そんなセバスティアンは、案内役をかって出て楽しそうにルクスの前を歩いている。

 

「ルクスさまー! ここから貴族街を抜けますよー」

 

 目に見えないインビジブル観光旗でも、振りそうな勢いだ。

 引率される三人は、じろじろと道行くデーモンの視線を浴びる。

 

「……ルクスくん、この辺でもう大丈夫って言ったらどうかな?」

 

「王様の護衛騎士を、私たちに使っちゃっていいですかね?」

 

 ひそひそと話しかけてくるケニーとアリアに、ルクスはひきつった笑いをする。

 そう思うなら、二人から言って欲しい。

 

 セバスティアンは明るいが、うむを言わせずに実行する力がある。

 普段は、国王をそうやって動かしているのだから当たり前なのかもしれないが、断れない空気が強い。

 

 案内も、それで断れなかったのだ。

 

「貴族街は退屈ですか? 平民ゾーンに参りましょうか?」

 

 ぐっと端正な顔を向けてくるが、ルクスにはその距離が近い。

 

「セバスティアンさまはお忙しい身ですから――」

 

「おや、デーモン・ロードのご令息にさまつけで呼ばれるほど高位の出身ではありませんよ。ぜひ、セバスティアンと」

 

「で、では、セバスティアンさんは……」

 

「もう一声!」

 

 デーモンロードを父にもつルクスは、確かに貴族なのかもしれない。

 しかし、日本で生まれ育ち、ざ・平民として生活している。

 

 セバスティアンも近衛騎士のトップということは、貴族位があるはずだ。

 ルクスの性格もあいまって、いきなり呼び捨てるのは抵抗がある。

 

「俺は基本ユミエラ以外を呼び捨てたことがないんですよ~。勘弁してください」

 

 セバスティアンは、くるりと振り向いた。

 

「ほほー。ユミエラ、さまと……。なるほどやはりオーデュイン卿の娘さんなのですね。我が国でオーデュイン卿が育てたのは、ユミとエラというベリーの実です」

 

「ふたつあるということですか?」

 

「いえ、ひとつで”ユミとエラ”といいます」

 

 オヤジーーーーー!!!

 ルクスが心の中で絶叫する。

 

 スの実とか文字数足りなそうな名前をつけておいて、ここでユミとエラ!

 だったら、スユミでもなんでもつければいいのに、本当にどうゆうネーミングセンスをしているのか。

 後ろを歩くケニーとアリアも、同じことを思っているのかわずかに笑っている。

 

「ネーミングセンスって、頭を打ち付けたら治りませんかねぇ?」

 

「ルクスくん、病気じゃないんだから。もう諦めよう……これだけグランディアで流通しているし」

 

「そうですよ。事情を知らなければ、そういうもんかーって思うですよ」

 

 ふんふんと勝手に話に頷きながら、セバスティアンは生肉の屋台で立ち止まる。

 ルクスは食べられるが、ケニーやアリアには無理だ。

 

「そういえば、ルイノール陛下にドラゴン肉でも渡せばよかったですかね」

 

「ルクスさまは、ドラゴン肉なんて高級品をお持ちで!?」

 

「ヴェンデーノの谷のホワイトドラゴンとブラックドラゴンなんです、ヴェンデーノの谷はここから近いですよね」

 

「近いですが……あまり谷の奥にいらしてはいけませんよ? エンシェントドラゴンが一番奥におりますから。エンシェントドラゴンの強さときたら……この国がつぶれてもおかしくないのですよ」

 

 ルクスは、中ほどまで行ったことがある。

 奥にそんなものがいるとは思わなかった。

 

「とりあえずこれを、ルイノール陛下に……」

 

「いえいえ、陛下をあまり甘やかしてはなりません。食べたいというときは、わたしが城の奥に陛下をくくりつけて取ってまいりますので……!」

 

 ホワイトドラゴンの肉を取り出したルクスと、遠慮をするセバスティアンとで軽くもめる。

 生肉屋の亭主が、突然出てきた超高級肉に目が釘付けになった。

 そんなとき、シュバッっと小さな影が出て、ルクスの手からドラゴン肉を奪って走る。

 

「あっ……泥棒だ!」

 

 ルクスではなく、生肉屋の亭主が大声を出した。

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