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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ふゆ彦
第五章 ちりもつもれば鬼になる

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第98話 デーモンの国③

 ルクスたちは、ぎくしゃくと王城に招かれていた。

 

 今まで、実を集めるのに色んなことがあったが、王様に入り口で出待ちされたことは初だ。

 デーモン王は、楽しそうにルクスの父オーデュインの話をしていて、とてもではないが遮れない。

 

「むっはっは、そうだ、なにか飲むか!?」

 

 巨大な宴会場のような場所で、ようやく王様から問いかけがきた。

 ルクスたちは、実のところルクス以外自己紹介も出来ていないし、なんなら王様の名前も聞いていない。

 

 ヴァシリカの宰相のカルシュテンに、しっかり聞いておけばよかった。

 王様がこんなに人懐っこいとは、思いもしない。

 

「い、いえ、自前のアイテムボックスにたくさんしまってありますから」

 

「ほう? どんなものを飲むのかね?」

 

「俺っ……ぼくは、コーヒーとか水とか、たまにご褒美で炭酸とか。ねっケニー先輩! アリアちゃん!」

 

 ルクスは必死で二人に話題を投げる。

 そして、巨大なテーブルにアイテムボックスから飲み物をありったけ並べた。

 

「ほう? 色々とあるのだな。ケニー先輩とやらは――」

 

「どうぞ、ケニーと呼び捨ててください。職場で少し先につとめただけですから」

 

 ケニーは内心呆れながら、自分もアイテムボックスからドリンクを出す。

 ルクスは、この間のドラゴン狩りでかなり実入りはいいはずだ。

 

 その前も、レッサーファイヤドラゴン狩りなどでもそれなりに稼いでいる。

 まだ倹約して、飲み物も不自由だとは思わなかった。

 

「そうか、ケニーとアリアちゃんは――」

 

「アリアで良いのです! どうぞ、呼び捨てで」

 

 やはり、フォルン村の頃から怪しいと思っていたが異世界言語・Cのオーブでは、名前と敬称が一緒になってしまうようだ。

 過去に注文を受けていたドワーフとカルシュテンは、同じ異世界言語でもレベルが上のものを使っていたのだろう。こういう混合はなかった。

 

「ほう、ケニーにアリアか。三人とも持っている飲み物が違うのだな」

 

「ルクスくんはコーヒーが多くて、僕はルイボスティーやジャスミン茶、アリアちゃんはミルクティーや……これはタピオカミルクティーですね。日本は、他にもいろんな飲み物がありますよ」

 

 デーモン王は、ルクスより背が高い。

 二メートル以上だろうか。

 

 したがって手も大きい。

 五百ミリのペットボトルが、やたら小さく見える。

 

「興味深いな。我も味見をしてみたい。いいか?」

 

「あ、それなら私のタピオカがおすすめです! 食感が面白いと思いますです」

 

「ほおー。たぴおかとな?」

 

 カートが優雅に押されてきて、ルクスに王を紹介した青年が現れた。

 デーモンなのだろうが、快活で表情もあたたかみがある。

 

「陛下、自己紹介をなさいましたか? 心なしか、ルクスさまたちから困ったオーラが」

 

「む、そういえばルクスはまだデーモン・アイを持っとらんのか。我はルイノール・フォン・バルグラッドである。オーデュインとは、オーちゃんルイちゃんと昔は呼び合っていたな」

 

 ルクスの表情筋が、ひきつれる。

 この威厳のあるデーモン王をルイちゃんとは。

 昔というのは、そうとう昔なのだろうが想像できなさすぎて軽く死ねる。

 

「で、デーモン・アイとはどのようなものですか?」

 

 笑いをこらえるあまり、声が震えるケニーが尋ねる。

 アリアは、青年に出された豪華なコップにタピオカミルクティーを注いでいた。

 

「知らぬか。ドラゴン・アイに匹敵すると言われるが、高位のデーモンはレベル120に到達すれば得られるものだ。ルクスも、もう一息がんばれば手に張るぞ。オーちゃんの息子だしの」

 

「そ、そうなんですか……」

 

 とうとう、オーちゃん呼びが復活してしまった。

 三人が肩を震わせる中、ルイノール陛下はストローでタピオカミルクティーを吸った。

 

「なんと! 不思議な粒だ!」

 

「デーモンは、お茶やお酒は娯楽ですからね。陛下がお気に召したのならば、今度わたくしが買い付けに参りましょう。――わたくし、セバスティアンと申します。近衛騎士の、一応トップにおります」

 

 快活な青年が、さらっと名乗る。

 執事的な仕事からなにから、万能そうだ。

 

 コップの底からとれないタピオカに苦戦するルイノール王を横目に、セバスティアンは切り出した。

 

「きたる九月九日に、ユミとエラの実を所望だそうですね。陛下は、古くからの親友に託された実を渡すことは何も問題がないと仰っています。せっかくですから、バルグラッドを観光されてはどうでしょう。閉鎖的な世界ですから、来訪者は大歓迎なのです。地球にあってここにはないアイディアを、ぜひともお願いしたいです」

 

 ルクスたち三人は、顔を見合わせる。

 最後の実は、意外とすんなりと手に入りそうだが。

 

 果たして、このまますんなりと行くのだろうか。

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