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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ふゆ彦
第五章 ちりもつもれば鬼になる

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第97話 デーモンの国②

「とうとう、最後の実かぁ」

 

「いろいろありましたですね」

 

 グランディアのゲートを潜ると、いつもの平原は人がいっぱいいた。

 ケニーとアリアのしんみりした空気も、ざわつきに消されてしまう。

 

 それというのも、先日のクラーケン祭りでSランクのユーナは介助程度、Fランクのルクスがほぼ単騎でしとめたというので大騒ぎになったのだ。

 他のピースメーカー事務所でも、ルクスの評価はギルドで解体費用を副業にした金なし、力なしの荷物持ちという立場しか知らない。

 

 ルクスのアパート飲み込まれ事件で、戦うルクスを目撃したものもいるにはいたのだが。

 話したところで、冗談だと思われたり、火事場のばか力だと噂されて一瞬で終わった。

 

 しかし、クラーケンの話と、探索者ギルドの花形である城石深玲まで駆け付けたことで、がぜん周りの目の色が変わった。

 強さのヒケツを聞かれたルクスは、素直にグランディアでレベリングしたと教えてた。

 

 それで、クラーケンやレッサーファイヤドラゴンが倒せるならば、と多くのピースメーカー、駆け出しの半妖がグランディアに押しかけているのだ。

 シュラの件があってから、グランディアのゲートは頑丈なセキュリティを構えている。

 

 顔認証などの機械から、Sランクスキル所持者が勝手に通れないようになっていた。

 

「でも、これで今まで行った場所が地球と交易が増えるといいよね」

 

「ルクスくんは、秘密にするタイプじゃないと思ったけど……でも、協力断ってよかったの?」

 

 ケニーが言うのは、城石深玲のことだ。

 深玲は、何回でもルクスの助けになると協力宣言をしていた。

 最後の実ならば、是非手伝わせてくれと言っていた。

 

「でもねえ……吸血鬼の城のあとは、デーモンの街ですよ、人間の深玲さまじゃ下手するとおいしいおやつにされますよ……」

 

「え、デーモンって人肉食べないよね……?」

 

「協定で、異世界人の肉は狙わないことになってるそうですよ。まあ、何の肉でもおいしくは食べられるそうですから、わざわざ狙わないそうですけど……」

 

 ケニーとアリアは、半妖であることに感謝した。

 ルクスの言葉は、婉曲的にデーモンは人間を食べると肯定している。

 

「その知識は、お父さんから……?」

 

 話しながら草原を歩く三人に、他の半妖から視線がしつこい。

 ドワーフ作のしっかりした高級装備が目立つのだろう。

 

 ルクスは、いつもへろへろのシャツとズボンで装備を付けていない期間のほうが長い。

 より、純白のコートが目立つ。

 

「いえ、オヤジはデーモンのことなんて、ほぼ説明なしですよ。自分が唯一のデーモンロードだってことも、言わなかったくらいですからね。ほぼ、宰相カルシュテンさまのお話の受け売りです」

 

「さすがの宰相さんです!」

 

「俺たちが、デーモンの首都、バルグラッドにいくことも先に告知にしに行ってくれましたからねー。カルシュテンさまさまです」

 

 ユミエラは、これをルクスの善行のおかげだと言っていた。

 確かに、ベアトリス王女のことを助けなければこんなに親身になってくれなかっただろう。

 最後の実が、一番すんなりと手に入りそうだ。

 

「装備は問題なし。戦闘はないと思いますが……」

 

「気を付けようね。ないとは思うけど、シュラも静かだし」

 

「ケニーさん、フラグみたいだからやめてください!」

 

 三人は、転移石をつかうと同時に唱えた。

 

「「「バルグラッド!!」」」

 

 世界は一転した。

 ルクスたちは、夜の闇の中にたたずんでいた。

 

 明かりは遠く、近くには光はない。

 夜目のきく魔族だけが暮らしているのだから、それも当たり前かもしれない。

 

 夜でも問題なく見えるルクスを先頭に、そろそろと進んでいると甲冑の音がする。

 

「誰だ!」

 

「ええと、ルクスといいます! ヴァシリカの宰相さんからお城に話が行ってるはずなんですが……」

 

「ああ、ルクスさまでいらしましたか。ご無礼を」

 

 カンテラに次々と、火がつけられていく。

 カルシュテンからの伝言は、ケニーやアリアのことにもしっかり触れていてくれたのがわかる。

 

「あの、わざわざ出迎えのためにいらしてたんですか……?」

 

 正式に、何日にバルグラッドに行くとはカルシュテンには伝えていない。

 もしや、無駄な時間を使わせていたのだろうか。

 

「ええ、まあ、色々ありまして。……陛下、ほら、ルクスさまたちがいらっしゃいましたよ」

 

 青年は、快活に返事をして列の奥に気さくに声をかける。

 

「……へ、陛下!?」

 

「むはっはっは! オーデュインのせがれか。よく来たな」

 

 どうやら、とんでもない歓迎が始まった。

 

 最後の実のあるバルグラッドの物語は、こうして幕を開けた。

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