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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ふゆ彦
第四章 朱に交われば強くなる

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第90話 呪いの破壊

 ヴェンデーノの谷の前で、ルクスは自分の黒髪をかき回した。

 

 なにかおかしい。

 宰相カルシュテンに、なにか丸め込まれた気がする。

 どう考えても、ルクス的には貰いすぎだ。

 

 ドラゴン谷に来る前に、ルクスは5千800万ディニーと血抜き魔法具、転移石三十個を受け取った。

 数日後の七月七日には、スの実もたくさんもらえるらしい。

 

「ケニー先輩にも、日本に戻ったら聞いてみよう……」

 

 ケニーたちは日本で売っている人間の血を、何度もベアトリス王女に差し入れていた。

 あれは、プレゼントのつもりだったろうが、もしやあとで支払いがあったのかもしれない。

 

「はっ……そうだ……ユーナ先輩たち!」

 

 一か月以上留守にして、ユミエラを預けっぱなしだ。

 レッサーファイヤドラゴンの肉は渡してあるが、ユミエラのアイテムボックスの限界までしか入れていない。

 

 とっくに食材はなくなっているだろう。

 ホワイトドラゴンとブラックドラゴンは、それなりにアイテムボックスに入っている。

 

 果たして、ドラゴン二体ずつでお詫びになるだろうか。

 ケニーやアリアにも、今回はルクスのわがままで迷惑をかけている。

 

 連絡が途絶えた賢人にも、父誠二にも心配をかけているだろう。

 ユーナ、ネオ、ケニー、アリア、賢人、誠二、それぞれ二体ずつドラゴンを差し入れるとして、十二体は必要だ。

 

 それに――家賃とユミエラの食費。

 レッサーファイヤドラゴンと比べると、ホワイトドラゴンとブラックドラゴンの皮と素材は高額で売れる。

 

 ノルマを十四体と定めて、ルクスは谷に下りた。

 勿論、一番の目的は魔核の破壊だ。

 

「ギャオオオオオオオオオ!!」

 

 運悪く、一部のドラゴンたちは捕まえてきた獲物をむさぼっていた。

 魔剣ドルトウィンの疾風に乗って降りてきたルクスが、憎悪の視線にさらされる。

 魔力をこめると、へばりついた魔核が少し痛むが、ルクスは地味な痛みに慣れていた。

 

「嵐乱斬!!」

 

 一撃で、至近距離へと加速する。

 出来るだけ、ちょこまかと近くをつつくこと。

 

 背後に他のドラゴンを置き、気を付けながらブレスを封じていくこと。

 一回戦った時点で、ルクスは攻略方法を考えてきた。

 

 怒り狂ったホワイトドラゴンのかぎ爪を、魔核で受ける。

 装備を着ていないために、その爪はルクスの腹もえぐった。

 しかし、毒には効かない上に肉体は再生する。

 

「いい感じだ、このまま魔核で受ければ……!」

 

 爪の攻撃以外は回避しながら、ルクスは細かく攻撃を刻む。

 一体、二体と倒すうちに魔剣の攻撃力も上がってきた。

 

 太い首、心臓を守る厚い皮。

 何回も同じ場所を切りつけても薄かったダメージが、どんどん沈んでいく。

 四方をドラゴンに囲まれつつも、ルクスは魔核で受け止めた。

 

「もう少し……!」

 

 汗をかきながら、ルクスは一番大きいドラゴンの個体が息を吸い込むのを察した。

 周囲のドラゴンたちは、案の定上空に羽ばたく。

 

 こざかしいルクスの攻撃に、しびれをきたしたのだ。

 ルクスは魔剣ドルトウィンを構えた。

 

 ドラゴンブレスを受けてもいいことはない。

 しかし、上空に逃れたら空を飛んだドラゴンの中に飛び込むことになる。

 

 高熱が空間を焼き切った。

 ルクスは、魔剣ドルトウィンに魔力をありったけ注いだ。

 

 魔剣は障壁のようにルクスの体を守り、ブレスの波をはじき返していく。

 土埃の中、ルクスは巨体のドラゴンに接近してその心臓をえぐった。

 

 鮮血が噴き出し、ルクスの視界を狭めたが、ルクスはそのまま倒れるドラゴンをアイテムボックスに放り込む。

 上空からは、敵意に満ちたドラゴンブレスがあちこちから降ってきた。

 

「回避!! これじゃ、魔核が壊れないよー!」

 

 魔剣ドルトウィンの力で、ルクスは空を舞う。

 ドラゴンブレスを回避するのは構わないが、接近戦でないと意味がない。

 

 魔核はもう半分と少し壊れていて、ルクスの体感ではあと二撃、三撃ほどで壊れそうだった。

 ドラゴンブレスの雨をかいくぐって、ルクスは少し移動した。

 

 谷底の奥にいけばいくほど、ドラゴンの体躯は大きくなる。

 それでも、飛んでいないドラゴンよりマシだと判断したのだ。

 奥で悠々と構えていたドラゴンたちは、上から弾丸のように飛んできたルクスに襲われた。

 

「疾風旋回!!」

 

 四方八方から切りつけるルクスに、荒々しいかぎ爪が振り下ろされる。

 ルクスは喜々として、魔核で受け止めた。

 パキィと音がして、ルクスの腹部に執拗に張り付いていた魔核が壊れた音がした。

 

「やった!!」

 

 ルクスが勝どきをあげる。

 一か月以上ルクスを困らせ、半年以上ベアトリス王女を苦しめて衰弱させた呪いのアイテムは壊れた。

 ひょんなことから引き受けてしまったことだが、ここで終止符が打たれた。

 

「じゃあ、あとはノルマの数、ドラゴン狩りだ……!」

 

 ヴェンデーノの谷は、ドラゴンこそ強者の谷だった。

 たった一人のヴァンパイアハーフが、こうして恐怖に沈めるまでは。

 

 ルクスのドラゴンを見る目は、今は大金の塊と同じだった。

 宰相カルシュテンの密命を帯びて、こっそりルクスを付けていたヴァンパイアはのちにこのことを国で語る。

 

 ドラゴンスレイヤー、ルクスの一方的な大暴れを。

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― 新着の感想 ―
ついにあのいまいましい魔核がはずれた!よかったぁ~強くなったねルクス!
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