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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ふゆ彦
第四章 朱に交われば強くなる

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第84話 引きうけるルクス③

 アリアは、客室で顔を洗っていた。

 鏡を見ると、むくんだ自分の顔が見える。

 

 ――ブスすぎる。でも、肝心の見てくれる人は……。

 

 ルクスが魔核を引き受けて、五日たった。

 会話は出来るし、アイテムボックスなども使える。

 

 それでも、尋常ではない汗を流し、苦しそうにのたうち回っている。

 ヴァシリカの医者によると、ベアトリス王女も最初のうちは似たような症状だったという。

 

 ――時間がたつに連れて、弱っていくんだ。

 

 ルクスに頼まれて、力づくで魔核を引きはがそうともした。

 しかし、ヴァンパイアとて怪力なのだ。

 そんなことは、試したに決まっている。

 

 血を飲むかと聞いても、ルクスは人間の食べ物で構わないという。

 飲めないわけではないが、自分が欲しているのはいつもの食事らしい。

 ただ、肉だけは多めで欲しいと言っていた。

 

「なんで、料理してこなかったんだろ……」

 

 ヴァシリカの料理人も、人間らしい料理にはくわしくない。

 魔族向けのものは習得しているが、ヴァシリカには基本人間はこない。

 

 アリアが日本でレシピと具材を買ってきて、厨房に立っているが結果は無残だ。

 基本、焦げたベーコンや何故か水っぽいスクランブルエッグ。

 

 肉じゃがは、半分溶けて鍋にへばりつき、味もなんだかへんてこだ。

 それでも、おいしいと食べてくれるルクスに、アリアはさらに泣けた。

 

 もっと練習して、簡単なレシピから作れるようにせねば。

 いつまでも残飯のような食事を出すわけにいかない。

 ルクスの復活のためにも、栄養のあるご飯を作れるようにならないといけない。

 

「よし、やるぞ!!!」

 

 自分に喝をいれて、アリアはルクスの顔を覗きにいった。

 スーパーで出来合いの総菜を買いこんで、アイテムボックスに入れてある。

 練習中のアリアの料理よりはよほどおいしいので、マシになるまでは総菜を出していた。

 

「ルクスさん……?」

 

 隣の客室を開けると、なにやら騒がしい。

 取り乱した医者や、メイドの悲鳴まで聞こえる。

 

 さては悪化したか、と駆け寄ったアリアは、魔剣ドルトウィンを自分の胸に当てようとするルクスと、それを止めようとするメイドとの争いを目撃した。

 

「あ、アリアちゃん……いいとこに……止めるのを止めさせて……?」

   

「ルクスさん……」

 

 アリアはルクスのやりたいことを悟った。

 体を傷つけて、魔核ごと引きはがすつもりなのだろう。

 

 実は魔核に呪われて割とすぐに、ケニーが試みて失敗している。ルクスは意識がなかったので、知らないのだ。

 

「それ、ケニーさんが試してますです」

 

「何回やっても……いいじゃないか……」

 

 苦し気な顔で、ルクスが微笑む。

 当人は、ちょっと痛いなで済んでいるが、見ている側のほうが痛い。

 

 アリアは説得しようとして――やめた。

 ベアトリス王女に出来なくて、ルクスに出来ることは試すべきだ。

 

「やりましょう」

 

「さすが、アリアちゃん……」

 

 魔剣を受け取り、振りかぶろうとしたアリアは突如魔剣を取り落とした。

 受け取ったまでは良かったが、使おうとすると重力のように重い。

 

「ルクスさん、私にはこれは使えませんです。おそらく、所有者であるルクスさん以外は使えないようになってるんです」

 

「え……それは知らなかったなぁ……バルガンさん……シュラ対策で組み込んだ、かな……」

 

 アリアのマナ石釘バッドは、素材を傷めずに仕留めるものだ。これには向かない。

 予備の剣を出すと、ルクスは目をしばたいた。

 

「アリアちゃんの予備武器は初めてみるなぁ……」

 

「普段は、出番がありませんですから」

 

 医者とメイドはおろおろしている。

 アリアは、魔核ごとルクスの胴体をぶった切った。

 

 すぐさま、切れた魔核を引っ張る。

 ルクスも、医者たちも一生懸命に引きはがそうとするが、ルクスの体の再生と共に戻ってしまった。

 

「やっぱり駄目でしたね……」

 

「アリアちゃん……今度は、魔核スレスレに切ってみて。魔核を切らずに胴体から、剥がせない、かな……」

 

「はい」

 

 医者たちはおそれをなしたようだが、アリアは再度振りかぶった。

 ルクスの胴体が再び切られる。

 

 ほとんど出血しないので、切られた断面が綺麗に見える。

 アリアたちは、すれすれだった魔核を夢中で引きはがす。

 怪力の三人がかりでも、魔核はぴくりともしなかった。

 

「ダメでした……」

 

 アリアは泣くのをこらえて、必死に冷静な声を出す。

 魔核そのものに、鋭利な剣でゴリゴリと削るのは既に何度も試していた。

 

 一体、あとは何の手段が残されているのか。

 

 アリアにもルクスにも、未だ解決策はわからないままだった。

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絶望的な雰囲気。どうやって剥がす?解決策はあるのか?
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