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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ふゆ彦
第四章 朱に交われば強くなる

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第76話 ユミエラのピンチ①

 ルクスは鼻歌まじりに帰路についていた。

 ピピピとなるスマホの音も、ルクスを祝福する音に聞こえる。

 

 残る実はあと二つ。

 最初は、どうなるのかまったくわからなかった病気を治すアイテムだが、色んなことが起きながらも終わりが少しずつ見えてきた。

 

 ユミエラにルクの実を食べさせたら、ギルドにいってレッサーファイヤドラゴンの解体でもしたい。

 ドラゴン肉は、うまみが最上級だ。

 

 五グラムでも二万円以上するし、そうそう流通していない。

 売ればもうかるが、ドラゴンは素材も高い。

 

 それでもルクスは自分の取り分の肉は、すべてユミエラに食べさせようと思っている。

 ドラゴン素材は、血さえ高級なので丁寧に解体しなければならない。

 

 早いところ、解体して深玲に渡さなくてはならないし、卯実誠二に買い取りにも出したい。

 前回の元シュラの魔石の買い取りは時間がかかっているが、明日には終わると連絡がきていた。

 

 魔石のお金に、レッサーファイヤドラゴンの素材代も加われば、貯金はいくら増えるのだろうか。

 もやしばかり食べていた生活から、ルクスの食生活もかなり改善されている。

 

 近日中に手に入る大金に、うきうきしない人間はいない。

 足取りも軽く帰宅しようとして、ルクスは棒立ちになった。

 

 ルクスとユミエラが暮らすぼろアパートが、影も形もなくなっていた。

 

 そこに広がるのは、ダンジョン。

 立ち尽くすルクスをせかすように、スマホが鳴り続ける。

 

「……もしもし」

 

「やっとでた、ゲボク! あんたの家が突発型ダンジョンで消えたの! ユミエラを探しにアタシもネオも潜ってるから早くきなさい!」

 

「はい!!!!」

 

「――ちなみに、ユミエラとは電話が繋がらないわ。ダンジョン化の衝撃で無くしたのかもしれない」

 

 ショックで固まっている場合ではない。

 ユミエラには武器もない。

 

 ましてや、まだ体力は戻っていないのだ。

 整備をするダンジョン発生局に、ピースメーカーの証明書を処理してもらいながらルクスは、冷や汗が止まらない。

 

 今は、ダンジョンが発生して何時間経ったのだろうか。

 突発型ダンジョンの終了をしらせるブザービーターを、いつものように装備する。

 

 六時間経過すると知らせるブザービーターが鳴ったら、突発型ダンジョンは中身ごと消えてしまう。

 

「ユミエラ!!」

 

 魔剣ドルトウィンを持って、ルクスはダンジョンに駆け込んだ。

 

「あいつ、ほんとにピースメーカーか? Fランク記載だったが、あの装備はたけぇぞ……」

 

 ルクスのダンジョン許可を出した職員のひとり言は、ルクスに届かず消えた。

 

「ユミエラ、ユミエラ、ユミエラ……! 幼命探知(インファント・サーチ)!」

 

 妹の無事を祈りながら、ルクスはダンジョンを駆ける。

 中はジャングルになっていて、アパートのあった面影はない。

 

「ルクス、中に入ったな? 僕のナビゲーション通りに動くんだ。まずは……」

 

 ルクスの背後で、攻撃が弾けた。

 魔結晶コートが、攻撃を無効化したのだ。

 

 ルクスは、スマホをスピーカーにしてコートの中に入れる。

 マーダートレントが、枝と根を手足のように攻撃してきた。

 

 トレントは、命を持った木で周りの木と同化して奇襲してくるモンスターだ。

 絡まれれば窒息死もありえる。

 

「はっ!!」

 

 ルクスは、魔剣で疾風を作るとそれを斬撃化した。

 マーダートレントが、弾き飛んで消えた。

 

 特に素材にもならないモンスターなので、ルクスはネオのナビに従って進む。

 十二月ごろのルクスなら、絡みつかれて泣いているところだ。

 

 それでも、今のルクスは先を急ぐことしか考えていない。

 ユミエラになにかあったら、正気ではいられない。

 

 泣いているだろうか。

 それとも、途方に暮れているのだろうか。

 

 既に助け出されていれば、それで構わない。

 ルクスは、張り裂けそうな気持のまま、魔剣ドルトウィンの力を推進力にして空を駆ける。

 

 刻一刻、突発型ダンジョンの時は残酷に針を進めていった。

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間に合ってほしい。ルクス急いで!
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