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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ふゆ彦
第三章 吸血鬼も歩けば勇者に当たる

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第70話 お詫びの品②

「え、お礼の品ですか……?」

 

「礼と詫びじゃ。聞いたところ、おぬしが使っていた剣は借り物だそうだな。折れたものをみたがミスリルの剣じゃな。わしらなら同じミスリルでも最上の硬度を出してやれる」

 

 日本に戻ったら謝って、同じものを賢人に買わねばと思っていた。

 同じものよりいいものなら、喜んでもらえるはずだ。

 

「ほんとうですか!? 助かります!!」

 

「あとは、おぬしの装備だな。再生まかせだったが、ミスリルホースを倒しているときはきちんと回避しておったからな。多少のダメージでも壊れない装備を作らせてくれ」

 

「おおお……!! ありがたいです!」

 

「じゃが、わしらとしてはそれで終わりではない!」

 

 バルガンとタルボは、凍った大地を揃って指さした。

 

「あそこに封印した魔結晶で、おぬしに魔剣を作りたいのじゃ!」

 

「ええーー!! 封印はどうするんですか?」

 

「それは……レインフォール卿を呼んで……」

 

「え? 親父と連絡とれるんです?」

 

「取れないんじゃが……」

 

 バルガンたちの歯切れがどんどん悪くなる。

 なんとしてもルクスに魔剣を作りたいのは伝わってくるが、手段は浮かばないらしい。

 

「うーん、もし魔結晶で魔剣を作ってくれるのであれば……俺が取りに行きましょうか?」

 

「なにっ! おぬしも極寒魔法が使えるのか!?」

 

「いえいえ。母の闇魔法はユミエラがついでますけど、俺は魔法系はからきしで」

 

「じゃあ、どうやってやるんじゃ」

 

 ルクスはずたぼろの服を叩いて、笑った。

 ここまでダメになっていると、この作戦は有効だろう。

 

「自分の足で取りにいきます。剣さえ貸してもらえれば」

 

 ケニーとアリアは、顔を見合わせる。

 二人には、ルクスの作戦がわかった。

 

 バルガンが、前に作ったという剣を借りてルクスは凍った山のふもとへ向かう。

 ドワーフたちも、さすがに酒を置いてルクスについていった。

 

 ケニーとアリアは交代でテントに入って、ほっかいろを足す。

 ここからは長丁場だ。

 ルクスを見守るには、底冷えへの対策が必要だった。

 

「いきまーーす!」

 

 ルクスは、極寒の中、靴を脱いだ。

 その素足が、踏んだものを凍らせる呪いを踏み、膝まで凍り付いて動かなくなった。

 ルクスは、そのまま反対側の足を踏み出して凍り付く。

 

「それで一体どうするんじゃ……」

 

 呟くバルガンが、次の瞬間息をのんだ。

 ルクスが、自分の足を切り取ったのだ。

 

 再生して一歩進むと、また自損。

 ルクスの再生は早く、切るほうが時間がかかるくらいだ。

 点々と、凍った地に切られて放置された足だけが、不気味なオブジェのように取り残されていく。

 

「人道的じゃないのぅ」

 

「本人としては、画期的だと思ってると思います……誰も真似できませんけど」

 

 ケニーがそっとコメントして、アリアが微かに苦笑した。

 ルクスは、自分が傷つくことに慣れている。

 

 そして、その分他人が傷つくことを恐れる。

 自分は再生するからと、自分へのダメージを計算しない。

 

 アリアとしては、もう少しわが身を大事にして欲しいところだ。

 ルクスは、どんどんとオリジナル手法で奥に進み、最奥にある魔結晶までたどり着いた。

 青と緑の魔結晶を持って、ルクスは”どっち?”という身振りをする。

 

「どっちももってこーーい!!」

 

「りょうほーーーう!!!」

 

 風向きが、ケニーたちの方角を風上にしたので、ドワーフたちが大声を出す。

 ルクスは頷きながら、上着のポケットに入れると来た道を同じ方法で戻り始めた。

 ケニーは、アリアの腕を軽く引いた。

 

「先に戻って、ルクスくんにあったかいごはんを用意しよう? 凍傷ごとぶった切ってるんだろうけど、体はかなり冷えたはずだよ」

 

「はい!! 私も食料と鍋はアイテムボックスに入ってます」

 

 バルガンの家で、狭さに首をすくめながらケニーとアリアがカレーを作っていると、唇まで真っ青なルクスが入ってきた。

 暖炉は薪をたくさん入れている。

 ルクスは、燃えない程度に暖炉にはりついた。

 

「はぁ~~~、つめたかったぁぁ。再生してるとはいえ、凍傷の感触は辛かったなー」

 

「それで済んでるのが、おかしいよ……」

 

「そうですよ、無茶ですよ」

 

「でも、せっかくの無料タダだし……」

 

 カレーの匂いにうっとりしていると、バルガンとタルボが顔を覗かせる。

 家の中は定員オーバーなので、ほんとうに顔だけだ。

 

「ルクス、おぬし五日後に取りに来い。魔防具と魔剣とミスリル剣、全部用意するからな」

 

「ドワーフ総勢でかかれば、あっという間じゃ!」

 

「ありがたいです~」

 

 残業ダイスキ部でも、戦闘員として動くことがある。

 素手の期間が短いのは助かる。

 

「あっ……五日後に返すので、それまでさっきの剣借りてていいですか?」

 

「構わん! ……それより、いいにおいがするな?」

 

「おいしそうで、しかも食べたことのない匂いじゃ」

 

 言葉の端々から「食べさせろ」という圧がある。

 ケニーは慌てた。

 

 ケニーやアリアのアイテムボックスには、ルクスのようにバカげた量は入っていない。

 ワタリの郷のドワーフたちを含めると。五十人どころじゃない量になる。

 学校の給食用の鍋と食材が必要だ。

 

「いもと、たまねぎ、人参、肉を切って茹でてくれれば、カレールーは渡しますよ。ただし、全員が満腹になるほどは持っていません。五日後に、たくさん仕入れることは可能ですけど」

 

「おお! 今は全員が一口でも食べられればいいんじゃ。そうしてくれ!」

 

「そうじゃな、ただとは言わん。そのな二人の防具を用意しよう。ルクスのものよりは劣るが、アダマンタイトでドワーフの生粋の技をこめようぞ」

 

 ルクスも、交渉に慣れたのか注文をだす。

 ドワーフの大好きな肉はアイスブルの肉だ。

 三人のカレーでは、食べ応えがないだろう。

 

「では、今なら激辛パウダーもつけます」

 

「おお、辛くできるのか!! そりゃあいい」

 

 こうして、予期せぬカレーでケニーとアリアの分も防具ができることになった。

 この日、シュラ撃退を酒の肴にドワーフの郷は祭りが始まった。

 ルクスとケニーは、酒を辞退するのに必死だったが。

 

 グランディアの夜は、平和に更けていく――。

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