第69話 お詫びの品①
シュラを見事撃退した。
それなのに、ルクスから出てきた言葉は鬼哭丸の破損の嘆きだ。
ドワーフを含めて、全員がヨヨヨと崩れる。
「コーネルの皆、無事か!! 我らワタリのものが今援護にきたぞ!!」
三十人ほどのドワーフたちが、武装して空間転移をしてきた。
しかし、周りを見渡してどうやら終わったようだと判断する。
「すまぬ、遅かったか」
「いいや、タルボ。間に合ってたら被害が増えただけだわい。正直、ヴァンパイアハーフのルクスがおらんかったら全滅しておったわ」
ルクスは、攻撃を受けてズタズタになった服で寒がりながら、アイテムボックスからユーナの糸を出していた。 自分で巻いて治したケニー以外の、怪我をしたドワーフに癒しの糸を巻いて回っている。
アリアは、そんなルクスの補助をしていた。
「なんと、そんなに強かったのか。郷が助かったのぅ」
「シュラも手ごまを三体無くしたんじゃ。しばらくはこないじゃろ……しかし、ルクスをはじめ三人にはお礼をしないとのぅ。戦う必要はおぬしらにはなかったのに、怪我まで負わせて」
ユーナの癒しの糸で右肩とお腹を回復させたケニーは、温かいコーンポタージュを配ってあるく。
量は少ないが、うまいとドワーフたちが喜んでいた。
ワタリの郷長のタルボと、コーネルの郷長のバルガンはなにやらひそひそ密談を始める。
「すみません、ルクスさん……。ドラゴンアイが使えなくて、全然お役にたてませんでした……」
アリアが、しょんぼりとルクスに謝る。
ルクスは一番上のコートだけ、ネオのものを借りながら不思議そうな顔をした。
「いやーそもそも、シュラを笑いものにした俺がいけなかったんだし……」
「ドラゴンアイに頼り切りはよくないと学びました! ルクスさんはどうやってわかったのですか?」
「うーん……勘? 本能?」
アリアはがっくりと項垂れる。
自分なりに戦闘本能はむき出しにしたつもりだ。
あとは何が足らないのかが、分からない。
「俺がヴァンパイアとデーモンのハーフだからかなぁ……。でも今回は、また偶然デーモンモードになったから今回の勝ちはずるみたいなもんだよ。俺は実力で勝てるようにしなきゃ」
「今回のが……ずる? でも向こうだって大金でチートオーブ買ってるんですよ? おそらく自分のお金だけではないでしょう……」
「鬼哭丸が折れたのは、俺の鍛錬が足らなくて角度が悪かったんだと思う。予備の武器がないのも、次会ったときにも確実に使えるか分からない力で対応しちゃったのも、俺が未熟なせいだね。まだマナアシのお金が400万もあるんだから、注文して賢人くんに返しておけばよかったよ……」
アイテムボックスからホットコーヒーを取り出して、ルクスはごくごくと飲んだ。
これはルクスが自分用に買い足したものだ。
ユーナの癒しの糸も、ルクスがもらった無料分は使い切ってピースメーカーの仕事用分まで手を出している。
地球に戻ったらユーナに、糸の金額を払わねばならない。
「なんというか、ルクスくん。変わったね」
背後からケニーの声がして、かがんだままのルクスはケニーを見上げた。
「前だったら、勝てたラッキー! とか、次からはネオ先輩にもついてきてもらお! とか、そういうことを言ってたけど、鍛錬が足りないなんて言葉が出てくるとは思わなかったよ」
「でも、ケニー先輩。これは結局はユミエラの為なんですよ」
「ドワーフの郷と事務所の問題じゃなくて??」
ルクスは、缶に半分ほど入ったコーヒーを握る。
寒さのあまり、もうコーヒーはアイスコーヒーになり缶の口には霜がおりている。
「フォルン村も、ティルノア港町も、シュラの被害にあってましたよね。あのときは、俺たちとは会ってもいなかったけど、俺に今回負けたことで、シュラは積極的に迷惑をかけてくると思います。俺たちの行先が万が一漏れた場合、ユミエラのための実が全滅する可能性だってあります。そういうときのために、強くなって次こそ守れるようにならないと。結局デーモンモードはあてにならないし、そうなると鍛える以外ないんですよ」
その顔は十二月にオロオロしていた面影はない。
四月下旬の今、明らかにルクスは様々な面で成長していた。
「よう言ったルクス。わしらドワーフから、助けてもらった礼と詫びの品を渡すから、受け取ってくれ」
そういって、にかっと笑ったのはバルガンとタルボだ。
「最高傑作を用意しようぞ」
「ドワーフたるもの、恩義にはこたえないとのう」




