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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ふゆ彦
第三章 吸血鬼も歩けば勇者に当たる

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第63話 ダンジョンへの救援③

 突発型ダンジョンの中は、およそCランクのモンスターが多かった。

 ルクスの足元まである川も、子供の足では脛が半分は浸かるだろう。

 

 先頭はネオ。真ん中にルクスと稲葉と星明りのスタッフの女性。最後尾はユーナ。

 急いで、他の救援者の元へと歩いているが、ダンジョンの中はいくつもの分岐路に分かれていて、ルクスはいま自分がどのあたりにいるのか分からなくなっていた。

 

 ネオのドラゴンアイがなかったら、とっくに迷子になっている。

 

「他のピースメーカーの人たちも心配ですね。迷いそうです」

 

「ルクスじゃあるまいし、出口に向かうくらいは出来るさ」

 

「そうねえ、でも出口に人が固まってるってことはダンジョンボスが倒せていないんだわ……そこが心配ね」

 

 稲葉は、珍しそうにダンジョンを見上げている。

 探索者の行く永続型ダンジョンには、こうした迷宮のような形は少ないだろう。

 

 どういう経緯で稲葉が選ばれたのか分からないが、ルクスは気の毒になってきた。

 半妖の中に好きで長時間いるとは思えない。

 

「危ない!!」

 

 ルクスは、稲葉とスタッフ女性を突き飛ばした。

 マンイーターバスが川から躍り出て、稲葉たちがいた空間を大きくかじる。

 ルクスは庇うことに集中していて、左腕を噛みちぎられた。

 

「ああー!! シャツがまた死んだー!!」

 

 ルクスがまた服の負傷を嘆いたが、庇われた稲葉の血の気が引いた。

 

「ハイポーションを! ああ腕が……!」

 

 ちぎられた断面を、稲葉が強く掴む。

 救助された女性も、大きく息を飲んだ。

 

「あ、あの……心配はありがたいんですが、治るんで大丈夫です」

 

「な、なおる……??」

 

 稲葉に腕を掴まれたまま、ルクスの腕の再生が始まった。

 唖然とされながら、傷一つない腕が戻る。

 

「これが、ヴァンパイアハーフ、ですか……」

 

「はぁ、まあ、こんな感じです、ね……」

 

 ヴァンパイアも、魔族の一つだ。

 高位であれば、再生もする。

 

 だいぶ混乱させている稲葉には、デーモンハーフでもあることは一旦黙っておいた。

 半妖なだけでも差別される。

 そこに、ハーフアンドハーフとはいえ純血だとは言いにくかった。

 

「痛くはないんですか……?」

 

 次の目標へと歩きながら、稲葉がルクスに話しかけてくる。

 ルクスは、稲葉が気にしないように快活に答えた。

 

「ちくっとした程度ですかね!? まったく痛くないわけではあるんですけど、どうやら他の人とは痛覚が違うらしいです。慣れてますしね!!」

 

「これに慣れて……」

 

 可哀そうな空気を出されたが、ルクスからしたら最近は怪我は少ないほうだ。

 以前はダンジョン一つ入るだけで、シャツが何枚も死んで後半は半裸なことが多かった。

 グランディアに行きだしてから、服の死亡は激減したと言っていい。

 

「声がしたぞ……! 走れ!」

 

幼命探知(インファント・サーチ)に反応がないってことは、また大人のスタッフね!」

 

 全力で走りたいが、兎獣人のハーフの女性を囲んでいるので速度は遅い。

 唯一、ターゲットの位置がわかるネオが、一人飛び出していく。

 

 ルクスの仕事は、稲葉と女性を守ること。

 戦闘する音が聞こえてきても、ユーナもルクスも気に留めなかった。

 

 ネオの強さには、実績がある。

 相性が悪ければ、ユーナを呼ぶ声がするだろう、と思っているくらいだ。

 

「うわっ、足元気を付けてください! 深くなってます!」

 

 ルクスの足が、ふいに大きく沈んだ。

 そして、何かを踏みつける。

 それは、鋭い牙が尖っていた。

 

「なにかっ、いました! ユーナ先輩!」

 

 ルクスは鬼哭丸で自分の足をスライスする。

 ルクスの足を咥えたミラージュクロコダイルを、ルクスが怪力で持ち上げた。

 すかさずユーナが、モンスターの首を刎ねる。

 

「ゲボク……ルクス、この皮、高いやつよ! 落とした首も拾って!!」

 

「はいはい」

 

 足はとっくに再生したルクスは、ダンジョンの入り口へと流れる川からミラージュクロコダイルの頭部を拾う。

 

「シャツと、パンツはあとで経費で買ってあげるから、安心しなさい」

 

「さすが、ユーナ先輩!!」

 

 稲葉の前だからか、ユーナの声はいつもより優し気だ。

 稲葉が調査中は、これはいくら服が死んでも買って貰えそうだ。

 

 そんな邪念も浮かんだが、出来ることなら回避するが一番に決まっている。

 ルクスは、気を引き締めた。

 

「ユーナ、この人も怪我している。癒しの糸をくれ」

 

「長い時間、ダンジョンにいたんだもの。大丈夫ですか? 今直しますから」

 

 ネオが、たぬき耳と尻尾の半妖の男性を連れてきた。

 その両足に、ユーナが癒しの糸を巻く。

 

 最高戦力が二人とも離れたことによって、ルクスは警戒を広げる。

 今回は警護の相手が多い。

 

 まだ戦闘が下手なルクスでは、自分が回避しても守らないといけない相手に怪我を負わせてしまうかもしれない。

 このダンジョンでは、回避ではなく自分の体を使って食い止めるしかないのだ。

 

 ザバッと大きい音がして、映画で見慣れたシルエットが横の穴から飛び出した。

 残酷な牙、大きな口、鋭角の体。

 ルクスは、思い切り叫んだ。

 

「川ダンジョンに、さめはずるくないかぁぁぁぁーーーーーー!?」

さめのせいで一気にB級感が増しましたね

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