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剣に捧げる願い  作者: 滸 いろは
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第二十ニ話 とりあえず、脱出しましょう?

ご無沙汰しております……


前話から半年も経っていたことに、驚きました……仕事に忙殺されてました。……は言い訳にはならないですが。

月日の流れが早すぎる……っ(ノД`ll)


久しぶりの更新ですが、相変わらずのローペースです……

 リューシディアには戦姫、常勝姫、戦女神等、その生き方や功績を象徴するかのように戦争に因んだ渾名が複数ある。

 実際リューシディアが率いる軍は常に()()()()()()勝利を掴んでいる。

 そう。リューシディアは負けた事がない訳じゃない。

 ここぞ、という戦局を決定付ける戦に勝ち続けてきただけで、小競り合いも含めれば、何度も敗走を経験している。

 これはグァルディオラの一般平民には一切知らされていない事実。

 その美貌、剣技、魔術。

 全てにおいて、グァルディオラ軍で最も目立つ存在に陰があってはならない。たとえ他国の出自だとしても、現在のリューシディアの立場はグァルディオラ軍籍だからだった。


「……とはいえ、この逃げ方は流石に凹むわね」


 囚われていた牢獄の壁の一部を、人ひとりが這って通れる程度の大きさに掘り抜いたリューシディア達は、泥塗れになって進んでいた。


 もちろん這って。


 これまでの経験を活かしーー慣れたものとはいえ、気分が良いものではないーー穴の中を魔術で掘りながら四つん這いになって進むリューシディアとイアリナ。少し遅れて、顔を顰めながら進むフラン。


「……なぜ私が……誇り高き近衛騎士の俺が……泥に這わねばならん……」


 鬱陶しいとばかりにイアリナが睨むが、フランは全く気付かない。その様を見てケタケタと笑うリューシディア。

 フランにとっては全く面白くも何ともない状況ではあるが、一人牢獄に残されても何出来なかっただろうことは理解していた。


「まぁ、もうちょっとで穴倉探検も終わるから、ちょっと辛抱してよね」


 リューシディアの言葉にフランは眼を逸らしたまま頷いて返す。

 囚われてからの数日はフランにとって全く不愉快極まりない時間であった。しかしながら予め内通者を得ていたのも、脱出の手を整えていたのも全て、 この目の前で苦笑する年下の娘。フランは穴倉に潜る前に伝えられた内容を振り返った。


『ここは、エバーラン伯爵領よ。エバーランは表向き善良な領主なんだけど、実際には裏で人身売買、奴隷取引に手を染めてる。ま、在り来たりっちゃ在り来たりよね』

『馬鹿を言うな! エバーラン伯爵は人格者として一目置かれている人物だぞ!』

『だから表向きって言ったでしょうに。孤児を見れば金銭を与え、自領の孤児院を紹介する。その孤児院の運営費用は何処から賄われてるのかしら? 』

『エバーラン伯爵領の収入と国費からの援助に決まってるだろう』

『普通はそうね。でも。エバーランの孤児院に在籍する子供は少なくとも十人。世話をする人物だって必要よ。子供達の衣食住に掛かる費用、世話人への給与。最低限の生活でも月40ミルは掛かるわ。世話人への給与が16ミルとして、最低でも月に56ミル。そもそもエバーラン伯爵領は決して豊かとは言えない土地よ。彼の月の領地収支からして、この金額は半分以上。自分達の生活も少しだけ余裕がある、って位しか残らないわ。けれど彼の着ているものはどれもこれも、この国の皇族にすら並ぶ一級品。でも子供達の衣食住は十分満ち足りてる。世話人、彼の屋敷に勤める使用人達への給与支払いは滞っていない。国へ資金援助を申し出た履歴はないわ。不思議に思わないかしら?』

『そ……れ、は……』

『不自然なのよ。彼は特に商売をしているわけじゃない。かの領地経営からの収入で賄えるだけの金額ではない額が彼から流れてる。もちろん、商人や繋がりのある貴族からの援助という線も考えたけど、彼、人格者という割に交友関係が狭いのよね。おまけに帝国出身の商人からはむしろ嫌われてる。ーーさて、この意味は?』


 ここまで言われたら、流石にフランも違和感を覚えずには居られない。


『フラン・マドリュース。目に見えるものだけが正しいとは限らないの。そりゃね?為政者である以上、清濁併せ呑む必要はあるけどね。法を犯してまで併せ呑んだら、それはもう為政者ではないんじゃなくて?』


 フランは黙るしかなかった。


『ま、彼の場合は余罪多々あるんだけど、それは貴方が関与できるものでもないし。とりあえずはおとなしく私に従ってくれるかな? 悪いようにはしないからさ』


 反論する術のないフランは、従うしかなかった。


 だが!!


「誇り高き近衛が、こんな泥濘に混じるなど……っ!!」


 納得はしていなかった。そんなフラン向けられた視線は生温い。


「ああ、出口ね」


 どれくらいの時間だったのか定かではないが、決して長くはない時間を経て、三人は四方を土に囲まれた空間から、清浄な空気を感じられる場所に辿り着いた。


楽しんでいただけたら幸いです

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