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改良・テレポ小石

 改良を施したテレポ小石のテストをするため、俺は最近日課になりつつある早朝の森へやって来た。

 改良したテレポ小石……。その名も、テレポ小石Mk5!

 最初のテレポ小石が完成してから実に10日もかかってしまったが、非常に満足の行く仕上がりになったと思う。

 使い方は実に簡単。テレポ小石Mk5を握った状態で当てたい場所を注視し、その後軽く上に放り投げる。

 すると、テレポ小石Mk5は注視した箇所にテレポートしてその部分をえぐり取った後、また元の位置に戻って来る。

 なんどでも使用可能になった上、テレポ小石という名前通りの性能になったと思う。


 初代とMk2……Mk2は狙った場所に飛んで行くようにホーミング機能をつけたホーミング・テレポ小石だったけど、テレポ感がなさすぎた。

 なので、更に改良したMk3には満足の行くものだった。

 投げると空中でテレポートしてめり込む。完璧だと思った。しかしその日の夜。ふと、投げる必要がないことに気が付く。

 そして完成したMk4。

 握ってロックオンした状態で、手から離れると、すぐさまテレポートしてえぐり取り、消滅する。

 そこには理想のテレポ小石があった。これはスゴイものだ。そうだ! クレアとターニャにも護身用としてプレゼントしよう! でも、そうなると一回しか使えないのがネックだな。そう思った。そして天啓を得たMk5。


 早速テストしよう。

 俺はテレポ小石を握りこんで、もう見るも無残な姿になってしまった的役の木を睨みつける。すると、狙った場所に赤いロックオンマークが表示される。この表示は俺にしか見えないので、他の人が使った時にもロックオンされたことが判るように、テレポ石がちょっと温かくなる。その状態で軽く上に放り投げる。手首のスナップを使ってフワッと。

 視界の隅でテレポ小石が消えるのを確認。

 睨みつけた場所に現れるテレポ小石。しっかりえぐり取った後、再びテレポートして、消えた位置に戻って来る。後は、重力に引かれて、再び掌に収まる。

 よし、想定通りの動作! しかし、テストの本番はここからだ。

 自分の近くにテレポさせるのは非常に危険だ。間違って、自分の身体にめり込みでもしたら痛いでは済まない。

 なので、セーフティーを設けた。

 返ってくる時、その場所に別の物体オブジェクトがあった場合はそのまま消滅するようにした。これで、もしものときも痛い思いをせずにすむ。そこまでちゃんと動作してようやく完成といえるだろう。



 残りのテストも全てクリアし、俺は意気揚々と村はずれの宿舎に戻った。

 これで、ようやく次の段階に進める。弓? あれはもういい。テレポ小石Mk5があれば弓なぞいらん。次の段階とは霊峰に登ってみることだ。

 武器が完成したら村を出ようと思っていた。何時までもクレアとターニャに世話になりっぱなしなのも気まずい。

 徒歩で10日かかるという町に行こうとも思ったが、そろそろ行商人が来るらしく、それに便乗して町まで行けばいいと言われた。

 行商人が来るまで暇なので、その間に村を出る予行演習も兼ねて霊峰に登ってみることにしたのだ。

 霊峰まで行って帰ってくるのにどれくらい掛かるのか聞いたら霧さえ出なければ一日で往復できるという。

 俺の場合はマップがあるので、霧が出ても一日で帰ってこれると言うことになる。

 しかし、日帰りでは村を出る予行演習にはならないので、霊峰で一泊して野宿を経験することにした。

 既にクレアとターニャには予定通り行けば今日、霊峰に向けて出発することを伝えてある。

 クレアには厚手の外套を貰った。寝る時に包まれば寝袋の代わりにもなるスグレモノだ。

 ターニャはお弁当を用意してくれるらしい。本当に二人には頭が上がらない。世話になりっぱなしだ。


 宿舎に戻った俺はテレポ小石Mk5を幾つか作成し、不折おれずの棒きれと命名した木の棒を持ちターニャの家に向かった。

 ターニャの家で昼食をご馳走になり――勿論二人きりじゃないよ? ターニャのお爺ちゃんとお祖母ちゃんも一緒だったよ。ほっこりするからこれで良いんだよ! その後、約束通り作ってくれていたお弁当を受け取って、ターニャと一緒に迷いの森の入口に向かう。

 するとそこには見送りに来てくれたクレアと宴以来会ってなかった村長が待っていた。


 「クレア! 見送りに来てくれたんですか? ありがとうございます!」


 「えぇ。コスモさんなら大丈夫だと思いますが、森の奥地は危険です。山賊は勿論ですが、霧や野生動物、魔木まぼくには十分注意して下さい」


 勿論油断はしない。武器も用意して準備万端だ。しかし、知らない情報が混ざってるんだけど。


 「魔木って、移動する木でしょ? 人を襲うとは聞いてないんですけど」


 「直接人を襲うようなことはない。しかし、森の中で野営して眠りこけてる所を魔木に踏み潰されることならある。魔木に注意するとはそういうことじゃよ」


 クレアの代わりに村長が答えてくれた。

 寝てるところを踏み潰されるのか……想像したら背中がゾワッとした。でも、俺が野宿するのは霊峰の予定だ。森の中じゃないので大丈夫だろう。大丈夫だよね? 霊峰に魔木はいないよね?


 「ここ最近の森は穏やかじゃ。霧も出ておらん。そう心配せずとも森での野営せずとも日暮れ頃には帰ってこれるじゃろ」


 村長には霊峰で野宿する事を伝えてないので、魔木で不安がっていた俺を安心させるようにそう言ってくれた。

 村長……宴の時は無愛想だなとか思ってごめんなさい! あんたいい人だよ!


 村長はそれだけ告げると村に戻っていった。遠ざかる村長を見送ってちょっとしんみりしたところで出発だ! っとその前に、二人にテレポ小石Mk5をプレゼントする。


 「クレア、ターニャ。これを受け取って下さい。今まで世話になったお礼です」


 そう言って腰にぶら下げた袋をまさぐる。テレポ小石を掴んで顔をあげたら、二人がすごい神妙な顔をしていた。どうしたの?


 「コスモさん……。世話になったお礼って、もう帰ってこないみたいじゃないですか……そんなの嫌ですよ? ちゃんと帰って来ますよね?」


 確かに。ターニャの言うとおりなんか変なフラグ立てたみたいになってしまった。

 勿論そんなつもりはない。ちゃんと一泊したら戻って来る。


 「大丈夫。戻ってきますよ。心配しないで待っていて下さい」


 二人の手を掴んでテレポ小石Mk5を握らせる。

 二人の神妙な顔つきが更に神妙になった。……あれ?


 「……何ですか? これ?」


 「……これがお礼?」


 あーそうか。テレポ小石Mk5はスゴイ小石だけど見た目は只の小石だもんな。

 世話になった礼だって小石渡されたらそりゃそんな顔になるわな。ちゃんと説明しよう。


 「それは、この木の棒と同じような物ですよ。口で説明するより、見てもらったほうが早いと思うので見てて下さい」


 テレポ小石Mk5をもう一つ取り出して、近くの木を狙う。


 「まず、こうやって石を握って、狙いを定めます。すると石が温かくなるので、そうなったら……」


 実践してみせる。


 「軽く放り投げると、狙った場所に当たり、また戻ってきます」


 俺の手元と抉れた木を見て、ポカンとする二人。どうだ! スゴイだろう!


 「ほら、二人共試してみてください」


 俺がそう言うと二人は、手元のテレポ小石Mk5に視線を落とし、握りこんだ後、顔を上げて森に視線を向けた。


 「うわ! ホントに石が温かくなった!」


 ターニャ。驚くところはそこじゃないから。ほら、早く投げてみてよ。

 恐る恐るといった感じてテレポ小石Mk5を放り上げる二人。テレポ小石Mk5は想定通りに目線の先にある木をえぐり、また二人の掌に戻る。


 「……スゴイですね。これは」


 クレアが掌にも出ってきたテレポ小石Mk5を見ながらそう呟いた。


 「テレポ小石と名づけました。それは、手元に戻ってこれない状況になると消えてしますので注意して下さいね」


 「テレポコ石?」


 テレポ小石だよ、ターニャ。


 「テレポートする小石でテレポ小石です。それならポケットに収まりますし、女性でも簡単に扱えて高威力です。護身具として貰って下さい」


 女性にプレゼントする石としてはかなり異質だと我ながら思う。宝石ならばもっと素直に喜ばれただろうけど用意できないし、仮に用意出来ても渡せる気がしない。


 「キレイな石じゃないですけど、大切にしてくれると嬉しいです」


 そう告げると二人はとても良い笑顔をかえしてくれた。


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