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領主ティエスト

 面会の日取りが決まり、それまでは特に何かすることもなく過ごした。

 あの後マルグリットに、楽に稼げる方法がないかと聞いたら「そんな方法があれば、私がとっくに実践しております」ハッハッハといつもの様に答えられたが、目が笑ってなかった。あれは怖かったな。


 商人相手に質問の仕方が悪かったと反省しながら、お金を稼ぐ方法を色々と聞いた。

 得られた答えは当然ながら真っ当に稼ぐ方法で、元手が必要だったり時間が必要だったりするものばかりで、あまりいい情報は得られなかった。

 ゲームとかで良くある、依頼を受けてそれを達成し、報酬をもらう――所謂、冒険者のような職業はないのかと聞いたら、いつかのクレアのように首をかしげられた。

 どうやらこの世界には冒険者という職業が存在しないようだ。


 危険なモンスターの討伐は領主の仕事で、それを行うのはその私兵であり、信頼や実績のない者に任せるようなことはない。

 そもそも、討伐が必要になるほどのモンスター被害は稀であり、その報奨を生活の糧にするには各地を放浪して回る必要がる。一応そういう事をやっている一団は無くはないが、町や村の人達からすれば山賊や野盗と変わらず、町へ入れなくなることも少なく無い。決しておすすめできるような稼ぎ方ではないと言われた。


 そうして、町へ出ていい方法はないかと探したりはしたが、特にこれといって進展などはなく、領主との面会の日を迎えた。

 領主館の応接間、クレアと俺は促されるままにソファに座って、領主と面会している。

 マルグリットは俺たちを一緒にここまで来たが、領主に挨拶して早々に帰っていった。領主の覚えは良くしたいが、面倒はゴメンだと応接間を出て行く背中に書いてあった。


 という訳で、俺とクレアの二人だけで領主と面会している。領主の斜め後ろには秘書? いや、多分執事ってやつだろうな。が、立っている以外この部屋には誰もいない。

 しかし、領主様というわりにスッキリしてるな。見知らぬ人と合うのに護衛の人とか要らないんだろうか。あの執事さんが、文武両道のスーパー執事さんなんだろうか。

 パット見そんなに強そうに見えないけど、ああいう人は意外に強かったり、と言うか何気に最強キャラ筆頭だりするからな。侮れない。まあ別に事を構える為に来たわけなないからどうでもいいんだけど。


 とまあ得体のない考えを巡らせていた所で領主様が口を開いた。


「霊峰の麓の村からの使者だと聞いたが、一体どのような要件を持って来た?」


「はい、領主様。私は麓の村のクレアと申します。今回は私どもの陳情を――」


「そう畏まらずとも良い。領主と云っても所詮は田舎貴族に過ぎぬ。それに領民の願いを聞くのは領主としての勤めである。しかし最近はその願いが少しばかり多くてな。時間が惜しいので出来る限り率直に申せ」


 クレアの口上を遮って領主様がそう仰った。貴族然とした雰囲気だけど、マルグリットの前評判通り領民思いな方のようだ。

 しかし、一村人からすれば雲の上の人には変わりないので、早々態度を改めることも出来ないだろう。


「はい、領主様。私どもお願いというのは、迷いの森についてなのです。近頃、迷いの森に異変が生じているようでして、その調査をお願いしたくやって参りました」


「ほう? 迷いの森の異変。それは興味深いな。一体どのような異変なのだ?」


「はい。迷いの森はマナが濃いため植物が旺盛に茂っておりましたが、近頃は野草の繁殖も落ち、また草木が萎れているのです」


「ふむ……。これは確かに調査の必要があるな。すぐに調査団を編成して派遣しよう」


「有難うございます!」


「この領地は霊峰より来るマナにより豊かに潤っている。その霊峰の恩恵をより多く受ける迷いの森の異変となれば、ゆくゆくはこの領地全体の異変になりかねん。そうなれば一大事だ。よくぞ知らせてくれた」


 このまま面会が終了しそうな流れになったので慌てて口を挟んだ。山賊の件もなんとかしてもらいたい。


「あの! 村の近くに山賊が出たんです。クレアも一度拐われてしまって、それで、山賊もなんとかしてもらえませんか!」


「山賊か。迷いの森に巣食う山賊はこの領内で一番の問題だ。しかし、奴らがあの森に隠れている以上、こちらは手の施しようがないのが実情だ。捕縛に向かっても巧みに隠れられ、探しだすのも困難、深追いしようものなら森に惑わされてしまう」


 それは、そうなんだろう。けど、現状を放置するわけにもいかない。なんとか食い下がれないかと考えを巡らせていたら続けて領主様が口を開いた。


「しかし、奴等の居場所が判るのならば話は別だ。一度拐われたと言ったな? しかし、ここにいるということは逃げ出したのだろう。奴等のねぐらの場所は判るか?」


 クレアはそう問うた領主様に答えるよう俺の方を見た。


「俺がクレアを助け出しました。塒の場所も判ります。例え夜であろうと辿りつけます」


 捕まった時に作成したマップにしっかりと塒の位置は記録されている。


「ならば君が捕縛隊を案内したまえ、その出立を見るに多少は腕に自身があるのだろう、邪魔にはなるまい」


 その後、捕縛隊の編成完了次第すぐに村へ向うこと、それまでは宿で待機しているように言われ領主との面会は終了した。

 気がついたら捕縛隊に参加することになってしまっていたけど、まあ何とかなるだろう。俺は単なる案内役だし、自分の身を守る程度の事しか求められていないはず。

 しかし、身を守る、か。ホント早急に防具を何とかしないとな。





  §  §  §





 今俺は大通りに露店を出している。

 露店を出すには許可が必要だったけど、特に厳しいものではなく、みかじめ料として銅貨四枚支払えばいいだけだった。

 お金はクレアに借りた。情けないがこればっかりは仕方がない。しっかり稼いで早く返済したい。

 露店で何を売っているかと言えばそこらで拾った石を改造した金塊だ。


 領主との面会の結果、早急に防具を調達しなければならなくなった俺はクレアに剣を買ってもらった武器屋に駆け込んで防具の値段を聞いた。

 お値段なんと銀貨十枚! 剣の二倍!

 銀貨と言われてもソレがどれくらいの価値が有るのか判らなかったので、宿に戻ってクレアに尋ねた所、背負いカゴ二杯分の野草で大体、銀貨一枚だと教えてもらった。

 クレアたちに付いて森に入った時は大体半日でカゴ一杯採っていた。一日に二回採取すれば一日銀貨一枚、防具まで十日。捕縛隊の編成にどれほど時間がかかるかは判らないけど、流石に十日もかからないだろう。間に合わない。


 そうして思いついたのが、石を金塊に変えて売るという方法だ。

 金貨を勝手に製造するのは重罪だけど、金を勝手に作っても罪には問われない。むしろ、ファンタジー的に考えて錬金術による金の精製は命題的なものだろう。これは錬金術じゃないけど。

 金のパラメータはマルグリットに金貨を見せてもらって解析した。

 それで、意気揚々と露天を開いて金塊並べてるけど一向に売れない。値段は一つ金貨二枚。

 高すぎるかとも思ったけど、値段が低すぎても怪しすぎるだろうと思ってこの値段。

 重さがだいたい同じなので妥当な値段だと思う。


 それからしばらく。

 俺は再び領主館の応接間に連れてこられていた。何故だ!


 「これを何処で手に入れた?」


 そこらで拾いました。とは、流石に言えない。どうしようかな。


 「霊峰に行った時、拾いました」


 どれか一つくらいは霊峰の石も混ざってるんじゃないかな。たぶん。

 手にとって色々試している領主様。あれは試金石かな?


 「本物の金か……。霊峰で拾ったと言ったな? すると、霊峰に金脈があるのか? いや、しかし……」


 すごく悩みだした領主様。

 ごめんなさい。霊峰に金脈はないと思います。それと、今はそんなことどうでもいいので、さっさと開放してくれると有り難いんですが。


 「あの、それは差し上げますので、開放してもらえないでしょうか」


 金塊のもとでは掛かってないので手放すのは痛くも痒くもない。それに、さっさと次の金策を考えないと、防具も買えないし、クレアへの借金が嵩んでばかりになる。


 「いや、そういう訳にはいかん。これの所有権は君にある。しかし、あの場所で売っても誰も変わんだろう。手放す気があるなら、私が買い取るがどうだ?」


 「ぜひ、お願いします」


 まさかの商談成立! 大金ゲット! これで、防具が買える!


 「しかし、これだけの量を一度に買い取ることは出来ない。然るに前金として金貨二枚、捕縛が完了し、町へ戻ってきた際に残りを支払うという方法をとりたいが、どうか」


 全然問題ないので即、応答し、例の執事さんからお金を受け取って宿に戻った。

 早速明日防具を買いに行こう! その前にクレアにお金も返さないとね!

 さっそくクレアに金貨一枚を差し出して、お釣りをもらおうと思ったら絶句された。










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