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激戦、最強スキル剣士VS最強魔導騎士!Ⅲ

 僕の目の前には、《神代の大裁》と《絶代の大裁》をそれぞれ両手に握ったアトラスとセレナ、《獄炎ヘルフレム魔装束イフリート》を装着したメリーが仁王立ちしていた。

 

 さすがに、僕も切り札を相手に奪われてはなかなか打つ手は見出せない。


「さて、どうする火渡レン? これから俺達3人を一気にまとめて相手してもらう訳だが……まさか無理とは言わねえよな?」

 アトラスはニヤリと不気味な笑みを浮かべた。


「確かにこれでは僕もなかなか厳しい。だが、こういう無理ゲーこそクリアし甲斐があるってもんだろ?」

 僕は負けじと言い返す。


 彼ら相手に圧勝できるようなすべは何も残されていないが、それでもギリギリで打ち勝つことならまだ可能なはずだ。


「それはつまり……、こんな状況であってもまだ打つ手がある……。そういうことですね、火渡レン? まだ楽しめそうで何よりです」


 セレナはどこか嬉しそうな表情で言った。


 まあ、いくら切り札が《神代の大裁》と《絶代の大裁》とは言っても、《神代の大裁》と《絶代の大裁》はその強力な特殊能力のせいで攻撃力の上昇値が控えめに設定されている。

 その上、この武器を装備している間、僕は高ランクの防具を装備することが出来ない。


 確かにこの二つの武器は強力な武器には変わりないが、僕にはこのレベルの武器がまだ5つ残されている。

 おそらく、逆転は可能だ。


「ああ、まだだ。僕にはまだ打つ手が残されている。それを今からこの場で見せてやるよ」

 僕はそういって、右手を上にかざした。


「大地を征する母なる守護霊よ、今再び我に力を与えよ」


 瞬間、僕の上空には怪しげで墨のように真っ黒な積乱雲が発生し、そこから僕に向かって巨大な白銀の竜巻が放たれるのだった。

 その竜巻はすさまじい風で、周囲の巨木を吹き飛ばす。


「何……これっ?」

「確かにすごいですね」


 彼らは吹き荒れる砂塵に目を傷つけられないように、必死になりながら腕で目元を覆った。


 十数秒経つと、真っ黒な積乱雲と白銀の竜巻は消えて、周囲の砂塵を撒き散らしながら僕は姿を現わした。


「まさか、先ほどの竜巻を受けて無傷とは……一体どういうことですか?」

 セレナは驚いた表情で僕に尋ねる。


「いや、自分で起こした竜巻にやられちゃ、どこまでドジなんだよ僕は……」

「いえ、母なる守護霊とやらに偉そうに命令していたので天罰が下ったのかと……」


「そんなわけあるか!」


 あれは、命令じゃなくて詠唱なんだよ!

 詠唱!


「そうでしたか、それは良かった。それでその装備があなたの打開策というわけですね」


 セレナは刀身が白鳥の翼のような形をしている僕の大剣を見ながら言った。

 僕のこの大剣は確かに白鳥の翼のような形をしていて、まさに刃の代わりに白鳥の翼がそのまま付いているような構造になっている。

 だが、これはとある飛竜の翼で鉄以上の強度があり、切れ味はこの世の全てを切り裂くと言われるほどにすさまじい。


「ああ、これが僕の対モンスター用の切り札《嵐姫らんきの大裁》だ」

 僕は《嵐姫の大裁》を両手で握り、セレナに3メートルほどもある巨大な刀身を向けながら言った。


「それに虹色に輝く大きな蝶の羽も、鎧もありますね。ところで、その虹色の蝶の羽はいいとして、何故鎧だけ味気ない装備になっているのですか?」

「まあ、やってみれば分かることだ」


 セレナは疑り深く、僕の平凡に見える鎧を見つめた。


 確かにこの僕の鎧は、見た目だけならゲームのほぼ初期段階で手に入るような、ありふれたデザインの鉄の鎧だ。

 だが、それは見た目だけに限ればの話だ。


 この僕が今、着用している鉄の鎧は《鍛御かみの大裁》という防具で最高ランクの防具だ。


 高い防御力に加えて、常時回復スキル、状態異常自然回復スキル、完全防御パーフェクト・ガードスキルなどを持つ優れもので、主に戦闘ダメージ無効が通用しない相手や、神代や絶代で歯が立たない相手に対して使用していた。


 こうして、僕が彼らと対峙している間にも、僕のHPは少しずつ満タンへと近づいているわけだ。


 まあ、いくら状態異常回復スキルがあるとは言えど、神代の幻覚能力相手には無力なようだが……。


「そうか、そういうことだって言うんなら、さっさと始めようじゃねえか!」


 いつの間にか、僕の背後に瞬間移動していたアトラスが真上から《神代の大裁》を振り下ろす。


 しかし、振り下ろされた《神代の大裁》は僕を空振りし、虚空を大きく切り裂いていた。


「何っ、火渡レンがいない?」


 アトラスは戸惑うように首を振って、僕の居場所を確かめた。

 その隙をついて、僕は上空から《嵐姫の大裁》を振り下ろし、見事に斬撃をアトラスにヒットさせるのだった。


 アトラスが僕に《神代の大裁》を振り下ろす瞬間、その瞬間に僕は背後についている蝶の羽を広げて、アトラスの真上に回避していたのだ。

 アトラスですら気づけないほどの超高速で。


 アトラスはその場で剣を握りながら、頼りなく地面へと崩れ落ちるのだった。

 すると、地面に倒れていたアトラスの姿が3Dホログラムのように急に消える。

 そのときになって、ようやく僕はアトラスが幻覚であることに気づく。

 僕が攻撃を回避し、逆に攻撃を仕掛ける頃にはすでに彼女は瞬間移動で別の場所へと移動していたのだ。


 そのことに気づいた瞬間、僕は身を覆い尽くされるような巨大な熱線に身を焼かれる。


 高純度の巨大な紅蓮の熱線が急に僕を襲ったのだ。


「どうかしら、私の《獄炎砲ヘルフレム・キャノン》の威力は!?」


 すると、どこからともなくメリーの姿が現れるのだった。


 その表情はどこか自信に満ち溢れ、まるで絶対に勝てると言わんばかりの迫力がそこにはあった。


「まあまあだな。ちょっと熱いシャワー程度か……」

 僕は体全体に風のバリアを纏わせながら、その場から現れる。


 これは《嵐姫の大裁》の特殊能力で強い攻撃から身を守ってくれるようになっている。

 そのお陰で、僕はまだ0ダメージのままだ。


 とは言っても、あのレベルの攻撃ならば、鎧一つで十分だ。


「ふうん、あれを受けても無傷とはね。なかなかやるじゃないレンくん。私の本気はまだまだこんなもんじゃないわよ」

「僕だってまだ本気は出していない。いや、それどころか僕は攻撃すら仕掛けていないんだぞ」

「だったら、ここはあなたから攻撃を仕掛けてくればいいじゃない? 待ってあげるわよ」

「何を企んでいるかは知らないが、相手に先攻を譲るのはあまり好ましくないな」

「そう言うなら、私から攻撃を仕掛けてもいいかしら? レンくんは私に勝ちたいはずでしょ?」

「そう安々と相手の策に乗るわけには行かないからな」

「ホントにいいのね?」


 メリーはニヤリと悪企みでもするかのような怪しい笑みを浮かべる。


「ああ、構わ……」


 僕が言葉を言い切る瞬間、鈍い音と共にマグマのように赤い一本の矛先が背後から体を貫通する。 


「そう……、なら良いわよね? これで私の勝ちよ、レンくん。これが私の武器《獄炎ヘルフレム魔槍角ディアブロス》の威力よ、どうかしら?」

 メリーは槍を僕に貫通させながら、得意げにそう囁く。


「ああ、まいったな。僕はどうやら完全に油断していたらしい。まさか背後を取られるとはな」

 僕は肩をすくめ、余裕のある笑みを浮かべる。


「油断……していた、の……ねえ? それは駄目じゃない、レンくん? 油断なんかしたら戦っている相手に失礼じゃない?」

 メリーは怒りの灯火を灯すかのように、槍の矛先に紅蓮の炎を纏わせる。

 すると、僕のHPの消費量はさらに激しくなる。


 嵐姫の大裁を使用することによって、防具の使用が利く分、その分だけ防御力は増したが、それでも回復アイテムなしのこの状況下においては、少しでもHPを減らされることが命取りになる。


 しかし、僕には一つだけ納得のいかないことがあった。

 

 それは――、




 ――何故、《鍛御かみの大裁》の保有スキルである完全防御パーフェクト・ガードスキルが発動しないのかということだ。



 

 実は、僕の防具である《鍛御かみの大裁》は相手から攻撃を受ける寸前、それがたとえ僕の気づいていない不意打ちであっても、その攻撃を周囲から風の塊を放出して防いでくれるのだ。


 だから、気がかりだった。

 それだけが僕には気がかりで仕方なかった。

 一体何故だ?……


「失礼……だって? それは幻覚なんかで姿を消して、不意打ちしてきた奴の言うことか?」

 僕は彼女の言葉を鼻で笑ってやる。


「不意打ちも何も……当然のことじゃない? これも立派な戦略よ。私が誇り高き魔導士である以上……負けは認められないわ!」


 しかし、そうは言えども……僕には納得がいかなかった。

 だから、僕は彼女にこう問いかけることにしたのだ。


 彼女の魔導士としてのプライドを確かめるために!


「そうか……、負けを認められない以上はどんなに姑息な手を使ってでも、勝ちを選んでいくのか?」


「さっきから何を言ってるのか分からないけど……、何も私は姑息な手なんか使っちゃいないわ! ただ私は幻覚という能力を最大限に生かして、あなたを追い詰めただけじゃない? これも立派な戦略だわ。それの何がいけないって言うのよ?」

 彼女は僕を嘲笑するように軽く言う。




「ふ ざ け る な !」



 

 彼女は僕の一喝にビクっとおびえたように身を震わす。




「そうやって、まともに正面から戦わず、勝ち取った勝利に何の意味がある? お前は僕と引き分けて置きながら、こんな形での決着を望んでいたとでも言うのか? お前の魔導士としてのプライドはどこへ捨ててきた!? 今のお前に魔導士を名乗る資格なんかはない!! お前なんかペテン師だ! 詐欺師だ! 泥棒だ! そして……変態だ!」




「ちょっと待って! この際だからペテン師だとか、詐欺師だとか……そういうのは百歩譲って認めてやるわよ! でも、変態ってどういう意味!? 私、何かそれらしいことでもしたっていうの?」

 言われたメリーは僕に訂正を求めて、カッとなって言い返す。


「ああ、そのことか。いや……だってなあ……。傍から見てると、女の子同士なのにネコミミにベッタリだったしなあ。まるで、カップルみたいだったぞ。いや、この場合レズビアンの方が正しいのか? それとも……バイセク……」




「ち が う わ よ !」




 僕が言い切ろうとしたその瞬間、彼女の悲鳴がさえぎる。

 それと同時に両目をギラリと光らせながら、メリーはどこからともなく姿を現わすのだった。


「レンくん? あなた、こんがり肉になりたい?」


「い……いや、それはちょっと、遠慮しておこうかな……」

 身の危険を感じた僕は口元に苦笑いを浮かべる。


「いいのよ? レアでもウェルダンでも何でも好きなの選ばせてあげる。何にせよ、焼き殺すには変わりないから!」

 そして、メリーは両手に携えているランス《獄炎ヘルフレム魔槍角ディアブロス》に紅蓮の炎を纏わせる。



 

 ……いや、それだけではない!



 

 まるで蛇が枝に巻きついてるかのように、紅蓮の炎がランスの持ち手から矛先へと螺旋らせん状を描きながらグルグルと巻きついているかと思えば、その炎は急に生き物の形へと姿を変える。


 それは、水牛の頭だ。

 ランスの矛先には、水牛の頭の形をした炎が纏わりついているのだ。

 その双方の角は見事に湾曲し、異様な存在感を放っていた。


「さあ、やるわよ! 《獄炎デュアル双角セレクト》で!」

 メリーは言うと、力強くランスを両手に握り締め、そのまま突進する体勢に持っていくかのように姿勢を低く構えた。


 そして、次の瞬間……勢いよくその場から飛び出した。




 ――勝手な行動はつつしみ下さい。何のために私があなたを召喚したと思っているのですか?――




 しかし、その場から飛び出した瞬間、目にも止まらぬ速さの斬撃が彼女を襲った。

 瞬間、メリーは体勢を崩し、正面から地面に崩れ落ちるのだった。

 

 

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