第6話 王女の決断
サートはこの場を離れる手段を探りながら苦手な感知魔法で周囲を調べた。
そして近くの部屋に1人いることに気付いた。
「少し席を外す。この娘に手を出すなよ」と言って、
サートは扉から広間を出た。
サートは階段とは反対側の廊下を歩いて奥にある扉を開けた。
すると部屋の中には、1人の背の低い中学生くらいに見える女性が、
驚いた表情で立っていた。
その姿を見てサートは、
「王女さんですか?」と聞いた。
その背の低い女性は、
「私は国王の娘のルナエテル・ナゼルジェフと申します」と、
少しおびえた表情ではあったが毅然と言った。
サートが、
「一緒に広間まで来ていただきますか」と言い、
王女ルナエテルは抵抗することなくサートと一緒に広間に入った。
広間に入ると貴族たちは国王のそばであたふたとざわついていた。
魔法師たちは騎士隊長と宰相に、治癒魔法で治療を始めていた。
騎士たちは女子学生リオナを捕らえようとしていたが、
防御の魔法が効いて何もできないでいた。
国王と王妃ニゼアコロは、
サートが王女ルナエテルを連れていることに気付いた。
王妃が、
「ルナに何を!」と叫び、
騎士たちは剣をサートに向けて構えた。
王妃が続けて、
「ルナをどうするの?あなたとは関係ないでしょ」と叫んだ。
「関係あると思うで。これから俺は魔族の王に会いに行く。
そして元の世界に帰してもらえるか交渉しようと思う。
その時の交渉材料としてこの王女さんを差し出せば、
うまく話が進むかもしれん」と、サートは王女の背中を押した。
それを聞いた国王は激怒してサートに駆け寄ったが、
サートは静かに風の魔法で国王を跳ね返した。
「オオサマよぉ、怒りたいのは勝手に呼ばれた俺の方やねん。
なんならお前を殺して、お前があの世に転生するかぁ。
それに魔族の王と話がうまく進めば、何事もなく王女さんも
帰って来れるかもしれんぞ」と、サートは王様をにらみつけた。
王妃が王女ルナに駆け寄り抱きしめた。
王女ルナは、
「お母様、お父様、私は大丈夫です。 聖女であるお母様の次期聖女として、
これまでお役に立てずに過ごしてきた中で、
この出来事は私にとってチャンスなのかもしれません。
今の広間の経緯は分かりませんが、私はこのお方が悪い人には思えないのです。
なので私は、このお方と魔族の王のもとへ行こうと思います」。
「ルナ、それはダメ。あなたが苦しむことなんてあってはならないの。
次期聖女の話なんていいの。魔族のところなんて行っちゃダメなの」と、
王妃は泣き崩れた。
王女ルナは、
「私は行きます。わがままな私を許して」と、目に涙を浮かべていた。
サートは女子学生リオナに、
「リオナさん、僕と一緒に行きますか?
たぶんここにいても何も解決しないし、苦しむだけだと思います」と聞いた。
女子学生リオナは泣きながら、「うん、うん、」と、何回も頭を上下に振った。
サートは、女子学生リオナに魔法をかけて少し身軽に歩けるようにした。
そして魔法で広間のカーテンを切ってロープを作り、王女ルナの手足を縛った。
サートは風の魔法で防御壁を作り、
広場にいる者が廊下に出られないようにした。
サートは王女ルナを抱きかかえて、リオナと広間を出て行った。




