第22話 家庭崩壊からの召喚
この単純な毎日だったが意外と面白く、
ルナとリオナは飽きることなく魔法の練習を続けていた。
そんな森の生活が続いたある日、晩ごはんを食べている時にルナがリオナに、
「リオナ、あなたがこの世界に来る前のことを聞いてもよろしいかしら?」
と質問した。
「てっきりテントの中でルナはリオナのこと聞いてると思ってた」
と、サートは意外そうな顔をした。
リオナは、困った顔をして悩んでいた。
「リオナ、ごめんなさい。無理に話さなくていいわ。
また話せる機会があったら話を聞かせてもらえるかしら」と、
ルナは戸惑っていた。
サートも、「俺、席を外そうか」と言うと、
「話せるところをお話しします」とリオナは言って、自身のことを話し始めた。
リオナこと“諸見謝 里緒奈”は普通の県立高校に通う高校生だった。
家庭環境は良いとは言えず、
両親は離婚して母と兄とリオナの3人で生活をしていた。
母は毎日働きに出て、兄はいつからか家に引きこもるようになっていた。
リオナは家計の足しにとレストランでアルバイトをしていた。
そんなある日、リオナは兄から性的暴行を受けた。
服を脱がされ強引に身体を触られて、
リオナは嫌がって暴れるうちに兄から逃れて下着姿で外に出ると、
運よく女性警察官がいて保護された。
兄はその場で現行犯逮捕された。
そしてその日からリオナの家庭は崩壊した。
近所や学校では有ること無いことをウワサされ、
リオナの警察での事情聴取は犯人の尋問のような扱いを受けた。
そのうちリオナは、なにもかも信じられない思考になっていて、
「母は身体を売っている。兄は精神異常者だ。娘はあんなエロい身体だから…」
など、いろいろ幻聴が聞こえるようになっていた。
兄に襲われて3カ月が過ぎた頃、リオナは大量の風邪薬を飲んで意識を失った。
もしかすると、すでに亡くなっているかもしれない。
そしてリオナが気付いた時には、あの王城の広間でしゃがんでいた。
リオナは泣くことなく淡々と自身に起こったことを話し終えた。
するとルナが、
「リオナー」と、大泣きでリオナを抱きしめた。
抱きしめられたリオナも何かが切れたように激しく泣き出した。
しばらく二人は泣き続けた。
二人が泣き止んだ頃を見計らって、
「もうテントに入ろうか。片付けはやっておくから」と、サートが言うと、
ルナとリオナはうなずいてテントに入った。
テントに入ったルナは、また激しく泣き出した。
サートが片付けを済ませてテントに入っても、
ルナはまだ泣いているようだった。
次の日の朝、
サートが朝ごはんの準備をしていると、ルナとリオナが起きてきた。
「昨日の晩は、ルナを泣き止ませるのに苦労しました」と、
リオナが疲れた顔をしていた。
ルナの顔は目の周りが真っ赤に腫れていて、「顔は見ないでください」と、
ルナは顔を隠したが、また昨日の話を思い出して泣き出した。
「ルナ、私はもう大丈夫だから」と、リオナはルナを慰めていた。
サートができた朝ごはんをルナの顔に近づけて、
「朝ごはん食べるぞ」と言うと、ルナは、「食べます…」と泣き止んだ。
朝ごはんを食べながら突然リオナが、
「サートさん、テントに入ってから泣いてましたよね」と言うと、
サートは空を見上げて、ルナは泣き止んで、それぞれ笑っていた。
サートたち3人は、今日も明日も明後日も、
魔法を練習して食料を調達する森の生活を楽しく送っていた。




