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ジーニアス ―白銀のガントレット―  作者: 出金伝票
第4章 ジーニアス――天才とは
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決戦へのカウントダウン

視点がコロコロ変わります。

読みにくいと思いますがご了承ください。

 場所は工事中の駅ビル。


 その情報が有機に届いたのは、ちょうど学園の校門に着いたときだった。

 さすがだな……。と黄崎から送られてきたメールを見ながら小さく笑う。

 まだ何も終わったわけではない。笑っている場合ではないこともわかっている。

 でも、梓には人を笑わせる、笑顔にする不思議な力がある。

 部員たちはつねづねコメディを書けばいいのにと思っているが、梓本人は恋愛小説を好んで書く傾向にあった。ただ、残念なことに恐ろしいほどにシリアスでつまらないのだった。


「ええか? 駅ビルにそれらしい音波の集積は見当たらへん。おそらくレパードは移動型の基地局を利用しているはずや」

「移動型?」


 黄崎と梓からの連絡を受けてすぐに武者小路へ電話した。

 すると、武者小路も新たな情報を掴んでいた。


「たぶん大型のトラックや。工事中の駅ビルが拠点ならトラックが出入りしても不自然じゃない。日中は都内や市内を走らせて事件の範囲を広げていたんやろな。そして周囲が寝静まった後に駅ビルに集合する。そんな算段やろ」


 その矢先、有機の目の前を一台のトラックが走り去る。

 それはすぐ近くの信号によって足止めをくらっていた。


「ということは今から駅ビルへ向かっても意味はないのか?」


 目の前のトラックは黒塗りで荷台には『藤井建設』の表記がされている。

 建築中のビルにトラック。建設会社のトラックなら……


「そうや。人質に取られた黒輪はんが何かされるとしても、完全に陽が落ちて寝静まってからやろな」

「わかった。じゃあ、撫子は引き続き調査を進めてくれ。あとトラックが集合する時間になったら騎衛瑠と一緒に駅ビルへ向かってくれ。充分に気をつけてな」

「? あんたはどうするんや?」


 タブレットを地面に置いて調べたのは駅ビル工事を請け負う業者のリスト。


「ちょっと確かめたいことがあるんだ」


 そう言いながら有機は一方的に電話を切り、すぐさま目の前のトラックのナンバープレートをタブレットで画像に残した。


◇◆◇◆◇


「私をこれからどうするつもりですか?」

「どうする……か。そうだな。とりあえずは無灯に連絡を取ってもらおうか」

「有機に? どういうことですか?」

「君たちの噂は我々教師の耳にも入ってきている。その君のピンチとなれば、当然、あの男は私の元へやってくるだろう。私はあの男の生き方に興味があってね。教師と生徒としてではなく、同じ『天才』として話をしてみたいのだ。今回は良い機会だと思ってな。黒輪君には申し訳ないが人質になってもらった」

「そういうことであれば、申し訳ありませんがお断りします。それに私と有機は先生方の思っているような間柄ではありません」

「なるほど……。天才とそういう関係だと思われるのは心外だということか」

「そんなんじゃありません。……先生はどうしてこんなことを……。先生は一体何をしているんですか?」

「言っても君には理解のできないことだ。君は黙って私の言うことを聞いていればいい。黄崎のようになりたくなければな」

「あなたって人は……」

「拒絶してもらってかまわないよ。その方が私もやりやすいというものだ」


◇◆◇◆◇


 そこは廃校になった小学校だった。


 少子化の煽りを受けた公立小学校の統合。

 かつてここを学び舎とした生徒は、近くにある別の小学校へ通っている。


「さて、どうするかな」


 小学校の周囲は駅ビル同様に巨大なブルーシートで覆われていて地上から中を覗くことはかなわない。そのため、有機は小学校を上から見渡すことのできる一〇階建のマンションの屋上からその様子を観察していた。陽は完全に落ちているが、四基の巨大な証明器具によって校庭は明るく照らされていた。下からだと校庭に明かりが灯っていることさえ気づけないのだから、囲っているブルーシートは光を遮断する特別性だろうと有機は推測した。校庭には三台のトラックが駐車されているのが確認できる。コンテナの側面が開かれ、仰々しい鉄の塊を幾人もの男たちが囲んで作業をしていた。


「確かにあの設備なら場所を選ばなくてすむ。駅ビルでも廃校になった小学校でもどちらでも構わないってことか」


【どうだった? 私の情報は役に立った?】


 喋ったのは有機の携帯電話。

 その声は魔法の起動時に流れる少女の声だった。

 特にどこかと回線が繋がっているわけではない。これは有機の携帯に備えられた人工知能の声である。


「ああ、駅ビルを襲撃するにしても時間があるから、駄目元でやってみたんだけどな。人工衛星による追跡は大成功だ」

【やったね! まあ、武蔵野市に範囲を絞れば私の権限でもできるし。このくらいは朝飯前よ。あ、私ご飯食べないけどね】


 有機は携帯をタブレットに繋ぎ簡易的な充電をおこなう。有機の携帯はこの管理者専用の小型タブレットを使用することでいくつかの管理者権限を行使することが出来る。有機の携帯の人工知能が衛星を使用できたのも、工事の業者リストを調べられたのもこのためだ。


「じゃあ、行くかな」

【あ、私の見立てだと学校を覆うブルーシートには粒子遮断特性があるかも。だからムシャちゃんの解析にも引っかからなかったんだと思う。ここからエアロジャンパーで侵入するのは危ないかも。途中で魔法が使用できなくなるかもしれないし】

「成程。ところで今のムシャちゃんて、撫子のことか?」

【ん? そうだよ? それがどうかした?】

「頼むからそれを本人の前で言うなよ? 俺が殺される」

【了解だよ!】

「さてと、じゃあ、正面突破と行くか」


◇◆◇◆◇


「はあ? 廃校になった小学校? なんやそれ。駅ビルはどうしたんや?」


 女子寮でパソコンと格闘する武者小路は有機からの電話に顔をしかめた。レパードが使用しているとされる音波をキャッチすることには成功した。ただ、市内を走っているトラックがある地点で不可解なまでに消息を絶った。実際にはあり得ないことだが、パソコンの画面上ではそれが起こっていた。


「ミクの話じゃ小学校の周囲は粒子遮断シートで囲ってあるらしい。お前の解析が難航したのもそのためじゃないか?」

「ミクってあのAIか? ちっ、なるほどな。で、そっちはトラック本体を人工衛星で追跡したと」

「俺はお前と違って、たった一台を追跡しただけだからな。お前のように複数を追跡してたわけじゃない。たまたま目をつけたのが当たりだったんだ」


 だからお前の負けとかじゃないぜ? と電話越しに有機が言っているように思えて武者小路は少し腹が立った。そんな安い同情など欲しくもなかった。


「とにかく、場所がわかったんなら一回ストップや。ウチや紫丈が行くまで待っとき」

「断る」

「はあ!?」

「あいつが待ってるんだ。足踏みなんかしていられない」


 そう言って電話は一方的に切られた。


「あの馬鹿……敵はテロリストやぞ」

「僕たちも行くのね」


 武者小路の隣で騎衛瑠が正座をし、膝の上に両手を添え真剣な眼差しをおくっている。

 ――戦う準備は万端だと。


「あんた、気を抜くと女の子の喋り方と仕草になるから気をつけた方がええで? そのうち外見だけやなくて中身まで少女になってまうぞ?」

「え? うそ! 女の子みたいになっていたかしら。あ……」

「はあ……もう漫才はおしまいや。気合い入れるで、騎衛瑠ちゃん!」

「ちゃん付けすんな!」


有機の視点

権藤と絵依の視点

有機の視点

撫子と騎衛瑠の視点

の順番でお送りしました。

今後はここまでコロコロは変わらないと思います。

よろしくお願いします。

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