第4話 決意
「てか、服着ないのか……その格好でいられると……それに、寒いだろ」
そうは言われても、着替えを持ってくるのを完全に忘れている。唯一の服は、覚の血で汚れているし、覚が着ていた服は、魔獣の攻撃で、もうボロボロだ。
「仕方ないじゃない。その服しか持ってきてないんだから。もう不要なのなら返して」
返却を求め、私が手を出すと、彼はあっさり私の服を差し出した。決して私の方は見ようと、やりすぎなくらい目を逸らしている。
今すぐにでも血を洗い落としたいが、こんなところに水道は無い。洗うとしたら、あの近くの小川の水でしか無理だろう。でも、こんな格好で、あの極寒の中洗い物なんてしたくない。どうしたものかと頭を抱えていると、覚がゆっくりと立ち上がった。
「俺が洗いに行ってこようか?」
(どこ見ながら話してるんだこいつ……)
でも、洗いに行ってくれればかなり助かる。でも、あの傷を受けたんだ。それなのに、もう動けるなんて、異常すぎる。
「それは有難いのだけど……あなた、もう動けるの?あの傷、普通なら死んでるわよ?」
「いや、もう普通に動けそう。ほら、服貸してよ。洗いに行ってくる」
やっぱり、こいつは異常だ。普通の人間で無いことは、もう理解した。まさか、こいつが『夢見人』なんじゃ……
いや、そんなまさか……
私は無言で服を突き渡し、覚に洗いに行かせた。その間暇だったので、何か食べようと思い、バッグの中を漁る。入っていたのは、乾パン、塩漬け肉、あとは乾燥豆だけだった。このままじゃ、飢え死にしてしまう。お金は十分にあるから、近い内に街を見つけ、食料を買い足さなくては。
今日のところは、乾パンだけで我慢しよう。そう思い、それを人かじりしてみたが、やっぱり美味しくなかった。ショボショボと、少しずつ齧りついていると、洗濯から覚が帰ってきた。
「血はキレイに取れたかも」
覚は洗ってきたビショビショの私の服を、朽ちかけた椅子に掛けた。彼も疲れているだろうと思い、乾パンを一つ差し出すと、やっぱり目を合わせないまま、彼はそれを受け取った。
「ま、まずい……」
彼の口にも合わなかったようだ。やっぱり、新しい食材、ついでに服も調達しに行きたいところだ。
「明日、街を探すために、ここを出ようと思うの。あなたも着いてくる?」
そう私が聞くと、覚は頷いた。私としても、彼がいると一人よりかは安心だ。信用しきっていない部分はあるが、連れて行くほうがマシだろう。
「なら、もう私は寝るわ。私は一階で寝るから、申し訳ないけど、あなたは二階で寝てね」
私がブランケットを体に巻き付けたまま横になり、寝ようとしたが、彼が驚いて止めてきた。
「おいおい、あの明らかに汚い二階で寝ないといけないのか?変なことしないからせめて一階で寝かせてくれよ!」
「無理よ。あなたくらいの年の男は、みんな、あんなことや、そんなことしか考えてないんでしょ?わかったら早く二階に行きないさい。おやすみ」
その後も少し覚は駄々をこねていたが、私は反応せず、渋々覚は二階へ向かった。
こうして、私にとって激動の一日を終えた。彼と出会ってから、少し薄れていたが、私は祖国も、愛する人達も失った。こう呑気なことはしていられない。必ずレーヴェに戻り、あの生活を取り返す。その意識を再度強め、私は眠りに着いた
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