第29話 再会
シャルロットとギデオンを探して馬を走らせたが、見つかる気配はなかった。これ以上の戦闘を避けるため、一度森を抜ける。
「クソッ……はぐれたか……」
幻真も重症を負っており、悠長にはしてられない。二人を探すことよりも、回復を優先するべきか……
「ごめん幻真、近くの街はどの方向にある?」
「私も、この世界を知り尽くしている訳ではないのだけど、恐らく、北上し続ければ、いずれ見えてくるはずよ」
その言葉を信じ、無心で北を目指した。
初日で、ギデオンと幻真が戦闘不能まで追い込まれた。これクラスの魔獣がまだまだいるとしたら、俺達だけじゃ困難だ。それどころか、一歩踏み外せば死人がでる。
ギデオンは、こうなることがわかっていて、なおこの作戦を実行したのだろうか。いや、そんなはずがない。
ギデオン、再開した暁には、あいつの計画を、洗いざらい吐かせてやる。
──────
北上し続けること数十分。ようやく街の光が見えてきた。その温かい光に、そっと胸を撫で下ろす。
街に到着すると、すぐに宿に入った。
幻真をベッドに寝かせてから、抱えていた荷物を、やっと床に投げ出した。あらゆる疲労が全身を襲い、腰を掛けた瞬間微睡みそうになる。
だが、まだ眠れない。ご飯も食べなくては明日動けないし、シャルロットも探さなくてはならない。重いまぶたを擦りながら腰を上げて、宿を出た。
一応ランスは持ってきた。そんな物騒なことは起こらないだろうと信じてはいるが。
道の端を一人静かに歩く。この街自体がかなり大きいからか、人通りは多い。適当に散策し、食料を買い集めた。
シャルロットから貰った端金でパンを購入し、ムシャムシャと頬張っていたそのとき、賑やかな街に、冷酷な警鐘が響く。
「魔獣か……」
そう察した俺は、いつの間にか駆け出していた。驚き静まり返った人並みを掻き分ける。
だが、魔獣の姿は見つからない。誰かが襲われていたりもしない。ただ、近づいてくる、何かの足音。
ふと門の外へ目をやると、そこには魔獣に追われている二人の騎乗者の姿があった。
遠目でもわかる、シャルロットとギデオンだ。森を抜ける途中で、魔獣に出くわしてしまったのだろう。
でも、無事でよかった。
魔獣向かって駆ける。すれ違いざまにシャルロットと目が合う。その瞬間、シャルロットが安堵したのが、目を見てすぐに理解した。
勢いよく突っ込んでくる魔獣に穂先を向けて待ち構える。突然現れた第三者に魔獣は対応出来ず、その勢いのまま、ランスに突き刺さった。
「覚……無事でよかったわ……!」
「シャルロットもな。あっちの宿をとってるから、案内するよ」
ギデオンは馬を操るので精一杯といったところだ。全身のいたるところに傷跡が見える。いち早い回復のために、俺達は急いで宿に向かった。
──────
「できたわよー」
ベッドの上から、窓の向こうをぼんやり眺めていると、扉の向こうからシャルロットの声が聞こえてきた。
扉の僅かな隙間からほのかに香るこの匂いが、俺のお腹を焦らしている。そして、その扉が開かれたとき、その匂いの正体が姿を現す。
「ごめんなさいね、これしか作れないの」
そう言いながら机の上へ並べられた、四人分のガレット。見ただけで、シャルロットが腕を上げたのがわかる。洗練されたその姿にヨダレが止まらない。
「相変わらず料理がうまいわね、シャルロット」
ベッドから起き上がってそう言った幻真の声が、ガレットに伸ばしていた手を止める。
食べたことないだろう、シャルロットの手料理を。星華の看病をしていた数日間も、俺達は別々の家で、別々に食事した。
やはり、何かがおかしい。もうこの違和感を、見過ごすわけにはいかない。
「なぁ、幻真とギデオン、お前ら、俺達になんか隠してないか?違和感が拭えないんだよ。ギデオンは未来が見えるはずなのによくやられるし、今のだって、幻真はシャルロットの料理を食べるのは初めてだろう?」
いつもより険しくなった俺の表情に、二人は顔を見合わせた。
「何より、幻真、お前、俺がこの世界に来る直前会ったよな?!偶然じゃないんだろ……なら教えろよ、お前らの、本当の目的を」
その言葉に、二人はすぐに続かない。重苦しい沈黙が、香ばしい匂いと混ざり合っている。
そんな中、ギデオンがガレットを一つ手にとり、一かじりしてから言った。
「気づいたんだ……なら、教えるよ。いや、もっと早く、教えるべきだった。僕たちが、選ばなかった未来について」




