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【完結】夢見た世界でガレットを  作者: Pe.com
第四節 選ばれなかった未来

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第28話 正義の躍動

 魔獣が吠える。それと同時に、三本の手が俺めがけて繰り出される。


 とっさに木の後ろへ滑り込む。


 拳は木に直撃し、その天まで届く巨木が魔獣向かって倒れ込む。だが、それも余った腕で軽くあしらわれた。


 この魔獣の厄介なところ、それはこの巨体と手足の多さだ。この巨体は俺らの攻撃にびくともせず、怯んだところを避けきれない反撃が炸裂する。


 ジワジワ削るか、一撃に賭けるか……


 幻真の能力は不明。あの薙刀は火力があるが、それでもこの魔獣を殺すのには不十分。


 でも、持久戦になれば、魔獣の方が圧倒的に有利だ。移動、連戦の疲れで、俺達はすでに限界が見え始めている。


 つまり、俺が、決めるしかない。


 まずは、その自由を奪う。肉で覆われている部分は、まだ貫けない。でも、その羽根なら……


「幻真!羽根を狙え!そこなら、まだダメージが与えられるはずだ!」


 攻撃を凌ぎながら、幻真はこちらを一瞥し、短く頷いた。


 その四本の羽根は、遥か上空で羽ばたき続けている。届かない。


 だが俺は見た。こいつに乗っ取られた俺自身が、魔獣の顔面付近まで到達していたことを。


「おい、正義の使者。ちょっと力貸せよ」


 その呼びかけに呼応するように、さらに強く、このランスは俺の体を侵食した。


 力漲る。今なら、どこまででも翔べる。


 白い大地に、爪先だけの大きな足跡を刻む。


 地面は、込められた力を、全て俺に向け返した。


 その力に押し出され、宙に浮く。魔獣を越え、巨木を越え、雲を越えた。


 そこから見る景色は、異様な程に、美しかった。


 そんな風景が一瞬目に映り込み、俺の体は落下し始める。


 四本の羽根を、全て攻撃することは出来ない。でも、片方の二本なら……


 いや、待て、この高度があれば、加速した勢いで、魔獣を貫けるかもしれない。


 無茶か、ここからじゃ、動き回る魔獣の頭に標準が定まらない。なら、確実に当てられる、大きな羽根を狙ったほうがいいか。


 ランスの穂先を標的に合わせ、頭部への一撃必殺を諦めかけていたそのとき、幻真が、木に飛び移りながら、魔獣の羽根を狙っているのが見えた。


 常人離れしたスピードで、どんどん木に飛び移り、高度を上げていく。


 巨木の頂点に達した幻真は、魔獣の背後から、羽根めがけて跳んだ。大きな三日月を模した薙刀が、左側の羽根を一閃した。


 羽根が雪のように宙を舞う。それと同じように、魔獣も地面に落下した。


 だが、魔獣もそれで終わらない。すぐさま倒れていた巨木を振り下ろしし、空中の幻真を地面に叩き落とした。


 それを映した俺の目には、間違いなく、復讐の炎が宿っていた。


 ランスに全体重をかけ、堕ちた魔獣に向けて、急転直下する。


 ますます加速する。風を切り、周りの音は聞こえない。


 魔獣の姿が大きくなっていく。完全に、捉えた。


『ズドォォォォォン』


 気づいた頃には、全身に強烈な衝撃が走っていた。そして、ランスも手も服も、血まみれになっている。


 俺が目を開けたその瞬間、魔獣の巨体が、後ろへ傾いていった。そのままそれは、背中から地面に倒れ込み、その衝撃は、俺達に決着を知らせた。


 一度、大きく息を吐き出し、幻真のもとへ走る。


「無事か?!」


 そこでは幻真が天を仰ぎながら倒れ、血を吐いていた。


「重症だけど、死んではいないわ」


 その幻真の傷跡は、決して俺に安心感を与えなかった。自分よりも背の高い幻真を背負い、それぞれの武器を持って、足を引きずりながら、馬のもとへ向かった。


ご覧いただき誠にありがとうございます!

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