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【完結】夢見た世界でガレットを  作者: Pe.com
第四節 選ばれなかった未来

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第25話 殲滅作戦

 急いでシャルロット達の待つ場所へ向かう。


 息を切らし、さっきまで持っていなかった武器を担いで走ってくる俺に、みんなは困惑の表情を浮かべた。


「お待たせしました」


「いや、お待たせしましたじゃねえだろ……」


 こうなることを知っていたであろうギデオンもまごつく。でも、止めてこなかったし、別にやばい未来に向かっていく訳ではないのだろう。いや、まだギデオンのことも幻真のことも、全く知らないからなんとも言えないが。


「とりあえず、出発するぞ。本当に時間がない。少しでも早く移動するためにも、今回は一人ずつ馬を借りよう」


「ちょ、ちょっと待て。俺馬の乗り方とか知らないんだけど」


「あぁ、マジか……ま、どうにかしてくれ」


 特に何か解決策を見出すわけでもなく、ギデオンは歩き出し、宿屋へ向かった。そこで四頭の馬を借りる。


 その内の一頭に俺は無理やり乗せられ、しかたなく俺も手綱を握る。


「全員乗馬出来たね。じゃあ向かおうか、シーサードラムト討伐へ。目標は今日中に討伐することだから、みんな頑張ってついてきてね」


 そうしてギデオンを乗せた馬が走り出す。その後ろに幻真とシャルロットが続く。シャルロットも不慣れそうだが、俺よりかはうまく乗りこなしている。


 今にも振り落とされそうになり、必死に馬にしがみつく。ランスを背負っているわけだから、その分バランスをとるのも難しい。シャルロットだけははたまに俺の方を心配そうに振り向いているが、ギデオン達は俺を気にする素振りを見せず、ただ前へ進んでいく。


 悪戦苦闘しながらも、どうにかみんなに喰らいつこうと必死に馬を操った。



 四頭の馬が、風を切り、雪を蹴散らしながら、この広大な大地を駆け抜けている。先頭にはギデオンと幻真。その少し後ろにシャルロットがいて、最後尾は俺。


 何度も振り落とされそうになりながらも、少しずつ、馬の扱いに慣れてくる。気づけば、もうすっかり安定しており、シャルロットの横に並んでいた。


「覚……!少し慣れてきたかしら?」


「あぁ、もう心配いらない」 


 こうして俺達は着々と、目的地に近づいていった。



 大きな河川敷のような場所に辿りつき、それに沿うように進んだ。そして、ついに海まで到着する。そこで、ギデオン達は馬から降り、武器を手にとった。


「何件か被害報告がでてるから、恐らくここにいるはずだ」


 見渡す限り、ここにそんな凶暴な魔獣がいるとは思えない。ただの静かな砂浜だ。砂浜にも雪が降り積もっており、本来の美しいベージュ色を拝むことは出来ないが。


「一応言っておくと、シーサードラムトは対魔征討軍でも討伐しきれなかったほど強力な魔獣だ」


 ギデオンが荷物の中から、大きな肉塊を取り出した。それを右手に掴み、左手には短刀を握る。


「Are You Ready?」


 ギデオンが振り向いた。それに、俺は頷き答える。


 それを確認すると、ギデオンは力いっぱいに、その肉塊を海に向かって投げ捨てた。それが、水面に到達する前に、水中からどよめく音が響いてきた。


『ザッパァァァァン!』


 その正体は水面を裂き、俺達の前に姿を現した。想像通りの姿ではあったが、いざ目の前にすると、その迫力は、想像の遥か上をいった。


 開かれた口の中の無数の牙の鋭さに慄き、一歩退く。その俺の前に、幻真が立ち、その大きな薙刀を一振し、シーサードラムト向かって走り出す。


 それに、ギデオンも続く。シャルロットも少し離れた所からクロスボウを構える。


 俺も、遅れを取るわけにはいかない。重すぎるそのランスを精一杯構えながら、シーサードラムトに接近する。


 だが、やつは今水中にいる。どうやっても攻撃は届かない。相手の攻撃を、待つしかない。


『ヒュンッ』


 俺の背後から、シャルロットが放った矢がシーサードラムトの体に突き刺さった。


 その一撃で、シーサードラムトの血相が変わる。突然、シーサードラムトの尾が、水中からギデオンめがけて叩きつけられた。それまで気づかなかったが、こいつ、ありえないくらい大きい。


 尾が叩きつけられた衝撃で、大地が激しく揺れる。間一髪その攻撃を躱したギデオンへ、次の攻撃がシーサードラムトから放たれた。


 大きく開かれた口元へ、水色のオーラが集中している。何か来る……


 水中にいるあいつに対して、俺達の攻撃は当たらない。


 そう、今までならな。


『夢反剋上』


 当然ながら、生物としての強さは、相手が圧倒的に上。


 なら、俺の下剋上が幕を開ける条件が整った。


 相手の攻撃の前に、このランスで、あいつの喉元を貫く。


「いくぞ」


 ランスの穂先をシーサードラムトに向ける。そうして飛び上がろうと、雪に埋もれた砂浜を強く蹴り出した瞬間、俺の脳内に誰かが問いかけてくる。


『あの悪獣に裁きを与えるのか。よいだろう、貴様に、我が力を貸し与えてやる』


 突如として脳内に流れる謎の声。初めてこの武器を手に取ったときと同じ声だ。


 この夢顕兵装が、俺に話しかけて来ているのか?


『我が力を持って、やつに裁きを下すがいい!』


 その声と同時に、ランスに変化が訪れる。明らかに、先程までの重さがない。軽すぎて、逆にうまく扱えない。手に持っているのかすら曖昧になるほどだ。


 唐突な変化に戸惑っている内に、シーサードラムトの口元から、収斂されたそのオーラが俺に向かって放たれる。


 この攻撃すら、今なら打ち砕ける。


 放たれたその攻撃と正面から激突する。空中にいるのに、なぜか踏ん張れる。少しずつ、その攻撃を押し返す。


 貫ける。そう確信し、さらに強くランスを突き立てる。


 そして、次の刹那、俺の体ごと、ランスはシーサードラムトの喉元を貫いた。


 だが、少し狙いがズレた。致命傷だが、まだ息がある。油断すれば……


「──覚くん!避けろ!」


 ギデオンが叫んでいる。でも、何が……


 あ、まずい。気づかなかった。シーサードラムトの尾が俺の背後まで伸びている。


『バチンッ!』


 それが、俺の腹を全力で強打したのがわかった。


「ガァッ!」


 まずい、このままじゃ……


『ドボンッ……』


 ……クッ、溺れ、る……


 ─────


 そして、次の刹那、俺の体ごと、ランスはシーサードラムトの喉元を貫いた。


 だが、少し狙いがズレた。致命傷だが、まだ息がある。油断すれば……


「──覚くん!避けろ!」


 ギデオンが叫んでいる。でも、何が……


 あ、まずい。気づかなかった。シーサードラムトの尾が俺の背後まで伸びている。


『ギンッ!』


 その尾が俺に目と鼻の先まで近づいたそのとき、誰かの武器の刀身が、それを切り落とした。


 それは、薙刀の刀身だった。


「幻真……助かったよ」


 そのまま幻真は空中の俺を抱え、砂浜へ降り立った。こんな所まで飛んできてるし、本当に何物なんだ、幻真は。


「油断している暇はないわよ」


 幻真はそっと俺を降ろして、シーサードラムトの方を指さした。意識朦朧としているが、まだその殺意は俺達に向いている。


 トドメは俺が決める。そう思って、また武器を構えたが、一足遅かった。


『ヒュンッヒュンッヒュンッ』


 シャルロットによる連続射撃が、シーサードラムトを捉えた。見事にそれらはすべて、ヘッドショットを決め、すでに致命傷を負っていたシーサードラムトの頭は水面に強く叩きつけられ、そのまま深い水底まで沈んでいった。


 勝った……


 でも、何か違和感がある。俺は一瞬、シーサードラムトにやられたような気がするんだけど……それで海に沈んで……


 いや、気のせいか。


「ナイスコンビネーションだね。ほとんど無傷で勝利じゃないか」


「そういうお前はあんま何もしてなかったよな、ギデオン」


「僕の能力は戦闘向けじゃないからね。それに関しては、覚くんと幻真に任せるよ」


 ギデオンが手を叩きながら、この勝利を祝福した。

大活躍のシャルロットも俺のもとへ駆け寄り、その勝利を噛み締めている。


 幻真は、シーサードラムトが完全に息絶えたのを確認してから、やっと俺達のもとへやってきた。


「覚さん、最後まで、油断なさらないでくださいね」


 幻真は、そう俺に耳打ちした。別に、油断していた訳では決してない。だが、今回は幻真に助けられたんだ。黙って従っておこう。


ご覧いただき誠にありがとうございます!

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